「差別化のポイントが見つからない」という相談を受けたとき、まず勧めるのが競合レビューの読み込みです。差別化の材料は、こちらの頭の中ではなく、すでにお客様が書いています。
この記事では、Amazon競合レビューの分析を、読む対象の決め方から分類、優先順位の付け方、商品ページへの落とし込みまで、作業の順に書きます。件数や割合の例はすべて仮の数字です。
何件、どこから読むか
対象は、自分が狙う検索語で上位に出る商品を5〜10件です。売れている商品を選びます。売れていない商品のレビューは母数が少なく、参考になりません。
各商品について、次を読みます。
- 星5と星4:満たされている点。ここは「最低限クリアすべき条件」です
- 星3:最も情報量が多い層。「悪くないが惜しい」が書かれています
- 星1と星2:致命的な不満。ただし極端な意見も混じるので、複数件で繰り返し出るものだけ拾います
星3を軽視しないでください。 星1は感情的な内容が多く、星5は褒め言葉だけのことが多い。具体的な改善のヒントは星3に集中します。
読む件数は、1商品あたり最新50件程度が目安です。古いレビューは、その後の商品改良で解決している可能性があります。
分類する:4つの箱に入れる
読みながら、次の4つに振り分けます。スプレッドシートで、1行1コメントにします。
| 箱 | 何を入れるか | 使いどころ | 差別化に使えるか |
|---|---|---|---|
| 箱1 褒められている点 | 星4〜5に繰り返し出る内容 | 自社が満たしているかの確認 | 使えない(参入条件) |
| 箱2 不満 | 星1〜3に繰り返し出る内容 | 商品仕様とページの訴求 | 使える |
| 箱3 使い方の発見 | 想定外の使われ方 | 新しい訴求とキーワード | 使える |
| 箱4 言葉遣い | お客様が使っている呼び方 | 商品名・箇条書き・検索キーワード欄 | 間接的に使える |
箱4は見落とされがちですが、キーワードの集め方の入り口としてそのまま使えます。売り手の呼び方とお客様の呼び方がずれていると、検索で拾われません。
箱1:褒められている点(星4〜5に繰り返し出る)
これは参入条件です。差別化の材料ではありません。「ここができていないと選ばれない」という最低ライン。自社商品がここを満たしているか確認します。
箱2:不満(星1〜3に繰り返し出る)
差別化の候補です。競合が解決できていない部分。
箱3:使い方の発見
売り手が想定していない使われ方です。「〇〇用に買ったが△△にも使えた」というレビュー。新しい訴求とキーワードの材料になります。
箱4:言葉遣い
お客様が商品を何と呼んでいるか。売り手の言葉と違う表現が出てきます。キーワードとページの文言に使えます。
不満を3種類に分ける
箱2に入ったものを、さらに分けます。ここが肝心です。
A. 商品の作りを変えれば解決するもの
「すぐ壊れる」「音がうるさい」「サイズが合わない」。仕様変更やOEMで対応できます。効果は大きいですが、コストと時間がかかります。
B. ページの見せ方で解決するもの
「思ったより小さかった」「説明書が分かりにくい」「使い方が分からない」。商品を変えずに解決できます。ここが最も費用対効果が高い領域です。
競合が「思ったより小さい」と繰り返し言われているなら、自社は寸法を比較写真で明示すればいい。それだけで、同じ商品でも返品率と評価が変わります。置き場所はサブ画像6枚の構成の3枚目です。
C. 構造的に解決できないもの
「値段が高い」「配送が遅い」など、価格構造やAmazon側の仕組みに起因するもの。ここは深追いしません。
AとBで、繰り返し出ている不満が差別化の切り口です。1件しか出ていないものは、その人固有の事情かもしれません。3件以上出ているものを優先します。
出現件数で優先順位を付ける
分類に使うシートは、1行1コメントで次の列を持たせます。後から件数を数えられるように、不満の内容は自分の言葉で短い見出しにそろえて書くのがコツです。
| 列 | 入れる内容 | 例 |
|---|---|---|
| 商品 | どの競合商品のレビューか | 上位1位の商品 |
| 星 | 星の数 | 3 |
| 箱 | 箱1〜箱4のどれか | 箱2 |
| 見出し | 内容を短い言葉にそろえたもの | 思ったより小さい |
| 不満の種類 | A・B・Cのどれか(箱2だけ) | B |
| 原文の要点 | 状況が分かる部分の要約 | 棚に置いたら想像の半分の大きさだった |
読み終えたら、見出しごとに件数を数えます。仮に上位5商品×最新50件で、合計250件を読んだとします。
| 不満の見出し | 件数 | 読んだ250件に対する割合 | 種類 | 扱い |
|---|---|---|---|---|
| 思ったより小さい | 18件 | 7.2% | B(ページ) | 最優先。すぐページに反映 |
| 説明書が分かりにくい | 9件 | 3.6% | B(ページ) | 優先。手順の画像を作る |
| フタが固い | 14件 | 5.6% | A(商品) | 次のロットの仕様で検討 |
| 届くのが遅い | 7件 | 2.8% | C(構造) | 深追いしない |
| 角が欠けていた | 2件 | 0.8% | A(商品) | 3件未満のため保留 |
並べる順は件数の多さだけでは決めません。3件以上出ていることを条件にしたうえで、Bを先、Aを次にします。フタが固いは説明書より件数が多いものの、直すには仕様変更が要るので、当日から直せる説明書の改善を先に置いています。割合は、商品ごとに読む件数をそろえておくと、次に読み直したときに増えたか減ったかを比べる物差しになります。
切り口に変える
分類ができたら、切り口の形にします。次のテンプレートに当てはめます。
競合の商品では【不満】と言われている。自社は【対応】することで、【誰】の【状況】で選ばれる。
例を挙げます。
競合の収納ボックスは「フタが固くて開けにくい」と繰り返し言われている。自社は開閉部の構造を変えることで、力の弱い方や高齢の方が日常的に開け閉めする場面で選ばれる。
この形にすると、そのまま次の3つに展開できます。
- 商品仕様:何を変えるか
- ページの訴求:箇条書きとA+に何を書くか
- キーワード:どの語で拾うか(この例なら「開けやすい」「軽い力」など)
ページのどこに落とし込むか
ページで解決できる不満(B)は、置き場所を決めてから文章や画像にします。
| 不満の型 | 置き場所 | 書き方・見せ方 |
|---|---|---|
| 大きさ・量の思い違い | サブ画像、箇条書きの1〜2行目 | 手や身近な物と並べた写真に、寸法の数字を入れる |
| 使い方が分からない | サブ画像、A+ | 3〜4段階の手順を1枚にまとめる |
| 手入れ・においの不安 | 箇条書き、Q&A | 使う前の手入れと洗い方を短く書く |
| 対応機種・サイズの不安 | 商品名、箇条書き、仕様欄 | 対応する範囲を数字と型番で書く |
書くのは自社商品で事実として言えることだけです。競合の不満に合わせて、実際には変えていない点を「改善しました」と書くと、届いた商品との差が低評価と返品になって返ってきます。箇条書きの行ごとの役割は箇条書き5行の設計、A+の構成はA+に何を載せるか、Q&Aの書き方は商品ページのQ&Aへの答え方にまとめています。
やってはいけないこと
他社名を出して比較する。 ページ上で「〇〇社より優れている」と書くのは規約違反です。切り口は自社の言葉で表現します。
競合のレビュー文をそのまま使う。 表現を借りるのではなく、そこから読み取った「お客様が困っていること」を自分の言葉で書きます。
不満を1件だけ見て動く。 3件以上の繰り返しを条件にします。
箱1(褒められている点)を差別化に使う。 それは全員ができていることです。そこを訴求しても差になりません。
失敗例
分析をしたのに成果につながらない例を2つ挙げます。
- 星1だけを読んで対策した。 「すぐ壊れた」という強い言葉に引っ張られて素材の変更に費用をかけたが、星3で繰り返し出ていたのは「思ったより小さい」だった。件数を数えていれば、ページの写真1枚で先に手を打てました
- 見出しをそろえずに記録した。 「小さい」「サイズ感が違う」「想像より小ぶり」を別々に数えたため、どれも3件未満に見えて見送った。まとめれば最多の不満でした。記録するときに見出しを自分の言葉でそろえるのはこのためです
定期的に読み直す
競合レビューの分析は、一度やって終わりではありません。
- 競合が商品を改良すると、不満の内容が変わります
- 新しい競合が入ってくると、参入条件が上がります
- 自社商品のレビューが増えると、自社の弱点も見えてきます
四半期に一度、上位商品の最新レビューを読み直すことをおすすめします。前回の分析と比べて、不満の内容が変わっていれば、市場が動いています。
同じ作業を自社商品に対しても行ってください。自社の星3レビューは、次の改善点そのものです。自社レビューの集め方と低評価への対応はレビューを増やす方法と低評価への対応にまとめています。
作業量と、やめどきの目安
やり始めると際限がなくなるので、時間の枠を決めておきます。
1商品あたり最新50件を読むのに、おおよそ30分。上位5商品なら2時間半、10商品なら5時間です。半日で終わらせるなら5商品に絞ります。
打ち切りの目安は、新しい不満が出なくなったときです。仮に3商品目まで読んで、出てくる不満が「フタが固い」「においが気になる」の2種類に収束しているなら、4商品目以降を読んでも切り口は増えません。件数をこなすことが目的ではないので、そこで止めて実装に移ります。
逆に、5商品読んでも不満がばらけて共通項が出てこない場合は、狙う検索語の選び方がずれている可能性があります。同じ語で上位に出ている商品なのに買っている人の目的がばらばらなら、そもそも競合として見るべき集団が違います。この場合は語を絞り直してから読み直してください。
よくある質問
レビューの少ない新しいカテゴリーではどうしますか。 上位商品のレビューが各10件程度しかないなら、隣接するカテゴリーの類似商品まで対象を広げます。それでも足りない場合は、Q&Aの質問と、返品理由の傾向を材料にします。件数が少ない市場では、先にページで疑問に答えた側が有利になります。
サクラのようなレビューが混ざっている場合は。 内容が具体的でないもの、同じ言い回しが並ぶものは切り口の材料になりません。判断は表現の具体性で行い、使えるのは状況が書かれているレビューだけと決めてください。真偽の判定に時間をかけるより、具体的なものだけを拾うほうが早く進みます。
分析した切り口は、どこから実装しますか。 ページで解決できるものから着手します。画像と文章だけで直せて、当日から反映できるためです。商品の作りを変えるものは次のロットに回します。実装の順番は商品ページの点検リストの優先順位に沿うと迷いません。
自社商品のレビューも同じ手順で分析できますか。 できます。自社商品は件数が少ないことが多いので、最新50件に絞らず全件を読み、同じ4つの箱に分けてください。自社の星3と星2に出る不満は、競合との比較より先に直すべき点です。返品の理由の傾向も一緒に並べると、ページで防げる思い違いなのか、商品の作りの問題なのかを切り分けやすくなります。
まとめ
- 上位5〜10商品の、最新50件程度を読む。星3が最も情報量が多い
- 褒められている点(参入条件)/不満(差別化候補)/使い方の発見/言葉遣い の4つに分類する
- 不満をさらに「商品で解決」「ページで解決」「解決できない」に分ける
- ページで解決できる不満が最も費用対効果が高い
- 3件以上繰り返されているものだけを切り口にし、ページで直せるもの(B)から先に着手する
- 「競合は【不満】と言われている → 自社は【対応】 → 【誰】の【状況】で選ばれる」の形にする
- 他社名を出した比較はしない
- 四半期に一度読み直す
差別化は発想ではなく作業です。手を動かせば、たいてい何かしら出てきます。見つけた切り口を自社のページのどこに反映すべきか迷う場合は、無料の運用診断で商品ページ・広告・在庫のどこが弱いかを先に整理できます。
