中国の卸サイトで仕入れを検討するとき、表示されている単価だけを見て採算を判断してはいけません。実際に販売できる状態になるまでに、いくつも費用が乗ります。
この記事では、1個あたりの着地原価を出す手順と、見落としやすい費目を書きます。
着地原価とは
着地原価 = 商品が日本のFBA倉庫で販売可能になるまでにかかった、1個あたりの総額です。
商品代だけではありません。輸送も、通関も、検品も、ラベル貼りも、全部含めた金額です。ここを出さないと、粗利の計算が始まりません。
費目を全部並べる
500個仕入れる想定で並べます。金額は例です。
| 費目 | 総額 | 1個あたり |
|---|---|---|
| 商品代(表示単価 × 数量) | 400,000円 | 800円 |
| 中国国内の送料(工場→代行業者) | 8,000円 | 16円 |
| 代行業者の手数料 | 20,000円 | 40円 |
| 検品費 | 15,000円 | 30円 |
| 国際送料 | 90,000円 | 180円 |
| 関税・消費税 | 50,000円 | 100円 |
| 通関手数料 | 12,000円 | 24円 |
| 国内送料(通関→倉庫) | 10,000円 | 20円 |
| ラベル貼り・梱包 | 15,000円 | 30円 |
| 不良・不足の見込み(3%) | 12,000円 | 24円 |
| 合計 | 632,000円 | 1,264円 |
表示単価は800円ですが、着地原価は1,264円です。1.5倍以上になっています。この差を見ずに「800円で仕入れて3,000円で売れる」と考えると、計算が大きく狂います。
金額は商品・数量・輸送方法・時期で大きく変わります。まず自分の見積もりで計算してください。 原価をひとつの数字で持たずに費目ごとに分けて並べる考え方は、原価の内訳を分解する手順で詳しく書いています。
見落としやすい費目
上の表の中でも、特に忘れられやすいものを挙げます。
関税・消費税
品目によって税率が違います。輸入時に消費税もかかります。事前に品目分類(HSコード)を確認して、税率を調べておきます。ここを0円で計算している見積もりをよく見ます。
不良・不足の見込み
初回の取引では、不良品が混ざることを前提にします。全数検品をしていても、日本の基準では通らない品質のものが出ます。最初から数%を費用として乗せておくほうが、あとで慌てません。
数量不足も起こります。500個注文して490個しか入っていない、というケースです。検品時に数を確認してください。
国際送料の変動
見積もり時と実際の出荷時で、送料が変わることがあります。特に船便は時期による変動が大きい。また、容積重量(サイズから計算する重量)で課金されることがあり、軽くてかさばる商品は実重量より高くなります。
為替
支払いのタイミングで為替が動きます。発注から支払いまで日数がある場合、その分の変動を見込んでおきます。
サンプル代と初回の試験費用
量産前のサンプル代、必要な検査の費用。初回は少量なので1個あたりに換算すると高くつきますが、これも原価の一部です。
実際に起きる崩れ方
費目の抜けは、単体では小さく見えます。問題は重なったときです。仮に、表示単価800円の商品で次の3つが同時に起きたとします。
| 抜けていた項目 | 想定 | 実際 | 1個あたりの差(500個の場合) |
|---|---|---|---|
| 関税・消費税を0円で計算 | 0円 | 50,000円 | +100円 |
| 国際送料が容積重量で課金 | 90,000円 | 126,000円 | +72円 |
| 不良・不足を見込まず | 0円 | 20個分(25,280円) | +51円 |
この3つだけで1個あたり223円増えます。売価3,000円で粗利率27%を見込んでいた計算は、広告費を引いた後の粗利がほぼ消える水準まで落ちます。ひとつひとつは「まあ誤差だろう」と流せる額なので、費目を並べた表の上で潰しておくしかありません。
もうひとつよくあるのが、輸送方法を船便で見積もっておきながら、在庫が間に合わずに一部を航空便へ切り替える形です。切り替えた分だけ国際送料が跳ね上がるのに、原価の表は最初の見積もりのままになっている。輸送方法を変えたら、その回の着地原価は計算し直してください。
数量で1個あたりが変わる
上の表を見ると分かるとおり、固定費に近い費目があります。代行手数料、通関手数料、検品の基本料などです。
これらは数量を増やせば1個あたりが下がります。500個で40円だった手数料も、1,000個なら20円です。仮に、代行手数料20,000円・検品の基本料15,000円・通関手数料12,000円の合計47,000円が数量にかかわらず一定だとすると、1個あたりの負担は次のように動きます。
| 発注数量 | 固定に近い費目の1個あたり | 売れ残った場合の在庫金額 |
|---|---|---|
| 300個 | 157円 | 約19万円 |
| 500個 | 94円 | 約32万円 |
| 1,000個 | 47円 | 約63万円 |
在庫金額は着地原価1,264円で計算した仮の値です。300個から1,000個に増やして下がるのは1個あたり110円ですが、売れ残ったときに寝る金額は3倍以上になります。下がる原価と、増えるリスクを同じ表で見比べてから数量を決めてください。
一方で、数量を増やすと在庫リスクと保管料が増えます。売れ残ったときの損失も大きくなります。
初回の判断としては、少なめに仕入れて着地原価を実測するほうが安全です。1個あたりの原価は高くなりますが、売れるかどうかが分かる前に大量の在庫を抱えるリスクを避けられます。実績が出てから数量を増やせば、そのときに原価が下がります。
着地原価から採算を確認する
着地原価が出たら、販売価格から引いていきます。
- 販売価格:3,000円
- 着地原価:1,264円
- 販売手数料(カテゴリーによる):450円
- FBA配送代行手数料(サイズ・重量による):434円
- FBA保管料(想定月数分):30円
- 広告費を除いた粗利:822円(粗利率27.4%)
ここから広告費を引きます。売上の15%を広告費に使うなら450円。最終的な粗利は372円(12.4%)です。
この数字を見て、この商品に取り組むかを判断します。手数料の率と金額はカテゴリー・サイズ・重量・時期によって変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の商品の実数で計算してください。上の金額もすべて説明用の仮の値です。
同じ計算を商品ごとに繰り返すなら、利益シミュレーターに費目を入れて出すほうが早く、抜けも起きにくくなります。粗利の出し方をもう少し細かく分けたい場合は、FBA手数料と粗利を1商品ずつ出す手順も合わせて読んでください。
判断の目安として、広告費を引いた後の粗利率が10%を下回るなら、その商品は値上げか原価の削減か、どちらかの見通しが立たない限り見送るほうが安全です。10%は説明用の目安なので、自社の販管費に合わせて数字を置き換えてください。
契約前に確認しておくこと
原価の話とは別に、取引の条件も先に決めておきます。
- 最低発注数量(MOQ):これ以上でないと受けない、という数量
- 納期:発注から出荷までの日数。繁忙期はどうなるか
- 不良時の対応:交換か返金か、送料はどちらが負担するか
- 知的財産:その商品が他社の権利を侵害していないか。ロゴやキャラクターが入っていないか
- PSEなどの規格:電気製品など、日本で販売するのに認証が必要な商品かどうか
最後の2つは、確認を怠ると販売できなくなる項目です。仕入れてから気づくと、在庫が丸ごと使えません。
よくある質問
見積もりの段階で関税がわからないときはどうしますか。 品目分類が確定していない段階では、代行業者や通関業者に想定される分類を2つ出してもらい、税率の高いほうで計算しておきます。安いほうで組むと、確定後に採算が崩れます。実際の税率は品目と時期で変わるため、輸入前に確認してください。
着地原価は何回計算し直せばよいですか。 初回の納品が終わって請求が全部そろった時点で1回、そのあとは発注のたびに見直します。国際送料と為替は動くので、前回の数字を使い回すとずれていきます。売価を据え置いたまま原価だけ上がっている状態に気づくのが遅れると、原価が上がっても値上げできない状況になります。
サンプル代や検査費用は1個あたりに乗せるべきですか。 初回発注の数量で割って乗せておくと、その商品が本当に採算に乗るかを厳しめに見られます。ただし2回目以降は発生しない費用なので、継続時の原価とは分けて管理してください。乗せたまま忘れると、値下げできる余地を自分で見えなくします。
不良の見込みは何%で置けばよいですか。 初回は実績がないので置くしかありません。国内で同種の商品を扱った経験があるならその数字を、なければ検品で弾かれた数を1回目に実測して、2回目からその実数に置き換えます。大事なのは率そのものより、実測に差し替える仕組みを持っているかです。初回の見込みを何年も使い続けているケースが一番ずれます。
まとめ
- 表示単価ではなく着地原価(販売可能になるまでの1個あたり総額)で判断する
- 費目は商品代・国内送料・代行手数料・検品・国際送料・関税・通関・国内配送・ラベル貼り・不良見込み
- 忘れやすいのは、関税と消費税、不良の見込み、容積重量、為替
- 固定費に近い費目があるので、数量が増えると1個あたりは下がる。ただし在庫リスクも増える
- 初回は少なめに仕入れて着地原価を実測する
- 契約前に、MOQ・納期・不良対応・知的財産・規格認証を確認する
原価を出す作業は地味ですが、ここが間違っていると、その後の判断が全部ずれます。表を作って、費目を全部埋めてから発注してください。
次にやることは、いま検討している商品の見積もりを開き、上の費目表の行をすべて埋めるところまでです。空欄が残る行は「まだ聞けていない条件」なので、そこを代行業者に確認するところから始めてください。埋め終わったら利益シミュレーターに入れて、広告費を引いた後の粗利を出します。売価をいくらに置くかで迷う場合は、販売価格の決め方を先に読んでください。
