季節商品は、通年商品と同じ在庫の考え方では回りません。需要が立ち上がる前に在庫がなければ売り逃し、需要が終わったあとに在庫が残れば保管料という、両側に失敗があります。

答えを先に書くと、季節商品の在庫計画は需要の立ち上がり日から、FBAの受領日数まで含めたリードタイムを引いて発注日を決め、値下げ開始日と撤収日まで先に日付で決めておくのが基本です。この記事では、季節商品を5つの日付で管理する方法を書きます。

Amazon季節商品の在庫計画は「立ち上がり日」から逆算する

多くの人が、需要のピークから逆算します。しかし実務では、需要が立ち上がり始める日を起点にします。ピークではありません。

理由は、ピーク時にはすでに順位が決まっているからです。ピークの1〜2か月前から売れ始め、その期間の販売数で順位が作られます。ピーク当日に在庫を潤沢に持っていても、順位が低ければ売れません。

立ち上がり日に、在庫と広告が両方そろっている必要があります。

立ち上がり日は、前年の販売データから割り出します。前年のデータがなければ、同じ用途の競合のレビューが増え始める時期から見当をつけます。

季節商品の在庫計画は5つの日付で決める

シーズンごとに、次の5つを紙に書きます。仮に、7月1日が立ち上がり日で、リードタイムが60日、シーズン終了が9月15日の商品だとすると、日付は次のように並びます。

日付決め方例その日にやること
立ち上がり日前年に売れ始めた日7月1日在庫と広告をそろえておく
発注日立ち上がり日 − リードタイム5月2日発注する
追加発注の締切日終了日 − リードタイム − 売り切る日数6月16日これ以降は追加しない
値下げ開始日終了日の3〜4週間前8月20日前後在庫を減らしにいく
撤収日シーズン終了日9月15日保管か処分かを決める

日数は説明用の仮の値です。自社のリードタイムの実績に置き換えてから使ってください。

1. 立ち上がり日。 需要が動き始める日。ここに在庫が販売可能な状態でそろっていることが前提です。

2. 発注日

立ち上がり日から、リードタイムを引いた日です。リードタイムには次を全部含めます。

  • 仕入先での生産・出荷までの日数
  • 輸送日数(船便か航空便かで大きく変わる)
  • 通関
  • 国内での検品・ラベル貼り
  • FBA納品から受領・販売可能になるまでの日数

最後の項目を忘れる例が多いです。FBAの受領は繁忙期に遅れます。季節商品のシーズンは、たいてい他社も納品が集中する時期です。余裕を持って計算してください。納品で止まりやすい箇所はFBA納品の手順とつまずくところにまとめています。

よくある失敗は、生産と輸送だけで日数を置くことです。仮に生産40日・輸送15日で「55日前に発注すれば間に合う」と考えても、通関から受領までに2週間かかれば、立ち上がり日に在庫は動かせません。前回の納品で「倉庫に到着してから販売可能になるまで何日かかったか」を控えておき、その実績を足してください。

3. 追加発注の締切日

シーズン中に売れ行きが良くても、これ以降は追加発注しない、と決める日です。追加分が届いたときにはシーズンが終わっている、という事態を防ぎます。届いてから売り切るのに最低1か月かかるなら、リードタイムに加えてその1か月も終了日から引きます。

4. 価格を下げ始める日

シーズンの終盤で、在庫を減らしにいく日です。シーズンが完全に終わってから値下げしても、需要そのものがないので売れません。まだ需要が残っているうちに下げ始めるのが肝心です。

5. 撤収日

在庫を残さない期限です。売り切れなければ、保管か処分かをこの日に決めます。

初回の発注数は「売り切れる量」から決める

日付が決まったら、次は数量です。季節商品は追加発注の機会が1回あるかないかなので、初回の数量で結果の大半が決まります。

前年の実績があるなら、前年の販売総数を起点にします。 そこに今年の見込みの伸びを掛け、締切日までに届く追加分を差し引いた量が初回の数量です。仮に前年1,000個・今年の見込み1,200個・追加で間に合う分が200個なら、初回は1,000個になります。

項目例考え方
前年の販売総数1,000個在庫切れの日があったなら、その日数ぶんを足して補正する
今年の見込み1,200個伸び率は広告や価格の変更がある場合だけ上げる
追加発注で間に合う数200個締切日までの販売ペースを見てから決める分
初回の発注数1,000個見込み − 追加分

前年の実績がない新商品は、売り切れる側に倒します。 同じ用途の競合の販売数から見当をつけ、その半分から7割程度を初回の上限にするのが目安です。足りなくなって売り逃す損より、残って保管料と値下げが続く損のほうが、季節商品では大きくなりやすいからです。

数量を決めたら、保管料と資金の面からも確かめます。仮に1個あたりの着地原価が800円で初回1,000個なら、仕入れ代金は80万円です。この金額がシーズン終了まで回収できなかった場合に、事業の資金繰りが回るかを先に見てください。数量の計算は発注量シミュレーター、1個あたりの利益は利益シミュレーターで出せます。数字はすべて説明用の仮の値です。

シーズン中の在庫の見方

シーズンが始まったら、残り日数と在庫数の比を見ます。

在庫が持つ日数 = 現在の在庫数 ÷ 直近7日間の1日あたり販売数

これがシーズン残り日数より短ければ、売り切れます。追加発注の締切日を過ぎているなら、広告を絞って在庫を延ばすという判断もあります。在庫切れは順位を落とします。

逆に、在庫が持つ日数がシーズン残り日数を大きく上回っているなら、売れ残ります。この場合は早めに動きます。

仮に、シーズン残り30日の時点で在庫が600個、直近7日間の販売が105個(1日15個)だとします。在庫が持つ日数は600÷15=40日で、残り日数より10日長い。このペースのままなら10日分、約150個が残る見込みです。値下げ開始日を待たずに、次の節の手順を1つ目から打ち始める段階です。数字は説明用の仮の値です。

在庫が持つ日数と残り日数の差で、打つ手を次のように決めておくと迷いません。

在庫が持つ日数 ÷ シーズン残り日数状態打つ手
0.8未満売り切れが早い締切日前なら追加発注、過ぎていれば広告を絞る・値下げをやめる
0.8〜1.1ほぼ計画どおりそのまま。週1回同じ計算をする
1.1〜1.5残りそう広告を強める・クーポンで反応を見る
1.5以上大きく残るセット販売・値下げまで前倒しで検討する

区切りの数字は目安です。保管料が高いサイズの商品や、翌シーズンに持ち越せない商品は、区切りを低めに置きます。発注点の考え方そのものは在庫切れを防ぐ発注基準、数量の計算は発注量シミュレーターが使えます。

売れ残りそうなときの手順

シーズン中盤で「これは残る」と分かったら、順に打ちます。シーズンが終わってからでは手が少なくなります。

1. 広告を強める。 粗利が薄くなっても、在庫を現金に変えるほうが優先です。残った在庫は保管料がかかり続けます。

2. クーポンをつける。 定価は動かさず、期間限定の割引で反応を見ます。

3. セット販売にする。 単品で売れないものを、他の商品と組み合わせて別ページで出します。

4. 価格を下げる。 ここまで来たら下げます。ただし下げ幅は、在庫を抱え続けた場合の費用を1個あたりに割った額と比べて決めます。「いくらまでなら下げても、持ち続けるより得か」を先に出しておく、という考え方です。その金額の出し方は次の5にあります。

5. 返送または所有権の放棄を検討する。 翌シーズンまで保管する場合、保管料が積み上がります。特に長期保管に対する追加の手数料が発生する時期をまたぐと、負担が大きくなります。保管し続けるコストと、処分するコストを比べて判断します。比べ方は撤退の判断基準、保管料そのものを下げる手は在庫保管料を削減する手順にまとめています。

翌シーズンまで持ち越す判断をする場合は、持ち越す費用を先に出します。仮に残り150個・1個あたり月額20円の保管料で9か月持ち越すと、150×20×9=27,000円、1個あたり180円です。つまり1個180円の値引きで今シーズン中に売り切れるなら、保管料の面では持ち越すより有利、という比べ方になります。加えて、その間は仕入れ代金が寝たままになり、翌シーズンに同じ価格で売れるとは限りません。「来年売れるから」と言う前に、その金額を書き出してください。 金額は説明用の仮の値で、保管料や長期保管に対する追加の手数料はサイズ・時期・保管期間で変わります。自社の実数とセラーセントラルの最新の案内で確かめてください。

翌シーズンのために記録すること

シーズンが終わったら、次の5つを1枚に書き出します。翌年の計画は、この記録がそのまま材料になります。

記録する項目どこで見るか翌年の使いみち
実際の立ち上がり日日別の販売数が分かるレポート5つの日付すべての起点
ピークの時期と1日あたり販売数同上在庫の山をどこに置くか
シーズンの販売総数同上をシーズン期間で合計今年の見込み数の土台
残った在庫数と処分結果在庫のレポートと処分の記録初回発注数の上限を下げるか判断
リードタイムの実績発注日と販売可能になった日の差発注日を何日前倒しするか

特にリードタイムの実績は重要です。「30日で来るはず」が実際には45日かかっていたなら、翌年の発注日は15日前倒しになります。立ち上がり日のずれも同じ扱いです。記録がないと、翌年も同じ幅でずれます。

よくある質問

前年のデータがない新商品は、どう立ち上がり日を決めますか。 同じ用途の競合を数点選び、レビューの投稿日が増え始める時期を見ます。レビューは購入から少し遅れて付くので、そこから2〜4週間さかのぼった時期が立ち上がりの目安になります。初年度は在庫を絞り、実績を取ることを優先してください。

追加発注の締切日を過ぎてから、想定以上に売れたらどうしますか。 広告の予算を絞る、値下げをやめる、まとめ買いの設定を外す、といった手で1日あたりの販売数を落とし、在庫を延ばす側に寄せます。期間の後半を単価の高い状態で走りきるほうが、利益は残ります。

値下げは何%から始めればよいですか。 率より、下げる回数と時期を先に決めるほうが大事です。終了の3〜4週間前に一段、2週間前にもう一段、という形にして、それぞれの下げ幅は残り在庫と残り日数から逆算します。シーズンが終わってからの値下げは、需要そのものがないため効きません。

季節商品の在庫は、いつから準備を始めればいいですか。 発注日は、立ち上がり日からリードタイムを引いた日です。ただしその前に、数量を決めて仕入先と条件を詰める時間が要ります。発注日のさらに1か月ほど手前から、計画づくりを始めるのが目安です。

季節商品の広告は、いつから回し始めればよいですか。 在庫がFBAで販売可能になった時点から、立ち上がり日の2〜4週間前を目安に、少額でも動かしておきます。広告は配信を始めてすぐ狙いどおりの形にはならず、キーワードごとの反応を見て絞り込む時間が要るためです。シーズン終盤に在庫を残す見込みが立ったら、今度は広告の強弱で販売ペースを調整します。

シーズン中の在庫計画は、どのくらいの頻度で見直せばいいですか。 立ち上がりからピークまでは週1回、終盤の値下げ開始日以降は動きが速くなるので週2回を目安に「在庫が持つ日数 ÷ シーズン残り日数」を計算します。毎回の数字を残しておくと、翌シーズンの材料にもなります。

まとめ

  • 起点はピークではなく立ち上がり日。ここに在庫と広告がそろっている必要がある
  • 5つの日付を決める:立ち上がり日 / 発注日 / 追加発注の締切日 / 値下げ開始日 / 撤収日
  • リードタイムにはFBA受領の日数まで含める。繁忙期は遅れる
  • シーズン中は「在庫が持つ日数 ÷ シーズン残り日数」で判断する
  • 売れ残りそうなら、シーズン中に動く。広告 → クーポン → セット → 値下げ → 処分の順
  • 保管し続けるコストと処分コストを比べて決める
  • 翌年のために、立ち上がり日とリードタイムの実績を記録する

季節商品は、判断を先送りするほど選択肢が減ります。日付を先に決めて、その日が来たら機械的に動いてください。自社の在庫と広告のどこから手を入れるか迷う場合は、Amazon運用の課題を絞り込む無料診断で現状を整理してから計画に入ると、決める順番がはっきりします。