売れない商品を持ち続けるコストは、思っているより大きいものです。保管料がかかり、資金が寝て、管理の手間が取られ、担当者の意識も分散します。
それでも撤退の判断は遅れます。仕入れたときの金額が頭にあるからです。この記事では、感情を挟まずに決めるための基準を書きます。
まず、埋没費用を切り離す
判断の前提として、ひとつだけ整理しておきます。
すでに払った仕入代金は、判断材料になりません。 100万円で仕入れた在庫も、10万円で仕入れた在庫も、これから持ち続けるかどうかの判断には関係ありません。関係するのは、これから発生する費用と、これから得られる金額の比較だけです。
「100万円かけたのだから、もう少し頑張る」は、判断を誤らせる典型です。頑張った結果さらに広告費が消えるなら、損失は増えます。
判断基準1:改善の打ち手が残っているか
まず、やることをやったかを確認します。次のうち、手をつけていないものがあれば、撤退の判断は早すぎます。
これらは在庫を追加せずにできる打ち手です。全部やって動かないなら、次の基準へ進みます。
判断基準2:転換率が構造的に低いか
ユニットセッション率(商品ページに来た人のうち何%が買ったか)を、同カテゴリーの競合と比べます。
セッションはあるのに転換率が明らかに低い場合、原因はページか価格か商品そのものです。ページと価格を直しても動かないなら、商品自体が求められていない可能性が高い。
逆に、転換率は悪くないがセッションが少ないだけなら、まだ打ち手があります。流入の問題は、広告とキーワードで動かせます。
転換率が低い商品は撤退寄り、セッションが少ない商品は改善寄り、という切り分けです。
判断基準3:これから発生する費用と回収見込み
数字で出します。
これから発生する費用
- 保管料(残り在庫 × 月額 × 売り切るまでの見込み月数)
- 長期保管に対する追加手数料(該当する時期をまたぐ場合)
- 広告費(売るために必要な分)
- 管理の手間(金額にしにくいが、無視しない)
これから得られる金額
- 残り在庫 × 現実的な販売価格 × 販売手数料等を引いた後の手取り
この2つを比べて、得られる金額のほうが小さければ、持ち続けるほど損失が増えます。
計算のとき、「現実的な販売価格」を希望的に置かないでください。直近3か月で実際に売れた価格を使います。
判断基準4:期間
上の3つが判断できないほど数字が少ない場合は、期間で切ります。
新商品なら90日。 立ち上げから3か月回して、広告費を引いた粗利がマイナスのまま、かつ改善の傾向が見えないなら見直します。
既存商品なら、直近6か月。 6か月間、月次の粗利がマイナスなら撤退候補です。
期間で切るのは乱暴に見えますが、期限を決めておかないと永久に判断しないので、実務では有効です。
撤退を決めたあとの手順
決めたら、損失を最小にする順で動きます。
1. 広告を止める。 撤退が決まった商品に広告費を使い続ける理由はありません。ただし在庫を売り切りたいなら、値下げと組み合わせて短期集中で使う判断はあり得ます。
2. 値下げして売り切る。 保管料と処分費を計算し、「この価格までなら下げても処分より得」というラインを出します。そのラインまでは下げて構いません。
3. セット販売・別チャネル。 単品で動かないものを、他商品とのセットにする。あるいは他のモールや実店舗など、Amazon以外での販売を検討します。
4. 返送。 在庫を手元に戻します。FBA保管料は止まりますが、返送手数料がかかります。手元で売る当てがある場合の選択です。
5. 所有権の放棄(廃棄)。 最後の手段です。手数料はかかりますが、保管料が永久に止まります。
在庫を寝かせたまま放置するのが、一番高くつく選択です。何もしないという判断だけは避けてください。
撤退の記録を残す
撤退した商品は、記録に残してください。次を書いておきます。
- 何を、いくつ、いくらで仕入れたか
- どこまで打ち手を試したか
- 最終的にどう処分し、いくら回収できたか
- 振り返って、どの段階で気づけたか
この記録が、次の商品選定の材料になります。同じ理由で失敗する商品を、仕入れる前に弾けるようになることが、撤退から得られる一番大きなものです。
まとめ
- すでに払った仕入代金は判断材料にしない。これからの費用と回収だけで決める
- 打ち手(画像・箇条書き・属性・キーワード・価格・除外)を全部試したか先に確認
- 転換率が低い=商品の問題で撤退寄り、セッションが少ない=流入の問題で改善寄り
- 「これから発生する費用」と「これから得られる金額」を並べて比べる
- 判断できないなら期間で切る。新商品90日、既存商品6か月
- 処分は、広告停止 → 値下げ → セット・別チャネル → 返送 → 廃棄 の順
- 放置が一番高くつく
- 撤退の記録を残して、次の仕入れ判断に使う
撤退は失敗ではなく、資金と時間を次に回す判断です。基準を先に決めておけば、迷う時間も減ります。
