売上は伸びているのに、通帳を見ると思ったほど増えていない。Amazonの出品者からよく受ける相談がこれです。
原因の多くは、売上から引かれるものを全部並べたことがないことにあります。感覚では「手数料は15%くらい」と思っていても、実際にはそこにFBAの配送代行手数料、保管料、返品、そして広告費が乗ります。合計すると販売価格の半分を超えていることも珍しくありません。
この記事では、FBA手数料を含めて1商品あたりの粗利を出す手順を書きます。費目ごとの数字をどこから拾うか、計算した粗利から値下げの下限をどう決めるかまでを順に扱います。手数料率やFBA料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるため、記事中の金額はすべて仮の値です。セラーセントラルの最新の案内と自社の実数に置き換えて読んでください。
引かれるものを全部並べる
まず、Amazonで1個売れたときに何が引かれるかを確認します。
1. 販売手数料(カテゴリー成約料)
カテゴリーごとに率が決まっています。率はカテゴリー・商品・時期で変わるため、この記事の数字はすべて説明用の仮の値です。自社の商品のカテゴリーの率を、セラーセントラルの最新の案内で先に確認してください。想定より率が高いときは、そもそもカテゴリーの登録がずれていることもあります。その場合は手数料の見直し方の順番で確認します。
2. FBA配送代行手数料
FBAを使っている場合にかかります。金額は商品のサイズと重量で決まります。ここが利益に与える影響は大きく、梱包を1cm小さくしてサイズ区分が1つ下がるだけで、1個あたり数十円変わることがあります。
小型・標準・大型の区分と、その中でのサイズ帯を確認してください。区分の境界ぎりぎりの商品は、梱包の見直しで改善できる可能性があります。
3. 在庫保管料
預けている在庫の容積と期間に応じてかかります。通常は大きな金額になりませんが、回転が悪い在庫と、10月〜12月は跳ね上がります。この時期の保管料は通常期の数倍になるため、季節性のない商品を年末に大量に預けるのは避けたいところです。
長期在庫保管手数料も別途あります。売れ残りは時間とともにコストになる、という前提で在庫を持ってください。保管料そのものを下げる動き方は在庫保管料を削減する手順にまとめています。
4. 返品・返金
カテゴリーによって返品率は大きく違います。アパレルやサイズのある商品は高く、消耗品は低い傾向です。返品された商品が再販できるとは限らないため、返品率×原価を1個あたりのコストに乗せて考えるのが安全です。
5. 広告費
「1個売るのに広告費がいくらかかっているか」を出します。
1個あたりの広告費 = 期間の広告費 ÷ 期間の総販売数
分母を「広告経由の販売数」ではなく総販売数にする点が重要です。実際に払っているお金を、実際に売れた数で割った金額が、その商品の実力だからです。
費目ごとの数字をどこから拾うか
費目が分かっても、数字を拾う場所が決まっていないと毎月の更新が続きません。最初に、費目ごとの拾い先と、1個あたりへの直し方を1枚にしておきます。
| 費目 | 拾う場所の例 | 1個あたりへの直し方 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| 販売手数料 | 注文ごとの取引明細、手数料の案内 | 販売価格×自社カテゴリーの率 | 価格帯で率が変わるカテゴリーがある |
| FBA配送代行手数料 | 取引明細、商品ごとのサイズ区分の表示 | 明細の1個あたりの金額をそのまま使う | 登録サイズと実寸がずれていることがある |
| 在庫保管料 | 月次の請求明細 | 月の保管料÷その月の販売数 | 10〜12月と長期保管分は別に見る |
| 返品・返金 | 返品レポート、返金の明細 | 返品率×原価(再販できない分) | 返品送料や再梱包の費用も乗る |
| 広告費 | 広告の請求額 | 期間の広告費÷期間の総販売数 | 広告経由の販売数で割らない |
| 原価 | 仕入れの請求書、送料・関税の明細 | 1回の仕入れ総額÷入荷数 | 為替と送料の変動で毎回変わる |
「1個あたりへの直し方」を決めておくのが、この表の一番の目的です。拾った数字の単位が「月額」「注文ごと」「率」とばらばらなままでは、足し引きができません。全部を1個あたりの円に揃えてから並べます。
計算で起きやすい失敗
数字を拾う段階で、次の失敗がよく起きます。
- 販売手数料を税込の販売価格ではなく、税抜で計算してしまい、手数料を少なく見積もる
- FBA配送代行手数料を、出品時に一度見ただけの金額で固定し、料金改定やサイズの再測定を反映しない
- 保管料を「通常は小さい」として0円で置き、年末に予想外の請求が来る
- 広告費をキャンペーン単位でしか見ておらず、商品ごとの金額が分からない
どれも、上の表の拾い先を毎月同じ場所から取ると決めておけば防げます。
実際に計算してみる
3,000円で売っている商品の例です。以下の金額はすべて、仮に販売手数料率を15%、FBA配送代行手数料を434円とした場合の計算例です。実際の率と料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、自社の明細の数字に置き換えてください。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 販売価格 | 3,000円 | |
| 商品原価 | 900円 | 仕入れ+国際送料+関税を含む着地原価 |
| 販売手数料 | 450円 | 15%想定 |
| FBA配送代行手数料 | 434円 | サイズ区分で確認 |
| 在庫保管料 | 30円 | 月額を回転数で割った概算 |
| 返品コスト | 45円 | 返品率5%×原価900円 |
| 広告費 | 400円 | 広告費÷総販売数 |
| 残る粗利 | 741円 | |
| 粗利率 | 24.7% |
この商品は1個売れて741円残ります。月に300個売れば約22万円です。ここから人件費や外注費、その他の固定費を引いたものが最終的な利益になります。
計算してみると、たいてい次のどれかが起きている
広告費が粗利を食い切っている
上の例で広告費が800円になると、粗利は341円まで落ちます。売れば売るほど忙しいだけで残らない状態です。この場合はACOSの目標値を見直すところから始めます。
FBA手数料がサイズ区分の境界を超えている
梱包が数ミリ大きいために1つ上のサイズ区分になっているケースは実際にあります。年間の販売数を掛けると無視できない金額になるので、境界付近の商品は一度実測してください。
原価に国際送料と関税が入っていない
中国から仕入れている場合、商品代だけを原価として計算しているケースがよくあります。着地原価(商品代+国際送料+関税+通関+国内配送)で見ないと、粗利は甘く出ます。着地原価の出し方は1688仕入れの着地原価に費目ごとの表を載せています。
返品コストを0で置いている
返品率を数字で持っていないと、この行が抜けます。返品率5%・原価900円なら1個あたり45円ですが、10%になれば90円です。粗利741円の商品では、この45円の差だけで粗利率が1.5ポイント動きます。返品された在庫がそのまま再販できるとは限らないので、再販できない分は原価をまるごと失うものとして見ておきます。
値下げの下限を決めておく
粗利が出せると、いくらまで下げてよいかが計算できるようになります。
先ほどの例で「1個あたり最低300円は残したい」と決めるなら、下げられるのは441円まで、つまり2,559円が下限です。
この線を決めておかないと、競合が下げるたびに追随して、気づいたら赤字で売っている状態になります。下げない判断ができるようになるのが、粗利を計算する一番の効用かもしれません。
下げ幅ごとに、同じ粗利総額を保つのに必要な販売数も出しておきます。先ほどの粗利741円の例では次のようになります。
| 下げ幅 | 残る粗利 | 同じ粗利総額に必要な販売数の倍率 |
|---|---|---|
| 100円 | 641円 | 約1.16倍 |
| 200円 | 541円 | 約1.37倍 |
| 300円 | 441円 | 約1.68倍 |
| 441円 | 300円 | 約2.47倍 |
300円下げるなら、販売数が約1.7倍にならないと元に戻りません。下げる前に、この倍率が現実的かどうかを見てください。 同じ計算は利益シミュレーターでも出せます。
月に一度は更新する
手数料の率もFBAの料金体系も変わります。仕入れ値も為替で動きます。広告費は毎月変わります。
一度作って終わりにせず、月次で数字を入れ替えるようにしてください。表を作るのは最初の1回だけで、あとは数字の更新だけです。
よくある質問
広告費は広告経由の販売数で割ってはいけませんか。 広告の費用対効果だけを見るなら広告経由で割ります。ただし商品の粗利を出すときは総販売数で割ります。実際に出ていったお金を、実際に売れた数で割った金額がその商品の実力だからです。2つの数字は目的が違うので、どちらか一方に統一しようとせず、使い分けてください。
保管料は1個あたりいくらで置けばよいですか。 月の保管料の請求額を、その月に売れた数で割るのが手早い方法です。回転が遅い商品ほど1個あたりが重くなり、実態に近づきます。金額はサイズ・時期・保管期間で変わるので、請求明細の実数を使ってください。
この表はどのくらいの頻度で更新しますか。 月に1回で十分です。手数料の改定、仕入れ値や為替の変動、広告費の増減で数字は動きます。表を作るのは最初の1回だけで、あとは数字の入れ替えです。更新をやめた表は、数か月で判断を誤らせる材料になります。
粗利率は何%あれば十分ですか。 一律の答えはありません。人件費・外注費・事務所代などの固定費をどれだけ抱えているかで、必要な粗利率は変わります。目安を持つなら、固定費の月額を、主力商品の月の販売数で割って1個あたりに直し、それを粗利から引いても残るかを見てください。粗利率の考え方は利益率の目安にまとめています。
FBAをやめて自社発送にすれば粗利は上がりますか。 配送代行手数料はなくなりますが、代わりに送料・梱包資材・発送にかかる人手の費用が乗ります。また、配送の速さが変わることで売れ行きに影響が出る場合もあります。同じ表に自社発送の費目を並べ、1個あたりで比べてから判断してください。比べ方はFBAとFBMの使い分けに書いています。
まとめ
- 売上から引かれるのは、販売手数料・FBA配送代行手数料・保管料・返品・広告費
- 費目ごとに拾う場所と1個あたりへの直し方を決め、単位を円に揃えてから並べる
- 広告費は「総販売数」で割って1個あたりに換算する
- 原価は着地原価(送料・関税込み)で見る
- 粗利が出れば、値下げの下限と、値下げ後に必要な販売数の倍率が決まる
- 手数料率や料金は変わるので、月次で数字を入れ替える
まずは主力の1商品だけで構いません。実際の数字を入れて計算してみてください。「思っていたより残っていない」か「意外と残っている」か、どちらにしても次の判断が変わります。計算は利益シミュレーターでも出せます。どの商品で利益が漏れているか分からない場合は、無料の運用診断で全体を整理できます。
