Amazonのブランド登録(Amazon Brand Registry)は、商標を持っている出品者が申請できる制度です。「相乗り対策のためのもの」と理解されていることが多いのですが、実際に増える機能はもっと広く、ページ・広告・分析の3方向にわたります。Amazon ブランド登録のメリットを売上につなげられるかどうかは、登録後に何から使い始めるかで決まります。
この記事では、何ができるようになるか、登録するかどうかの判断基準、申請前に用意するもの、つまずきやすい点を整理します。先に全体像を出しておきます。
| 方向 | 使えるようになるもの | 主に効くところ | 着手までの早さ |
|---|---|---|---|
| ページ | A+、ストアページ、A/Bテスト | 購入率 | 登録後すぐ着手できる |
| 広告 | スポンサーブランド、ディスプレイ、動画 | 認知とクリック | 素材がそろい次第 |
| 分析 | ブランド分析、検索クエリパフォーマンス | 検索語の選定精度 | データが貯まってから |
| 権利保護 | 違反の報告窓口、情報の優先反映 | 相乗り・書き換えへの対処 | 登録後すぐ |
「登録したのに何も変わらない」という声の多くは、権利保護だけを見て、ページと分析を使っていない状態です。登録は入口で、効果が出るのは使い始めてからです。
前提:商標が要る
ブランド登録には、登録済み、または出願中の商標が必要です。国によって受け付けられる商標の状態は異なり、条件も更新されます。最新の要件はAmazonの公式案内で確認してください。
日本で商標を取る場合、出願から登録まで時間がかかります。ブランドで長く売っていく方針なら、販売開始より前に出願しておくのが現実的です。後から慌てて取ると、その間ずっと保護のない状態で売ることになります。
登録するかどうかの判断基準
商標の取得には費用と時間がかかるため、すべての商品で急ぐ必要はありません。次の表で、自社がどこに当てはまるかを確かめてください。
| 状況 | 判断の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 自社ブランドで複数の商品を長く売る予定 | 早めに出願する | A+や分析の効果が商品数だけ積み上がる |
| 1商品だけだが、広告費をかけて育てる予定 | 出願を前向きに検討する | スポンサーブランド広告と分析が使えると広告の精度が上がる |
| 相乗りや商品情報の書き換えがすでに起きている | 優先して出願する | 報告窓口と情報の優先反映が使える |
| 仕入れた他社ブランド品を売るだけ | 対象外 | 商標の権利者でないと申請できない |
| 売れ行きを試す段階で、続けるか未定 | 販売の手応えを見てから判断 | 撤退した場合に商標の費用が回収できない |
迷う場合は、「1年後もこのブランド名で売っているか」を基準に考えると判断しやすくなります。続ける見込みが高いなら、出願は早いほど保護のない期間が短くなります。
ページ側でできるようになること
商品紹介コンテンツ(A+)
商品ページ下部に、画像とテキストを組み合わせた説明を置けます。購入率に効く機能で、これだけでもブランド登録の価値があります。何をどの順で載せるかはA+の構成の型にまとめています。
さらに上位の「プレミアムA+」は、動画や比較表などより表現の幅が広い形式です。利用条件があるので、対象になるかは管理画面で確認します。
ストアページ
自社ブランド専用のページを作れます。商品を一覧で並べたり、ブランドの世界観を出したりできます。広告のリンク先としても使えます。
A/Bテスト(管理された実験)
メイン画像やA+の内容を2パターン用意して、どちらが良いかを実際の数字で比べられます。「変えたけど効果があったか分からない」という状態を減らせます。利用条件があります。
広告側でできるようになること
スポンサーブランド広告
検索結果の上部に、ロゴ・見出し・複数商品を並べて出せる広告です。スポンサープロダクト広告より目立つ位置に出ます。
スポンサーディスプレイ広告
商品ページや、Amazon外のサイトにも配信できる広告です。過去に自社商品を見た人への再接触(リターゲティング)ができます。
動画広告
商品の使い方や質感を動かして見せられます。文字と静止画では伝わりにくい商品ほど効きます。
3種類の広告の違いと使い分けはAmazon広告3種類の違いにまとめています。広告の拡張機能は、遷移先の商品ページやストアページが整ってから使い始めるほうが、費用の無駄が出にくくなります。
分析でできるようになること
ここが見落とされがちですが、実務では効きます。
ブランド分析(Amazon Brand Analytics)
検索語ごとの上位商品、そのクリックシェア・購入シェアなどが見られます。自社の商品がどの語で何位相当にいるか、その語で実際に買われているのはどの商品かが分かります。無料で集められる範囲でキーワードを組み立てる手順はキーワードの集め方と優先順位の付け方にありますが、ブランド分析が使えると、その精度が大きく上がります。
購買行動のデータ
リピート購入率、新規顧客と既存顧客の比率などが見られます。「売上は伸びているが新規ばかり」なのか「リピートが積み上がっている」のかで、打つ手が変わります。
検索クエリパフォーマンス
検索語ごとに、表示・クリック・カート追加・購入がどう推移したかを見られます。どの段階で落ちているかが分かるので、直す場所が特定しやすくなります。見方の手順は検索クエリパフォーマンスの見方にまとめています。
分析をどう使うかの例
仮に、主力の検索語で自社商品のクリックシェアは高いのに、購入シェアが低いとします。この場合、検索結果では選ばれているのに、商品ページで買われずに離れていると考えられます。直すべきは広告の入札ではなく、メイン画像以外の画像や箇条書き、価格の見せ方です。逆に、クリックシェアそのものが低いなら、検索結果での見え方(メイン画像・商品名・星・価格)を先に見直します。
このように、分析の数字は「どこを直すか」を決めるために使います。数字を眺めるだけで終わらせないことが大切です。画面ごとの使い方はブランド分析の使い方で詳しく扱っています。
権利保護でできること
本来の目的である部分です。
違反の報告。商標や画像の無断使用、模倣品の出品を報告する窓口が使えます。一般の出品者より処理の優先度が上がります。
ページ情報の優先反映。商品名や画像を修正したときに、ブランド所有者の入力が優先されやすくなります。相乗り出品者に情報を書き換えられる被害を減らせます。すでに書き換えられている場合の戻し方は商品情報を書き換えられたときの対処にまとめました。
なお、ブランド登録をしても相乗り出品が完全にできなくなるわけではありません。正規に仕入れた商品を転売する行為そのものは止められないためです。ブランド登録は「対処しやすくなる」制度であって、「防げる」制度ではない、と理解しておいてください。
申請前に用意するもの
申請時に求められるものは変わることがありますが、おおむね次を揃えておくとスムーズです。
- 商標登録番号(または出願番号)
- 商標が表示されている商品または包装の画像
- ブランドの公式サイトのURL(ある場合)
- 販売している国と、販売チャネルの情報
商品や包装に商標が表示されている写真は、つまずきやすいポイントです。ラベルや刻印など、実物にブランド名が入っている状態の写真が必要になります。パソコンで作ったロゴ画像ではなく、実物の写真を用意してください。
準備から使い始めまでの流れは、おおよそ次の順です。
- 商標を出願する。 日本では出願から登録まで時間がかかります。販売開始が決まった時点で動き出します
- 実物の写真をそろえる。 商品本体とパッケージの両方に、ブランド名が読める形で写っているものを撮ります
- 申請して、認証コードのやり取りを済ませる。 申請後にコードの受け取りが求められることがあるので、受け取れる連絡先と住所を先に確認しておきます
- 登録が通ったら、まずA+から着手する。 素材が手元にあり、購入率に直結するためです
- 1か月ほどデータが貯まってから分析を見る。 初日に開いても、判断できるだけの行がありません
順番を逆にして、広告の拡張機能から手をつけると、遷移先のページが整っていないまま費用だけが出ていきます。ページ→分析→広告の順で使い始めるほうが、失敗が少なくなります。
申請でつまずきやすい点
申請が止まったり、登録後に使いこなせなかったりする原因は、ある程度決まっています。
| つまずき | 起きること | 先回りの方法 |
|---|---|---|
| 商標の表記と商品の表記が違う | 申請で確認が求められ、やり直しになる | ロゴの文字と商標の文字(大文字・小文字・カナ)をそろえる |
| 実物の写真ではなくロゴ画像を出した | 確認が通らない | 商品本体とパッケージにブランド名が入った写真を撮る |
| 認証コードを受け取れない | 申請が進まない | 受け取る連絡先と担当者を先に決めておく |
| 申請を外部に任せきりにした | 管理の権限が自社に残らない | 申請者と管理者の権限を自社で持つ |
| 登録後に何も使っていない | 費用だけかかって効果が出ない | 登録した月にA+を1商品分作る |
外注先に申請作業を手伝ってもらう場合も、ブランドの管理者の権限は自社で持つようにしてください。契約を終えたあとに権限が戻らず、困る例があります。外注先を選ぶときの確認点は運用代行の契約で確認することにまとめています。何から着手すべきか迷う場合は、Amazonコンサルで相談できる範囲も参考にしてください。
よくある質問
商標が出願中でもブランド登録できますか。 受け付けられる商標の状態は国や時期によって変わります。出願中で申請できる枠組みが用意されていることもありますが、条件は更新されるため、申請の直前に公式の案内で確認してください。出願していない段階では準備を進められません。
ブランド登録すれば相乗りは止まりますか。 止まりません。正規に仕入れた商品を転売する行為そのものを禁じる制度ではないためです。ブランド登録で変わるのは、違反を報告する窓口が使えることと、こちらの入力した商品情報が通りやすくなることです。「防ぐ」ではなく「対処が早くなる」と考えてください。
登録すると費用はかかりますか。 ブランド登録そのものの申請と、商標の取得は別の話です。商標の出願・登録には費用と期間がかかります。金額は区分の数や依頼先で変わるため、ここでは断定しません。販売計画と合わせて、商標の費用を先に見積もっておくことをおすすめします。商標の費用を含めて採算が合うかは、利益計算ツールで売価と原価から確かめられます。
登録が通ったら、最初の1か月で何をすればよいですか。 まず売上の大きい商品から順に、A+を作ります。次にストアページを作り、商品を一覧で見られるようにします。分析の画面はこの間にデータが貯まるので、1か月たったら主力の検索語でクリックシェアと購入シェアを確認し、直す場所を決めます。広告の拡張は、そのあとで十分です。
まとめ
- ブランド登録には商標が必要。販売開始より前に出願しておくのが現実的
- ページ側:A+、ストアページ、A/Bテストが使える
- 広告側:スポンサーブランド広告、ディスプレイ広告、動画広告が使える
- 分析:ブランド分析と検索クエリパフォーマンス。キーワード選定の精度が上がる
- 権利保護:報告窓口とページ情報の優先反映。ただし相乗りを完全に防げるわけではない
- 申請時は、実物に商標が入っている写真が要る。ブランドの管理者の権限は自社で持つ
- 登録後はページ→分析→広告の順で使い始める
ブランドで継続的に売るつもりなら、早い段階で取っておくほど得をする制度です。登録後に何から手を付けるか迷う場合は、無料の運用診断で現状のページと広告を見たうえで優先順位をお伝えします。
