「アクセスはあるのに売れない」という相談で、まず確認するのがカートボックス(ショッピングカートボックス)を取れているかです。ここが外れていると、商品ページに来ても「カートに入れる」ボタンが自社のものになりません。
しかもカートが外れると、スポンサープロダクト広告は表示されなくなります。広告費は止まりますが、売上も止まります。気づかずに放置している例が少なくありません。
まず、取れているかを確認する
確認の方法は2つあります。
1. 商品ページを見る
自社の商品ページを、ログアウトした状態か、シークレットウィンドウで開きます。「カートに入れる」の下に「販売元:〇〇」と出ます。ここが自社名でなければ取れていません。
「この商品について〇〇件の出品」と表示されていて、カート部分が他社になっている場合も同じです。
2. ビジネスレポートで見る
セラーセントラルのビジネスレポートに「カートボックス獲得率」という項目があります。ここが100%でなければ、時間帯によって外れています。
ページを1回見るだけでは分かりません。カートは時間帯や購入者の地域で入れ替わることがあるので、獲得率で見るほうが正確です。
原因を上から順に切り分ける
原因は大きく4つです。頻度の高い順に確認します。先に一覧で持っておくと、当てずっぽうに価格だけ下げる動きを避けられます。
| 順番 | 見るところ | 確認する場所 | 出やすい症状 |
|---|---|---|---|
| 1 | 価格(本体+送料) | 商品ページ・他チャネルの売価 | 獲得率が急に下がった |
| 2 | 在庫のステータス | 在庫管理画面 | 在庫数はあるのに0%が続く |
| 3 | 配送日数と地域設定 | 配送設定・出荷実績 | 地域や時間帯で入れ替わる |
| 4 | アカウント健全性 | アカウント健全性ページ | 全商品で同時に取れない |
全商品で一斉に取れなくなっているなら、価格ではなくアカウント側を先に見ます。 1商品だけなら価格か在庫の可能性が高くなります。この切り分けだけで、無駄な値下げをかなり減らせます。
1. 価格
最も多い原因です。カートは価格だけで決まるわけではありませんが、影響は大きい要素です。
見るのは販売価格+配送料の合計です。本体価格が安くても、送料込みで他社より高ければ不利になります。
もうひとつ見落とされるのが、参考価格との乖離です。他のモールや自社サイトで大幅に安く売っていると、Amazon側で「価格が高すぎる」と判断され、カートが外れることがあります。この場合、価格を下げる以外にも、他チャネルの価格を見直すという選択肢があります。
自動価格設定(価格自動調整)を使っている場合は、その設定が意図しない下限・上限になっていないかも確認してください。下限を粗利から逆算せずに置いていると、カートは取れても利益が残らない価格まで落ちます。下限の決め方は価格の決め方と位置取り、送料を含めた比較のしかたは送料込み価格の設計にまとめています。
2. 在庫
在庫が0になれば当然カートは取れません。ただし、在庫があるのに取れていない場合もあります。
- FBA在庫が「受領中」「調査中」のまま販売可能になっていない
- 出品が「非アクティブ」になっている
- 予約可能在庫と実在庫がずれている
在庫管理画面で、ステータスが「アクティブ」かつ「販売可能」の数量が入っているかを確認します。
3. 配送
自己配送(FBM)の場合、ここが効きます。
- お届け日数が長い(他社が翌日で自社が5日など)
- 配送設定でその地域に届けられない設定になっている
- 出荷遅延率が高い
FBAはこの点で有利です。同じ価格ならFBAのほうがカートを取りやすい傾向があります。自己配送でカートが取れないなら、配送日数の設定を見直すか、FBAへの切り替えを検討します。切り替えの判断はFBAとFBMの使い分けを参考にしてください。FBAの手数料はサイズや時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してから比べます。
4. アカウントの健全性指標
上の3つが問題なくても取れない場合、アカウント側を見ます。
- 出荷前キャンセル率
- 出荷遅延率
- 注文不良率(ODR)
これらが基準を超えていると、カートを取れなくなります。セラーセントラルの「アカウント健全性」ページで確認できます。基準値はAmazon側で更新されるので、画面に表示されている最新の基準で判断してください。
新規出品アカウントで販売実績がまだ少ない場合も、カートが取れないことがあります。この場合は実績を積む以外にありません。指標ごとの見方と、基準を超えたときの立て直し方はアカウントの健全性の見方にまとめています。
切り分けでよくある見落とし
原因の切り分けで、現場でよく見る見落としです。どれも「原因を1つ見つけて安心した」ことで起きています。
- 値下げしたのに獲得率が戻らない。実はFBA在庫が「調査中」で販売可能数が0だった、という例です。価格を動かす前に、在庫のステータスを先に見ておけば値下げの損失は出ませんでした
- 自社サイトのセールを忘れていた。自社サイトで期間限定の割引をした週だけ、Amazonのカートが外れていた例です。他チャネルの販促の予定は、Amazonの担当者にも共有しておきます
- 自己配送の休業日設定。連休前に配送の休業日を入れたまま戻し忘れ、お届け日数が延びてカートを失っていた例です。休業日の設定は、解除する日も一緒に予定に入れておきます
- 1回の表示だけで判断した。自分の画面では自社がカートを取っていたので問題ないと思っていたが、獲得率は60%台だった例です。表示の確認は補助で、判断は獲得率で行います
症状から原因の当たりをつける早見表です。
| 症状 | 先に疑う原因 | 確認すること |
|---|---|---|
| ある日から急に0%になった | 在庫のステータス、出品の停止 | 在庫管理画面で「販売可能」の数量と出品の状態 |
| 獲得率が50〜90%で上下する | 価格の競り合い、配送日数 | 相乗りの有無と、相手の送料込み価格・お届け日 |
| 全商品で同時に下がった | アカウントの健全性指標 | アカウント健全性ページの各指標と通知 |
| 特定の時期だけ下がる | 他チャネルのセール、休業日設定 | 自社サイト・他モールの販促予定と配送設定 |
相乗り出品されている場合
自社が作った商品ページに他社が相乗りしていて、価格を下げられてカートを取られている、というケースがあります。
対処の順番は次のとおりです。
1. まず自社の権利を確認する。 ブランド登録をしているか。していないなら、これが最優先の対策になります。ブランド登録があると、権利侵害の申告や、相乗り対策の機能が使えるようになります。登録の手順と利点はブランド登録のメリットにまとめています。
2. 値下げ合戦に安易に乗らない。 下げれば一時的に取れますが、粗利が消えます。相手が在庫を売り切ればいなくなる場合もあるので、期間と損失額を見て判断します。
3. セット販売や型番の見直し。 同じASINで戦い続けるのではなく、セット構成を変えて別のページを立てるという選択もあります。
見つけたときの動き方
カートが外れていることに気づいたら、まず広告を止めるかどうかを判断してください。
カートが外れている間、スポンサープロダクト広告は表示されないので広告費は発生しませんが、スポンサーブランド広告など一部は動く場合があります。無駄打ちを避けるため、長引きそうなら止めます。
そして原因が解消したら、カート獲得率が戻ってから広告を再開します。取れていない状態で広告を強めても効果がありません。
値下げで取り返す前に、いくら落とすことになるかを見ておきます。売価3,000円・粗利600円の商品で50円下げると、粗利は550円になり、同じ粗利総額を保つには販売数を約9%増やす必要があります。100円下げるなら約20%です。取り返すのに必要な販売数を出してから、下げ幅を決めてください。 数字は説明用の仮の値なので、利益シミュレーターに自社の実数を入れて確かめてください。
仮に売価3,000円・粗利600円・月100個売れている商品だとすると、下げ幅ごとの必要販売数は次のようになります。
| 値下げ幅(仮定) | 1個の粗利 | 月の粗利6万円を保つ販売数 | 必要な増加 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 600円 | 100個 | — |
| 50円 | 550円 | 約110個 | 約9% |
| 100円 | 500円 | 120個 | 20% |
| 150円 | 450円 | 約134個 | 約33% |
下げ幅が粗利の4分の1(150円)に届くと、3割以上多く売らないと元の粗利に戻りません。カートを取り戻すだけで販売数が3割も増えることは考えにくいので、この水準の値下げは、相手が売り切るまでの短い期間に限ると決めてから行います。
よくある質問
カート獲得率は何%を目安に見ればよいですか。 相乗りがいない自社専用のページなら、100%に近い状態が普通です。90%台が続くなら時間帯や地域で入れ替わっているので、配送設定と在庫のステータスを見ます。相乗りがいる場合は、まず自社の獲得率が下がった日と、価格や在庫を動かした日が一致していないかを並べて確認してください。
カートが外れている間に広告を止めると、順位は落ちますか。 販売数が減れば順位に影響します。ただしカートが外れた状態では広告からの購入が自社に入らないので、止めずに放置しても同じことが起きます。原因の解消を優先し、獲得率が戻ってから広告を戻すほうが、費用の無駄が少なくなります。
相乗り出品者に価格を合わせ続けるべきですか。 合わせ続けると下限まで一緒に落ちます。相手の在庫が数十個なら売り切れるのを待つ、というのも選択肢です。待つ場合は「何日まで待つか」「その間にいくら失うか」を先に決めておきます。決めずに待つと、判断が延々と先送りになります。
自社しか出品していないのにカートが表示されないのはなぜですか。 相乗りがいなくてもカートが出ない場合は、価格が他チャネルや過去の売価に比べて高すぎると判断されているか、在庫や出品の状態に問題があることが多いです。まず在庫管理画面で販売可能数と出品の状態を確認し、次に他モールや自社サイトの売価と比べてください。直近で値上げをした場合も、カートが外れることがあります。
まとめ
- 「アクセスはあるのに売れない」ときは、まずカート獲得率を見る
- 確認はシークレットウィンドウでの表示と、ビジネスレポートの獲得率の2つ
- 原因は上から価格 → 在庫 → 配送 → アカウント指標の順に切り分ける
- 価格は「本体+送料」と「他チャネルとの乖離」の両方を見る
- 相乗り対策の第一歩はブランド登録。値下げ合戦は期間と損失額で判断する
- 外れている間は広告を止め、戻ってから再開する
カートは、商品ページの改善や広告の調整より前にある土台です。ここが外れていると、他の施策はすべて効きません。原因の見当がつかない場合は、無料の運用診断で価格・在庫・広告のどこが弱いかを整理してから手を打ってください。
