「月商は増えているのに、通帳の残高が増えない」。Amazonの販売者から一番よく聞く悩みがこれです。結論から言うと、原因は感覚では分かりません。売上から何がいくら引かれているかを商品ごとに並べて、5つの観点で1つずつ切り分ける必要があります。

この記事では、その切り分けの手順を順番に書きます。特別なツールは要りません。セラーセントラルのレポートと表計算ソフトで足ります。

まず「1個売れたら、いくら残るか」を出す

原因の特定は、商品1個あたりの残る利益を出すところから始まります。全体の売上と全体の費用を眺めても、どの商品が足を引っ張っているかは見えません。

1個あたりで引くものは、少なくとも次の項目です。

  • 仕入れ原価(輸入なら送料・関税を含めた着地原価)
  • Amazonの販売手数料(カテゴリーで率が違う)
  • FBA配送代行手数料(サイズと重量で決まる)
  • 在庫保管料(月ごと、繁忙期は上がる)
  • 広告費(その商品の広告費 ÷ 販売個数)
  • 返品・廃棄にかかる費用

これを商品ごとに1行ずつ並べた表を作ります。この表を作った時点で、赤字の商品が見つかることがよくあります。手数料率やFBA料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。並べ方の具体例はFBA手数料と粗利を1商品ずつ出す手順に載せています。

仮の数字で1行作ってみる

表の形をつかむため、仮の数字で1商品分を作ります。手数料や保管料の数字は説明用の仮定で、実際の料金を示すものではありません。

項目仮の金額(1個あたり)置いた仮定
売価3,000円―
仕入れ原価900円送料・関税込みの着地原価
販売手数料300円仮に売価の10%とする
FBA配送代行手数料450円仮のサイズ区分の料金
在庫保管料30円月の保管料を月の販売数で割った値
広告費450円月の広告費を月の販売数で割った値
返品・廃棄60円仮に返品率3%、1件あたりの損失を2,000円とする
残る利益810円(売価の27%)―

この1行ができると、「何が一番大きく削っているか」がすぐ分かります。この例では、原価を除くと広告費とFBA配送代行手数料が同じ450円で並んでいます。

ここで10%引きのクーポンを出すと、売価は2,700円、販売手数料は270円になり、ほかが同じなら残る利益は540円です。売価を10%下げただけで、残る利益は3分の1減ります。値引きの影響が売価の下げ幅よりずっと大きく出るのは、原価や手数料が売価ほどは下がらないためです。自社の数字で同じ計算をするなら、利益シミュレーターに売価・原価・手数料率を入れると出せます。

表を作るときによくある間違い

  • 広告費を全体費用に置いたままにする:商品ごとに割り振らないと、広告に頼って売れている商品が黒字に見える
  • 保管料を年に一度だけ見る:繁忙期の保管料や長期在庫の追加料金が反映されず、特定の月に赤字が出ていることに気づかない
  • 原価を仕入れ値だけで出す:国際送料・関税・検品の費用が抜けていると、1個あたり数十〜数百円ずれる
  • 返品をゼロと置く:返品率が低くても、販売不可になった在庫の損失は積み上がる

どれも「表を作ったのに赤字の商品が見つからない」原因になります。赤字の商品を見分ける手順はSKU別の利益表で赤字商品を見分けるに詳しく書いています。

原因を5つに分けて切り分ける

表ができたら、削られている場所を5つの観点で見ていきます。先に一覧で持っておくと、どこを見るかで迷いません。

原因出やすい症状見る場所効き始めるまで
手数料の見落とし想定より引かれている取引レポート・サイズ区分次のロットから
広告費の膨張売上と一緒に費用が伸びるTACOSの推移当日から
値下げのしすぎ販売数は多いのに残らない値引きの履歴次のセールから
在庫コスト保管料と処分が積み上がる保管料の請求・在庫月数次の発注から
返品販売不可在庫が増える返品理由レポート次のロットから

原因1:手数料の見落とし

最初に疑うのは、手数料を売価の何%と思い込んでいるケースです。

  • 販売手数料の率がカテゴリーによって違うことを把握していない
  • FBA配送代行手数料が、サイズ区分の境目を少し超えて1段上の料金になっている
  • 大型商品や重量のある商品で、配送代行手数料が想定の倍かかっている

特にサイズ区分は見落とされがちです。梱包を数ミリ小さくするだけで区分が下がり、1個あたりの手数料が変わることがあります。商品ごとに「いま、どの区分で課金されているか」をレポートで確認してください。

原因2:広告費が売上と一緒に膨らんでいる

売上が伸びているのに利益が減るとき、一番多い原因がこれです。売上を作るために広告費を増やし、増えた売上の大半が広告費に消えている状態です。

見る数字は2つです。

  • ACOS:広告経由の売上に対する広告費の比率
  • TACOS:全体の売上に対する広告費の比率

ACOSだけ見ていると、広告経由の売上が増えるほど「効率が良くなった」ように見えます。TACOSが月を追うごとに上がっているなら、自然流入が育たず、広告に依存する体質になっています。

対処は、予算を増やす前に、検索用語レポートで成果の出ていない検索語を除外することです。多くのアカウントで、広告費の一定割合が、購入につながっていない検索語に使われています。

原因3:値下げとクーポンで売上を作っている

セールやクーポンは売上を作る手段として手軽ですが、値引き分がそのまま利益から消えます。

  • クーポンの割引率を、粗利率を確認せずに決めている
  • セール後に価格を戻せず、値下げ後の価格が定着している
  • カートを取るために競合と値下げ合戦になっている

1個あたりの残る利益を出していれば、「この商品はいくらまでなら値下げしてよいか」の下限が決まります。下限を決めずにセールに参加することが、利益が消える大きな原因です。下限と上限の出し方は価格の決め方と位置取りにまとめています。

原因4:在庫が利益を食っている

在庫は、多すぎても少なすぎても利益を減らします。

  • 多すぎる:月次の保管料に加え、長期在庫には追加の保管料がかかる。売れない在庫を処分すれば、その分は損失になる
  • 少なすぎる:在庫切れの間は売上がゼロになるだけでなく、検索順位が落ち、戻すのに時間と広告費がかかる

どちらも、発注の基準が「なんとなく」になっていると起こります。リードタイム(発注してから販売できるまでの日数)と1日あたりの販売数から、発注のタイミングと数量を決める基準を作ってください。作り方は在庫切れを防ぐ発注基準に手順で書いています。

原因5:返品と評価の下落

返品率が高い商品は、返品送料や再出荷の手間だけでなく、販売不可在庫が積み上がることで利益を削ります。

返品の理由は、商品ページと実物のずれ(サイズ感、色、素材)であることが多く、レビューや返品理由のレポートを見ると原因が分かります。返品率を1〜2ポイント下げるだけで、商品によっては利益率が目に見えて変わります。

5つのどこから手をつけるか

5つすべてを一度に直そうとすると、どれも中途半端に終わります。1個あたりの利益表を見て、一番大きく利益を削っている項目から着手してください。

多くの場合、順番は次のようになります。

  1. 広告費(すぐに数字に表れる。除外設定は当日からできる)
  2. 手数料(サイズ区分や梱包の見直し。次のロットから効く)
  3. 値下げの下限を決める(次のセールから効く)
  4. 在庫の発注基準(次の発注から効く)
  5. 返品率(商品ページの修正と、次のロットでの改良)

直すときの判断基準を数字で置く

「一番大きく削っている項目」は、売価に対する割合で比べると判断がぶれません。たとえば次のような線を自社で決めておきます(数字は仮の目安で、カテゴリーや粗利率によって変わります)。

  • 1個あたりの広告費が、残る利益より大きい商品は、広告から先に見直す
  • FBA配送代行手数料が売価の15%を超える商品は、梱包サイズと売価の両方を見直す
  • 保管料が1個あたりの残る利益の1割を超える商品は、発注量を見直す
  • 返品率が同じカテゴリーの自社の他商品より2ポイント以上高い商品は、商品ページと実物のずれを確かめる

線を決めておくと、毎月の表を見たときに「どの商品の、どの項目を直すか」がすぐに決まります。上の仮の例なら、広告費450円は残る利益810円より小さいので広告は後回しにでき、FBA配送代行手数料は売価のちょうど15%で線上にあるので梱包の見直しを先に検討する、という順番になります。

どこが一番弱いかを手早く把握したい場合は、無料の運用診断で5つの観点を採点できます。8問・2分で、登録なしで結果まで見られます。

よくある質問

赤字の商品が見つかったら、すぐ止めるべきですか。 止める前に、赤字の理由が一時的かどうかを分けます。広告を強めている立ち上げ期なら、期間を区切って続ける判断もあります。原価や手数料の構造そのもので赤字なら、値上げか原価の削減の見通しが立たない限り続ける理由はありません。判断の線引きは撤退の判断基準にまとめています。

全体の損益計算書では黒字です。それでも商品ごとに出す必要がありますか。 あります。全体が黒字でも、その中に赤字の商品が混ざっていることは珍しくありません。黒字の商品が赤字の商品を養っている状態だと、売上を伸ばすほど利益率が下がります。全体の数字は、その混ざり具合を隠します。

広告費はどの商品に割り振ればよいですか。 キャンペーンが商品ごとに分かれていれば、そのまま割り当てます。複数商品をまとめたキャンペーンなら、広告経由の販売数の比率で按分します。厳密でなくても構いません。割り振らずに全体費用として置いておくことのほうが、判断を大きく誤らせます。

1個あたりの利益は、売価の何%残れば十分ですか。 一律の答えはありません。広告費をどこまでかけられるかは、残る利益の割合で決まるので、先に自社の目標を置いてから逆算します。目標の置き方は利益率の目安の置き方にまとめています。

まとめ

  • 「売れているのに利益が出ない」原因は、感覚では分からない。商品1個あたりの残る利益を出すところから始める
  • 原因は「手数料の見落とし」「広告費の膨張」「値下げのしすぎ」「在庫コスト」「返品」の5つのどこかにある
  • 全部を一度に直さず、利益を一番削っている項目から、効き始めるのが早い順に着手する
  • 値引きは売価の下げ幅より大きく利益を削る。仮の例では10%引きで残る利益が3分の1減った
  • 広告費の割り振り漏れ・保管料の見落とし・原価の抜け・返品ゼロの置き方が、表の数字を狂わせる
  • 手数料やFBA料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わる。セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認する。この記事の数字は説明用の目安

売上を追いかける前に、いま売れている分から何が残っているかを確かめる。それだけで、次にやるべきことはかなりはっきりします。まずは主力の3商品だけでも、利益シミュレーターで1個あたりの残る利益を出してみてください。数字の読み方を含めて相談したい場合はお問い合わせからどうぞ。