「入札額はいくらにすればいいですか」という質問には、単独では答えられません。適正な入札額は、その商品の粗利と、その語の転換率から決まるからです。
この記事では、Amazon広告の入札額の決め方として、上限を計算する方法、語ごとに上限を表にする手順、実際に上げ下げするときの判断基準、よくある失敗を順に書きます。
まず入札の上限を計算する
入札額とは「1クリックにいくらまで払うか」の申告です。実際の課金額はこれ以下になりますが、上限を決めておかないと際限なく上がります。
上限の計算はこうです。
入札上限 = 広告費を除いた粗利 × 目標ACOS ÷ 100 × その語の転換率
言い換えると、「1クリックあたり、平均していくら粗利が返ってくるか」です。
例で見ます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 販売価格 | 3,000円 |
| 広告費を除いた粗利 | 1,000円 |
| その語の転換率 | 10%(10クリックで1件売れる) |
10クリックで1件売れて粗利1,000円。つまり1クリックあたりの粗利は100円です。ここが損益分岐です。
100円で入札すれば、その語はトントン。80円なら1クリックあたり20円残ります。120円なら20円ずつ赤字です。
転換率が5%なら1クリックあたりの粗利は50円まで下がります。同じ商品でも、語によって払える金額が2倍違うということです。だから「商品ごとの入札額」ではなく「語ごとの入札額」で考えます。
なお、販売手数料の率やFBAの手数料はカテゴリー・サイズ・重量・時期で変わります。粗利はセラーセントラルの最新の案内と自社の実数で計算してください。売価と原価を入れて損益分岐ACOSまで一度に出したい場合は利益シミュレーターが使えます。
転換率が分からないときの置き方
新しい語は転換率のデータがありません。この場合は仮置きして始めます。
- 同じ商品の他の語の転換率の平均を使う
- それも無ければ、商品ページ全体のユニットセッション率を使う
仮置きした入札で回し、クリックが30〜50回たまった時点で実測に置き換えます。それより早く判断すると、たまたまの結果に振り回されます。
語ごとの入札上限を表にする手順
上限の計算式が分かっても、語が数十個あると頭の中では管理できません。月に一度、語ごとの上限を表にまとめておくと、日々の上げ下げで迷わなくなります。
- 広告レポート(検索用語またはターゲティング)を直近30日で出し、クリックが30回以上ある語だけを残す
- 語ごとに「注文数 ÷ クリック数」で転換率を出す
- 商品の広告費を除いた粗利を1件あたりで置く(手数料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で計算する)
- 「粗利 × 転換率」で語ごとの入札上限を出す
- 現在の入札額と並べ、上限を超えている語に印を付ける
仮に、広告費を除いた粗利が1件1,000円の商品で、3つの語が次の状態だったとします。
| 語 | クリック | 注文 | 転換率 | 入札上限 | 現在の入札 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 語A(商品の一般名) | 200 | 16 | 8% | 80円 | 95円 | 上限超え。下げる候補 |
| 語B(用途を含む語) | 60 | 9 | 15% | 150円 | 70円 | 表示が少なければ上げる余地あり |
| 語C(関連の広い語) | 80 | 1 | 約1% | 約13円 | 50円 | 止めるか除外を検討 |
この表で分かるのは、同じ商品でも語Bには150円まで払えるのに、語Cには13円しか払えないということです。語Aは上限を15円超えているので、売れていても1クリックごとに赤字が出ています。すべての語に同じ入札を置いていると、こうした差が見えません。
表は月に一度作り直します。転換率は季節やページの変更で動くので、3か月前の上限を使い続けるとずれていきます。作り直した日を表の上に書いておくと、いつの数字で判断したかが残ります。
上げるか下げるかは、詰まっている場所で決める
入札を触る前に、そもそも入札で解決する問題なのかを確認します。ターゲティングレポートを開いて、上から順に見ます。
1. 表示回数(インプレッション)が少ない
これが入札で解決する唯一のケースです。土俵に立てていないので、入札を上げます。
ただし、入札を上げても表示が増えないなら、原因は入札ではありません。その語と商品の関連性が低いか、在庫切れやカート未獲得で配信が止まっています。
2. 表示はあるがクリックされない(クリック率が低い)
入札を上げても解決しません。検索結果に並んだときに選ばれていないので、メイン画像・価格・レビュー数の問題です。むしろ入札を上げると、無駄な表示にお金を使うことになります。
3. クリックはあるが買われない(転換率が低い)
これも入札では解決しません。商品ページの問題です。ここで入札を上げると、赤字が加速します。
4. 売れているがACOSが高い
ここで初めて入札を下げます。順位が落ちて表示が減りますが、費用対効果は改善します。
つまり、入札を上げていいのは1番だけ、下げるのは4番だけです。2番と3番は入札を触らず、画像やページを直します。
| レポートの状態 | 入札 | 代わりにやること |
|---|---|---|
| 表示回数が少ない | 上げる(10〜20%) | 上げても増えなければ語との関連性を見直す |
| クリック率が低い | 触らない | メイン画像・価格・レビュー数を競合と並べて直す |
| 転換率が低い | 触らない | 商品ページと価格を直す |
| 売れているがACOSが高い | 下げる(10〜20%) | 目標ACOSが自社の粗利に合っているか確認 |
| クリックがあって注文0 | 止めるか除外する | クリック30〜50回たまってから判断 |
どこが詰まっているかの読み方は広告レポートの見方に、レポートの列の順番まで含めて書いています。
一度に動かす幅を決めておく
上げ下げの幅を毎回感覚で決めると、何が効いたのか分からなくなります。ルールを先に決めます。
1回の変更幅は10〜20%まで。 一気に倍にすると、翌日の広告費が跳ね上がって驚くことになります。
変更したら最低1週間は触らない。 入札の変更が表示・クリック・注文に反映されるまで時間がかかります。翌日の数字で判断すると、たまたまの変動に反応することになります。
変更日と変更前後の入札額を記録する。 これをやっていないと、3か月後に「なぜこの入札額なのか」が誰にも分からなくなります。
上げるときの進め方も、数字で決めておきます。仮に現在の入札が60円で、計算した上限が100円だったとします。いきなり100円にすると、その語のクリック単価が実際にどこで止まるか分からないまま広告費が動きます。60円、70円、80円と10円ずつ、1週間ごとに上げてください。途中で表示回数が十分に増えて注文も付くようになったら、そこで止めます。上限まで上げきる必要はありません。上限は「これ以上は赤字」という線であって、目指す値ではないからです。
もうひとつ、入札と日予算は別のものです。入札は1クリックあたりの上限、日予算は1日に使う総額です。入札を上げても日予算が小さいままだと、午前中で使い切って午後は配信されません。逆に日予算だけ増やしても、入札が低ければ表示されないので消化されません。表示回数を増やしたいなら入札、配信が途中で止まっているなら日予算、と切り分けてください。日予算の置き方は広告予算の配分にまとめています。
動的入札とプレースメントの設定も見る
入札額そのものだけでなく、Amazon側の調整機能も効いてきます。
動的な入札(ダウンのみ/アップとダウン/固定)
「アップとダウン」にすると、売れそうな検索に対して入札が自動で引き上げられます。効率は上がることが多いのですが、上限を超えて課金される場面があるので、予算が読みにくくなります。立ち上げ期や、まず費用を抑えたい時期は「ダウンのみ」が扱いやすいです。
プレースメント別の入札調整
検索結果の上部、商品ページ、その他の枠ごとに、入札を上乗せできます。レポートで枠ごとの成績を見て、成績の良い枠にだけ上乗せします。
多くの商品で検索結果上部の転換率が高くなりますが、クリック単価も高くなります。上乗せする前に、その枠のACOSを確認してください。上乗せ率をいくつから始めるかは掲載枠ごとの入札調整に手順として書いています。
入札でよくある失敗
ACOSが高いと全部の語の入札を一律に下げる。 一律に下げると、上限に余裕があって伸ばせた語まで表示が減ります。下げるのは上限を超えている語だけにして、余裕のある語はそのまま残します。
クリックが数回の段階で入札を動かす。 5クリックで注文0でも、転換率が10%の語なら珍しいことではありません。30〜50クリックたまるまでは、入札ではなく除外の対象かどうか(明らかに商品と無関係な語か)だけを判断します。
入札と同時に価格や画像を変える。 同じ週に複数を変えると、数字が動いた理由が分かりません。入札を変えた週は、他の変更を入れないか、入れるなら記録を分けて残します。
上限の計算に、広告費を含めた粗利を使う。 粗利から広告費を引いた値で計算すると、上限が二重に低くなります。計算に使うのは「広告費を引く前の粗利」です。
よくある質問
管理画面に出る「推奨入札額」に合わせておけばよいですか。 推奨入札額は、その語で表示されるために必要な水準の目安であって、自社の粗利は考慮されていません。上限の計算結果より推奨額が高いなら、その語は今の粗利では取りにいけない語だということです。無理に合わせると、表示は増えても赤字が増えます。逆に推奨額が上限よりかなり低い場合は、まだ上げる余地があります。推奨額は「相場の目安」として見て、判断は自社の上限で行ってください。
入札を20%上げたら、クリック単価も20%上がりますか。 そうなるとは限りません。入札は上限の申告なので、実際の課金額はそれより低くなるのが普通です。競合が薄い語なら、入札を上げても課金額はほとんど変わらず、表示位置だけが上がることがあります。逆に競合が多い語では、上げたぶんがそのまま単価に乗ります。上げたあとは入札額ではなく、実際の平均クリック単価がいくらになったかを見てください。
同じ語を、キャンペーンごとに違う入札額で持っていてもよいですか。 役割が違うキャンペーンなら問題ありませんが、同じ役割で重複して持っているなら整理してください。自社の広告どうしで競り合うと、クリック単価が上がるだけです。完全一致で持っている語は、フレーズ一致や部分一致、オートの側で除外に入れておくのが基本です。役割で分ける考え方はキャンペーン構造の作り方にまとめています。
入札の管理を代行に任せたとき、何を確認すればよいですか。 語ごとの入札上限をどう計算しているか、上限を超えた語をどう扱っているかを聞いてください。「粗利と転換率から上限を出している」という答えが具体的な表で返ってくれば、管理されていると判断できます。任せる範囲の考え方はAmazon広告の運用代行で紹介しています。
まとめ
- 入札上限は「広告費を除いた粗利 × その語の転換率」=1クリックあたりに返ってくる粗利で決める
- 同じ商品でも語によって払える金額が変わる。商品単位ではなく語単位で考える
- 新しい語は仮置きし、クリック30〜50回で実測に置き換える
- 月に一度、語ごとの上限と現在の入札を表に並べ、上限超えの語に印を付ける
- 入札を上げていいのは「表示が少ないとき」だけ。下げるのは「売れているがACOSが高いとき」だけ
- クリック率が低いのは広告の見え方、転換率が低いのは商品ページの問題。入札では解決しない
- 変更幅は10〜20%、変更後は1週間触らない、変更日を記録する
- 動的入札とプレースメント調整も、レポートで成績を見てから使う
入札は「上げれば売れる」レバーではありません。詰まっている場所を特定してから触ってください。
