大型セールの案内が来ると、とりあえず出しておこうと考えがちです。しかしAmazonのセールに参加して得をするのは、値引き分と参加費を、増えた販売数で回収できたときだけです。回収できなければ、忙しくなっただけで利益は減ります。
この記事では、Amazon セール 参加を決める前に計算しておくこと、準備を始める時期、終わった後に記録することを順に書きます。数字はすべて仮の例です。自社の粗利と販売数に置き換えて読んでください。
セールの種類で判断が変わる
まず、何に参加するのかを区別します。仕組みが違うと、判断の基準も変わります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| タイムセール | 期間限定で割引表示。参加費がかかる場合がある |
| 数量限定タイムセール | 表示時間が短く、枠が限られる |
| クーポン | 割引率と発行数を自社で設定。手数料が発生する |
| プロモーション | まとめ買い割引など、条件付きの割引 |
| 大型セールイベント | 特定期間の全体施策。トラフィックが大きく増える |
参加費や手数料の有無・金額は、時期と種類によって変わります。申し込み画面に表示される金額を、申し込む前に確認してください。ここに書いた区分は判断のための整理です。クーポンだけで足りる場面も多いので、クーポンの割引率と止める基準と比べてから決めてください。
損益分岐の販売数を先に出す
計算はひとつだけです。値引きと参加費を埋めるのに、あと何個売る必要があるか。
例で出します。
- 通常価格:3,000円
- 通常の粗利(広告費を除く):1,000円
- セール価格:2,550円(15%オフ)
- 参加費:5,000円
- セール期間:3日間
- 通常時の3日間の販売数:30個
セール中の粗利は、値引き分450円が減って 550円 です。
必要な販売数 =(通常時の粗利総額 + 参加費)÷ セール中の粗利
- 通常時の粗利総額:1,000円 × 30個 = 30,000円
- 30,000 + 5,000 = 35,000円
- 35,000 ÷ 550 = 約64個
つまりこのセールは、3日間で64個以上売れなければ、参加しないほうが利益が大きいという計算になります。通常の30個に対して2倍以上です。
この「必要な販売数」を出さずに参加すると、売上が伸びたのに利益が減る、という結果になります。
割引率を変えると、必要な販売数は次のように動きます。同じ条件(通常の粗利1,000円・3日間30個・参加費5,000円)で計算した仮の値です。
| 割引率 | セール価格 | セール中の粗利 | 必要な販売数 | 通常時に対する倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 5% | 2,850円 | 850円 | 約42個 | 約1.4倍 |
| 10% | 2,700円 | 700円 | 約50個 | 約1.7倍 |
| 15% | 2,550円 | 550円 | 約64個 | 約2.1倍 |
| 20% | 2,400円 | 400円 | 約88個 | 約2.9倍 |
割引率を5ポイント深くするごとに、必要な販売数は加速して増えます。 20%オフで3倍近く売れる見込みがあるかどうかは、前年の同じセールの実績で確かめられます。実績がないなら、まず浅い割引率で1回試して、伸び方を測ってから深くしてください。計算は利益シミュレーターでも出せます。
期間中に増やす広告費も足す
上の式には広告費が入っていません。セール期間はクリック単価が上がりやすく、日予算も増やすのが普通なので、通常より多く使う広告費は参加費と同じ扱いで足します。
仮に、3日間で通常より9,000円多く広告費を使うとします。
- (30,000 + 5,000 + 9,000)÷ 550 = 80個
広告費を入れるだけで、必要な販売数は64個から80個に増えました。通常の30個に対して約2.7倍です。広告を強める予定なら、この数字で判断してください。
手数料の変化も確かめる
販売手数料は売価に対する率でかかるので、値引きすると1個あたりの額は少し下がります。一方でFBAの配送の手数料は売価と関係なく1個ごとにかかるため、値引きしても減りません。上の例の「通常の粗利1,000円」は、この2つを引いた後の金額として置いています。手数料率と料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。
それでも参加する理由があるケース
上の計算でマイナスでも、参加が正しい場合があります。ただし理由を言葉にできることが条件です。
在庫を減らしたいとき。 長く置くと追加の料金がかかる在庫、季節が終わる商品。持ち続けるコストと比べます。この場合は、粗利ではなく「保管し続けた場合の損失」と比較するので、判断の式が変わります。
仮に、売れ残りそうな在庫が100個あり、このまま半年置くと保管料が1個あたり合計150円、半年後に売り切るにはさらに20%の値引きが要る見込みだとします。いま15%オフのセールで売り切るほうが、値引き幅も保管料も小さく済む計算です。比べるのは「セールで売る」と「持ち続けて後で売る」の2つで、「通常価格で売れる」は選択肢に入りません。保管料の考え方は在庫保管料を抑える運用にまとめています。
新商品の実績を作りたいとき。 販売実績とレビューを短期間で積む目的。この場合も、いつまでやるかを先に決めておきます。
順位を押し上げたいとき。 セール中の販売数は検索順位に効きます。セール後に順位が上がった状態で通常価格に戻せれば、回収できることがあります。ただし戻した後に順位が落ちることも多いので、当てにできる手ではありません。
いずれも「なんとなく出ておく」とは違います。目的と終わりを決めてから出すことです。
セール前に確認すること
参加を決めたら、次を確認します。ここを外すと、機会を丸ごと失います。
在庫が足りているか。 これが最大の失敗要因です。想定販売数の少なくとも1.5倍は用意します。FBAなら、納品から受領完了まで日数がかかるので、セール開始の2〜3週間前には送っておきます。繁忙期は受領がさらに遅れます。逆算のしかたは在庫切れを防ぐ発注基準、季節商品なら季節商品の在庫計画を合わせて見てください。
価格の履歴。 直前に値上げしてからセール価格にすると、割引として認められないことがあります。参加条件は事前に確認してください。
広告予算。 セール期間はトラフィックが増え、クリック単価も上がります。日予算が通常のままだと、午前中に使い切って午後は表示されません。期間中は予算を上げておきます。
ページの状態。 大量に人が来る日に、画像が古いまま、在庫切れの色があるまま、では取りこぼします。セール前にページを点検します。
いつ何をするかを、開始日から逆算して並べるとこうなります。日数は一つの目安で、繁忙期や商品によって前倒しが要ります。
| 開始日から | やること | 確認の基準 |
|---|---|---|
| 6〜4週間前 | 必要な販売数を計算し、参加を決める。申し込み条件と参加費を確認 | 前年の実績か浅い割引の試しで、必要数に届く根拠がある |
| 4〜3週間前 | 追加の在庫を発注・納品する | 想定販売数の1.5倍が、開始日に受領済みになる日程 |
| 2〜1週間前 | ページの点検。画像・箇条書き・Q&Aを直す | スマホ表示で1枚目の画像と価格が見える |
| 前日 | 広告の日予算と入札を期間用に上げる | 午前中に予算が尽きない額になっている |
| 期間中 | 1日1回、在庫と広告費の消化を見る | 在庫の残り日数が期間の残りより長い |
| 終了日 | 広告の予算と入札を通常に戻す | 戻し忘れがない |
ページの点検は商品ページの点検リストの20項目をそのまま使えます。
セール後にやること
終わったら、次の3つを見ます。
1. 実際の販売数が、必要な販売数を超えたか。 超えていなければ、次回は同条件で参加しません。
2. セール後の順位が上がったか。 上がっていれば、値引き分は順位という形で回収できています。1週間後、2週間後に見て、元に戻っていないか確認します。
3. レビューが増えたか、星が下がっていないか。 セールで買った人はレビューを書きやすい一方、値段で買った人は評価が辛くなる傾向があります。星が下がっていれば、次回は割引率を見直します。
この3つを記録しておくと、次回の判断が早くなります。参加した/しなかったの記録と結果を残すことが、翌年の判断材料になります。
よくある失敗
セールで利益を減らすのは、たいてい次のどれかです。
- 必要な販売数を出さずに参加した。 売上は前年の2倍になったのに、粗利の総額は通常の3日間より少なかった
- 初日に在庫が切れた。 追加の納品が受領に間に合わず、残りの期間は表示されないまま広告費だけが出ていった
- 広告の予算を戻し忘れた。 セール後も期間用の入札のまま1週間回り、クリック単価の高い状態が続いた
- 割引率を毎回深くした。 前回より売るために割引を上げ続け、通常価格で買う人が減った
どれも、事前の計算と終了日の作業を決めておけば防げます。
よくある質問
必要な販売数に届かない見込みでも、参加しないと順位が下がりませんか。 セール期間中は全体の注文が増えるので、参加しない商品の相対的な順位は下がることがあります。ただし多くは期間が終われば戻ります。恒常的に下がるのは在庫を切らした場合なので、参加を見送るなら在庫だけは通常どおり保ってください。
セール価格は通常価格に戻せますか。 戻せますが、割引価格で買われた履歴が残るため、戻した直後は転換率が落ちることがあります。戻すのは期間終了と同時にし、段階的に上げ直すよりも一度で戻すほうが混乱が少なくなります。値上げとして扱う場合の刻み方は値上げの手順にまとめています。
参加費が無料のセールなら出しておくべきですか。 参加費が0円でも、値引き分は残ります。上の計算で参加費を0にして必要な販売数を出し、それを超えられるかで判断してください。無料という言葉で計算を省くのが、いちばん多い失敗です。
複数の商品がある場合、全部を出すべきですか。 商品ごとに必要な販売数を出し、届く見込みのある商品だけに絞るのが基本です。粗利率が低い商品や在庫が薄い商品は、出さずに通常どおり売るほうが利益が残ることが多くあります。絞った商品に在庫と広告予算を寄せたほうが、取りこぼしも減ります。
まとめ
- セールは「出れば得」ではない。必要な販売数を先に計算する
- 計算式は「(通常時の粗利総額+参加費+追加の広告費)÷ セール中の粗利」
- 計算でマイナスでも、在庫処分・実績作り・順位押し上げという目的があれば参加はあり得る。ただし終わりを決める
- 事前確認は、在庫(想定の1.5倍)、価格履歴、広告予算、ページの状態。開始日から逆算して日程を組む
- 事後は、販売数・順位・レビューの3つを記録し、広告の設定を通常に戻す
参加を決める計算より、在庫と広告の準備のほうが時間がかかります。どの商品を出すか判断がつかない場合は、無料の運用診断で利益と在庫の状態を整理してから決めてください。個別の相談はお問い合わせから受け付けています。
