ACOSは広告の効率を見る指標ですが、これだけを見ていると見落とすことがあります。広告を止めたら売上が消える状態になっていても、ACOSは良い数字のまま出るからです。
そこで使うのがTACOSです。この記事では、2つの違いと使い分けを書きます。
計算方法の違い
どちらも「広告費 ÷ 売上」ですが、分母が違います。
ACOS = 広告費 ÷ 広告経由の売上 × 100
TACOS = 広告費 ÷ 全体の売上 × 100
TACOS の T は Total です。広告を見ずに買った人の売上も分母に入ります。
数字で見ます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 広告費 | 100,000円 |
| 広告経由の売上 | 400,000円 |
| 全体の売上 | 1,000,000円 |
- ACOS = 100,000 ÷ 400,000 × 100 = 25%
- TACOS = 100,000 ÷ 1,000,000 × 100 = 10%
TACOS のほうが小さくなります(広告経由の売上は全体の一部なので)。数値の大小を比べる意味はありません。見ている対象が違うというだけです。
それぞれ何を表しているか
ACOSは、広告そのものの効率です。「その広告は儲かっているか」を見ます。キーワード単位、キャンペーン単位で判断するのに向いています。
TACOSは、事業全体が広告にどれだけ依存しているかです。「この売上を作るのに、売上全体の何%を広告費に使ったか」を見ます。商品単位、事業単位で判断します。
ACOSは操作の指標、TACOSは経営の指標、と分けて考えると扱いやすくなります。ACOSの目標値そのものの決め方はACOSの目標値の決め方にまとめています。
TACOSの動きが意味すること
TACOSは、期間を追って動きを見る指標です。単月の値だけを見ても意味が薄い。
TACOSが下がっている
広告費に対して、全体の売上がより大きく伸びています。自然検索での売上が育っているということです。これが理想的な流れです。広告で押した結果、順位が上がり、広告なしでも売れるようになっている。
TACOSが横ばい
広告費と全体の売上が同じ比率で増えています。売上は伸びていますが、広告を止めれば同じだけ落ちます。悪くはありませんが、資産が積み上がっていません。
TACOSが上がっている
広告費の伸びに、全体の売上がついてきていません。原因はいくつか考えられます。
- 競合が増えてクリック単価が上がった
- 自然検索の順位が落ちた
- 広告の設定が悪化した(除外していない語に予算が流れている)
ACOSが良いままTACOSが上がっている場合、広告は効率よく回っているが、自然検索の売上が減っているということです。ページかレビューか在庫に問題が起きている可能性があります。
上限を粗利率から決める
「TACOSは何%が適正ですか」という質問も受けますが、ACOSと同じで粗利率と時期によって変わります。他社の数字を借りても意味がありません。自社の上限は、広告費を引く前の粗利率から出します。
TACOSの上限 = 広告費を除いた粗利 ÷ 販売価格 × 100
考え方は損益分岐ACOSと同じですが、分母が全体の売上になるぶん、超えた時点で事業全体が赤字という意味になります。ACOSの損益分岐が「その広告が赤字かどうか」の線なのに対して、TACOSの上限は「この商品が儲かっているかどうか」の線です。
3,000円の商品で分解してみます(すべて仮に置いた数字です)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売価格 | 3,000円 |
| 商品原価 | 900円 |
| 販売手数料(15%想定) | 450円 |
| FBA配送代行手数料 | 434円 |
| 保管料・その他 | 50円 |
| 広告費を除いた粗利 | 1,166円 |
この場合の上限は 1,166 ÷ 3,000 × 100 = 約38.9% です。TACOSが39%に達した時点で、この商品は広告費で粗利を使い切っています。
上限が出たら、そこから時期ごとの目安を割り付けます。
| 時期 | 目安の置き方 | 上限38.9%の場合の例 |
|---|---|---|
| 立ち上げ期 | 上限に近い水準まで許容する。期限を決める | 30〜39%。期間は3か月まで、など |
| 成長期 | 上限の半分あたりを目指して下げていく | 20%前後 |
| 成熟期 | 上限の3分の1程度で安定させる | 13%前後 |
この表の割り付けは一例です。商品の回転や競合の多さで変わるので、自社の数字を並べながら調整してください。
手数料の率と額は、カテゴリー・サイズ・重量・時期によって変わります。ここに書いた数字をそのまま使わず、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数に置き換えて計算してください。利益シミュレーターに売価・原価・手数料率を入れると、広告費を除いた粗利率がそのまま出ます。原価の積み上げ方は原価構造の分解にまとめています。
時期による目安の置き方
TACOSに「適正値」はありません。時期によって、目指す方向が変わります。
立ち上げ期
TACOSは高くなります。自然検索の売上がまだないので、当然です。この時期のTACOSを下げようとすると、広告を絞ることになり、立ち上がりません。この時期はTACOSを目標にしないでください。
成長期
広告を回しながら、TACOSが徐々に下がっていくのが健全な形です。月次で記録して、傾向を見ます。下がらないなら、広告以外の部分(ページ、レビュー、在庫の安定)に手を入れる必要があります。
成熟期
TACOSは安定します。ここで急に上がったら、競合の動きか自社の順位低下を疑います。
実務での使い分けと注意点
日々の操作ではACOSを使います。キーワードの入札を上げるか下げるか、この語を止めるか。これはACOSと粗利の比較で判断します。
月次のレビューではTACOSを使います。この商品は広告に依存し続けているのか、それとも自力で売れるようになってきているのか。
両方を並べて記録するのが一番実務的です。月次で、商品ごとに次を並べます。
- 全体の売上
- 広告費
- 広告経由の売上
- ACOS
- TACOS
実際に並べると、次のような形になります(すべて仮の数字です)。
| 月 | 全体の売上 | 広告費 | 広告経由の売上 | ACOS | TACOS |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 100万円 | 20万円 | 60万円 | 33% | 20.0% |
| 2月 | 120万円 | 21万円 | 62万円 | 34% | 17.5% |
| 3月 | 140万円 | 22万円 | 63万円 | 35% | 15.7% |
この3か月は、ACOSだけを見ると悪化しています。ところがTACOSは20.0%から15.7%まで下がっています。広告経由の売上がほぼ横ばいなのに全体が伸びているので、増えた分は広告を見ずに買った人です。ここでACOSの悪化を理由に広告を絞ると、育ちかけの流れを止めることになります。2つを並べて初めて判断できるのは、こういう場面です。
これを数か月並べると、傾向が見えます。ACOSは安定しているのにTACOSが上がっている商品、TACOSが下がり続けている商品。それぞれ打つ手が違います。2つの組み合わせで、打ち手は次のように分かれます。
| ACOS | TACOS | 起きていること | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| 目標内 | 下がっている | 広告が効いて自然検索が育っている | そのまま続ける。在庫を切らさない |
| 目標内 | 上がっている | 広告は回っているが自然検索が落ちている | ページ・レビュー・在庫・順位を調べる |
| 目標超え | 下がっている | 広告は重いが全体は育っている | 除外と入札で広告だけ絞る |
| 目標超え | 上がっている | 広告に依存したまま効率も悪い | 広告を絞り、価格とページを先に直す |
右下の組み合わせが一番危ない状態です。ここで予算を足すと傷が広がります。自然検索の順位が落ちている心当たりがない場合の切り分けは検索順位が上がらないときにまとめています。
TACOSを下げること自体を目標にしないでください。広告を止めればTACOSは下がります。しかし売上も順位も落ちます。
TACOSは「良くしにいく数字」ではなく、「状態を知るための数字」です。下がっていれば順調、上がっていれば原因を探す。その使い方が正しいです。
また、TACOSはスポンサープロダクト広告だけでなく、すべての広告費を合計して計算します。ブランド広告、ディスプレイ広告を別々に見ていると、実態より良い数字が出ます。3種類の役割の違いは3種類の広告の違いと使い分けにまとめています。
もう1つ、記録するときの注意です。TACOSの分母は全体の売上なので、広告と関係のない要因でも数字が動きます。セールで値引きした月、まとめ買い割引を付けた月、在庫を切らして数日売れなかった月は、広告の設定が同じでもTACOSが動きます。月の欄に「セールあり」「在庫切れ3日」といった印を付けておくと、あとで読み違えません。セールに参加するかの判断や在庫切れと発注の基準で挙げた要因は、そのままTACOSの振れ幅になります。
数字を並べて自社の状態が判断できない場合は、無料診断で現状を整理するところから始められます。広告の設計から任せたい場合はAmazon広告の運用代行に範囲と進め方を書いています。
よくある質問
TACOSは商品ごとに出すべきですか。アカウント全体でよいですか。 判断に使うなら商品ごとです。アカウント全体のTACOSは、広告を使っていない商品の売上まで分母に入るので、数字が実態より良く見えます。売れ筋が1つあると、その商品の自然流入が全体を押し下げてしまい、他の商品が広告漬けになっていることに気づけません。手間はかかりますが、主力商品は個別に、それ以外はまとめて、という単位で並べてください。
セールをやった月はTACOSが下がります。良くなったと考えてよいですか。 そのままでは判断できません。セール中は値引きで売上の数量が増えるので、広告費が変わらなければTACOSは下がります。ただし値引き分は粗利から出ているので、事業として良くなったとは限りません。セールを含む月は印を付けておき、前年の同じ時期や、セールを除いた月どうしで比べてください。傾向を見る指標なので、条件の違う月を並べると読み間違えます。
広告を始めたばかりで自然検索の売上がほとんどありません。TACOSを見る意味はありますか。 この段階では判断の材料にはなりませんが、記録は始めておいてください。立ち上げ期のTACOSは高くて当然で、そこを下げにいくと広告を絞ることになり、立ち上がりません。意味が出てくるのは3〜4か月後、数字を並べて傾向が見え始めてからです。そのときに過去の記録がないと、下がっているのかどうかが分かりません。記録だけ先に始めるのが正解です。広告を止めたときに何が起きるかは広告を止めると何が起きるかにまとめています。
TACOSが上限を超えています。すぐ広告を止めるべきですか。 時期と期限で分かれます。立ち上げから数か月で、レビューと販売履歴を作るために回しているなら、いつまで許容するかを決めたうえで続ける判断はあり得ます。一方、1年近く回していて超えたままなら、原因は入札ではなく価格かページか商品そのものにあることが多いので、広告を絞って先にそちらを直してください。判断に迷うときは、上限を超えている金額が月いくらかを出して、その額を何か月払い続けられるかで決めると具体的になります。
まとめ
- ACOSの分母は広告経由の売上、TACOSの分母は全体の売上
- ACOSは操作の指標、TACOSは経営の指標
- 上限は広告費を除いた粗利率。超えた時点でその商品は儲かっていない
- 立ち上げ期は上限に近い水準まで、成熟期は上限の3分の1程度を目安に割り付ける
- TACOSが下がる=自然検索の売上が育っている。これが理想の流れ
- ACOSが良いままTACOSが上がる=自然検索が落ちている。ページかレビューか在庫を疑う
- 立ち上げ期はTACOSを目標にしない
- 単月ではなく、月次で並べて傾向を見る
- 広告費はすべての種類を合計して計算する
ACOSだけを見ていると、広告漬けの状態に気づけません。月に一度、TACOSを並べる習慣をつけてください。
