広告の運用代行を探すとき、多くの方が最初に見るのは月額です。ところが、同じ月額でも中身は会社ごとにまったく違います。広告だけは、料金よりも「何を触るのか」を先に見ないと比較になりません。
商品ページの制作なら、成果物を見れば作業量が分かります。広告は違います。画面の中で入札を1円動かすのも、除外キーワードを50語入れるのも、外からは同じ「運用しました」に見えてしまう。だから、質問で確かめるしかありません。
この記事は、広告の運用を受けている側から、面談で聞いてよい5つの点を順番に書きます。あわせて、料金の型ごとに年間でいくら払うことになるのかを、仮の条件を置いて計算しました。金額の高い安いを言うためではなく、型の違いが年額にどう出るかを見るための計算です。
読む順番も先に書いておきます。外に出すべきかを決めていない段階なら自分で運用するか代行に頼むかから、外に出すと決めているなら代行に頼むメリット・デメリットで起きることを把握し、この記事の5点で会社を絞り、見積もりで聞く7つの質問で詰める。この順が無駄がありません。
1. 料金の型が、広告費と連動しているか
広告の代行でよく見るのは、次の3つです。
| 型 | 中身 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 月額固定 | 毎月定額。広告費が増えても変わらない | 広告費が小さいと割高になりやすい |
| 広告費連動 | 広告費の何%かを支払う | 広告費を増やすほど代行側の収入が増える |
| 売上連動 | 広告経由売上の何%かを支払う | 粗利率が低い商品だと手元が薄くなる |
見落としやすいのが広告費連動型の利益相反です。広告費の何%、という契約だと、広告費を絞る判断が代行側の収入を減らします。悪意がなくても、止める決断は鈍りがちです。
この型を選ぶ場合は、契約前に「広告費を下げる提案をした実例はあるか」を聞いてください。答えられる会社は、少なくともその判断を普段からしています。
自社の広告費が月に数万円の規模なら、率ではなく月額固定のほうが読みやすいことが多いです。逆に広告費が大きくなるほど、率での支払いは重くなります。自社の広告費を型に当てはめて、年間でいくら払うのかを計算してから比べてください。
型ごとに向きやすい状況
3つの型に優劣はありません。自社の広告費の規模と、これから広告費をどう動かすつもりかで向き不向きが変わります。
| 型 | 向きやすい状況 | 避けたほうがよい状況 |
|---|---|---|
| 月額固定 | 広告費が大きい。支払額を読みたい | 広告費が小さく、作業量に対して割高になる |
| 広告費連動 | 広告費が小さいうちに始めたい | これから広告費を絞りにいく局面 |
| 売上連動 | 粗利率の高い商品が中心 | 粗利率が低い、値引き販売が多い |
売上連動型は一見わかりやすいのですが、支払いの基準が「売上」なので、粗利率が低い商品ほど手元に残る金額が薄くなります。基準が広告経由の売上なのか、全体の売上なのかでも金額が大きく変わるので、契約書の文言まで確認してください。
型に関係なく聞いておきたいのが、最低料金と料率の変わり目です。広告費連動でも下限があれば、広告費を絞った月は実質的に固定費になります。
2. 誰が実際に画面を触るのか
商談に出てくる人と、キャンペーンを触る人が別なのはよくあることです。それ自体は問題ではありませんが、触る人の経験は運用の質に直結します。
聞いてよい質問は3つです。
- 実際の担当者と、契約前に話せるか
- その人は自分で(あるいは自社で)Amazonの広告を出した経験があるか
- 担当1人がいま何アカウントを持っているか
3つめは特に効きます。担当が多くのアカウントを抱えていると、毎週の細かい調整まで手が回らず、月末にまとめて数字を見るだけの運用になります。数を明かしたがらない場合は、そこが弱点かもしれません。
体制について、もう2つ
- 担当者が替わったとき、引き継ぎはどうするか
- 月次レポートを書くのは、画面を触る本人か、別の担当か
レポートを別の人が書いている会社では、「なぜその入札にしたのか」の部分が薄い文章になりがちです。書いている人と触っている人が同じかどうかは、報告の質にそのまま出ます。
担当者と契約前に話せた場合は、自社の商品を見てもらったうえで「最初に何から手を付けますか」と聞いてみてください。事前準備がなくても、検索用語レポートを見たい、キャンペーンの数を減らしたい、といった具体的な答えが返ってくるはずです。抽象的な言葉しか出てこない場合は、ふだん画面を触っていない可能性があります。
3. 報告に「次に何をするか」が書かれているか
サンプルの月次レポートを見せてもらってください。数字が並んでいるだけのものと、判断が書かれているものは、見ればすぐに分かります。
読むべきは次の3点です。
- ACOS以外の数字があるか。ACOSだけを追うなら、広告を止めれば数字は良くなります。広告費を含めた全体(TACOS)や、手数料と配送料を引いたあとの利益まで見ているか
- 何をしたかが書いてあるか。「入札を調整しました」ではなく、どのキャンペーンの何を、なぜ、いくらに動かしたか
- 次の一手があるか。翌月に何を試すのか、その根拠は何か
報告のサンプルは、他社の情報を伏せた形で見せてもらえます。断られる理由はほとんどないので、遠慮せず頼んでください。
報告の頻度と粒度
月次だけの会社と、週次で短い共有がある会社があります。頻度が高ければよいわけではありませんが、在庫が切れそうなときや値上げをしたときに伝える窓口が決まっているかは確かめてください。月1回しか接点がないと、その間に起きたずれを直す手段がありません。
粒度については、キャンペーン単位までしか出ない報告と、検索語単位まで見える報告があります。検索語まで開示されると、こちらの目でも無駄に気づけます。 開示を渋る会社は、作業の中身を見せたくないか、そこまで細かく見ていないかのどちらかです。
自然流入の推移が報告に入るかも見ておきます。広告経由の売上だけが伸びて自然流入が痩せている状態は、広告を止めた瞬間に売上が消えます。
4. 除外キーワードを触っているか
ここが、広告の代行で差がいちばん出る作業です。
Amazonの広告は、放っておくと関係のない検索語にも出ます。「ケース」を売っていて「ケース 100均」で表示される、といったことが日常的に起きます。検索用語レポートを見て、当たっていない語を除外キーワードに入れていく作業を、どれくらいの頻度でやっているかを聞いてください。
質問の形にすると、こうなります。
- 検索用語レポートは何日おきに見ているか
- 直近1か月で、除外キーワードを何語追加したか
- 除外を入れる基準(クリック数や費用のしきい値)はあるか
基準を持っている会社は即答します。「見ています」としか返ってこない場合は、実際の頻度を数字で確認してください。この作業は地味ですが、広告費の無駄がいちばん溜まりやすい場所です。
除外と対になる「入れる」作業
除外は無駄を止める作業で、それだけでは売上は増えません。対になるのが、検索用語レポートで売れている語を見つけ、マニュアルのキャンペーンに移していく作業です。
聞き方はこうなります。
- 直近1か月で、新しくマニュアルに追加した検索語は何語か
- オートで拾った語をマニュアルへ移す基準はあるか
- 移したあと、オート側でその語を除外しているか
3つめまで答えられる会社は、キャンペーン構造を意識して運用しています。同じ語にオートとマニュアルの両方で入札していると、自社の広告どうしで競合してクリック単価が上がることがあります。
5. 契約が終わったあと、何が手元に残るか
広告は、設定そのものが資産です。数か月かけて育てたキャンペーン構造、蓄積した除外キーワード、効いた語のリスト。これが契約終了時に手元に残るかどうかで、次の運用の出発点が変わります。
書面で確認したいのは次の3つです。
- 広告は自社のアカウントで運用されるのか、代行会社のアカウントか
- 解約時に、キャンペーン設定と除外リストはそのまま残るのか
- 判断の基準(どの数字でどう動かしていたか)を文書で渡してもらえるか
代行会社側のアカウントで運用していて、解約したら設定ごと消えた、という話は実際にあります。自社のセラーセントラルの中で運用してもらうのが基本と考えてください。
契約期間と、途中で止めるときの条件
引き継ぎと同じくらい確認しておきたいのが、契約の期間です。
- 最低契約期間は何か月か
- 解約を申し出てから終了までに何か月かかるか
- 期間の途中で止める場合、違約金の定めはあるか
広告の改善は数か月かかるので、最低期間があること自体は不自然ではありません。問題は、期間が長いのに途中で成果を確認する場が無いことです。3か月目に続けるかを話す場を設ける、という取り決めを見積もりの段階で入れておいてください。
年間の支払額に直して比べる
料金の型は、月額だけを見ても比べられません。自社の広告費を当てはめて、年間でいくら払うことになるのかを出してください。
ここでは計算の形を示すために、次の仮の条件を置きます。相場ではなく、あくまで計算例です。
- 月額固定型:月50,000円
- 広告費連動型:広告費の20%
- 売上連動型:広告経由売上の10%
- 広告経由の売上は、ACOSを25%と仮定して広告費の4倍とする
この条件で、月の広告費が10万円・30万円・100万円のときの年間支払額は次のようになります。
| 月の広告費 | 月額固定(月5万円) | 広告費連動(20%) | 売上連動(10%) |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 600,000円 | 240,000円 | 480,000円 |
| 30万円 | 600,000円 | 720,000円 | 1,440,000円 |
| 100万円 | 600,000円 | 2,400,000円 | 4,800,000円 |
内訳です。広告費10万円のとき、広告費連動は10万円×20%=2万円、12か月で24万円。売上連動は広告経由売上40万円×10%=4万円、12か月で48万円。広告費30万円なら、連動型は月6万円で年72万円、売上連動は売上120万円の10%で月12万円、年144万円。広告費100万円なら、連動型は月20万円で年240万円、売上連動は売上400万円の10%で月40万円、年480万円になります。
同じ会社の同じ作業でも、型が違うだけで年額は数倍動きます。 広告費が小さいうちは率のほうが軽く、大きくなるほど固定のほうが軽くなる。この関係は、仮の数字で計算しても、自社の数字で計算しても変わりません。
広告費に対する比率でも見る
年額だけでなく、広告費に対して代行費用が何%にあたるかも出しておくと、重さの実感がつかめます。
| 月の広告費 | 月額固定 | 広告費連動 | 売上連動 |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 50% | 20% | 40% |
| 30万円 | 約16.7% | 20% | 40% |
| 100万円 | 5% | 20% | 40% |
広告費10万円で月額固定5万円なら、広告費の半分にあたる金額を運用のために払う計算になります。この規模だと、代行に出すより先に自社で除外運用を回すほうが手元に残る、という判断も成り立ちます。どちらを選ぶかの軸は自分で運用するか代行に頼むかに整理しました。
なお、この試算は代行費用だけの比較で、広告費そのものは別にかかります。代行費用は、その広告費の効率がどれだけ改善するかで回収するものです。回収の計算は代行に頼むメリット・デメリットの費用の節に置きました。
比較を進める順番とチェックリスト
複数社を並べるときは、金額を最後に見てください。先に金額を見ると、安い会社に有利な理由をあとから探すことになります。順番はこうです。
- 5点の質問を、全社に同じ形で投げる
- 答えを表に書き出す
- 料金の型を自社の広告費に当てはめ、年額を出す
- 年額と、答えの具体性を並べて決める
決める前に、次の項目を確認してください。
- 料金の型を自社の広告費に当てはめ、年間の支払額を出したか
- 最低料金・最低契約期間・解約までの期間を書面で確認したか
- 実際に画面を触る担当者と話したか。その人が持つアカウント数を聞いたか
- 月次レポートのサンプルを見たか。ACOS以外の数字と、次の一手が書かれていたか
- 除外キーワードの更新頻度と、除外を入れる基準を数字で聞いたか
- 広告費を下げる提案をした実例を聞いたか
- 解約後にキャンペーン設定と除外リストが自社のアカウントに残るか
- 広告以外(商品ページ・在庫・価格)の状態を、先に確認したか
最後の項目は見落としやすいところです。広告は、売れる確率を上げる商品ページと、切れない在庫があって初めて効きます。当社が広告の相談を受けるときも、まず商品ページと在庫の状態を見ます。当社の作業範囲と料金は広告運用代行の内容と料金に公開しています。
よくある質問
何社くらい並べれば十分ですか。 3社が扱いやすい数です。2社だと片方が基準になってしまい、5社を超えると質問の投げ方や聞いた内容がそろわなくなって、比較そのものが崩れます。3社に同じ質問を同じ順番で投げ、返答が出そろってから金額を見る、という進め方が現実的です。
提案書に他社の改善事例が載っていました。どこを見ればいいですか。 改善率よりも、開始時点の数値と商品の条件を見てください。ACOSが60%から30%に下がったという事例は、もともと除外キーワードが一つも入っていなかっただけ、ということがあります。自社と近いのは、商品単価・レビュー数・広告費の桁が同じくらいの事例です。数字が伏せられていて条件が分からない事例は、参考として扱わないほうが安全です。
今の代行から乗り換えると、広告の数字は一度落ちますか。 落ちる前提で計画してください。キャンペーンを作り直せば配信の実績が積み上がるまで数週間かかりますし、そのまま引き継いでも判断基準が変わるので調整の期間が要ります。切り替えは、セールや繁忙期を避け、在庫に余裕がある月に設定するのが無難です。既存のキャンペーンと除外リストを消さずに残してもらえるかも、事前に確認しておいてください。
まとめ
- 広告の代行は「月いくら」では比較できない。何を触るのかを質問で確かめる
- 料金の型は、自社の広告費を当てはめて年額で比べる。広告費連動型は、広告費を絞る判断が鈍りやすい構造だと知っておく
- 仮の条件で計算すると、広告費が小さいうちは率、大きくなるほど固定のほうが軽い。年額と、広告費に対する比率の両方で見る
- 実際に画面を触る担当者と契約前に話す。担当が持つアカウント数と、レポートを書いている人まで聞く
- 月次レポートのサンプルを見せてもらう。何をしたか・次に何をするかが書かれているか
- 除外キーワードの更新頻度と基準を数字で聞く。売れた語をマニュアルへ移す作業をしているかも聞く
- 最低契約期間・違約金と、解約後にキャンペーン設定と除外リストが手元に残るかを書面で確認する
この5点と年額の計算は、そのまま面談の準備に使えます。自社の広告のどこが弱いのかを先に把握しておくと、答えを評価しやすくなります。判断がつかない場合は無料の運用診断で現状を整理してから探すのが順番です。
