「ACOSは何%が適正ですか」という質問をよく受けます。結論から言うと、業界平均を調べても答えは出ません。適正値は商品の粗利率によって変わるからです。粗利率40%の商品と15%の商品では、許容できる広告費がまったく違います。

この記事では、自社の数字からACOSの目標値を決める方法と、決めたあとに実際に下げていく手順を書きます。

ACOSとは何を表している数字か

ACOS(Advertising Cost of Sales)は、広告経由の売上に対して、広告費が何%かかったかを表します。

ACOS = 広告費 ÷ 広告経由の売上 × 100

広告費が2万円で、その広告から8万円売れたならACOSは25%です。

ここで注意したいのは、ACOSは「広告経由の売上」だけを分母にしている点です。広告を見ずに買った人の売上は含まれません。全体の売上に対する広告費の比率はTACOS(Total ACOS)と呼ばれ、こちらは別の指標として見る必要があります。

損益分岐ACOSを先に出す

目標を決める前に、赤字になる境界線を知っておきます。これを損益分岐ACOSと呼びます。

計算はシンプルで、広告費を引く前の粗利率がそのまま損益分岐ACOSになります。

損益分岐ACOS = 広告費を除いた粗利 ÷ 販売価格 × 100

例として、3,000円で売っている商品を分解してみます。

項目金額
販売価格3,000円
商品原価900円
販売手数料(15%想定)450円
FBA配送代行手数料434円
保管料・その他50円
広告費を除いた粗利1,166円

この場合、損益分岐ACOSは 1,166 ÷ 3,000 × 100 = 約38.9% です。つまりACOSが39%を超えると、その広告は売るほど赤字になります。

手数料の率はカテゴリーによって、FBA配送代行手数料はサイズと重量によって変わります。必ず自社の商品の実数で計算してください。感覚で「だいたい3割くらい」と置くと、ここが数%ずれるだけで判断が変わります。

目標ACOSは「何をしたい時期か」で決める

損益分岐ACOSが出たら、そこから目標値を決めます。基準は時期によって変わります。

立ち上げ期(発売から数か月)

レビューも販売実績もない段階では、まず買われて実績を作る必要があります。この時期は損益分岐ACOSと同等、または少し超える設定も選択肢になります。広告費で赤字が出ても、レビューと販売履歴という資産が残るためです。

ただし、いつまで許容するかを先に決めてください。「レビューが20件たまるまで」「3か月間」のように終わりを決めておかないと、赤字が慢性化します。

安定期

売れ方が読めるようになったら、損益分岐ACOSの6〜7割を目標にします。先ほどの例なら39%の6〜7割で、24〜27%あたりです。ここに収まっていれば、広告費を払ったあとにも利益が残ります。

拡大期

利益を確保しながら販売数を増やしたい段階では、TACOSを見ながら判断します。ACOSが多少上がっても、広告を見ずに買う人(自然流入)が増えてTACOSが下がっているなら、その広告は市場での位置を取りにいけています。

ACOSを下げるためにやること

目標を決めたら、下げる作業に入ります。効果が出やすい順に並べます。

1. 検索キーワードレポートから除外を設定する

最も即効性があります。広告レポートの「検索キーワードレポート」を開き、次の条件で絞り込んでください。

  • クリックが一定数(目安として20〜30回)以上ある
  • 注文が0件

これらは買われていないのにお金だけ払っている語です。除外キーワードに設定すれば、その分の広告費がそのまま消えます。

この作業だけでACOSが数ポイント改善することは珍しくありません。まずここから着手するのをおすすめします。

2. 成果の出ている語を個別に取り出す

逆に、注文が付いていてACOSも低い語を見つけたら、その語だけを完全一致でキャンペーンに切り出します。予算と入札を独立して管理できるようになり、他の語の動きに引きずられなくなります。

3. 入札額を「実績から」調整する

キーワードごとに、次のように考えます。

  • 注文があり目標ACOSより低い → 入札を上げて露出を増やす(一度に上げるのは10〜20%程度に留める)
  • 注文があるが目標ACOSより高い → 入札を下げる
  • クリックはあるが注文が0 → 入札を大きく下げるか停止する

一度に何十個も動かすと、何が効いたのか分からなくなります。変更は週1回、対象を絞って行うのが結果的に速いです。

4. 商品ページ側を疑う

見落とされがちですが、ACOSが高い原因が広告ではなく商品ページにあることは非常に多いです。

クリックはされているのに買われていない、つまり購入率が低い状態なら、いくら入札を調整してもACOSは下がりません。

  • メイン画像で何の商品か3秒で分かるか
  • 価格が競合と比べて説明できる範囲にあるか
  • レビュー件数と星の数が競合と比べて極端に低くないか
  • サイズや使い方など、購入前の不安が画像で解消されているか

このあたりを競合と並べて見比べてください。広告の調整より効果が大きいことがあります。

見るときの注意点

判断は最低でも2週間の数字で行ってください。Amazonの広告は日ごとの振れ幅が大きく、3日程度の数字で判断すると、たまたま悪かった日を根拠に良いキーワードを止めてしまいます。

また、成果は遅れて計上されます。クリックした人が後日購入した場合、その売上はクリック日に紐づいて記録されます。直近数日のACOSが高く見えるのは、まだ注文が計上されていないだけのことがあります。

まとめ

  • ACOSの適正値は業界平均ではなく、自社の粗利率から逆算して決める
  • まず損益分岐ACOS(広告費を除いた粗利率)を出す
  • 安定期の目標は損益分岐ACOSの6〜7割が目安
  • 下げる作業は「除外設定 → 勝ち語の切り出し → 入札調整 → 商品ページ改善」の順
  • 判断は2週間以上の数字で行い、成果の遅れて計上される分を考慮する

まずは主力商品1つだけでいいので、実際の手数料を入れて損益分岐ACOSを出してみてください。そこが分からないままの広告運用は、ブレーキの効きを知らずに運転しているのと同じです。