広告の成績が読めない原因の多くは、入札でもキーワードでもなく、キャンペーンの分け方にあります。
全部が1つのキャンペーンに入っていると、どの語にいくら使ったのか、どの商品が稼いでいるのかが混ざって見えません。予算を止めるときも、良いものまで一緒に止まります。
この記事では、Amazon広告 キャンペーン構造を「何で分けるか」「どこまで細かくするか」「名前をどう付けるか」「今の構造からどう移すか」の順に整理します。読み終えたときに、自社の商品数に合ったキャンペーンの数と、移行の予定が決まることを目指します。
分ける目的は「別々に止められるようにする」こと
構造を考えるときの原則はひとつです。別々に評価して、別々に止めたいものは、別のキャンペーンにする。
逆に言えば、いつも一緒に増減させるものは、分ける必要がありません。分けすぎると管理が増えるだけで、データも薄まります。
この原則から、分ける軸は次の3つになります。
軸1:役割で分ける
いちばん重要な軸です。役割が違えば、見る指標も、止める基準も違います。
| 役割 | 中身 | 評価の物差し |
|---|---|---|
| 探索 | オート広告 | 新しい語がいくつ出たか |
| 主力 | 売れている語(完全一致) | ACOS |
| 育成 | これから伸ばしたい語 | 期限内に改善しているか |
| 防衛 | 自社ブランド名・型番 | 取りこぼしがないか |
探索キャンペーンをACOSで評価すると、どうしても「悪い」と判定されます。役割が調査だからです。オートとマニュアルの役割の違いはオート広告とマニュアル広告の使い分けに整理しています。同じ物差しで全部を評価しないために、役割で分けます。
軸2:商品で分ける
利益率が大きく違う商品を同じキャンペーンに入れると、予算の取り合いが起きます。粗利の薄い商品が予算を食って、稼げる商品が日予算で止まる、ということが実際に起こります。
分ける目安は次のとおりです。
粗利率が大きく違う商品は分ける。 損益分岐ACOSが違うので、同じ目標ACOSで管理できません。
シリーズ・カテゴリーが違う商品は分ける。 狙うキーワードが重ならないなら、混ぜる理由がありません。
逆に、サイズ違い・色違いは分けなくてよい。 同じ語で戦い、同じように増減させるからです。
商品数が10を超えてきたら、主力の数商品だけ個別キャンペーンにして、残りはまとめるのが現実的です。全部を個別にすると管理が回りません。
仮に商品が20点あるとします。すべてを個別キャンペーンにすると20キャンペーンになり、1つあたりの広告費が薄くなって、どれも判断できるだけのクリック数がたまりません。売上の上位3〜5商品を個別に持ち、残りを粗利率の近さで2〜3のグループにまとめれば、キャンペーン数は7前後に収まります。この規模なら週に1度、全部のレポートに目を通せます。週次で全部を見きれる数に収まっているかが、分けすぎかどうかの実用的な線引きです。キャンペーンごとの予算の置き方は広告予算の配分の考え方にまとめています。
軸3:一致タイプで分ける
同じ語でも、完全一致・フレーズ一致・部分一致では、拾う範囲も単価も違います。混ぜると、どの一致タイプが効いているのか分からなくなります。
実務では次の形が扱いやすいです。
- 完全一致のキャンペーン:売れると分かっている語。入札を強めに
- フレーズ一致のキャンペーン:関連語を拾いにいく。中程度
- 部分一致:探索に近いので、オートと同じ扱いでよい
同じ語を複数の一致タイプで持つ場合、狭いほうを優先させます。完全一致で持っている語は、フレーズ一致側で除外キーワードに入れておくと、自社内で競り合いません。
広告グループはどこまで細かくするか
キャンペーンの下に広告グループがあります。ここも分けられますが、細かくしすぎると1グループあたりのデータが少なくなり、判断できなくなります。
目安は、1広告グループに登録するキーワードは10〜20語まで。
そして1広告グループには意味の近い語だけを入れます。入札は広告グループ単位で初期値を持つので、性質の違う語を混ぜると、どちらかに合わない入札になります。
商品は、1広告グループに1商品(または1バリエーション群)が基本です。複数商品を入れると、どの商品にクリックが流れたか分かりにくくなります。
命名規則を先に決める
キャンペーンが増えてくると、名前を見ただけで中身が分かるかどうかで作業速度が変わります。
決めておく要素は次の4つです。
- 商品(またはシリーズ)
- 広告の種類(SP / SB / SD)
- 役割(探索 / 主力 / 育成 / 防衛)
- 一致タイプ(完全 / フレーズ / 部分 / 商品ターゲティング)
区切り文字を統一して、この順番で固定します。並べ替えたときに同じ商品がまとまるよう、商品名を先頭に置くのが実務的です。
| 要素 | 例 |
|---|---|
| 商品(先頭) | ハンドクリーム |
| 広告の種類 | SP |
| 役割 | 主力 |
| 一致タイプ | 完全 |
つなげると「ハンドクリーム_SP_主力_完全」という名前になります。管理画面でキャンペーン名の昇順に並べれば同じ商品が固まり、名前で絞り込めば「主力だけ」「探索だけ」を一覧できます。日付や担当者名を名前に入れるのは避けてください。あとで意味が変わり、並べ替えの邪魔になります。
途中で規則を変えると過去との比較ができなくなるので、最初に決めて変えないでください。
作り直すときの手順
すでに全部が1キャンペーンに入っている場合、いきなり作り直すと順位も成績もリセットされます。次の順で移します。
1. 新しい構造のキャンペーンを作る。 ただし予算は少額で開始。
2. 実績のある語から順に移す。 検索用語レポートで注文が出ている語を、新しい完全一致キャンペーンへ。
3. 移した語は、旧キャンペーンで除外キーワードに入れる。 これを忘れると自社内で競り合います。
4. 新しい側が安定したら、旧キャンペーンの予算を段階的に下げる。
5. 最後に旧キャンペーンを止める。
移した語を旧キャンペーンで除外する手順は除外キーワードの決め方と同じ考え方です。
よくある失敗は2つあります。ひとつは、新旧を同時に全開で回すことです。新しい完全一致キャンペーンを強めの入札で立ち上げ、旧キャンペーンもそのまま動かしていると、同じ語に自社の広告が2つ入札します。クリック単価が上がるだけで売上は増えません。手順の3番を飛ばさないでください。もうひとつは、繁忙期の直前に作り直すことです。移行中の2〜4週間は数字が読みにくくなるので、需要が落ち着いている時期を選んでください。
一度に切り替えると、移行中に売上が落ちます。2〜4週間かけて移すつもりで組んでください。
4週間の移行予定の例
主力の語が10語ほどある場合の進め方の例です。週の数は目安で、語の数や注文の量に合わせて伸ばしてください。
| 週 | やること | 旧キャンペーン | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 新しい構造を作り、注文の多い上位3〜5語を完全一致へ移す | 移した語を除外に入れる。予算はそのまま | 新しい側で移した語に表示とクリックが出ているか |
| 2週目 | 残りの注文実績のある語を移す | 移した語を除外に追加。予算を2〜3割下げる | 全体の注文数が移行前の週と大きく変わっていないか |
| 3週目 | オートとフレーズ一致の探索用キャンペーンを新しい命名で整える | 予算をさらに下げる | 新しい側のACOSが旧キャンペーンと同じ水準か |
| 4週目 | 移し漏れがないか検索用語レポートで確認する | 停止する(削除はしない) | 4週間の注文数と広告費を移行前の4週間と比べる |
判断の基準は、全体の注文数が移行前と同じ水準を保てているかです。仮に移行前の4週間で注文が200件なら、移行中の週ごとの注文が40件を大きく割り込む週が続いたときは、移す速さを落とします。新しい側のキャンペーンはクリックの実績がない状態から始まるので、最初の1〜2週間は表示が出にくいことがあります。入札の置き方は入札額の決め方を参考にしてください。
よくある質問
スポンサーブランドやディスプレイも、同じ分け方でよいですか。 役割で分けるという原則は同じですが、混ぜないでください。広告の種類が違うと見る指標が変わります。スポンサープロダクトはACOS、スポンサーブランドは新規顧客の比率やブランド指名の伸び、ディスプレイは再訪と補完商品からの流入で見ます。同じキャンペーン群にまとめると、種類ごとの成績が分からなくなります。命名規則に広告の種類を入れておくのは、このためです。
一度作ったキャンペーンの名前は、あとから変えられますか。数字は消えますか。 名前は変更でき、過去の実績もそのまま残ります。ただしレポートを名前で突き合わせている場合、変更前後で別物として並ぶので、月次の比較がしづらくなります。どうしても直すなら、月初か期の変わり目にまとめて実施し、変更前後の対応表を1枚残してください。頻繁に変えるくらいなら、最初に決めた規則を守るほうが結局は楽です。
商品を廃番にしたら、そのキャンペーンは削除すべきですか。 削除ではなく、停止にしてください。Amazonの広告は削除すると設定が戻せなくなり、そのキャンペーンで積み上げた検索用語のデータも参照しづらくなります。停止であれば、同じ系統の商品を出すときに除外リストや勝ち語をそのまま流用できます。名前の先頭に停止年月を足しておくと、並べ替えたときに現役のキャンペーンと混ざりません。
キャンペーンの数はいくつまでが適切ですか。 数そのものより、週に一度ですべてのレポートに目を通せるかで決めてください。目安として、1つのキャンペーンに週に数十クリック以上たまらないなら、分けすぎです。判断できるだけのデータがたまらず、どのキャンペーンも「様子見」のまま止まります。その場合は、粗利率の近い商品や、役割が同じキャンペーン同士をまとめ直します。週次で見る項目は週に一度の運用チェックにまとめています。
まとめ
- 分ける原則は「別々に評価して、別々に止めたいものを分ける」
- 軸は3つ。役割(探索・主力・育成・防衛)、商品(粗利率が違うものは分ける)、一致タイプ
- サイズ違い・色違いは分けなくてよい
- 広告グループは1つ10〜20語、意味の近い語だけ、商品は1つ
- 同じ語を複数の一致タイプで持つときは、狭いほうを優先し、広いほうで除外する
- 命名規則(商品・種類・役割・一致タイプ)を最初に決めて変えない
- 作り直すときは2〜4週間かけて段階的に移し、全体の注文数が保てているかで速さを決める
構造がきちんと分かれていれば、あとの判断はレポートを見るだけで済みます。逆に構造が混ざっていると、どんなに数字を見ても答えが出ません。今のアカウントのどこが混ざっているかは無料の運用診断で確認できます。構造の作り直しから任せたい場合は、Amazon広告の運用代行の内容と料金を見てください。
