運用代行を頼んだものの、思っていたのと違った。そういう相談を受けることがあります。話を聞いていくと、トラブルの多くは運用の途中ではなく、契約する前の確認不足から始まっています。
この記事では、実際に起きやすい失敗を6つ挙げて、それぞれ契約前のどの確認で防げるかを書きます。当社に頼むかどうかとは関係なく、どこに依頼する場合でも使える内容です。
失敗1:何を任せたのかが、双方で食い違っている
いちばん多いのがこれです。依頼した側は「Amazonの売上を伸ばすこと全部」と思っていて、受けた側は「広告の運用だけ」と思っている、という食い違いです。
商品ページの改善、画像の差し替え、在庫の発注、価格の見直し、レビューへの対応。どれも売上に効きますが、どこまでが契約範囲かは会社によってまったく違います。
防ぎ方は、契約前に作業項目を並べて、1つずつ「やる/やらない/別料金」を埋めてもらうことです。
| 作業 | 範囲に入るか |
|---|---|
| 広告のキャンペーン作成・入札調整 | |
| 除外キーワードの追加 | |
| 商品名・箇条書きの修正 | |
| 画像・A+の制作 | |
| 価格の変更提案 | |
| 在庫数の管理・発注提案 | |
| レビュー・Q&Aへの対応 |
この表を埋めてもらうだけで、認識のずれはかなり減ります。埋めるのを嫌がる相手なら、その時点で判断材料になります。
よくあるのは、契約から2〜3か月たって「商品ページも直してくれると思っていた」と気づくパターンです。広告のACOSは下がったのに、商品ページの画像が弱いまま購入率が上がらず、売上が横ばいで終わる。代行側は契約どおりに広告を回しているので、どちらが悪いという話にもなりません。
表には、範囲外の作業を頼みたくなったときの扱いも1行足しておきます。
- 範囲外の作業を頼むときは、誰に・どう頼むか(メールか、定例か)
- 別料金になる場合、見積もりはいつ出るか
- 月の作業時間に上限がある場合、超えたときはどうなるか
ここまで決めておけば、途中で頼みたいことが出てきても、揉めずに話を進められます。
失敗2:報告が読めず、誰がやっているかも分からない
報告が数字の羅列になっている
管理画面から出力したレポートがそのまま送られてくるだけ、というケースです。数字は載っているのですが、今月何をして、その結果どうなったのかが書かれていません。
これが続くと、成果が出ていないときに原因を追えません。担当者が変わったときも引き継げません。
防ぐには、契約前に過去の報告書のサンプルを1本見せてもらうことです。実際の顧客名は伏せてもらって構いません。見るのは次の3点です。
- 今月やった作業が、具体的に書かれているか
- 数字が前月と比較されているか
- 来月やることが書かれているか
この3つが揃っていない報告書は、読んでも判断に使えません。
もう1つ見ておきたいのが、広告の管理画面の数字だけでなく、広告以外も含めた総売上が載っているかです。広告費を絞ればACOSは簡単に下がるので、ACOSの改善だけを報告されると、総売上が落ちていることに気づけません。報告書で見る数字と順番は広告代行のレポートの見方にまとめています。
担当者が誰か分からないまま始まる
営業の場に出てきた人と、実際に運用する人が違うことはよくあります。それ自体は問題ありませんが、実務の担当者が何人の案件を持っているかは確認しておいたほうがよいです。
聞くのは次の2つで足ります。
- 実際に画面を触るのは誰か。営業担当と同じ人か、別か
- その人が同時に持っている案件は何件くらいか
件数が多いこと自体が悪いわけではありません。ただ、担当が多いほど、月次の作業は定型化されます。個別の判断を期待して頼むなら、そこは事前に握っておく話です。
失敗3:広告費と代行費の区別があいまい
「月◯万円」と言われたときに、それが代行費だけなのか、広告費込みなのかがはっきりしていないことがあります。
料金の型には主に次の3つがあります。
- 固定制:毎月定額。売上が伸びても費用は変わらない
- 成果報酬:売上や広告経由売上に対する割合。伸びると費用も増える
- 併用:固定+成果報酬
どれが良いという話ではなく、自社の売上規模でいくらになるかを、両方の型で試算してもらうのが確かな進め方です。成果報酬の場合は、何を分母にするか(総売上か、広告経由売上か、粗利か)で金額が大きく変わります。ここは口頭ではなく文面で確認してください。
分母の違いで金額がどれだけ変わるかを、仮の数字で見ておきます。月の総売上300万円、そのうち広告経由売上100万円、広告費を引く前の粗利90万円と仮定し、料率はどれも10%とします。
| 成果報酬の分母(仮定) | 分母の金額 | 10%の報酬 |
|---|---|---|
| 総売上 | 3,000,000円 | 300,000円 |
| 広告経由売上 | 1,000,000円 | 100,000円 |
| 粗利 | 900,000円 | 90,000円 |
同じ「10%」でも、分母が総売上なら月30万円、広告経由売上なら月10万円で、3倍の差になります。総売上が分母の場合、もともと広告なしで売れていた分にも報酬がかかります。「何の何%か」を、分母の定義まで文面で残すことが、費用の食い違いを防ぐ近道です。
料金の型ごとの違いは運用代行の費用と選び方に整理しています。
失敗4:権限と引き渡しを決めないまま始めている
アカウントの権限を渡しすぎている
セラーセントラルのユーザー権限を、必要以上に広く渡してしまうケースです。広告の運用だけを頼んでいるのに、出品情報の削除や銀行口座の設定まで触れる権限が付いていることがあります。
セラーセントラルはユーザーごとに権限を細かく設定できます。契約時に、必要な権限だけを付けて、契約終了時に外すという手順を決めておいてください。これは相手を疑うという話ではなく、事故を防ぐための普通の管理です。
辞めるときに何も残らない
契約を終えたあと、キャンペーンの設計意図も、除外キーワードのリストも、何をどう変えたかの記録も残っていない。次の担当者がゼロから作り直すことになります。
これを防ぐには、契約前に終了時に何を引き渡すかを決めておきます。
- 広告アカウントの管理権限(代行会社側のアカウントで作られていないか)
- 除外キーワードのリスト
- 変更履歴(商品ページをいつ何に変えたか)
- 月次報告の全ファイル
特に注意したいのが1つ目です。広告アカウントが代行会社の持ち物として作られていると、辞めた時点でデータごと使えなくなることがあります。自社のアカウント配下で運用されているかは、始める前に確認しておく項目です。解約と引き継ぎの段取りは代行の解約と引き継ぎに詳しく書いています。
失敗したときの損失を、仮の数字で見積もる
契約前の確認を面倒に感じるのは、失敗したときの損がどれくらいかが見えていないからです。仮の数字で並べてみます。
条件は次のとおりと仮定します。代行費は月50,000円、最低契約期間は6か月。食い違いに気づくのが3か月目、そこから乗り換え先が立ち上がるまでに2か月かかるとします。
| 損の中身(仮定) | 金額・期間の目安 | 計算 |
|---|---|---|
| 合わないと分かってからの残り契約期間の代行費 | 150,000円 | 50,000円×3か月 |
| 引き継ぎ資料がなく、乗り換え先が作り直す初期費用 | 100,000円 | 初期設計のやり直しと仮定 |
| 立ち上げ直しの2か月の売上の落ち込み | 粗利で数十万円 | 月の粗利が仮に20%落ちる場合など |
| 社内で状況を整理し直す時間 | 担当者の数日分 | 過去の変更履歴を掘り起こす作業 |
代行費の残りと作り直しの費用だけで25万円、売上の落ち込みを入れればさらに大きくなります。一方で、契約前に範囲表を埋め、報告書のサンプルを見て、引き渡し物を決める作業は、面談1回と数日のやり取りで済みます。確認にかかる手間は、失敗したときの損と比べればごく小さいというのが、この表から分かることです。
最低契約期間が長いほど、残りの代行費は大きくなります。初めての会社と契約するなら、最低契約期間を短くしてもらえないか、試しの期間を設けられないかを最初に聞いておくと、損の上限を小さくできます。契約書で見る項目は代行の契約書で確認する項目にまとめています。
契約前に投げる質問を、まとめておく
ここまでの内容を、そのまま聞ける形にすると次のようになります。初回の面談で全部聞いて構いません。
- 作業範囲の表を埋めてもらえますか
- 過去の月次報告のサンプルを1本見せてもらえますか
- 実際に画面を触る担当者は誰で、何件持っていますか
- 当社の売上規模だと、月いくらになりますか(固定・成果報酬の両方で)
- セラーセントラルの権限はどこまで必要ですか
- 契約終了時に引き渡してもらえるものは何ですか
6つの失敗と、それを防ぐ確認、確認するタイミングを1枚にすると次のようになります。面談の前に印刷して手元に置いておくと、聞き漏れを防げます。
| 失敗 | 防ぐための確認 | いつ確認するか |
|---|---|---|
| 任せた範囲が食い違う | 作業範囲の表を「やる/やらない/別料金」で埋めてもらう | 初回の面談 |
| 報告が読めない | 過去の月次報告のサンプルを見る | 初回の面談 |
| 担当者が分からない | 実務の担当者と、持っている案件数を聞く | 初回の面談 |
| 広告費と代行費が混ざる | 自社の売上規模での試算を、分母の定義つきで文面でもらう | 見積もりの受け取り時 |
| 権限を渡しすぎる | 必要な権限の一覧をもらい、終了時に外す手順を決める | 契約の直前 |
| 辞めるときに何も残らない | 引き渡し物の一覧と、広告アカウントの持ち主を確認する | 契約の直前 |
答えづらそうにする質問があれば、そこが自社にとってのリスクです。金額の安さより、この6つに具体的に答えられるかどうかで選ぶほうが、結果として安くつきます。
よくある質問
契約後に「思っていたのと違う」と気づいたら、どうすればよいですか。 まず、契約書の作業範囲と、実際に行われている作業を並べます。ずれが範囲の解釈にあるなら、範囲表を作り直して合意を取り直すほうが早く済みます。ずれが成果にあるなら、いつまでに何をどこまで戻すかを決め、期限を区切って様子を見てください。感情で切ると、引き渡しがうまく進みません。
小規模でも代行を頼む意味はありますか。 作業量より、判断の材料が足りているかで決まります。自社で数字を出せていない段階なら、代行より先に現状の整理を頼むほうが費用対効果は高くなります。何を持って相談すればよいかは個人・小規模での相談の準備にまとめています。
引き渡しのときに何を受け取るべきですか。 広告アカウントと各キャンペーンの設定、除外キーワードの一覧、商品ページの原稿データ、月次の報告書一式、作業の手順書です。「アカウントに残っているから大丈夫」は引き渡しではありません。 契約が終わればアクセスできなくなるので、始める前に受け取る形を決めてください。当社の支援範囲はAmazon運用代行のページに書いています。
成果が出ないのは、代行会社のせいか自社のせいか、どう見分ければよいですか。 代行側の作業の記録と、自社側から出すべき情報(在庫の予定、価格の変更、新商品の時期)が期日どおりに出ていたかを並べます。在庫切れや価格の急な変更で広告の成果が崩れている月は、代行側の作業だけでは取り返せません。どちらか一方の問題と決める前に、双方の約束が守られていたかを月ごとに確認してください。成果が出るまでの期間の目安は代行の成果が出るまでの期間を参考にしてください。
複数の会社を比べるとき、何を揃えて比べればよいですか。 同じ作業範囲の表を各社に渡し、同じ売上規模の前提で年額の試算を出してもらいます。条件が揃っていない見積もりは並べても比較になりません。比べる観点は運用代行の比較の5つの点にまとめています。
まとめ
- 運用代行の失敗は、運用中ではなく契約前の確認不足から始まることが多い
- 作業範囲は表にして「やる/やらない/別料金」を1つずつ埋めてもらう
- 報告書はサンプルを事前に見る。作業内容・前月比較・来月の予定が揃っているかを見る
- 料金は代行費と広告費を分けて、自社の規模での試算を文面でもらう
- セラーセントラルの権限は必要な分だけ渡し、終了時に外す手順を決めておく
- 広告アカウントが自社の持ち物になっているか、引き渡し物は何かを始める前に決める
当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。他社から引き継ぐ形の相談も受けますが、その際にいちばん時間がかかるのが「前の運用で何をしていたか分からない」状態の整理です。いま代行を検討している方は、契約前に上の6つを聞いてみてください。現状の整理から始めたい場合は無料の運用診断を、個別の事情がある場合はご相談からお声がけください。
