広告は毎週・毎月の調整で回せますが、それだけだと半年もすると埃が溜まります。

止めたつもりで動いているキャンペーン、もう売っていない商品の広告グループ、意味を忘れた除外キーワード。どれも単体では小さいのですが、合わせると無視できない金額になります。

半期に一度、2時間ほど取って棚卸しをします。この記事は、Amazon広告 アカウント 棚卸しの手順と、止める・外すの判断基準、やりがちな失敗までをまとめたものです。

2時間の配分を先に決める

棚卸しが続かない理由の多くは、終わりが見えないことです。全部を丁寧に見ようとすると半日かかり、次の半期には手が付かなくなります。先に時間の配分を決めて、その枠の中で終わらせます。キャンペーン数が20前後のアカウントを想定した目安です。

時間作業終わりの基準
0〜15分レポート3種を出してシートに並べる3つのCSVが1つのシートの別タブに入っている
15〜35分ステップ1・2(成果ゼロのキャンペーン、売っていない商品)止める・外す候補の一覧ができている
35〜65分ステップ3(重複した語)重複語の一覧と、残すキャンペーンが決まっている
65〜85分ステップ4(除外の見直し)外す除外と、2週間様子を見る除外が分かれている
85〜105分ステップ5・6(入札と予算)計算し直す入札と、移す予算の額が決まっている
105〜120分記録を残し、変更を入れる日を決める記録シートが埋まっている

キャンペーン数が50を超えるなら、ステップ3と4に時間を倍とり、2日に分けます。1日で全部やろうとして後半が雑になるより、分けたほうが結果は良くなります。

準備:直近6か月のレポートを出す

始める前に、次の3つを期間6か月で出しておきます。

  • キャンペーン別の実績(広告費・売上・ACOS)
  • 検索用語レポート
  • 広告掲載商品レポート(ASIN別)

CSVで落として、スプレッドシートに並べておくと作業が速くなります。レポートの種類と役割は広告レポートの見方にまとめています。

見る項目は6つです。作業に入る前に、この表を手元に置いてください。

項目見るもの判断
成果ゼロのキャンペーンキャンペーン別実績6か月ずっと売上0なら止める(防衛枠は除く)
売っていない商品の広告広告掲載商品レポート在庫管理にないASINは外す
重複した語登録キーワードの一覧狭い一致タイプを残し広いほうで除外
古くなった除外除外キーワードの一覧広すぎるもの・不要になったものを外す
入札額価格・原価・手数料の変更変わっていたら上限を計算し直す
予算の配分キャンペーン別実績広告費の多い順に粗利を確認する

棚卸しの6ステップ

1. 動いているのに成果ゼロのものを止める

まずキャンペーン別の実績を、広告費が発生していて売上が0という条件で絞ります。

半年間ずっと0なら、迷わず止めます。ここに残っているのは、たいてい次のどれかです。

  • テストで作ってそのままにしたキャンペーン
  • 販売をやめた商品の広告
  • 一時的に上げて戻し忘れた育成枠

止める前に、そのキャンペーンが防衛目的でないかだけ確認してください。自社ブランド名のキャンペーンは、売上が広告経由で立たなくても取りこぼし防止の役目があります。

2. 売っていない商品の広告を外す

広告掲載商品レポートのASIN一覧と、現在の在庫管理画面のSKU一覧を突き合わせます。

在庫管理にないASINが広告に残っていたら外します。 販売終了した商品、統合してなくなったASIN、在庫を切らしたまま戻していない商品。

在庫切れの商品は広告が配信されないので費用は出ませんが、残しておくと再開時に古い設定のまま動き出します。入札も除外も半年前のままなので、いったん外して、再開時に作り直すほうが安全です。

3. 重複している語を整理する

これがいちばん見落とされます。同じ語を複数のキャンペーンで持っていると、自社内で入札を競り合って単価が上がります。

やり方はシンプルです。

  1. 全キャンペーンの登録キーワードを1つのシートに集める
  2. 語で並べ替える
  3. 2回以上出てくる語を抜き出す

重複していたら、狭い一致タイプを残し、広いほうで除外します。完全一致で持っている語は、フレーズ一致・部分一致・オートのキャンペーンで除外キーワードに入れます。

商品ターゲティングのASINも同じです。同じASINを複数キャンペーンで狙っていないか確認します。そもそも重複が起きにくい持ち方はキャンペーン構造の作り方に整理しています。

重複を解くとどれくらい効くのかは、金額に直すと分かりやすくなります。仮に、完全一致・フレーズ一致・オートの3つで同じ語を持っていて、その語のクリック単価が60円、月120クリックだったとします。自社内での競り合いを解いてクリック単価が50円に下がれば、その語だけで月1,200円、年間で1万4,400円の差になります。同じ状態の語が10あれば年間14万円です。1語あたりが小さいので後回しにされますが、まとめると無視できない金額になります。

4. 除外キーワードを見直す

除外は「入れたら永久に正しい」ものではありません。半年で状況が変わります。

見るのは2種類です。

広く外しすぎている除外。 フレーズ一致で入れた除外が、いまは売れる語まで巻き込んでいることがあります。特に商品ラインナップが増えたときに起こります。「業務用」を除外していたが、その後に業務用サイズを出した、というケースです。

もう不要な除外。 一時的な事情(在庫切れ、価格改定中)で入れた除外が残っていないか。

判断がつかない除外は、外して2週間様子を見るのが早いです。悪化したら戻します。外す語と残す語の線引きは除外キーワードの決め方に書いています。

5. 入札額が古くなっていないか見る

半年前に決めた入札は、いまの粗利と合っていない可能性があります。

次が変わっていたら、入札の上限を計算し直します。

  • 販売価格を変えた
  • 原価が変わった(仕入れ値、為替、送料)
  • FBAの手数料区分が変わった(サイズ・重量の変更、料金改定)

入札上限は「広告費を除いた粗利 × その語の転換率」で出す1クリックあたりの粗利です。手数料の率や金額はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数に置き換えて計算し直してください。

6. 予算の配分を見直す

最後に、半年間で稼いだキャンペーンと、使っただけのキャンペーンを並べます。

広告費の多い順に並べ替えて、上位から粗利を確認します。広告費を多く使っているのに粗利が薄いキャンペーンは、予算を減らします。

日予算に対する消化率も見ます。毎日使い切っていて、かつACOSが損益分岐を下回っているキャンペーンは、予算が足りていません。ここに回します。

配分を動かす前に、「動かせる原資がいくらあるか」を先に出します。仮に月の広告費が30万円で、そのうち半年間ずっと注文の出ていないキャンペーンに4万円が流れていたとすると、原資は4万円です。この4万円を、日予算を毎日使い切っていてACOSが損益分岐を下回っている枠に移します。全体の広告費を増やさずに、成果の出ている枠だけを太らせる形です。増額は一度に倍にせず、まず3割ずつ足して2週間ごとに数字を見てください。配分の考え方そのものは広告予算の配分にまとめています。

記録を残す

棚卸しの最後に、次を1枚にまとめて残してください。

  • 止めたキャンペーンと、その理由
  • 外した語・ASIN
  • 変えた入札と、変更前後の値
  • 予算をどこからどこへ移したか

次の半期に同じことを繰り返さないための材料になります。特に「止めた理由」は、翌年に同じ施策をまた試してしまうのを防げます。

記録はスプレッドシート1枚で足ります。列はこの形にしておくと、次の半期に比べやすくなります。

日付対象(キャンペーン・語・ASIN)変更内容変更前変更後理由2週間後の結果
変更した日例:オート枠A停止稼働停止6か月売上0全体の売上に変化なし
変更した日例:語「〇〇 業務用」除外を解除除外解除業務用サイズを発売2週間でACOSは損益分岐内

最後の「2週間後の結果」の列を空けておき、2週間後に埋めます。ここが埋まっていると、次の棚卸しで「前回これを止めて問題なかった」と判断の根拠が残ります。

棚卸しでよくある失敗

手順どおりに進めても、やり方を間違えると成績を落とします。よく見る失敗を3つ挙げます。

1. 6項目を同じ日に全部入れる。 停止・除外の解除・入札の変更・予算の移動を同じ日に入れると、その後に数字が落ちたとき、どの変更が原因か分かりません。変更は「止める・外す」系と「入札・予算」系の2つに分け、1週間ずらして入れます。

2. 防衛枠まで止めてしまう。 自社ブランド名のキャンペーンは、広告経由の売上が小さく見えるので、成果ゼロに近い枠として止められがちです。止めた直後に、自社ブランド名の検索結果の上部に他社の広告が並び、自然検索からの売上が落ちることがあります。ブランド名を含む語のキャンペーンは、ステップ1の対象から最初に外しておきます。

3. セールの直前にやる。 大きなセールの2週間前に棚卸しをすると、変更の影響を確かめる前にセールが始まります。セールの前後は需要が大きく動くので、変更の良し悪しも判断できません。棚卸しはセールの1か月以上前か、セールが終わって2週間たってから行います。セールの準備の流れはプライムデーの準備にまとめています。

よくある質問

半期に一度ではなく、毎月やってはいけませんか。 やっても悪くはありませんが、ここで挙げた6項目は半年かけて溜まるものなので、毎月やっても対象がほとんど出ません。作業時間だけが増えます。毎月見るべきなのは、検索用語レポートからの除外と、日予算で止まっているキャンペーンの2つです。この2つを月次で回し、半年に一度だけ棚卸しで全体をさらう、という分担が現実的です。

棚卸しの直後に成績が落ちました。全部戻すべきですか。 全部は戻さないでください。棚卸しでは複数の変更を同じ日に入れているので、まとめて戻すと何が原因だったのか分からなくなります。落ちた項目を特定するために、影響範囲の広い順に1つずつ戻します。多くの場合、犯人は「広く外しすぎた除外」か「入札の下げすぎ」のどちらかです。次回からは、変更を2つのグループに分けて1週間ずらして入れると、原因の切り分けが楽になります。

運用を代行に頼んでいる場合、棚卸しは誰がやりますか。 契約の作業範囲によります。月次の調整だけが範囲で、棚卸しは別料金という会社もあります。頼む側で確認したいのは、半期の棚卸しが含まれるか、含まれるなら何を見るか、その結果を報告書に残すか、の3点です。含まれない場合は、この記事の6項目を自社で回すか、単発で依頼するかを決めてください。作業範囲の考え方は広告運用代行の内容に公開しています。

商品が1〜2点しかない小さなアカウントでも必要ですか。 必要ですが、時間は30分ほどで足ります。商品が少ないアカウントで溜まりやすいのは、重複した語と古い除外の2つです。ステップ3と4だけを丁寧に見て、残りは一覧を眺めて異常がないかを確かめる程度で十分です。広告費が月数万円の規模でも、重複語の整理で浮いた分は、そのまま売れている語の予算に回せます。

まとめ

  • 半期に一度、6か月分のレポート3種(キャンペーン別・検索用語・広告掲載商品)を出して始める
  • 成果ゼロで費用が出ているキャンペーンを止める。ただし防衛枠は別扱い
  • 在庫管理にないASINの広告を外す。在庫切れ商品は残さず、再開時に作り直す
  • 重複した語を洗い出し、狭い一致タイプを残して広いほうで除外する
  • 除外キーワードは、広すぎるもの・不要になったものを外す。迷ったら外して2週間見る
  • 価格・原価・手数料が変わっていたら入札上限を計算し直す
  • 広告費の多い順に粗利を確認し、予算を配分し直す
  • 止めた理由まで含めて記録に残し、2週間後の結果を書き足す
  • 変更は2つに分けて1週間ずらして入れ、セールの直前は避ける

日々の調整では拾えないものだけを対象にする作業です。半年に一度、2時間で終わります。自社のアカウントにどれだけ無駄が溜まっているか見当がつかない場合は、Amazon運用の無料診断で現状を整理できます。