「広告費が重いので一度全部止めたい」という相談はよくあります。

止めること自体は判断としてあり得ます。ただ、一気に止めると広告費以外のところまで落ちることがあります。しかも落ちてから戻すには、止めたときより時間がかかります。

この記事では、止めたときに何が連鎖するのかを整理して、落とし方の手順を書きます。

止めると連鎖する3つのこと

広告を止めて減るのは広告費だけではありません。順番に見ます。

1. 広告経由の売上がなくなる

これは想定どおりです。広告レポートに出ている売上が、そのまま消えます。

2. 自然検索の順位が下がることがある

Amazonの検索順位は、その語での販売実績が効きます。広告で売れていた分も、その語の実績として積み上がっています。

つまり、広告を止めるとその語での販売数が減り、結果として自然検索の順位も下がるという連鎖が起きます。「広告費の分だけ利益が増えるはず」と計算していると、自然検索の売上まで減って合計が悪化することがあります。

3. 在庫の回転が落ちる

売れる数が減れば、在庫は動かなくなります。FBAに送った在庫の保管期間が延び、保管料が積み上がります。保管料の料率はサイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。

さらに、在庫パフォーマンスの指標が悪くなると、補充の上限に影響が出る場合もあります。

この3つはどれも、止めた翌日には見えません。 数週間かけてじわじわ出てきます。だから「止めたけど大丈夫だった」という初期の感触は当てになりません。

止める前に、目的を1つに決める

止め方は目的によって変わります。まずどれなのかを決めてください。

A. 資金繰りのために支出を減らしたい

一時的に出金を止めたい、という話です。この場合は「戻す前提」で止めます。順位を守ることを優先します。

B. 赤字の商品・語を切りたい

全部ではなく、赤字の部分だけを切る話です。これは止めるというより整理です。全停止する必要はありません。

C. 在庫が切れそう/切れた

売る在庫がないので広告を出す意味がない、という状態です。これは即止めて問題ありません。むしろ止めるべきです。

D. 商品を撤退させる

もう売らない商品です。在庫を処分しながら止めていきます。

目的止め方最後まで残すもの
A 資金繰り段階的に落とす(戻す前提)主力の語と指名語
B 赤字の整理赤字の語だけを止める黒字の語はそのまま
C 在庫切れ即時に止めるなし(在庫が戻るまで)
D 撤退在庫処分の進み方に合わせて落とす処分が終わるまで最低限の枠

目的を決めずに「とりあえず全部止める」をやると、Bで済んだはずの話がAの被害まで出す、ということが起きます。Bにあたる整理の手順はACOSが高いときの対処と除外キーワードの決め方に書いています。

止める前に確かめる5つの項目

目的を決めたら、手を付ける前に次の5つを確かめます。1つでも「いいえ」があれば、全停止ではなく段階的に落とす側を選んでください。

確かめる項目はいのときいいえのとき
広告経由の売上が全体の何割か分かっている止めたあとの売上の減り方を見積もれる先にビジネスレポートと広告レポートで割合を出す
自然検索で上位にいる主力の語が分かっているその語だけ残す判断ができる主力の語を検索して位置を確かめてから止める
止める前2週間の数字を記録した止めたあとの比較ができる記録してから止める
在庫の残り日数と次の入荷日が分かっている在庫に合わせて止める速さを決められる発注の状況を先に確かめる
いつ再開するか(または再開しないか)が決まっている戻す前提か撤退かで止め方を選べる目的のA〜Dに戻って決める

広告経由の売上の割合は、判断の重さを決める数字です。仮に全体の売上のうち広告経由が2割なら、止めても影響は限定的で、段階的に落とす手順を早めに進められます。6割を超えているなら、止めた分の売上を自然検索で補うのは難しく、資金繰りが理由でも主力の語は残したほうが手元は残りやすくなります。在庫の状況を見る目安は在庫切れを防ぐ発注の基準にまとめています。

段階的に落とす手順

AとBの場合の落とし方です。上から順に効きます。

手順1:赤字の語・ターゲットを止める

検索用語レポートを開いて、クリックはあるのに注文が0の語、ACOSが目標を大きく超えている語を止めます。ここは止めても失うものがほとんどありません。

判断の目安として、クリック数が30〜50に達していない語はまだ判断材料が足りません。たまたま売れていないだけの可能性があります。

手順2:入札を下げる(止めない)

売れてはいるがACOSが高い語は、止めるのではなく入札を下げます。順位は下がりますが、その語での販売実績は細く残ります。ゼロにしないことが順位の防波堤になります。

下げ幅は1回10〜20%まで。一気に半分にすると配信がほぼ止まります。

手順3:予算の上限を下げる

キャンペーンの1日予算を下げます。入札はそのままなので、上位表示されるチャンスは残り、単に露出量が減ります。

手順4:主力ではないキャンペーンを止める

商品ターゲティング、ディスプレイ、ブランドなど、刈り取り以外の枠から止めます。

手順5:主力の語だけ残して、あとは止める

最後に残すのは、その商品の指名語と、売上の柱になっている語です。ここは最後まで残してください。ここを止めると順位が動きます。

全停止をするのは、この5段階を通してもなお資金が足りないときだけです。

止めたあとに見る数字

止めたら放置せず、2〜4週間は次の数字を追ってください。

  • 自然検索経由の売上(ビジネスレポートのセッション数と注文数)
  • 主要な語での検索順位(自分で検索して位置を確認する)
  • 合計の売上と合計の利益(広告費を引いた後)
  • 在庫の残日数

見るべきは「広告費がいくら減ったか」ではなく、合計の利益がどうなったかです。広告費が30万円減っても、売上が50万円減っていれば判断としては失敗です。

仮の数字で並べてみます。月の広告費が30万円、広告経由の売上が100万円(ACOS30%)、自然流入の売上が80万円、粗利率が35%だとします。止める前の粗利は180万円×35%で63万円、そこから広告費30万円を引いて33万円が手元に残る計算です。全部止めて広告売上100万円が消え、順位が下がって自然流入も80万円から60万円に落ちたとすると、粗利は60万円×35%で21万円。広告費はゼロになったのに、手元は33万円から21万円へ減ります。この計算を、自社の売上構成と粗利率で止める前にやってください。粗利率が分からない場合は利益シミュレーターで先に出せます。

記録の形はシンプルで構いません。

週 / 広告費 / 広告売上 / 自然売上 / 合計売上 / 主要語の順位

この表を止める前の2週間分も含めて作っておくと、比較ができます。止めてから作り始めると、比較対象がありません。

戻すときは止めるときより慎重に

止めた広告を戻すとき、元の入札額にいきなり戻しても、元の順位には戻りません。止めている間に競合が入っているためです。

戻し方の考え方です。

  • 主力の語から順に戻す。 全部同時に戻すと、どれが効いたか分かりません
  • 入札は元の額から始めて、表示が出ないなら上げる。 最初から高く入れると回収に時間がかかります
  • 在庫を先に確保しておく。 戻して売れ始めたのに在庫切れ、が一番もったいない結果です
  • 戻してから2週間は数字を見る。 順位が戻るまで時間がかかります

止めるのは1日でできますが、戻すには数週間かかります。この非対称を前提に判断してください。

よくある質問

1日だけ止めて様子を見る、というやり方はどうですか。 判断材料にはなりません。1日の売上は曜日や競合の動きで大きく振れますし、広告を止めた影響が自然検索の順位に出るまでには数週間かかります。1日止めて売上が変わらなかったからといって、止めて問題ないという結論にはなりません。試すなら、対象を1キャンペーンに絞って2週間止め、止める前の2週間と比べてください。それでも順位への影響までは見きれないので、主力の語では試さないほうが安全です。

キャンペーンを止めるのと、日予算を0円に近づけるのは同じことですか。 結果として配信が減る点は同じですが、戻すときに差が出ます。予算を絞る形なら配信の実績が細く続くので、戻したときに元の位置へ戻りやすくなります。完全に停止すると配信が途切れるぶん、再開後に時間がかかります。戻す前提で減らすなら、停止よりも入札と予算を下げる形を選んでください。撤退や在庫切れのように戻す予定がないなら、停止で構いません。

繁忙期が終わったので広告を絞りたいのですが、いつが適切ですか。 需要が落ちきってからではなく、落ち始める2週間ほど前から少しずつ絞るほうが無駄が出ません。ピークを過ぎたあとも入札が高いままだと、クリック単価だけが高い状態で買われない期間が続きます。ただし一気にゼロにはせず、指名語と主力語は残してください。翌シーズンに向けて順位を保つほうが、絞りきって取り直すより安く済みます。時期ごとの予算の置き方は広告予算の配分にまとめています。

在庫切れで広告が止まったあと、入荷したらすぐ元の設定で再開してよいですか。 入荷の直後は、元の設定よりやや控えめに始めるほうが安全です。在庫切れのあいだに順位が下がっていることが多く、元の入札では表示が出にくい一方、入荷した在庫を一気に売り切ると再び欠品します。まず指名語と主力の語を再開し、在庫の減り方を見ながら1週間ほどかけて他のキャンペーンを戻してください。入荷の量が少ないときは、次の入荷までもつ売れ方に広告を合わせます。

止める判断を自分でするのが不安です。外に相談したほうがよいですか。 広告経由の売上の割合が大きい、主力の語が分からない、止めたあとの数字を追う時間がない、のどれかに当てはまるなら、止める前に一度第三者に見てもらう価値はあります。止める判断は1日でできても、戻すには数週間かかるためです。代行に任せるときの範囲は広告運用代行のサービス内容で確認できます。

まとめ

  • 広告を止めると、広告売上だけでなく自然検索の順位と在庫回転まで連鎖して落ちることがある
  • 連鎖は翌日には見えない。数週間かけて出るので、初期の感触は当てにならない
  • 止める前に目的を1つに決める。資金繰り/赤字の整理/在庫切れ/撤退で、やることが変わる
  • 落とす順番は「赤字の語を止める → 入札を下げる → 予算上限を下げる → 主力以外を止める → 主力だけ残す」
  • 主力の語と指名語は最後まで残す。 ゼロにしないことが順位の防波堤になる
  • 止めたあとは広告費の減少ではなく合計の利益を見る。比較用の記録は止める前から取る
  • 戻すのは止めるより時間がかかる。主力から順に、在庫を確保してから戻す

止めるかどうかより、どこから止めるかのほうが結果を左右します。順番を決めてから手を付けてください。