広告のACOSが先月より上がっている。そんなときに最初にやることを聞かれると、私たちは「入札を下げるのはまだ待ってください」と答えています。

ACOSが高いという状態は結果であって、原因ではありません。原因を特定しないまま入札を一律で下げると、悪い語と一緒に売れている語の露出まで落ちて、ACOSは少し改善したのに売上と利益額は減っているという結果になりがちです。

この記事では、ACOSが高いと分かってから最初の1週間でやることを、順番に3つに絞って書きます。目標値そのものの決め方はACOSの目標値の決め方と下げる手順に、自社の粗利率から損益分岐ACOSを出す計算は利益シミュレーターにまとめているので、合わせて使ってください。

手を付ける前に:本当に上がっているのかを確認する

作業に入る前に、数字の見方だけ確認します。ここを飛ばすと、動いていないものを直そうとして時間を使います。

  • 期間は最低2週間で見る。3日〜1週間の数字は振れ幅が大きく、たまたま悪かった日を原因だと思い込みやすくなります
  • 直近数日は数字が確定していない。クリックした人が後日購入した分は、クリックした日に後から加算されます。直近3日のACOSが高く見えるのは、注文がまだ計上されていないだけのことがあります
  • 単月ではなく前月・前々月と並べる。季節性のある商品なら、去年の同じ月とも比べます

その上で、上がっているのが全体なのか、特定のキャンペーンだけなのかを確認します。全体平均だけを見ていると、1つの赤字キャンペーンが平均を引き上げているだけ、というケースを見落とします。キャンペーン単位で並べ替えて、広告費の大きい順に上から5つを見てください。

1つめ:クリックだけされて買われていない語を止める

最初に手を付けるのはここです。効果が出るのが早く、売上を落とすリスクがいちばん小さい作業だからです。

広告レポートの検索用語レポートを開き、次の条件で絞り込みます。

見る列条件
クリック数20〜30回以上(商品単価が高いなら基準を下げる)
注文数0件
期間直近30〜60日

これに当てはまる語は、お金だけ払って一度も買われていない語です。除外キーワードに設定すれば、その広告費はそのまま消えます。売れている語には触っていないので、売上は基本的に落ちません。

除外するかどうか迷ったときは、その語を実際にAmazonで検索してみてください。自社の商品とは違う商品ばかりが並ぶなら、買われないのは当然です。逆に競合の似た商品が並ぶ語なら、買われていない原因は語ではなく、商品ページ側にあるかもしれません(3つめで扱います)。

クリック数の基準を「何回で判断するか」は、商品単価によって変えます。目安として、1件売れたときの粗利額 ÷ 平均クリック単価 がひとつの考え方です。粗利1,000円でクリック単価50円なら20クリック、粗利3,000円なら60クリックまでは様子を見る、という具合です。外す語と残す語の線引きは除外キーワードの決め方に手順として書いています。

2つめ:広告費がどこに流れているかを分解する

次に、広告費の配分の偏りを見ます。

キャンペーンや広告グループ単位で、広告費の多い順に並べてください。多くの場合、上位2〜3個で全体の広告費の大半を使っています。ここが赤字なら、全体のACOSはその影響をそのまま受けます。

見るのは次の3点です。

  1. 広告費が大きく、注文が付いていないキャンペーンがあるか。あれば、そのキャンペーンの中でどの語に使われているかを1つめの手順で確認します
  2. オートキャンペーンの比率が大きすぎないか。オートは語を自分で選べないため、放置すると関係の薄い語にも配信されます。オートで成果の出た語をマニュアルに切り出し、オート側では除外する、という整理が効きます
  3. 同じ語に自社の複数キャンペーンが入札していないか。同じ語を複数キャンペーンで取り合うと、クリック単価が上がりやすくなります

この分解をやると、「ACOSが高い」の中身が、広告費の7割を使っている1つのキャンペーンの問題だった、というケースがよく見つかります。そうであれば、触るのはそのキャンペーンだけで済みます。

入札を下げるのはこの段階

ここまでで対象が絞れたら、入札の調整に入ります。原則は次のとおりです。

  • 注文があり、目標ACOSより低い語 → 上げる(一度に上げるのは10〜20%程度)
  • 注文はあるが、目標ACOSより高い語 → 下げる
  • クリックが十分あって注文が0の語 → 1つめで除外済み

全キャンペーン一律で下げる操作はおすすめしません。表示位置が下がって、クリック単価は下がってもクリック率と購入率まで落ち、結果的にACOSが改善しないことがあります。下げるなら対象を絞り、変更は週1回にとどめて、次の週の数字と比べてください。上限額の出し方と1回に動かす幅は入札額の決め方と上げ下げの基準に整理しています。

3つめ:商品ページ側の購入率を疑う

3つめが、いちばん見落とされます。

ACOSは次のように分解できます。

ACOS = クリック単価 ÷(購入率 × 販売価格)

この式を見ると分かるとおり、購入率が下がるとACOSは上がります。広告の設定を一切変えていないのにACOSが悪化したなら、原因は広告の外にあることが多いです。

広告を触る前に、次を確認してください。

  • 競合が値下げしていないか。価格差が広がると、同じ語で表示されても選ばれなくなります
  • レビューの星が下がっていないか。星が4.3から3.9に落ちるだけで、購入率は変わります
  • 在庫切れやカート喪失がなかったか。カートを取れていない期間は広告が配信されないか、配信されても購入につながりません
  • メイン画像や価格表示を変えていないか。良かれと思って変えた変更が原因のことがあります
  • 配送予定日が長くなっていないか

セラーセントラルのビジネスレポートで、ユニットセッション率(購入率)を月ごとに並べてみてください。ここが落ちている時期とACOSが上がった時期が重なっていれば、原因は商品ページ側です。この状態で入札だけを調整しても、根っこは動きません。

最初の1週間の進め方と、原因ごとの試算

3つの確認を、実際にどの順で1週間に収めるかをまとめます。変更は1日に1種類だけにして、何が効いたかを後から追えるようにします。

日やること見る場所触らないもの
1日目2週間以上の期間でACOSの推移を確認。キャンペーンを広告費の多い順に並べる広告レポート入札・予算
2日目検索用語レポートで「クリックあり・注文0」の語を抜き出し、除外する検索用語レポート売れている語
3日目購入率・価格・星の平均・在庫の変化を月ごとに並べるビジネスレポート、商品ページ広告の設定
4日目広告費の上位キャンペーンに絞り、目標より高い語だけ入札を下げるキャンペーン管理上位以外のキャンペーン
5〜7日目変更は加えず、数字の動きを待つ。変更内容を記録に残す変更の記録すべての設定

原因によって、効く手が違う

ACOSの式に仮の数字を当てはめると、原因ごとに効く手が違うことが分かります。計算の形を示すための仮定で、実際の水準を示すものではありません。

  • 販売価格3,000円、クリック単価60円と仮定
  • 先月は購入率10%で、ACOSは 60円 ÷(10% × 3,000円)= 20%

今月ACOSが30%に上がったとします。考えられる原因は2通りです。

原因(仮定)数字の変化ACOS効く手
クリック単価が上がった60円→90円、購入率10%のまま30%入札の調整、取り合っている語の整理(2つめ)
購入率が下がった購入率10%→約6.7%、クリック単価60円のまま30%価格・レビュー・画像・在庫の確認(3つめ)

どちらもACOSは同じ30%ですが、後者で入札を下げても購入率は戻りません。クリック単価を40円まで下げればACOSは20%に戻る計算ですが、表示位置が下がってクリック数そのものが減り、販売数も落ちます。ACOSの数字が同じでも、クリック単価と購入率のどちらが動いたかを先に見るのは、このためです。

自社の粗利率から、どこまでのACOSなら赤字にならないかは利益シミュレーターで出せます。上限を知っておくと、「高い」がどの程度の問題なのかを冷静に判断できます。

やってはいけない3つの操作

最後に、慌てたときにやりがちで、後悔しやすい操作を挙げておきます。

  • 広告をいったん全部止める。売上が落ちるだけでなく、止めている間の販売実績が積み上がらないため、再開後に元の位置へ戻るまで時間がかかります
  • 1日で何十か所も変更する。何が効いたのか分からなくなり、次の判断ができなくなります
  • 除外キーワードを感覚で大量に入れる。売れている語を巻き込むと、売上がまとめて落ちます。除外は「クリックがあって注文0」という数字の根拠がある語だけにしてください

よくある質問

除外キーワードを入れたのに、同じ語にまだ広告費が出ています。なぜですか。 3つの原因が考えられます。1つめは、除外を入れた場所が違うこと。広告グループに入れた除外は、同じキャンペーンの別の広告グループには効きません。2つめは、一致タイプの選び方。完全一致で除外した場合、語尾や語順が違う検索語は止まりません。3つめは、レポートの反映が数日遅れることです。除外の直後に出ている費用は、設定前のクリック分ということがあります。まず入れた場所と一致タイプを確認し、それでも続くならフレーズ一致での除外に切り替えてください。

ACOSは下がったのに、利益が減りました。どこを見ればいいですか。 広告経由の売上だけが減って、全体の売上も一緒に落ちている可能性が高いです。ACOSは広告費と広告経由の売上の比率なので、露出を絞れば数字は良くなりますが、そのぶん販売数が落ちれば手元の利益は減ります。広告費を全体の売上で割ったTACOSと、月の販売個数を並べて確認してください。両方が落ちているなら、下げすぎです。指標の使い分けはTACOSとACOSの違いにまとめています。

セール期間はACOSが悪化しますが、そのままでよいですか。 セール中は値引きのぶん売上単価が下がるので、同じ販売数でもACOSは上がります。ここで入札を下げると、いちばん売れる時間帯に露出を落とすことになります。セール期間は日常の目標値をそのまま当てないほうが実態に合います。事前に「この期間は目標ACOSを◯ポイント緩める」と決め、終わったあとに元に戻す、という運用にしてください。判断がつかない場合は、セール前後の1週間を除いた通常期の数字だけで振り返ると比較しやすくなります。

ACOSが高い状態が何か月も続いています。広告そのものをやめるべきですか。 やめる前に、広告経由の売上と全体の売上の関係を確認してください。広告を止めると、広告経由だけでなく自然検索の売上まで落ちることがあります。まず損益分岐のACOSを出し、それを上回るキャンペーンだけを絞るか止めるかを判断します。止めた場合の影響の見方は広告を止めたときの影響にまとめています。

まとめ

  • ACOSが高いのは結果。入札を一律で下げる前に、原因を3か所に分けて確認する
  • 判断は最低2週間の数字で。直近数日は注文が計上されきっていない
  • 1つめ:検索用語レポートから「クリックあり・注文0」の語を除外する(売上を落とさずに広告費だけ減らせる)
  • 2つめ:広告費の配分を分解し、大きく使っているキャンペーンに絞って入札を調整する
  • 3つめ:購入率が落ちていないかを疑う。価格・レビュー・在庫・画像の変化が原因のことは多い
  • 同じACOSでも、クリック単価と購入率のどちらが動いたかで効く手が違う。変更は1日1種類にして記録する
  • 広告の全停止、一度に大量の変更、根拠のない除外は避ける

まずは1つめだけでも今週やってみてください。売れている語に触らずに広告費を減らせるので、失敗しにくい作業です。自社だけで手が回らない場合は、無料の診断で現状の切り分けからお手伝いできます。