価格を「競合より少し安く」で決めていると、値下げ競争から抜けられません。しかも下げた分は、そのまま粗利から消えます。

価格は3段階で決めます。下限を出す → 上限を出す → その間で位置を取る。この順番です。

1. 下限:これ以下では売る意味がない価格

まず、下回ってはいけない価格を出します。感覚ではなく、費目を全部並べて計算します。

3,000円で売る想定の商品を例に、費目を並べます。

費目金額
商品原価(仕入・製造)900円
国際送料・関税(1個あたり按分)120円
販売手数料450円
FBA配送代行手数料434円
保管料(1個あたり月額の想定)30円
返品・不良の見込み60円
合計1,994円

この場合、3,000円で売ると広告費を引く前の粗利は1,006円です。

ここから、広告費を含めた下限を出します。広告なしで売れる商品はほとんどないので、広告費を最初から費目に入れます。売上の15%を広告費に使う前提なら、3,000円のうち450円。粗利は556円まで下がります。

下限価格は「粗利が0になる価格」ではありません。目標とする粗利率を確保できる最低価格です。目標粗利率を20%と置くなら、必要な粗利は600円。逆算すると、この費用構造では3,000円では足りず、値上げか原価の見直しが必要だと分かります。

販売手数料の率はカテゴリーによって、FBA配送代行手数料と保管料はサイズと重量、時期によって変わります。表の金額はすべて説明用の仮の値なので、セラーセントラルの最新の案内と自社の商品の実数で計算してください。 費目の並べ方はFBA手数料と粗利を1商品ずつ出す手順、計算そのものは利益シミュレーターが使えます。

下限を式で出す

費目は、売価に関係なく1個あたりで決まる「固定の費目」と、売価に比例して増える「率の費目」に分けると、下限価格が1本の式で出ます。

下限価格 = 固定の費目の合計 ÷(1 − 販売手数料率 − 広告費率 − 目標粗利率)

上の表で分けると、次のとおりです。

  • 固定の費目:原価900円+送料・関税120円+FBA配送代行手数料434円+保管料30円+返品・不良60円=1,544円
  • 率の費目:販売手数料15%(450円÷3,000円)、広告費15%、目標粗利率20%

式に入れると、1,544円÷(1−0.15−0.15−0.20)=1,544円÷0.5=3,088円。この費用構造で目標粗利率20%を確保できる最低価格は3,088円です。3,000円で売るなら、固定の費目を1,500円まで、つまり44円削る必要があります。

式の形にしておくと、「広告費を10%に抑えられたら下限はいくらか」「原価が50円上がったら下限はいくらか」を、その場で計算し直せます。仮に広告費率を10%にすると、1,544円÷0.55=約2,807円まで下がります。目標粗利率をいくつに置くかは、固定費と広告費の上限から逆算します。その手順はAmazon販売の利益率の目安の置き方で書いています。

2. 上限:この価格を超えると比較されなくなる価格

次に、上限を出します。ここは競合を見ます。

同じ検索語で上位に出る競合を10件、価格を書き出します。このとき見るのは平均ではなく分布です。

  • 1,800円〜2,200円に5件
  • 2,800円〜3,200円に3件
  • 4,500円以上に2件

こういう分布なら、価格帯が3つあります。それぞれ別の商品として認識されています。真ん中の帯にいるなら、上限は3,200円前後。ここを超えると、お客様の中で「上の帯の商品」と比較されはじめます。

上の帯と比較されて勝てる中身があるなら、上限は上げられます。勝てないなら、帯の中に収めます。

大事なのは、帯の境目をまたぐ価格を避けることです。3,400円のような中途半端な位置は、下の帯からは高く、上の帯からは中身が足りなく見えます。

価格の分布を取る手順

分布は、取り方を毎回そろえないと比べられません。次の手順で書き出します。

  1. 自社の商品で一番売上につながっている検索語を1つ決める
  2. その検索語で検索し、広告枠を除いた上位10件を対象にする
  3. 1件ごとに、表示価格・内容量(個数・容量)・レビューの数・星の数を表に書く
  4. 内容量が違う商品は、1個あたり・1mlあたりの価格にも直す
  5. 価格の順に並べ替え、間があいているところで帯を区切る

4つ目を飛ばすと、2個入りの商品が「高い帯」に見えるなど、帯の読み違いが起きます。内容量をそろえて見ると、表示価格では上の帯でも、1個あたりでは同じ帯にいることがあります。

分布は一度取って終わりではありません。月に1回、同じ検索語で同じ手順で取り直すと、競合の値下げや新しい帯の出現に気づけます。前回の表と並べて、動いた商品にだけ印をつけておきます。

3. 位置取り:帯の中でどこに置くか

下限と上限が決まったら、その間で位置を決めます。判断材料は3つです。

レビューの数と星。競合よりレビューが少ない・星が低いなら、同価格では選ばれません。帯の下寄りから始めて、レビューが溜まってから上げます。

内容量・付属品の差。同じ価格帯で内容量が多いなら、上寄りに置けます。ただし、その差がページを見て一瞬で分かる形になっていることが条件です。分からなければ価格だけで比較されます。

在庫の余裕。在庫が潤沢で回転を上げたい時期は下寄り、在庫が薄い時期は上寄り。価格は在庫政策とセットです。

3つをまとめると、帯の中の置き場所は次のように決まります。

自社の状態帯の中の位置先にやること
レビューが競合より少ない下寄りレビューが増えるまで上げない
内容量や付属品で明確に上回る上寄りその差が画像で一目で分かるようにする
中身は同等でレビューも同等中央価格以外の差を作ってから動かす
在庫が積み上がっている下寄り回転を上げて保管料の増加を止める
在庫が薄く納品待ち上寄り欠品を避けることを優先する

位置を下げるのは、下げた理由がなくなったときに戻せる場合だけにしてください。 レビューが増えて上げ直す前提なら下寄りで始めてよく、そうでないなら下げた価格が定価になります。

値下げの前にやること

売れないときに真っ先に価格を下げるのは、一番もったいない対処です。下げると粗利が減るうえ、一度下げた価格を戻すと売上が落ちます。

下げる前に、次を確認してください。

カートを取れているか。 取れていないなら、価格ではなく別の原因です。獲得率の見方と切り分けはカートボックスが取れない原因にまとめています。

転換率(ユニットセッション率)はどうか。 ページに来た人の何%が買っているか。ここが競合並みなら、価格は問題ではなく流入が足りていません。広告とキーワードの話になります。

価格以外の見え方が整っているか。 メイン画像、レビュー、配送日数。同じ価格でもここで差がつきます。

クーポンやセールで試せないか。 定価を下げるのではなく、期間限定の割引で反応を見ます。効果がなければ元に戻せます。定価変更と違って傷が残りません。

値上げするとき

原価が上がったときや、内容を改善したときは値上げが必要になります。手順として次を守ると、売上の落ち込みを抑えられます。

一度に大きく上げない。 段階的に上げて、そのつど転換率を確認します。

上げる理由をページに書く。 内容量が増えた、素材を変えた、付属品を追加した。理由が見える値上げは受け入れられやすくなります。

在庫が薄い時期を選ばない。 値上げ直後に在庫切れを起こすと、順位が落ちたうえに高い価格だけが残ります。

刻み方や上げた後に見る数字は、値上げの手順で段階ごとに書いています。

価格の決め方でよくある失敗

ここまでの手順を飛ばしたときに起きやすい失敗を、原因と防ぎ方で並べます。

失敗原因防ぎ方
売れているのに手元に残らない下限を広告費抜きで出した広告費率を式に入れて下限を出し直す
値下げしても売れ方が変わらないカートや転換率など、価格以外に原因があった下げる前にカート獲得率と転換率を確認する
高くしたら検索でも広告でも反応が落ちた帯の境目をまたいだ分布を取り直し、帯の中に収める
競合に合わせて下げ続け、戻せなくなった下限を決めずに追随した下限を紙に書き、そこで止める
セット品が売れない単品の帯で価格を決めたセットはセットの競合で分布を取り直す

どの失敗も、下限と上限を数字で持っていないことから始まります。逆に言えば、下限は式で、上限は分布の表で持っておけば、価格を動かす判断のたびに立ち返る場所があります。売れているのに利益が残らない場合の切り分けは利益が出ない原因で手順にしています。

よくある質問

競合が値下げしてきたら、合わせるべきですか。 合わせる前に、下限までどれだけ余裕があるかを見ます。仮に粗利1,006円の商品で200円下げると、同じ粗利総額を保つには販売数が約1.25倍必要です。相手の在庫が少なければ売り切れるのを待つ判断もあります。待つなら「いつまで待つか」を先に決めてください。

セット販売にすると価格帯の考え方は変わりますか。 変わります。2個セットは単品の2倍の価格帯ではなく、まとめ買いを検討している別の層と比較されます。単品と同じページで並べず、セットはセットの帯で下限と上限を出し直してください。

価格を変えたら、いつ判断すればよいですか。 判断できるだけの注文数がたまるまで待ちます。1日3個しか売れない商品なら、1週間では20個ほどで、偶然の振れ幅のほうが大きくなります。2〜4週間を1区切りにして、その間はほかの変更を重ねないでください。

新商品で競合の分布がまだ読めないときは、どこから始めればよいですか。 下限の式で出した価格から始め、分布は近い用途の商品で代わりに取ります。レビューが0件のうちは帯の下寄りに置き、レビューがたまってから上げる前提で、上げる条件(レビュー数や転換率)を先に決めておきます。立ち上げの進め方は新商品の立ち上げ90日で書いています。

原価が上がったとき、価格より先に見直すことはありますか。 あります。下限の式の固定の費目のうち、送料・関税の按分やFBAの料金は、梱包サイズや1回の輸送量で変わることがあります。値上げの前に、原価の内訳のどこが上がったのかを分解して、削れる費目がないかを確認してください。分解の手順は1個あたりの原価構造を分解するにまとめています。

まとめ

  • 価格は下限 → 上限 → 位置取りの順で決める
  • 下限は全費目を並べ、広告費も費目に入れて、目標粗利率から逆算する
  • 上限は競合の価格分布から。平均ではなく帯を見る。帯の境目をまたがない
  • 帯の中の位置は、レビュー・内容量の差・在庫状況で決める
  • 売れないとき、値下げは最後の手段。カート・転換率・見え方を先に確認する
  • 試すならクーポンやセールで。定価は簡単に動かさない

価格は一度決めて終わりではありませんが、根拠なく動かすと戻せなくなる数字です。下限と上限を紙に書いてから触ってください。