広告費の総額は決めているが、キャンペーンごとの内訳は「なんとなく」という状態をよく見ます。この状態だと、成果の出ているキャンペーンが日予算で止まり、出ていないキャンペーンに予算が残る、ということが起こります。
この記事では、予算の配分の考え方と、毎月の見直し手順を書きます。
総額を先に決める
配分の前に、月にいくらまで使うかを決めます。基準は売上ではなく粗利です。
月の広告予算 = 想定売上 × 目標TACOS ÷ 100
TACOSは「広告費 ÷ 全体の売上」です。想定売上が300万円で目標TACOSが10%なら、月30万円。日予算に直すと1日1万円です。目標TACOSをどう置くかはTACOSとは何かにまとめています。
ここで注意したいのは、日予算の合計が月予算を超えないようにすることです。日予算1万円をキャンペーンに配ったら、その合計が1万円になっている必要があります。各キャンペーンに1万円ずつ設定すると、理論上は何倍にも膨らみます。
なお、実際には日予算を使い切らないキャンペーンもあるので、合計は月予算より少し多めに置くのが実務的です。ただし「少し」の幅は自分で決めて記録してください。
キャンペーンを役割で分ける
配分を考えるには、まずキャンペーンが役割ごとに分かれている必要があります。全部が1つのキャンペーンに入っていると、配分という概念が成立しません。分け方の基準はキャンペーン構造の作り方に整理しています。
最低限、次の4つに分けます。
| 役割 | 中身 | 予算の性格 |
|---|---|---|
| 探索 | オート広告 | 少額で継続。新しい語を見つける |
| 主力 | 売れている語のマニュアル(完全一致) | ここが最大。実績に応じて増やす |
| 育成 | これから伸ばしたい語 | 中程度。期限を決めて評価する |
| 防衛 | 自社ブランド名・型番 | 少額。取りこぼしを防ぐ |
役割が違えば、見る指標も違います。探索はACOSではなく「新しい語がいくつ出たか」で評価します。防衛は取りこぼしを防ぐのが目的なので、ACOSが多少高くても止めません。
同じ物差しで全部を評価しないことが、配分を間違えないための前提です。
配分の考え方
固定の正解はありませんが、次の順で考えると決めやすくなります。
1. 主力に厚く置く。 実績のある語です。ここが日予算で止まっているなら、他を削ってでも増やします。成果が出ているキャンペーンが昼過ぎに止まっている状態は、いちばんもったいないです。
2. 探索は少額で切らさない。 金額は小さくていいのですが、ゼロにしないでください。新しい語の入口が閉じます。
3. 育成には期限をつける。 「3か月でACOSが損益分岐を下回らなければ止める」のように、始める前に終わり方を決めます。
4. 防衛は必要最小限。 自社ブランド名で検索している人は、広告がなくても買ってくれる場合があります。ただし競合が自社ブランド名で広告を出していることもあるので、一度検索して確認してください。
金額で置くと決めやすくなります。仮に月の広告予算が30万円(1日1万円)だとすると、次のような形になります。
| 役割 | 月額の目安 | 日予算の目安 |
|---|---|---|
| 主力 | 18万円(6割) | 6,000円 |
| 育成 | 6万円(2割) | 2,000円 |
| 探索 | 4万5,000円(1.5割) | 1,500円 |
| 防衛 | 1万5,000円(0.5割) | 500円 |
この比率が正解というわけではありません。立ち上げ期は探索を厚く(3〜4割)、成熟期は主力に寄せる(7割以上)というように、時期で動きます。決めておくべきなのは比率そのものより、毎月この表を作り直すという手順のほうです。
比率は商品数・単価・競合状況で変わります。比率を固定するより、月次で見直す仕組みを持つほうが実務的です。
日予算で止まっているキャンペーンを見つける
配分の見直しで最初に見るのが、ここです。
広告管理画面のキャンペーン一覧で、日予算に対する消化率を見ます。毎日100%近く使い切っているキャンペーンは、予算が足りていない可能性があります。
ただし「使い切っている=増やすべき」ではありません。次を確認します。
- そのキャンペーンのACOSは損益分岐を下回っているか
- 転換率は他のキャンペーンと比べて悪くないか
成果が出ていて、かつ予算で止まっているものだけ増やします。成果が出ていないのに使い切っているなら、増やすのではなく入札か語を見直します。
逆に、日予算の半分も使っていないキャンペーンは、予算ではなく入札か語の問題です。ここから予算を引き上げて主力に回します。入札で解決する問題かどうかの見分け方は入札額の決め方と上げ下げの基準に書いています。
月次の見直し手順
毎月1回、次の順でやります。30分程度で終わります。
1. 先月の実績を並べる。 キャンペーンごとに、広告費・売上・ACOS・日予算消化率の4つ。
2. 役割ごとに評価する。 探索は新語が出たか。主力はACOSが損益分岐内か。育成は期限内で改善しているか。防衛は取りこぼしがないか。
3. 止めるものを決める。 育成で期限を過ぎて改善していないものは止めます。ここで判断を先送りすると、予算がずっと拘束されます。
4. 空いた予算を主力に回す。 止めたぶんを、日予算で止まっている主力キャンペーンに足します。
5. 総額が月予算の範囲に収まっているか確認する。 足しただけで確認を忘れると、月末に想定を超えます。
この5ステップを記録に残しておくと、翌月の判断が早くなります。特に「止めた理由」は書いておいてください。半年後に同じ語をまた試して、同じ結果になるのを防げます。
セール期間は別枠で考える
大型セールやタイムセールの期間は、トラフィックが増えクリック単価も上がります。通常の日予算のままだと、午前中に使い切って午後は表示されません。
セール期間は別枠の予算として先に確保しておきます。通常予算から削るのか、追加するのかを事前に決めておけば、当日に慌てずに済みます。
金額でも置いておきます。仮に通常が1日1万円で、セールの5日間だけ1.5倍にするなら、追加は1日5,000円×5日で2万5,000円です。月予算30万円の中で吸収したいなら、セール前後の閑散期に日予算を1,000円ずつ絞れば、25日で2万5,000円ぶん浮きます。前後で調整するのか、その月だけ上乗せするのかを、セールの2週間前までに決めておいてください。
よくある質問
日予算は月の途中で変えてもよいですか。 変えて構いませんが、変えた日を記録してください。月の途中で増やすと、月次で振り返るときに「その月の実績」が前半と後半で条件の違うものになります。記録がないと、成績が変わった理由が予算なのか入札なのか判断できません。頻度としては、月次の見直しに加えて、日予算で止まっている主力キャンペーンが出たときの臨時対応、という2回までに収めるのが扱いやすいです。
日予算を増やしたのに、広告費が増えません。なぜですか。 予算が上限になっていなかったということです。配信が予算ではなく入札で止まっているので、いくら枠を広げても消化されません。表示回数が伸びていないなら入札を上げる、表示はあるのにクリックされないなら画像や価格を直す、という順で切り分けてください。もうひとつ、在庫切れやカート未獲得で配信自体が止まっているケースもあるので、在庫の状態も一緒に確認します。
在庫が少なくなってきたとき、予算はどうすべきですか。 残り日数を見て、先に絞ってください。次の入荷までの日数より在庫の残り日数が短いなら、そのままの予算で回すと欠品します。欠品すると広告が配信されなくなるだけでなく、その語での販売実績が途切れて順位も下がります。目安として、残り3週間を切ったら日予算を段階的に落とし、主力の語だけ残す形にします。発注の基準は在庫切れを防ぐ発注の基準にまとめています。
まとめ
- 総額は売上ではなく粗利から決める(想定売上 × 目標TACOS)
- 日予算の合計が月予算を大きく超えないように設計する
- キャンペーンを探索・主力・育成・防衛の4つの役割に分ける
- 役割ごとに見る指標を変える。全部を同じACOSで評価しない
- 成果が出ていて日予算で止まっているキャンペーンを最優先で増やす
- 月次の5ステップ(実績を並べる → 役割で評価 → 止める → 主力へ回す → 総額確認)
- 止めた理由を記録に残す
- セール期間は別枠で先に確保する
配分は一度決めて終わりではなく、月次で振り替えていく作業です。仕組みにしてしまえば、毎月30分で回ります。
