「この商品の原価はいくらですか」と聞かれて、仕入れ値だけを答えていないでしょうか。

仕入れ値が1,000円でも、手元に残る金額は商品ごとにまったく違います。輸送のしかた、箱の大きさ、Amazon側で引かれる費用、広告にかけた金額。これらは全部、1個あたりの利益を削っています。

削る場所を探すには、まず1つの数字を細かく割るところから始めます。

1個あたりに分解して並べる

最初にやることは、頭の中の「原価」を項目に割って、すべて1個あたりの金額にそろえることです。

分けるのは、おおむね次の5つの層です。

1. 商品そのものの費用

工場や卸からの仕入れ単価。パッケージ代、同梱物(説明書、注意書き、お礼のカードなど)、検品や個装の作業費。ロット単位でかかるものは、発注数で割って1個あたりにします。海外から仕入れているなら、ここは1688仕入れの着地原価で出した数字をそのまま持ってきます。

2. 手元に届くまでの費用

国際輸送費、関税や消費税、通関にかかる手数料、国内の配送費、保管や検品の代行費用。ここも1回あたりの金額を、その回で運んだ個数で割ります。

3. Amazon側で引かれる費用

販売手数料、FBAを使うなら配送代行手数料と在庫保管手数料。返品が発生したときの費用も、率をかけて1個あたりに乗せます。

これらの率や金額はカテゴリー・サイズ区分・時期によって変わります。まずセラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。一般的な数値を当てはめると、後で計算が合わなくなります。費目ごとの引かれ方はFBA手数料と粗利を1商品ずつ出す手順に分けて書いています。

4. 売るためにかかる費用

広告費。これを原価に入れない人が多いのですが、入れないと本当の利益は見えません。月の広告費を、その月の販売数で割って1個あたりにします。クーポンやセール割引も同じです。

5. 動かなかったぶんの費用

長期保管手数料、廃棄費用、値下げして処分したぶんの損失。売れた個数で割って乗せます。ここを無視すると、売れている商品だけを見て「利益が出ている」と錯覚します。

表にして、割合を出す

項目を並べたら、売価に対する割合を出します。金額のままだと大小の感覚がつかみにくいためです。

層項目の例1個あたり売価比
商品仕入単価・パッケージ・同梱物
物流国際輸送・関税・国内配送・検品
Amazon販売手数料・配送代行・保管
販促広告費・クーポン・セール値引き
損失返品・長期保管・廃棄
—合計
—粗利

この表を主力の商品ぶんだけ作ります。全SKUを一度に埋めようとすると終わらないので、売上の上位から5〜10商品で構いません。

作ってみると、たいてい思っていたのと違う場所が膨らんでいます。仕入れを削ることばかり考えていたのに、実は保管と広告で利益が消えていた、という形はよくあります。

仮の数字で埋めた例

空欄のままだとイメージしにくいので、仮の数字で1商品を埋めてみます。売価3,000円、月の販売数200個の商品と仮定します。Amazon側の費用は、カテゴリーやサイズ、時期で変わるため、ここでは計算の形を示すための仮の値です。自社の数字はセラーセントラルの注文明細と最新の案内で確認してください。

層内訳(仮定)1個あたり売価比
商品仕入単価800円・パッケージ60円・同梱物20円880円29.3%
物流国際輸送と関税を1回の総額から200個で割る・国内配送220円7.3%
Amazon販売手数料を仮に10%で300円・配送代行と保管で仮に450円750円25.0%
販促月の広告費90,000円÷200個・クーポン分30円480円16.0%
損失返品率を仮に3%として1個あたり・長期保管の按分70円2.3%
—合計2,400円80.0%
—粗利600円20.0%

仕入れ単価だけ見ると売価の3割弱ですが、全部を足すと売価の8割が出ていきます。この例で一番大きいのは商品の層ですが、2番目はAmazonの層、3番目は販促の層です。仕入れを1割下げても1個80円ですが、広告費を2割抑えられれば1個90円になります。どちらが現実的かは、次の「削る順番」で判断します。

広告費の行は、月の広告費を販売数で割るので、月によって大きく動きます。セールのある月とない月で別々に計算し、平均だけで判断しないようにしてください。

よくある失敗

分解の表を作っても、使い方を誤ると判断を間違えます。よく見かける形を3つ挙げます。

  • 輸送費を1回目の金額で固定してしまう。最初の輸送で運んだ個数が少ないと1個あたりが高く出ますし、繁忙期は運賃自体が上がります。輸送のたびに更新するか、直近3回の平均を使います
  • 返品と廃棄を0で置く。立ち上げ直後は返品が少ないので0にしがちですが、販売が増えると後から効いてきます。仮でもよいので率を置き、実績が出たら差し替えます
  • 広告を止めた月の粗利で判断する。広告を止めた月は粗利率が高く見えますが、その月は販売数も落ちていることが多い。1個あたりと月の合計の両方を見ないと、広告を止めたほうが儲かると誤解します

どれも、数字が1か所間違っているだけで「削る場所」の判断が変わります。表を作ったら、別の人に一度見てもらうか、注文明細の実際の入金額と月の合計が合うかを確かめてください。

削る順番を決める

すべてを同時に触ろうとすると、どれが効いたか分からなくなります。次の順で見てください。

1番目:割合が大きく、自分で変えられるもの

広告費とセール値引きは、自社の判断ですぐ動かせます。割合が大きいなら、まずここです。ただし削れば販売数も落ちるので、1個あたりの利益と月の利益の両方で見ます。1個の利益が増えても、売れる数が減って月の利益が下がるなら意味がありません。

2番目:箱の大きさと重さ

FBAの費用はサイズ区分と重量で変わります。パッケージを数ミリ小さくするだけで区分が下がることがあり、下がれば全数に効きます。まず自社商品の現在のサイズ区分を管理画面で確認して、次の区分の境界までどれくらい余裕がないかを見てください。区分の分け方も変わることがあるので、最新の条件で確認します。

仮に、区分が1つ下がって1個あたり80円下がるとします。月に300個売れているなら月24,000円、年間で288,000円です。梱包の設計を変える費用が10万円かかっても、半年ほどで戻る計算になります。「1個あたり数十円」は、年間の金額に直してから判断してください。 金額は説明用の仮の値です。

3番目:輸送のまとめ方と発注ロット

輸送費は1回あたりの金額を個数で割ったものなので、まとめて運べば1個あたりは下がります。ただしまとめるほど在庫が増え、保管費と資金の拘束が増えます。輸送費の削減額と、増える保管費・資金負担を並べて比べてください。

4番目:仕入れ単価

交渉やロット増、仕入れ先の見直し。効果は大きいものの、時間がかかり、品質のリスクも伴います。上の3つを見ないまま最初にここへ行くと、労力のわりに戻りが小さいことがあります。

5番目:同梱物と付随作業

説明書やお礼のカード、個装の手間。1個あたりでは小さく見えますが、数が出る商品なら効いてきます。ただし削ると顧客体験が下がることがあるので、レビューへの影響を見ながら動かします。

分解した後に決めること

削る場所が見えたら、次は「どこまでやるか」を決めます。

  • 目標の粗利率を先に置く。何%を下回ったら扱いを見直すのか、数字で決めておきます
  • 1つずつ変える。同時に3つ変えると、どれが効いたか分からなくなります
  • 変更前後を同じ表で比べる。同じフォーマットで並べないと、改善したのか感覚で判断することになります
  • 月に一度更新する。手数料も輸送費も広告費も動きます。一度作って放置すると、実態とずれた表を根拠に判断することになります

なお、計算は手でやらずに、表計算やスクリプトで組んでおくほうが安全です。数字を1か所直したら全部が再計算される形にしておくと、更新が続きます。手計算だと、更新が面倒になって止まります。

よくある質問

全SKUぶんの表を作らないと意味がありませんか。 売上の上位5〜10商品で十分です。原価構造は似た商品どうしで共通していることが多く、上位を分解すると残りの見当もつきます。全部を一度に埋めようとして途中で止まるほうが損失です。

広告費を原価に入れると、粗利が低く見えて判断が鈍りませんか。 逆で、入れないほうが判断を誤ります。広告を止めれば売れなくなる商品なら、広告費はその商品を売るための費用です。ただし「広告を入れた粗利」と「広告を除いた粗利」の2つを併記しておくと、広告を減らす余地があるかどうかも同時に見えます。

仕入れ交渉から始めるのはなぜ後回しなのですか。 効果は大きいのですが、相手のある話で時間がかかり、品質が落ちるリスクも伴います。自社だけで今日動かせる項目(広告・値引き・梱包サイズ)を先に片づけたほうが、同じ期間で戻ってくる金額が大きくなります。交渉はその後で、条件を持って臨むほうが通りやすくなります。

販売手数料の率が想定と違っていたらどうすればよいですか。 販売手数料の率は、商品が登録されているカテゴリーで決まります。注文明細で引かれた金額を売価で割って実際の率を出し、想定とずれていれば登録カテゴリーを確認してください。手順は販売手数料のカテゴリー別の見方にまとめています。

まとめ

  • 「原価」を1つの数字で持たない。商品・物流・Amazon・販促・損失の5層に割る
  • すべて1個あたりの金額にそろえ、売価に対する割合を出す
  • 手数料率・FBA料金・保管料はカテゴリーとサイズと時期で変わるので、自社の実数を管理画面で確認する
  • 広告費と値引きを原価に入れる。入れないと本当の利益は見えない
  • 削る順番は、広告と値引き → サイズと重量 → 輸送と発注ロット → 仕入単価 → 同梱物
  • 1個の利益だけでなく、月の利益でも判断する
  • 表計算やスクリプトで組み、月に一度更新する

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