「広告の運用を外に出すと、何が良くて、何が困るのか」。代行を考え始めた方から、よく受ける質問です。
この記事は、広告の運用を受けている側が書いています。自社に都合のよい話に寄らないよう、メリットよりデメリットを多めに挙げました。自分でやるか代行に頼むかを決める軸(週に見られる時間と、判断基準の有無)は広告を自分でやるか、外に頼むかの判断基準に書いたので、ここでは「頼んだら何が起きるか」に絞ります。
代行に頼むメリット
1. 週次の作業が止まらない
Amazon広告で効きやすいのは、検索用語レポートを読み、当たっていない語を除外し、入札を少しずつ動かす地味な作業です。社内でやると、繁忙期や担当者の不在で真っ先に後回しになります。外に出すと、この作業が決まった周期で回り続けます。
2. 判断の型を持ち込める
複数のアカウントを見ている担当者は、「この形の検索語はクリックされても売れにくい」「この構造だと予算が一部のキャンペーンに偏る」といった失敗の型を持っています。自社だけで試行錯誤すると数か月かかる判断を、最初から使える場合があります。
3. 止める判断がしやすい
社内で作った広告は、「せっかく育てたから」と止めにくいものです。外の担当者は数字で判断しやすいので、成果の出ていないキャンペーンの整理が進みやすくなります。
4. 社内の人が本業に戻れる
広告の管理画面は、慣れていないと1回の確認にも時間がかかります。その時間を商品開発や仕入れに戻せることは、数字に出にくいメリットです。
5. セールや繁忙期の山を越えられる
大型セールや年末のような山場では、事前の予算設計と当日の監視が要ります。社内の1人が本業と兼務していると、この時期だけ手が回らなくなります。外に出しておくと、山場の作業が別の人の手で回ります。
5つを並べると分かるとおり、外に出して効くのは「うまいことをやってもらう」部分ではありません。決まった作業が止まらずに回り続ける部分です。ここを期待して頼むと外れが少なく、逆に「任せれば売上が跳ねる」と期待すると外れやすくなります。
代行に頼むデメリット
1. 費用が毎月かかる。 代行費用は、成果が出る前から発生します。広告費が小さいうちは、広告費に対する代行費用の比率が重くなりがちです。
2. 商品を理解してもらうまで時間差がある。 誰が、どんな場面で買う商品か。競合と比べてどこが強いか。これが担当者に伝わるまで、最初の1〜2か月はキーワードの選び方がずれることがあります。
3. 在庫や価格の情報が届かないと空振りする。 在庫が切れそうなのに広告費を使い続ける、値上げした翌日に入札を上げる。こうしたずれは、社内の予定が代行側に届いていないときに起きます。
4. 判断の基準が社内に残りにくい。 作業をすべて任せると、なぜその入札にしたのかが社内の誰にも分からなくなります。解約した途端に元のやり方に戻る、ということが起きます。
5. 料金の型によっては、利害がずれる。 広告費の何%で払う契約だと、広告費を減らす提案は代行側の収入を減らします。悪意がなくても、絞る判断は鈍りやすい構造です(料金の型ごとの注意点は代行を比較するときに見る5つの点に書いています)。
6. 広告の外で起きた問題まで面倒を見てもらえるとは限らない。 カートを取れていない、レビューが減った、競合が値下げした。広告の数字が悪化する原因は広告の外にあることが多いのですが、契約範囲が広告だけなら、原因の指摘までで止まります。範囲の線引きは契約前に確認してください。
7. 社内で広告が「よそのもの」になる。 任せきりにすると、社内の誰も管理画面を開かなくなります。数字が悪くなった月に、報告の内容を評価できる人が社内にいない状態は、それ自体がひとつの弱点です。月に1回でよいので、社内の誰かが同じ画面を見る習慣を残しておいてください。
デメリットを小さくする頼み方
| デメリット | やっておくこと |
|---|---|
| 費用が毎月かかる | 自社の広告費を当てはめて、年間の支払額を出してから決める |
| 商品理解の時間差 | 最初の打ち合わせで、買う人・使う場面・競合との違いを文書で渡す |
| 在庫・価格の情報のずれ | 在庫の残り日数、値上げ、セール参加の予定を共有する場所を1つに決める |
| 判断基準が残らない | 月次の報告に「何を、なぜ変えたか」を書いてもらう |
| 利害のずれ | 広告費を下げる提案をした実例があるかを、契約前に聞く |
5つのうち4つは、頼む側の準備で小さくできます。代行の成果は、担当者の腕だけでなく、こちらが渡す情報の量でも変わります。
もう一段踏み込むなら、次の3つを契約時の取り決めに入れてしまうのが確実です。
- 在庫の残り日数と価格の変更を共有する場所を1つに決め、更新する人を決める
- 月次レポートに「今月変えたこと」と「その理由」の欄を設けてもらう
- 3か月目に、続けるか範囲を変えるかを話す場をあらかじめ入れる
口頭の約束は、担当者が替わると消えます。見積もりや契約書の文言として残しておいてください。契約前に何をどう聞くかは見積もりで聞く7つの質問に手順としてまとめました。
頼んでからの3か月に起きること
メリットもデメリットも、契約した初日から出るわけではありません。時系列で見ておくと、途中で「思っていたのと違う」となりにくくなります。
| 時期 | 起きやすいこと | こちらがやること |
|---|---|---|
| 1か月目 | アカウントの棚卸しと、明らかな無駄の停止。商品の理解はまだ浅い | 買う人・使う場面・競合との違いを文書で渡す。在庫と価格の予定を共有する |
| 2か月目 | キャンペーン構造の整理。数字が一時的に動いて不安になりやすい | 何をなぜ変えたかをレポートで確認する。数字だけで慌てない |
| 3か月目 | 目標に対する調整が回り始める。続けるかを判断する材料が揃う | 続けるか、範囲を変えるかを話す場を持つ |
1か月目に売上が跳ねることを期待していると、たいてい肩透かしになります。最初にやるのは止血なので、広告費が減って売上は横ばい、という月になることもあります。見るべきは売上ではなく、手数料と広告費を引いたあとに残る金額です。
2か月目に数字が動くのは、キャンペーンの構造を触ると配信の学習が入り直すためです。ここで慌てて元に戻すと、いちばん中途半端な状態が残ります。3か月目までは待つ、と最初に決めておくと判断がぶれません。
向く会社・向かない会社
代行が向く会社
- 広告を出している商品が複数あり、週次の除外や入札の作業が追いついていない
- 主力商品の粗利率を把握していて、目標とする広告費の比率を言える
- 在庫と価格の予定を、代行側に伝えられる担当者が社内にいる
- 広告以外(商品ページ・仕入れ・物流)に社内の時間を使いたい
まだ代行が向かない会社
- 主力商品の粗利率が分からない。目標を決められず、代行側も判断の置き場がない
- 商品ページのクリック率や購入率に目立つ問題がある。広告費を積んでも売れにくい
- 在庫が頻繁に切れる。広告を回すたびに止まってしまう
- 広告費が小さく、代行費用の比率が重くなりすぎる
向く・向かないを分けているのは、会社の規模ではありません。代行側が判断を置ける土台が社内にあるかどうかです。粗利率が分かっていれば目標が決まり、在庫の予定が届けば止める判断ができ、商品ページが整っていれば広告が効きます。この3つがそろっていれば、広告費の規模が小さくても代行は機能します。逆に、広告費が大きくても3つが欠けていると、報告を読んでも良し悪しが判断できない状態が続きます。
向かない側に当てはまっても、代行を諦める必要はありません。先に商品ページや在庫を整える、あるいは設計だけを外部と一緒に作り、実作業は自社でやる形から始める方法もあります。当社の作業範囲と料金は広告運用代行の内容と料金に公開しています。
費用に見合うかを計算する
頼むかどうかの最後の判断は、次の式で考えると整理しやすくなります。
代行費用 ≦ 減らせる無駄な広告費 + 増える利益 + 社内の作業時間の価値
計算の形を示すための仮の数字で見てみます。月の広告費が50万円で、そのうち1割が成果の出ていない検索語に流れているなら、除外を続けるだけで月5万円前後の無駄が減る見込みになります。そこに増える利益と、社内で使っていた作業時間の価値を足して、代行費用と比べます。
「増える利益」は売上ではなく、販売手数料・配送料・広告費を引いたあとの金額で見てください。手数料や配送料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、一般的な料率ではなく自社の実数で確認してください。
回収ラインを、広告費の規模ごとに出す
計算の形を示すために、仮の条件を置きます。相場ではなく、あくまで計算例です。
- 代行費用は、月額固定型を月50,000円、広告費連動型を広告費の20%と仮定する
- いまの広告費のうち、成果の出ていない検索語に流れている分を10%と仮定し、除外でその全額を止められたとする
- 増える利益は、粗利率を30%と仮定して売上増から計算する
月額固定型(月50,000円)の場合です。
| 月の広告費 | 止められる無駄(月) | 代行費用(月) | 不足分 | 不足を埋めるのに必要な売上増(月) |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 10,000円 | 50,000円 | 40,000円 | 約133,000円 |
| 30万円 | 30,000円 | 50,000円 | 20,000円 | 約67,000円 |
| 100万円 | 100,000円 | 50,000円 | なし(50,000円の余り) | なし |
広告費連動型(20%)で同じ計算をすると、こうなります。
| 月の広告費 | 止められる無駄(月) | 代行費用(月) | 不足分 | 不足を埋めるのに必要な売上増(月) |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 10,000円 | 20,000円 | 10,000円 | 約33,000円 |
| 30万円 | 30,000円 | 60,000円 | 30,000円 | 100,000円 |
| 100万円 | 100,000円 | 200,000円 | 100,000円 | 約333,000円 |
年額に直すと、月額固定型は広告費の規模にかかわらず年600,000円。連動型は広告費10万円で年240,000円、30万円で年720,000円、100万円で年2,400,000円です。
この計算から見えるのは、無駄の削減だけで代行費用が回収できるのは、広告費がある程度大きく、かつ月額固定型のときに限られるということです。それ以外の場合は、売上そのものが増えるか、社内の作業時間が本業に戻ることで元が取れるか、のどちらかが必要になります。
ここに置いた「無駄10%」と「粗利率30%」は、計算の形を示すための仮の数字です。商品によってまったく違うので、自社の実数に置き換えて計算してください。自社でやる場合の作業時間を金額に直した比較は自分で運用するか代行に頼むかに置いてあります。
式の右側が見積もれない場合は、まず自社の広告のどこに無駄があるかを把握するところからです。8問の無料診断で、広告・商品ページ・在庫のどこが弱いかの当たりをつけられます。当社に頼む場合の範囲を聞きたいときは、お問い合わせからどうぞ。
頼むかどうかのチェックリスト
金額の計算をしたら、次の項目で最終確認をしてください。
- 主力商品の粗利率を、販売手数料と配送料を引いたあとの数字で言えるか
- いまの広告費のうち、成果の出ていない検索語に流れている分をおおよそ把握しているか
- 自社の広告費を料金の型に当てはめて、年間の支払額を出したか
- 商品ページのクリック率と購入率に、先に直すべき問題が残っていないか
- 在庫が切れずに回る体制があるか
- 買う人・使う場面・競合との違いを、文書で渡せるか
- 在庫と価格の予定を代行側に伝える担当者が、社内にいるか
- 3か月目に続けるかを判断する場を、契約時に決められるか
「いいえ」が多い項目から先に埋めてください。特に上の4つが空欄のまま契約すると、代行側にも判断の置き場がなく、報告を読んでも良し悪しが分かりません。
まとめ
- 代行のメリットは、週次の作業が止まらないこと、判断の型を持ち込めること、止める判断がしやすいこと、社内の時間を本業に戻せること、繁忙期の山を越えられること
- 効くのは「うまいことをやってもらう」部分ではなく、決まった作業が回り続ける部分
- デメリットは、毎月の費用、商品理解の時間差、在庫・価格の情報のずれ、判断基準が社内に残りにくいこと、料金の型による利害のずれ、広告の外の原因、社内で広告がよそのものになること
- デメリットの多くは、渡す情報と報告の中身を先に決めておくことで小さくできる
- 最初の1か月は止血なので、売上が跳ねることを期待しない。3か月目までは待つと決めておく
- 粗利率が分からない、商品ページや在庫に問題がある場合は、代行の前にそちらを整える
- 頼むかどうかは「代行費用 ≦ 減らせる無駄+増える利益+社内の時間の価値」で考え、仮の条件でよいので数字を入れて確かめる
