Amazon広告の代理店を探し始めると、各社のサイトにはよく似た言葉が並んでいます。「ACOS改善」「売上アップ」「専任担当」。サイトを読み比べても違いが見えにくいのは当然で、差が出るのは見積もりと提案の中身です。
契約前は、代理店側もいちばん丁寧に説明してくれる時期です。この記事では、見積もりを頼む段階で聞いておきたい7つの質問を、確かめたい内容ごとに3つに分けて書きます。比べるときの観点(料金の型・担当者・報告・除外運用・引き継ぎ)は広告の代行を比較するときに見る5つの点にまとめてあるので、この記事は「実際に何を聞くか」の手順編として読んでください。
見積もりを頼む前に、そろえておく数字
同じ質問をしても、渡した情報が会社ごとに違えば、返ってくる見積もりは比べられません。依頼する前に次の数字を1枚にまとめ、全社に同じものを渡してください。
- 直近3か月の広告費と、広告経由の売上(月ごと)
- 全体の売上と、そのうち広告経由の割合
- 主力商品の粗利率(販売手数料・配送料を引いたあと)
- 広告を出している商品数と、今後3か月で増やす予定の数
- いちばん困っていること(1〜2行で)
粗利率を出すときの販売手数料やFBA配送料は、カテゴリー・サイズ・時期で変わります。一般的な料率ではなく、自社の実数で確認してください。計算には利益シミュレーターが使えます。
そもそも外に出すかどうかを決めきれていない段階なら、先に自分で運用するか代行に頼むかを読んでください。見積もりを取り始めてから迷い直すと、各社の時間もこちらの時間も無駄になります。
渡すと見積もりの精度が上がるもの
数字に加えて、次のものを渡せると提案の具体性が変わります。
- 直近1か月の検索用語レポート(加工せずそのまま)
- 稼働中のキャンペーンの一覧(名前と1日の予算)
- 主力商品のASINと、競合だと思っている商品
情報を出しすぎると足元を見られるのでは、と心配される方がいますが、広告の見積もりに関しては逆です。渡す情報が少ないほど、各社は安全側に見積もり、金額は上振れします。 外に出したくない情報があるなら、秘密保持の取り決めを先に済ませるほうが早く進みます。
質問1〜3:金額の中身を確かめる
質問1. 見積もりの金額は、何を基準に計算していますか。
広告費の何%という料金なら、基準が「実際に使った広告費」なのか「設定した予算」なのかで請求額が変わります。最低料金があるか、広告費が増えたときに料率が変わるかも、この質問で一緒に確かめます。
質問2. この金額に含まれない作業は何ですか。
「含まれるもの」より「含まれないもの」を聞くほうが、あとからの追加費用を防げます。会社によって扱いが分かれやすいのは次のあたりです。
- スポンサーブランド広告の画像や動画の制作
- 新商品を追加したときのキャンペーン作成
- 広告の成果に関わる商品ページの修正提案
- 大型セール前の臨時の調整
質問3. 初期費用で、最初の1か月に何をしてもらえますか。
初期費用の中身は、会社ごとの差が大きい部分です。既存のキャンペーンを診断するだけなのか、キャンペーン構造の作り直しまで含むのか。診断の結果を文書でもらえるかも聞いておくと、途中で解約した場合に手元に残るものが分かります。
追加費用が発生しやすい場面
「含まれない作業」を聞くときは、こちらから場面を挙げて確認すると答えが具体的になります。
- 新しい商品を10点追加したとき、キャンペーンの作成は追加費用になるか
- スポンサーブランド広告の見出しや画像を差し替えるとき
- セール期間中に、日中の予算調整を頼むとき
- 月次レポートとは別に、社内説明用の資料が要るとき
- 広告以外(商品ページ・在庫)についての助言を求めたとき
すべてが料金に含まれている必要はありません。有料なら単価が決まっているのか、その都度見積もりなのかを聞いておけば十分です。曖昧なまま始めると、頼みにくくなって作業そのものが止まります。
質問4〜5:運用の考え方を確かめる
質問4. 目標ACOSは、何をもとに決めますか。
ここで、こちらの粗利率を聞き返してくる会社は、利益から逆算して広告を組む考え方を持っています。「このカテゴリーなら何%くらいが普通です」とだけ返ってくる場合は、自社の利益構造を見ずに運用される可能性があります。目標の出し方は目標値の決め方と下げ方に書いています。
質問5. 最初の3か月で、何をどの順番でやりますか。
提案書に施策が並んでいても、順番が書かれていないことがあります。広告の改善には、無駄な検索語の除外のように早く効くものと、新しいキーワードの育成のように時間がかかるものが混ざっています。月ごとに「何をして、どの数字を見るか」を答えられるかで、段取りの力が分かります。
提案書で見るところ
見積もりに提案書が付いてくる場合、次の3点を見てください。
- 自社の商品名やカテゴリーが、具体的に出てくるか
- いまのキャンペーンの問題点が、推測ではなく数字で書かれているか
- 施策に順番と、その順番の理由があるか
どの会社にも使い回せる内容の提案書は、こちらのアカウントを見ずに作られています。見積もりの前に検索用語レポートやキャンペーンの一覧を渡していれば、具体的な指摘が出てきてよいはずです。出てこない場合は、渡した資料を読んでいないか、読める人が担当していないかのどちらかです。
頼んだあとに何が起きるかを先に知っておくと、この2問の答えも評価しやすくなります。良い面と困る面の両方は代行に頼むメリット・デメリットに整理しました。
質問6〜7:関係の持ち方を確かめる
質問6. 予算の増減や広告の停止は、誰がどう決めますか。
代理店だけで決めてよい範囲と、こちらの承認が要る範囲を先に分けておかないと、「在庫が切れそうなのに広告が回っていた」「気づいたら予算が倍になっていた」ということが起きます。確かめるのは次の3つです。
- 代理店だけで変えてよい範囲(入札の調整、除外の追加など)
- こちらの承認が要る変更(予算の増額、キャンペーンの停止など)
- 連絡の手段と、返事が来るまでの目安
在庫の残り日数や値上げ、セール参加の予定をどう共有するかも、ここで決めておきます。
質問7. 合わなかったとき、どう終われますか。
最低契約期間、解約の申し出から終了までの期間、終了後にキャンペーン設定と除外リストが自社のアカウントに残るか。契約の終わり方は切り出しにくい話ですが、見積もりの段階なら自然に聞けます。契約まわりの確認項目は費用相場と、頼む前に確認したい7つのことに詳しく書いています。
契約書の文言まで見せてもらえるかも、この段階で聞いてください。見積もりには「解約後もアカウントはお客様のもの」と書いてあるのに、契約書には別の定めがある、ということが起こりえます。頼む側にとって重いのは、期間・違約金・アカウントの帰属の3つです。
答えを1枚の表に並べて比べる
2〜3社に同じ質問をしたら、答えを表にまとめます。記憶で比べると、最後に話した会社の印象が強く残るからです。見るところと、注意したい答えの例を並べておきます。
| 質問 | 答えで見るところ | 注意したい答え |
|---|---|---|
| 1. 金額の基準 | 実際の広告費か予算か、最低料金の有無 | 基準が出てこず「だいたいこのくらい」 |
| 2. 含まれない作業 | 別料金になる作業が具体的に挙がるか | 「全部やります」だけ |
| 3. 初期費用の中身 | 1か月目の作業と、文書で残るもの | 中身が「アカウント設定」の一言 |
| 4. 目標ACOS | 粗利率を聞き返してくるか | カテゴリーの平均値だけで決める |
| 5. 3か月の段取り | 月ごとの作業と、見る数字 | 施策は並ぶが順番がない |
| 6. 決め方と連絡 | 承認が要る範囲の線引き | 「お任せください」で線引きがない |
| 7. 終わり方 | 解約後に設定が自社に残るか | 代理店側のアカウントで運用する |
比べるときは、金額の安さより「質問にその場で具体的に答えられたか」を重く見てください。即答できない項目が多い会社は、契約後もその部分が曖昧なまま進みやすいからです。
自社の広告のどこが弱いのかが分かっていると、質問4と5の答えを評価しやすくなります。見当がつかない場合は、先に8問の無料診断で現状を整理しておくと、見積もりを比べやすくなります。
見積もりの金額を、同じ土俵に並べる
各社の見積もりは、型がばらばらで出てきます。月額固定の会社、広告費の何%の会社、少額の固定に率を乗せる会社。このままでは並べられないので、自社の広告費を当てはめて初年度の総額に直します。
計算の形を示すために、次の仮の条件を置きます。相場ではなく、あくまで計算例です。
- A社:月額固定80,000円、初期費用200,000円
- B社:広告費の20%、初期費用なし
- C社:月額固定30,000円+広告費の10%、初期費用100,000円
| 月の広告費 | A社(初年度) | B社(初年度) | C社(初年度) |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 1,160,000円 | 240,000円 | 580,000円 |
| 30万円 | 1,160,000円 | 720,000円 | 820,000円 |
| 100万円 | 1,160,000円 | 2,400,000円 | 1,660,000円 |
内訳です。A社は月80,000円×12か月=960,000円に初期費用200,000円を足して1,160,000円。広告費が変わっても金額は動きません。B社は広告費10万円なら月20,000円で年240,000円、30万円なら月60,000円で年720,000円、100万円なら月200,000円で年2,400,000円。C社は広告費10万円なら月30,000円+10,000円=40,000円で年480,000円、初期費用100,000円を足して580,000円。30万円なら月60,000円で年720,000円、初期費用を足して820,000円。100万円なら月130,000円で年1,560,000円、初期費用を足して1,660,000円です。
いちばん安い会社が、広告費の水準で入れ替わります。 この仮の条件だと、広告費が月48万円あたりでB社の年額がA社を追い越し、58万円あたりでC社もA社を上回ります。いまの広告費だけで選ぶと、増やした半年後に支払いが跳ねる、ということが起きます。見積もりを頼むときは「今後3か月で広告費をどうするつもりか」もあわせて伝えてください。
2年目以降と、増えた場合も出しておく
初期費用は初年度だけなので、2年目は金額が変わります。この条件ならA社は年960,000円、B社は変わらず、C社は広告費30万円で年720,000円。初年度で比べると初期費用の大きい会社が不利に見えますが、2年目以降で順位が入れ替わることがあります。
もう一つ出しておきたいのが、広告費を増やしたときの支払額です。いまの広告費と、半年後に想定する広告費の2つで年額を出し、両方を表に並べてください。増やす予定があるなら、率で払う契約には上限(この金額を超えたら料率を下げる、など)を交渉する余地があります。
見積もりの前後と契約後のチェックリスト
依頼する前に確認すること。
- 直近3か月の広告費・広告経由売上・全体売上を1枚にまとめたか
- 主力商品の粗利率を、販売手数料と配送料を引いたあとの数字で出したか
- 今後3か月で広告費をどうするつもりかを、全社に同じ形で伝えたか
- 2〜3社に、同じ資料と同じ質問を渡したか
受け取ったあとに確認すること。
- 7つの質問の答えを、記憶ではなく表に書き出したか
- 各社の料金を、自社の広告費で初年度と2年目の年額に直したか
- 広告費を増やした場合の年額も出したか
- 最低契約期間・解約までの期間・解約後にキャンペーンが残るかを、書面で確認したか
契約したあと、最初の3か月で答えと実際を突き合わせる
見積もりの段階で聞いた7つの答えは、契約したら終わりではありません。最初の3か月は、答えどおりに進んでいるかを確かめる期間です。表に書き出した答えを手元に置き、月1回の報告のたびに次の点を見ます。
| 時期 | 突き合わせる答え | 確かめること |
|---|---|---|
| 1か月目 | 質問3(初期費用の中身) | 約束された診断や設計が、文書で届いているか |
| 1か月目 | 質問6(決め方と連絡) | 承認が要る変更を、事前に相談されたか。返事の速さは聞いた目安どおりか |
| 2か月目 | 質問5(3か月の段取り) | 1か月目に予定していた作業が終わり、2か月目の作業に進んでいるか |
| 2か月目 | 質問2(含まれない作業) | 頼んだ作業が追加費用になったとき、聞いていた単価どおりか |
| 3か月目 | 質問4(目標ACOS) | 目標が粗利率から決められ、その数字に向けた調整の理由が報告されているか |
ずれが見つかったら、その場で文章にして伝えます。「見積もりの段階では◯◯と伺いましたが、現状は△△です。どう進めますか」と、答えと現状を並べて書くと、感情的な話にならずに済みます。
ずれが1つ2つなら調整で直ることが多い一方、3か月目に半分以上の項目でずれている場合は、乗り換えを考える時期です。 最低契約期間の終わりがいつか、解約の申し出は何日前までかを、この時点で確かめておいてください。乗り換えの段取りは運用代行の乗り換え方、報告書の読み方は代行のレポートの見方にまとめています。
突き合わせで分かった、よくあるずれ
当社が乗り換えの相談を受けるときに、見積もりの答えと実際がずれていた例を挙げておきます。
- 「専任担当」と聞いていたが、2か月目から報告書の作成者が別の人になった
- 「除外は毎週」と聞いていたが、検索用語レポートを見ると除外の追加が月に数件しかない
- 「予算の増額は承認制」と聞いていたが、セール期間に事後報告で予算が上がっていた
- 初期費用で「キャンペーンの再設計」と聞いていたが、既存のキャンペーンに数個を足しただけだった
どれも、見積もりの段階で答えを表に残していれば、2か月目には気づけるずれです。記録がないと「そういう意味ではなかった」と言われたときに確かめようがありません。
当社に見積もりを頼む場合の作業範囲と料金は広告運用代行の内容と料金に公開しています。同じ質問を当社にしていただいて構いません。
よくある質問
相見積もりであることは伝えたほうがいいですか。 伝えたほうが話が早く進みます。隠しても、質問の細かさや検討期間の言い方でだいたい伝わりますし、伝えておくと「他社と比べられる前提」で提案が具体的になります。ただし他社の金額をそのまま見せるのは避けてください。金額を下げる方向の話に寄って、作業範囲の話が薄くなります。伝えるのは「複数社に同じ質問をしている」という事実だけで足ります。
「今月中の契約なら初期費用が無料」と言われました。乗ってよいですか。 期限が付いた値引きは、比較の時間を削るために置かれていることがあります。判断の材料がそろっていないなら、無料になる分より、合わない会社と1年契約するほうが高くつきます。使うなら「他社の返答がそろうのが来週なので、そこまで待てるか」と聞いてください。待てないと言われた場合、その姿勢自体が判断材料になります。
担当したASINや取引先名は出せないと言われました。実績はどう確かめますか。 守秘義務で出せないのは普通のことなので、そこで切る必要はありません。代わりに、商品単価・レビュー数・広告費の規模・カテゴリーの大まかな傾向という条件を聞き、自社と近い案件を扱っているかを確かめてください。加えて「その案件で最初の1か月に何をしたか」を手順として説明してもらえれば、経験の有無はだいたい分かります。
個人のフリーランスと会社のどちらに頼むかでも、同じ質問でよいですか。 7つの質問はそのまま使えます。個人に頼む場合は、これに「担当者が病気や休暇で動けないときにどうなるか」と「管理画面の権限をどの範囲で渡すか」の2つを足してください。個人か会社かの違いは個人に広告代行を頼む場合、権限の渡し方は代行に渡す権限の範囲に詳しく書いています。
まとめ
- 代理店の差は、サイトの言葉ではなく見積もりと提案の中身に出る
- 見積もりを頼む前に、広告費・売上・粗利率・商品数・困りごとを1枚にまとめ、全社に同じものを渡す
- 金額の中身は「計算の基準」「含まれない作業」「初期費用で何をするか」の3つで確かめる
- 運用の考え方は「目標ACOSを何から決めるか」「最初の3か月の順番」で確かめる
- 関係の持ち方は「誰が何を決めるか」「合わなかったときの終わり方」で確かめる
- 型の違う見積もりは、自社の広告費を当てはめて初年度と2年目の年額に直してから並べる
- 仮の条件で計算すると、いちばん安い会社は広告費の水準で入れ替わる。今後の広告費の予定も伝えて見積もってもらう
- 答えは表に並べて比べ、金額の安さより「具体的に即答できたか」を見る
- 契約後3か月は、表に残した答えと実際の作業を月1回突き合わせる。半分以上ずれていれば乗り換えを考える
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