「Amazon広告は自分でやるべきか、代行に頼むべきか」という相談は、立ち上げ期にも、売上が伸びて手が回らなくなった時期にも来ます。結論から言うと、判断の軸は2つだけです。週に何時間、管理画面を見られるか。そして、上げ下げの判断基準を自分で持っているか。
この記事では、その2軸での決め方と、自分でやる場合・頼む場合それぞれの失敗パターン、自社の作業時間を金額に直した比較、途中で切り替える目安を書きます。会社を絞る段階まで進んだら代行を比較するときに見る5つの点へ、見積もりを取る段階なら見積もりで聞く7つの質問へ進んでください。
判断の2軸
| 時間がある | 時間がない | |
|---|---|---|
| 判断基準がある | 自分で運用 | 代行(実作業を任せる) |
| 判断基準がない | コンサル型(設計を教わり、実作業は自分) | 代行(設計から任せる) |
「時間がある」の目安は、週に2〜3時間、検索用語レポートとキャンペーンの数字を見られることです。「判断基準がある」とは、目標ACOSを粗利から出せて、除外する検索語の基準を言葉にできる状態です。
2軸をもう少し細かく見る
「時間がある」で大事なのは、合計の時間よりも間隔です。月に1回まとめて3時間、では代わりになりません。広告の無駄は毎日たまるので、見る間隔が空くほど止血が遅れます。週に1回、決まった曜日に見られるかどうかで判断してください。
「判断基準がある」とは、次の3つを数字で言える状態です。
- 主力商品の損益分岐ACOS(粗利率から計算した、赤字になる境目)
- そこから残したい利益を引いた、目標ACOS
- 除外に回す基準(何クリックで売れなければ切るか、いくら使ったら切るか)
この3つが空欄のまま代行に頼むと、代行側にも判断の置き場がありません。「このカテゴリーならこのくらいです」で運用が始まり、利益が増えたのかどうか分からないまま契約が続くことになります。逆に言えば、この3つさえ社内にあれば、実作業を外に出しても手綱は自社に残ります。
自分で運用する場合:最低限の型
自分でやるなら、次の5つだけは最初に決めてください。これが無いまま始めると、入札の上げ下げを感覚で繰り返すことになります。
- 目標ACOSを粗利から出す。 業界平均ではなく、自社の粗利率から損益分岐ACOSを計算し、そこから残したい利益率を引く(ACOSの目標値の決め方。利益シミュレーターで計算できます)
- キャンペーン構造を決める。 オートとマニュアルの役割、商品群ごとの分け方(キャンペーン構造の作り方)
- 週に1回、検索用語レポートを読む。 成果の出ていない検索語を除外する(除外キーワードの決め方)
- 予算の配分ルールを決める。 売れている商品に寄せる、新商品には実績づくりの予算を別枠で持つ(広告予算の配分)
- 月に1回、TACOSを見る。 全体の売上に対する広告費の比率が上がり続けていないか(TACOSとは)
1週間の回し方の例
決めたことを続けるには、曜日に貼り付けてしまうのが確実です。
| タイミング | やること | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 週の頭 | 前週の検索用語レポートを読み、成果の出ていない語を除外する | 40〜60分 |
| 週の頭 | 売れている語をマニュアルのキャンペーンに追加する | 20〜30分 |
| 週の半ば | 予算切れのキャンペーンと、予算を使い切っていないキャンペーンを確認する | 20分 |
| 月末 | ACOS・TACOS・自然流入の比率を記録し、翌月の予算を決める | 60分 |
この形で月に7〜8時間ほどです。ここに新商品のキャンペーン作成や、セール前の調整が乗るので、実際には月10時間を超える月も出てきます。商品数が増えると、週の頭の作業が膨らみます。ここが破綻し始めたら、切り替えを考える時期です。
自分で運用する人の失敗パターン
- 検索用語レポートを見ずに、ACOSが高いキャンペーンの入札だけ下げる → 売れる語まで表示が減る
- 「とりあえずオート」で放置し、無関係な検索語に予算が流れ続ける
- 売上が伸びると広告費も増やし、TACOSが上がっているのに気づかない
3つに共通しているのは、見ている数字が足りないことです。ACOSだけを見ていると、広告を止めれば数字は良くなります。検索語まで下りて原因を見る、全体の売上に対する広告費の比率も並べて見る。この2つを足すだけで、感覚での上げ下げはかなり減ります。
代行(代理店)に頼む場合:費用の型と確認点
費用は大きく3つの型です。
| 型 | 仕組み | 注意点 |
|---|---|---|
| 月額固定 | 毎月決まった金額 | 範囲外の作業が別料金になりやすい |
| 広告費の何% | 広告費に連動 | 広告費を増やすほど代行会社の収入が増える構造 |
| 成果報酬 | 売上や利益の増加分に対して | 「成果」の定義が曖昧だと後で揉める |
頼む前に確認したいのは次の5点です。詳しくは広告運用代行を比較するときに見る5つの点に書いています。
- 料金の型と、広告費との連動の有無
- 実際に管理画面を触る担当者が、自分で広告費を払って運用した経験があるか
- 報告にACOSだけでなく、TACOSと自然流入の推移が入るか
- 検索用語レポートを定期的に読み、除外を続けているか
- 契約が終わったとき、キャンペーンと判断基準が手元に残るか
頼んだあとに実際どう変わるのか、良い面と困る面の両方は代行に頼むメリット・デメリットに整理しました。
折衷型(設計だけ外に出す)
2軸の表で「判断基準がない・時間はある」に当たる場合、実作業まで外に出す必要はありません。設計と判断基準づくりだけを外部と一緒にやり、日々の作業は自社でやる形があります。
- 目標ACOSの出し方、キャンペーン構造、除外の基準を一緒に決める
- 決めた基準に沿って、週次の作業は自社でやる
- 月に1回、数字を見ながら基準そのものを直す
この形の利点は、判断基準が社内に残ることです。実作業を全部任せると、なぜその入札にしたのかが社内の誰にも分からなくなります。手を動かす人が社内にいるなら、まずこの形から始めて、手が足りなくなってから実作業を渡すという順番でも遅くありません。
代行に頼む人の失敗パターン
- 報告がACOSだけで、利益が増えたかどうか分からないまま契約が続く
- 代行会社のアカウントで運用され、解約したらキャンペーンごと消えた
- 「広告だけ」を任せたが、実は商品ページや在庫が原因で、広告費を積んでも利益が出なかった
3つとも、契約前の質問で防げるものです。報告に何を書くか、どのアカウントで運用するか、広告以外に原因があった場合はどう扱うか。この3つを見積もりの段階で決めておけば、あとから揉める余地はほとんど残りません。
時間の値段で比べる
自分でやる場合の費用はゼロではありません。管理画面を見る時間には値段があります。ここを金額に直さないまま「自分でやれば無料」と考えると、比較になりません。
計算の形を示すために、次の仮の条件を置きます。相場ではなく、あくまで計算例です。
- 自社で運用する場合の作業時間は、月の広告費が10万円で月12時間、30万円で月20時間、100万円で月32時間と仮定する
- その時間の値段を、仮に1時間3,000円と置く
- 代行の料金は、月額固定型を月50,000円、広告費連動型を広告費の20%と仮定する
| 月の広告費 | 自社の作業時間(月) | 自社の時間を金額換算(年) | 月額固定型(年) | 広告費連動20%(年) |
|---|---|---|---|---|
| 10万円 | 12時間 | 432,000円 | 600,000円 | 240,000円 |
| 30万円 | 20時間 | 720,000円 | 600,000円 | 720,000円 |
| 100万円 | 32時間 | 1,152,000円 | 600,000円 | 2,400,000円 |
内訳です。月12時間×3,000円=36,000円、12か月で432,000円。月20時間なら年720,000円、月32時間なら年1,152,000円。広告費連動20%は、広告費10万円で月20,000円(年240,000円)、30万円で月60,000円(年720,000円)、100万円で月200,000円(年2,400,000円)です。
この仮の条件では、広告費が小さいうちは率で払う契約がいちばん軽く、広告費が大きくなると月額固定がいちばん軽くなります。 率で払う契約だけが広告費に比例して増え続け、自社の作業時間も月額固定もそこまでは増えないからです。料金の型ごとの年額の出し方は代行を比較するときに見る5つの点にも別の条件で置いてあります。
自社の時間の値段をどう置くか
1時間3,000円は、あくまで仮の置き方です。自社で置くときは、次のどちらかで考えてください。
- その人の人件費(給与と社会保険料を、働く時間で割った額)
- その時間を別の仕事に使ったときに生まれる金額
代表が自分でやる場合は、後者で置くほうが実態に近くなります。商品開発や仕入れの交渉に使えば増える金額と、広告の管理画面を見る時間を、同じものさしに載せる。ここが見えると「自分でやるべきか」の答えが変わることがあります。
もちろん、金額に直しただけでは決められません。自分でやる場合は判断の質が代行と同じとは限らず、代行に出す場合は商品の理解が届くまでの時間差があります。金額は入口で、最後は次のチェックリストで決めることになります。
途中で切り替える目安
- 自分で → 代行へ:商品数が10を超えて週次の除外作業が追いつかない。または、目標ACOSを決めても達成の手が打てない状態が2か月続く
- 代行 → 自分で:代行会社の報告を見て「次に何をするか」が自分で言えるようになった。判断基準が社内に残っているなら、実作業は内製に戻せる
- どちらでもない折衷:設計と判断基準は外部と一緒に作り、日々の実作業は自社でやる形。当社の月次サポートはこの型です
切り替えは失敗ではありません。広告の運用に必要な手間は、商品数と広告費の規模で変わります。年に1回、いまの形が合っているかを見直すくらいでちょうどよいと考えてください。
切り替えるときに引き継ぐべきものは3つです。キャンペーン構造の意図、除外リスト、目標ACOSの根拠。この3つを文書で持っていれば、内製に戻すときも、別の会社に移るときも、ゼロからにはなりません。逆に、この3つが代行会社の頭の中にしかない状態で契約を終えると、次の運用が振り出しに戻ります。
決める前のチェックリスト
金額を出したら、次の項目で最終判断をしてください。「いいえ」が半分を超えるなら、外に出すか、外部と一緒に設計するほうが早いことが多いです。
- 週に2〜3時間、決まった曜日に管理画面を見る時間を確保できるか
- 主力商品の粗利率を、販売手数料と配送料を引いたあとの数字で言えるか
- 目標ACOSを、粗利から計算した数字で持っているか
- 除外する検索語の基準を、クリック数や費用のしきい値で言葉にできるか
- 自社の作業時間を金額に直したとき、代行費用を下回っているか
- 広告を出す商品数が、今後3か月で増える予定はないか
- 代行に出す場合、在庫と価格の予定を伝える担当者が社内にいるか
- 商品ページのクリック率や購入率に、先に直すべき問題が残っていないか
広告の前に確認してほしいこと
広告は「売れる確率」を上げる商品ページと、在庫が切れない体制があって初めて効きます。クリック率の低いメイン画像に広告費を払っても、順位は上がりません。広告の相談を受けるとき、当社はまず商品ページ・在庫・価格の状態を見ます。どこから直すかの当たりをつけるには、8問の無料診断を使ってください。
自分でやるか外に出すかの前に、次の3つのどれかに当てはまるなら、そちらが先です。
- メイン画像やタイトルが競合と並んだときに見劣りする(広告を出しても押されない)
- 在庫が月に何度も切れる(広告を回しても止まる)
- 主力商品の粗利率が分からない(目標を決められず、自分でやっても外に出しても判断できない)
広告費を増やしても、この3つが残っているうちは手元に残る金額は増えにくいままです。順番を間違えないでください。
まとめ
- 判断の軸は「週に何時間見られるか」と「判断基準を持っているか」の2つ
- 「時間」は合計より間隔で見る。週に1回、決まった曜日に見られるかどうか
- 自分でやるなら、目標ACOS・キャンペーン構造・週次の除外・予算配分・月次のTACOS確認の5つを先に決め、曜日に貼り付けて回す
- 自分でやる費用はゼロではない。作業時間を金額に直して、代行費用と同じ表に並べる
- 仮の条件で計算すると、広告費が小さいうちは率で払う契約、大きくなると月額固定が軽くなる
- 代行に頼むなら、料金の型・担当者・報告の中身・除外運用・引き継ぎの5点を契約前に確認する
- 判断基準がなくて時間はある場合は、設計だけ外に出して実作業は自社、という折衷型がある
- 商品数が増えて手が回らなくなったら代行へ、判断基準が社内に残ったら内製へ。行き来してよい
- 広告の前に、商品ページ・在庫・価格に原因がないかを見る
当社の広告運用の範囲と料金は広告運用代行の内容と料金にまとめています。
