売れ行きが落ちてきたとき、とりあえずクーポンを出していないでしょうか。
クーポンは、定価を変えずに期間を区切って割引できる便利な手段です。効果がなければ元に戻せるので、値下げより傷が残りません。一方で、割引した金額とクーポンの手数料は、そのまま利益から出ていきます。
この記事では、クーポンを出す前に決めておくことを、順番に説明します。
クーポンが効く場面と効かない場面
最初に、今の状況がクーポン向きかどうかを確認します。売れない原因が割引で解決するものでなければ、利益が減るだけです。
| 場面 | クーポンは | 理由 |
|---|---|---|
| 新商品でレビューが少ない | 向く | 比較されたときに選ばれる理由を足せる |
| 検索結果で競合と価格が横並び | 向く | クーポン表示で目に留まりやすくなる |
| 季節の終わりなど、在庫を減らしたい | 向く | 期限を切って回転を上げられる |
| ページの見せ方に原因がある | 向かない | 割引で原因が隠れるだけで、終われば元に戻る |
| 粗利がもともと薄い | 向かない | 割引と手数料で赤字になりやすい |
| カートを取れていない | 向かない | 先にカートを取れない原因を解消する |
「転換率が低いからクーポン」と考える前に、メイン画像やレビュー、配送日数に原因がないかを見てください。そこに原因がある状態でクーポンを出すと、クーポンを外した瞬間に売れなくなります。
割引率は粗利から逆算する
割引率は「10%くらい」で決めず、1個あたりの粗利から逆算します。
見るのは、割引額とクーポン手数料を引いた後に、1個あたりいくら残るかです。そして、その残りで元の粗利総額を保つには、販売数が何倍になる必要があるかを出します。
売価3,000円、広告費を除く1個あたりの粗利が900円の商品で計算してみます。クーポン手数料は仮に1回50円と置きます。
| 割引率 | 割引額 | 手数料(仮) | 残る粗利 | 必要な販売数の倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 5% | 150円 | 50円 | 700円 | 約1.29倍 |
| 10% | 300円 | 50円 | 550円 | 約1.64倍 |
| 15% | 450円 | 50円 | 400円 | 2.25倍 |
| 20% | 600円 | 50円 | 250円 | 3.6倍 |
割引率を上げるほど、必要な伸びが急に大きくなるのが分かります。20%オフにすると、普段の3.6倍売れてやっと粗利総額が同じです。
クーポンの手数料の金額やかかり方は変わることがあります。手数料率・FBA料金・保管料は、カテゴリー・サイズ・時期で変わるので必ず自社の実数で確認してください。
「%」と「円」の表示
割引は率でも金額でも設定できます。同じ割引でも、商品の価格帯によって大きく見える表示が違います。どちらが反応するかは商品によるので、期間を分けて両方試し、転換率で比べるのが確かめやすい方法です。
他の割引との重なりに注意する
セールやまとめ買いの割引と同時に使えると、想定より大きく値引きされることがあります。設定する前に、同じ期間に動いている割引をすべて書き出してください。
発行数は「使ってよい予算」で決める
クーポンには予算を設定し、使い切ると終了する形になっています。予算は、次の式で出します。
予算 =(割引額 + 1回あたりの手数料)× 想定利用数
10%オフ(割引額300円)で、期間中に100回使われる想定なら、(300円+50円)× 100回で 35,000円 です。
ここで決めるべきなのは、「この金額までなら、試しに使ってよい」という上限です。予算は販売目標ではなく、損失を止めるための上限として置きます。
あわせて次も設定します。
- 1人あたりの利用回数。制限しないと、まとめて買う一部のお客様に予算が偏ります
- 対象のお客様。全員向けか、特定の条件のお客様向けか
- 期間。最初は短く区切ります
予算の減り方が早すぎる場合は、割引率が想定より効いているか、他の割引と重なっている可能性があります。
期間を区切り、止める基準を先に決める
クーポンは、出す前に「どうなったら止めるか」を決めておきます。決めずに出すと、ずっと出しっぱなしになります。
比較できる形で始める
最初は1〜2週間程度に区切り、直前の同じ日数と比べます。見る数字は次の5つです。
- セッション数(ページに来た人数)
- 転換率(ユニットセッション率)
- 販売数
- 1個あたりの粗利
- 期間全体の粗利総額
止める基準の例
- 販売数の伸びが、上の表の「必要な倍率」に届かなかった
- 転換率がほとんど変わらなかった
- 終了後の販売数が、クーポンを出す前より落ちた
最後の点は特に注意が必要です。クーポンを常に出していると、お客様にとっては割引後の価格が「いつもの価格」になります。外したときに売上が落ちるなら、定価を下げたのと変わりません。
広告と組み合わせるときの考え方
クーポンで転換率が上がると、同じクリック数でも売れる数が増えるので、ACOSは下がって見えます。
ただし、割引で1個あたりの粗利も減っています。粗利が減れば、赤字にならずに使える広告費の上限、つまり損益分岐ACOSも下がります。ACOSが下がったのに、利益は減っていたということが起こります。
組み合わせるときは、次の順で判断します。
- クーポン期間中の1個あたり粗利で、損益分岐ACOSを出し直す
- 実際のACOSが、その新しい損益分岐を下回っているかを見る
- 期間全体の粗利総額が、クーポンなしの期間より増えたかを確認する
広告の数字だけ、クーポンの数字だけで良し悪しを決めないことです。最後は粗利総額で判断します。
まとめ
- クーポンは定価を変えずに試せるが、割引額と手数料は利益から出ていく
- 新商品・横並び・在庫処分には向く。ページやカートに原因があるときは向かない
- 割引率は、1個あたりの残る粗利と「必要な販売数の倍率」から逆算する
- 手数料率・FBA料金・保管料は変わるので、自社の実数を管理画面で確認する
- 予算は「(割引額+手数料)× 想定利用数」で出し、損失の上限として置く
- 期間を区切り、止める基準を先に決める。出しっぱなしは実質の値下げになる
- 広告と組み合わせるときは、損益分岐ACOSを出し直し、粗利総額で判断する
