発注点の計算式に出てくる「安全在庫」。ここを何となく決めていると、在庫切れを繰り返すか、逆に保管料ばかり払う状態になります。Amazon安全在庫計算のやり方は1つではなく、使えるデータの量によって選び方が変わります。

安全在庫とは、予想より売れた・予想より届くのが遅れた、という読み違いに備えて上乗せしておく在庫のことです。多すぎれば資金と保管料を食い、少なすぎれば在庫切れで検索順位を落とします。

この記事では、安全在庫を「何日分持つか」まで落とし込むために、3つの計算方法と、その使い分けを試算つきで書きます。発注点そのものの考え方は在庫切れを防ぐ発注基準の作り方にまとめてあるので、あわせて読んでください。

Amazon安全在庫の計算に使う3つの方法

先に全体像です。どの方法も「読み違いの幅」を在庫で吸収するという考え方は同じで、違うのは読み違いの幅をどれだけ細かく見積もるかです。

方法計算式必要なデータ向く場面
日数法1日の平均販売数 × 持つ日数平均販売数だけ新商品・データが1か月未満
比率法リードタイム中の販売数 × 20〜30%平均販売数とリードタイム販売が安定してきた商品
ばらつき法安全係数 × ぶれの大きさ日別の販売数とリードタイムの実績主力商品・発注額が大きい商品

データが少ないうちは日数法、3か月ほど販売実績がたまったら比率法、主力商品になったらばらつき法、と段階的に切り替えるのが現実的です。最初からばらつき法を使おうとしても、元になるデータが少なければ計算結果はあてになりません。

方法1:日数法(何日分持つかで決める)

いちばん単純な方法です。

安全在庫 = 1日の平均販売数 × 持つ日数

持つ日数は、リードタイムの長さと、仕入れ先の遅れやすさで決めます。筆者が目安にしているのは次の置き方です。

  • 国内仕入れでリードタイムが2週間前後:7日分
  • 海外仕入れでリードタイムが1〜2か月:14日分
  • 海外仕入れで春節や繁忙期をまたぐ:21〜30日分

仮に1日10個売れる商品を海外から仕入れているなら、14日分で140個です。

日数法の弱点は、販売が安定している商品にも、ぶれが大きい商品にも同じ日数を当ててしまうことです。データがたまってきたら次の方法に移ります。

方法2:比率法(リードタイム中の販売数に上乗せする)

リードタイムが長いほど読み違いの幅も広がる、という点を取り込んだ方法です。

安全在庫 = 1日の平均販売数 × リードタイム(日) × 上乗せ率

上乗せ率は20〜30%を置くと大きく外しません。1日10個、リードタイム49日なら、リードタイム中の販売数は490個です。

  • 上乗せ率20%:98個
  • 上乗せ率25%:約123個
  • 上乗せ率30%:147個

どの率にするかは、過去に在庫切れを起こしたかどうかで決めます。直近半年で1回でも切らしているなら30%、切らしていないなら20%から始める、というように自社のルールにしておくと迷いません。

リードタイムは「発注してから、Amazonの倉庫で販売可能になるまで」の日数で、工場の生産日数だけではありません。ここを短く見積もると計算全体がずれるので、リードタイムの実測のしかたで工程ごとに測っておきます。

方法3:ばらつき法(販売とリードタイムのぶれから計算する)

データがそろった主力商品では、ぶれの大きさを数字で測って計算します。教科書的な式は次のとおりです。

安全在庫 = 安全係数 × √(リードタイム × 販売数のばらつき² + 平均販売数² × リードタイムのばらつき²)

式は難しく見えますが、用意する数字は4つだけです。

  1. 1日の平均販売数:ビジネスレポートの日別の注文数から出す
  2. 販売数のばらつき(標準偏差):同じ日別データから、表計算ソフトの STDEV.S 関数で出す
  3. 平均リードタイム:過去の発注ごとの実績日数の平均
  4. リードタイムのばらつき(標準偏差):同じく実績日数の標準偏差

安全係数は「在庫切れをどこまで許すか」で決めます。欠品を起こさない確率を90%にするなら1.28、95%なら1.65、約98%なら2.0が一般的に使われる値です。

試算してみる

仮に、次の商品で計算します。

  • 1日の平均販売数:10個、ばらつき:4個
  • 平均リードタイム:49日、ばらつき:7日
  • 安全係数:1.65(欠品しない確率95%)

計算すると、√(49 × 4² + 10² × 7²)= √(784 + 4,900)= 約75.4。これに1.65をかけて、安全在庫は約125個です。

ここで注目してほしいのは式の中身です。販売のぶれから来る部分が784、リードタイムのぶれから来る部分が4,900。読み違いの大半は、売れ方ではなく届くまでの日数のぶれから来ていることが分かります。

リードタイムのばらつきを0として計算すると、安全在庫は約47個まで下がります。つまりこの商品では、安全在庫を減らしたいなら販売予測を磨くより、仕入れ先と輸送の日数を安定させるほうが効きます。

安全係数を変えると次のように動きます。

欠品しない確率安全係数安全在庫1日10個なら何日分
90%1.28約97個約10日分
95%1.65約125個約12日分
約98%2.0約151個約15日分

比率法の25%(約123個)とほぼ同じ値になっています。比率法の20〜30%という目安は、海外仕入れのように日数のぶれが大きい商品では、ばらつき法の結果とそう離れません。

何日分持つべきかの決め方

計算した安全在庫を「1日の平均販売数」で割ると、何日分かに直せます。日数に直しておくと、商品をまたいで比べやすくなります。

判断の基準は次の3つです。

  • 利益率が高く、欠品の損失が大きい商品は安全係数を上げる(95〜98%)
  • 季節で終わる商品・型落ちしやすい商品は安全係数を下げる(90%)。売れ残りの損失のほうが大きいため
  • 保管料が高くつく大型商品は、安全在庫を持つ場所を分ける。FBAには最低限だけ置き、残りは自社倉庫に置いて補充する

保管料の見方は在庫保管料の減らし方にまとめています。FBAの保管料はサイズ・時期・在庫の滞留日数で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してから、安全在庫の置き場所を決めてください。

FBAならではの上乗せと、よくある失敗

Amazonで販売する場合、一般的な在庫管理の式にない要素がいくつかあります。

FBAの受領にかかる日数。納品してから販売可能になるまでの日数は、時期によって大きく変わります。大型セールや年末の前は受領が遅れやすいので、リードタイムのばらつきにこの分を含めておきます。

在庫の保管上限。出品者ごとに保管できる量に上限が設けられることがあります。計算上の安全在庫がFBAに入りきらない場合は、自社倉庫や外部倉庫と組み合わせます。

在庫切れ期間を含めた平均販売数。在庫がなかった日を「販売0個」として平均に含めると、平均販売数が実際より低く出て、安全在庫も小さく出ます。在庫があった日だけで割るのが基本です。

よくある失敗は次の3つです。

  1. セール時の販売数で平均を出してしまう:一時的な山を平常の販売数と見て、安全在庫が膨らむ
  2. 一度計算した値をそのまま使い続ける:売れ行きが倍になっても安全在庫が半年前のまま、という例は珍しくありません
  3. 全商品を同じ方法で計算する:売上の小さい商品にばらつき法を使っても、手間に見合いません

見直しは四半期に一度、売上上位の商品から行います。発注量そのものの計算は発注数の計算ツールでも試せます。

よくある質問

安全在庫はどの方法で計算するのがよいですか。 販売データの量で選びます。1か月未満なら日数法、3か月ほどたまったら比率法、主力商品で日別データとリードタイムの実績が5回分以上あればばらつき法に切り替えると、手間と精度の釣り合いが取れます。

販売数のばらつきはどうやって出せばいいですか。 ビジネスレポートから日別の注文数を8〜12週分ほど出し、表計算ソフトの STDEV.S 関数で計算します。在庫切れの日とセール期間は外してから計算してください。外さないと、ぶれが実際より大きく出ます。

安全在庫を多めに持っておけば安心ではないですか。 在庫切れは防げますが、資金が在庫に寝て、保管料もかかります。滞留日数が長くなると保管の費用が上がる仕組みもあるので、多すぎる在庫も損失です。欠品の損失と保管の費用を比べて、商品ごとに安全係数を決めるのが基本です。

新商品で販売実績がない場合はどうしますか。 競合の販売数から想定した1日の販売数に、日数法で14日分ほどを置いて始めます。販売開始から1か月たったら実績で置き直してください。立ち上げ期の在庫の考え方は在庫管理の方法も参考になります。

まとめ

  • 安全在庫は「予想より売れた・届くのが遅れた」に備える上乗せ分
  • 計算方法は日数法・比率法・ばらつき法の3つ。データの量で使い分ける
  • 比率法ならリードタイム中の販売数の20〜30%が目安
  • 海外仕入れでは、ぶれの大半がリードタイムから来る。仕入れ先と輸送を安定させると安全在庫を減らせる
  • 利益率の高い商品は安全係数を上げ、季節商品は下げる
  • 平均販売数は在庫があった日だけで出し、四半期ごとに見直す

自社の商品で発注点と安全在庫を出してみたい場合は、発注数の計算ツールに数字を入れてみてください。在庫の回し方全体を見直したい場合は、Amazon運用の相談から状況をお聞かせください。