Amazon運用代行 契約の話になると、多くの人が月額の金額だけを見て判断します。ところが後から困るのは、金額ではなく条項のほうです。どこまでが作業範囲なのか、アカウントの権限をどこまで渡すのか、やめるときに何が自社に残るのか。この3つが書かれていない契約書は珍しくありません。
代行の契約は、取引先を1社増やす話ではなく、自社の販売アカウントの内側を触ってもらう話です。商品ページも広告も在庫も、同じ画面の上にあります。だから範囲の線引きが曖昧だと、やってもらえると思っていたことが誰もやらないまま数か月が過ぎます。
この記事では、契約書に目を通すときに見る10項目を、確認する順に並べます。法律の解説ではなく、実務で食い違いが起きやすい箇所に絞った実用の話です。費用の型そのものは運用代行の費用と選び方に、契約前に防げる失敗の型は運用代行でよくある失敗例に書いています。
揉めるのは範囲・権限・出口の3か所
食い違いは、たいていこの3つのどれかに落ちます。
| 揉める場所 | よくある食い違い | 契約書で防ぐ書き方 |
|---|---|---|
| 範囲 | 商品ページの指摘はするが、作り直しは別料金だった | 含む作業と含まない作業を、作業名で列挙する |
| 権限 | 管理者権限を渡したまま、担当者の交代で誰が見ているか分からない | 渡す権限の範囲と、渡す相手の人数を書く |
| 出口 | 解約したら広告の設定も除外リストも引き継げなかった | 終了時に引き渡すものを一覧で書く |
この3つは、始まる前にしか決められません。 運用が始まってからの変更は、相手にとっては条件の悪化なので、すんなりとは通らないと考えておきます。
順番も大事です。金額の交渉を先にすると、範囲の話が「その金額ならここまで」という形で後から狭まります。範囲を固めてから金額を出してもらうと、同じ土俵で比べられます。
Amazon運用代行 契約で確認する10項目
上から順に見てください。空欄や曖昧な表現が残っている項目は、そのまま質問にします。
| # | 項目 | 見るところ | 空欄・曖昧なときに起きること |
|---|---|---|---|
| 1 | 業務の範囲 | 含む作業が作業名で並んでいるか | 誰もやらない作業が生まれる |
| 2 | 範囲外の扱い | 追加で頼むときの単価と手順 | 都度の見積もりで作業が止まる |
| 3 | 体制と担当 | 窓口と実作業者、交代時の連絡 | 担当交代で運用の経緯が消える |
| 4 | アカウント権限 | 渡す権限の種類と人数、返す時期 | 退職者の権限が残り続ける |
| 5 | 報告 | 頻度・書式・含める指標 | 数字が毎月違う切り口で出てくる |
| 6 | 成果物の扱い | 作った画像や資料の使用範囲 | 解約後に自社で使えない |
| 7 | 費用の発生条件 | 月額の基準、初期費用、追加費用 | 請求額が月ごとに変わる |
| 8 | 契約期間 | 最低契約期間、更新の仕方 | 合わないと分かっても止められない |
| 9 | 解約 | 申し出から終了までの期間と条件 | 引き継ぎの時間が取れない |
| 10 | 終了時の引き渡し | 設定・データ・資料の返し方 | 次の会社で初期設定をやり直す |
10項目のうち、1・4・10の3つが特に効きます。これだけでも文章になっていれば、後の食い違いはかなり減ります。
1と2:範囲は作業名で書いてもらう
「Amazon運用に関する業務全般」と書かれた契約書は、範囲を決めていないのと同じです。次のように作業名で並べてもらいます。
- 検索用語レポートの確認と除外キーワードの更新(頻度を明記)
- キャンペーンの新規作成と構造の組み替え
- 入札額の調整
- 月次レポートの作成と報告の面談(回数を明記)
- 商品ページの文言・画像への指摘(作成そのものを含むかを明記)
- 在庫と価格の助言(範囲外とするなら、その旨を明記)
線引きが難しいのは商品ページまわりです。指摘までを含み、制作は別料金という形が多いので、自社に作る人がいるかを先に確かめてください。いない場合は、制作まで含めた見積もりをもう1本もらうと比較できます。在庫と価格は範囲外とされるのが通常ですが、在庫が切れれば広告は止まります。範囲外でも、残り日数と価格変更の予定を共有する場所だけは決めておきます。
アカウント権限をどこまで渡すか
セラーセントラルの権限は、役割ごとに渡す範囲を分けられます。全部を渡す必要はありません。
| 渡す範囲 | できること | 向く相手 |
|---|---|---|
| 広告のみ | キャンペーンの作成・編集、レポートの取得 | 広告運用だけを任せる場合 |
| 広告+商品情報 | 上記に加えて商品ページの編集 | ページの改善まで任せる場合 |
| 在庫・注文を含む | 納品プランの作成、返金処理など | 出荷や顧客対応まで任せる場合 |
| 管理者 | 権限の付け外し、銀行口座など設定の変更 | 原則として自社だけが持つ |
管理者権限は自社に残すのが基本です。 相手に管理者を渡すと、権限の付け外しが自社の知らないところでできてしまいます。運用に必要なのはたいてい上の2段目までです。
あわせて、契約書に次の3つを書いてもらうと安全です。渡す人数の上限、担当が交代したときに旧担当の権限を外す期限、契約終了後に権限を返す期限。権限は「渡す話」だけでなく「外す話」まで書いて、はじめて片付きます。 自社側でも、四半期に一度は権限の一覧を開いて、見覚えのないアカウントが残っていないかを確かめてください。
権限を渡さずに進める形もあります。画面の書き出しと広告レポートを自社から渡し、助言だけを受ける形です。作業のたびに手間はかかりますが、小規模で始める場合や、最初の数か月を試したい場合には現実的な選択になります。
成果物・報告・費用の条項
報告は、頻度と書式と含める指標まで決めておきます。月1回なのか週1回なのか、書式は先方の様式か自社の様式か、ACOS・TACOS・ユニットセッション率・在庫の残り日数のうち何を毎回入れるか。指標を決めずに始めると、うまくいった月と悪かった月で違う数字が出てきて、比べられません。
報告に「今月やったこと」と「来月やること」の2欄を入れてもらうのも効きます。作業の記録が毎月積み上がるので、半年後に振り返ったときに何を試して何が効かなかったかが追えます。面談の回数も条項に入れてください。月1回と書いていなければ、忙しい月から順に飛びます。
成果物の扱いも見ます。画像・動画・A+の原稿・レポートの様式などを、契約終了後も自社で使える形にしておきます。制作を含む契約では、著作権の扱いか、使用の許諾の範囲かのどちらかが書かれているので、終了後も使えるかを読んでください。書かれていなければ、「本契約に基づき作成した成果物は、契約終了後も委託者が使用できる」という趣旨の一文を足してもらいます。
費用の条項は3つに分けて確認します。
- 月額の基準:実際に使った広告費か、設定した予算か。連動型なら最低料金の有無
- 初期費用:金額と、その対価として何が文書で残るか
- 追加費用:レポートの追加、キャンペーンの新規追加、面談の追加などの単価
金額の比べ方そのものは広告運用代行の費用の3つの型に、見積もりの場で聞く質問は代理店の選び方と7つの質問にまとめています。当社の作業範囲と金額はAmazon運用代行の内容と料金プランに公開しているので、条項を読み比べる材料として使ってください。
解約と引き継ぎを先に決める
契約書のいちばん後ろに置かれがちですが、実務でいちばん効くのがここです。
| 決めること | よくある書き方 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 最低契約期間 | 3か月・6か月・12か月 | 期間中の解約可否と違約金の定め |
| 解約の申し出 | 終了希望日の1〜2か月前まで | 申し出の方法(書面かメールか) |
| 更新 | 申し出がなければ自動更新 | 更新しない場合の連絡期限 |
| 引き渡すもの | 定めなし、のことが多い | 一覧で書き足してもらう |
最低契約期間は費用の項目には見えませんが、支払総額を決める条件です。月額5万円でも最低6か月なら、契約した時点で30万円が確定します。期間の短縮を断られたら、期間そのものより「3か月目に成果を見て継続を判断する中間の見直し日」を入れてもらうほうが通りやすいことがあります。
引き渡すものの一覧は、次の粒度で書いてもらいます。
- キャンペーンの設定一式(構造・入札・予算)
- 除外キーワードのリスト
- 商品ページの原稿と、使用した画像の元データ
- 過去の月次レポート
- 運用の判断の経緯が分かる記録(変更日と、その理由)
最後の1つが抜けやすく、いちばん惜しい項目です。なぜその入札にしたのか、なぜその語を除外したのかが残っていないと、次の担当は同じ検証をもう一度やり直します。 引き継ぎ資料の有無で、次の会社に払う初期費用が変わると考えてください。
どのくらい変わるかを、仮の数字で置いてみます。除外キーワードの洗い直しに、検索用語レポートの確認と判断で12時間、キャンペーン構造の把握と組み直しに8時間かかるとします。合計20時間を社内の時給3,000円で見れば60,000円、外部に初期設計として頼めば初期費用として請求される部分です。さらに、判断がそろうまでの1〜2か月は広告の費用対効果が落ちます。引き渡しの条項は、次の契約の初期費用を先に値切っているのと同じ働きをします。 金額は説明のための仮の置き方なので、自社の時給と広告費で置き換えてください。
契約書がなく、発注書だけの場合
小規模の依頼では、契約書を交わさず発注書と見積書だけで始まることがあります。この形でも、範囲・権限・引き渡しの3点はメールで確認して残しておいてください。相手の合意が文章で残っていれば、後から確かめる材料になります。書き方は難しくなくて構いません。「今回の範囲は次の作業、範囲外は事前見積もりのうえで着手、終了時にキャンペーン設定と除外リストと月次レポートを引き渡し」という3行を送り、返信で合意をもらう形で十分です。
解約の前後でやることの順番は、運用代行でよくある失敗例にも書いています。契約前の段階でどこが弱いかを整理してから見積もりを取りたい場合は、無料の運用診断を使ってください。
よくある質問
先方の契約書の雛形をそのまま使うと言われました。直してもらえますか。 雛形を使うこと自体は通常のことです。そのうえで、範囲・権限・引き渡しの3か所は追記をお願いできます。全面的な修正ではなく、「業務範囲に含む作業を別紙で列挙する」「終了時に引き渡すものを別紙で定める」のように、別紙の形にしてもらうと相手も応じやすくなります。金額に関わらない条項なので、交渉として重くなりません。
最低契約期間が12か月と言われました。長すぎませんか。 広告は設定を変えてから数字が動くまで2〜4週間かかるため、数か月の期間を求められること自体には理由があります。ただし12か月を通しで縛る必要があるかは別です。中間の見直し日を入れる、6か月+6か月の更新に分ける、といった提案をしてみてください。応じられない場合でも、なぜその期間が要るのかの説明が具体的なら、判断の材料になります。
成果を数値で約束してもらえますか。 売上や順位の約束を条項に入れる形は、現実的ではありません。Amazonの検索順位も広告の費用対効果も、競合の動き・在庫の状態・季節で動くからです。代わりに、作業の内容と頻度、報告する指標、見直しのタイミングを条項に書いてもらってください。約束するのは結果ではなく、手順と報告です。 そのうえで、3か月目に数字を見て続けるかを決める形にしておきます。
契約後に、頼んでいない作業の請求が来ました。 範囲の条項と追加費用の条項を突き合わせてください。追加作業の発生に事前の承認が要る旨が書かれていなければ、次の契約から「範囲外の作業は、事前に見積もりを提示し、書面またはメールでの承諾を得てから着手する」という一文を足します。今回分については、依頼の経緯が分かるやり取りを時系列で並べて、どこで認識が分かれたかを確かめるところから始めます。
まとめ
- 揉めるのは範囲・権限・出口の3か所。始まる前にしか決められない
- 範囲は「業務全般」ではなく作業名で列挙してもらう。商品ページは指摘までか制作までかを明記する
- 金額の交渉より先に範囲を固める。順番が逆だと範囲が後から狭まる
- アカウント権限は役割単位で渡す。管理者権限は自社に残し、外す期限まで書く
- 報告は頻度・書式・指標まで決める。毎月同じ切り口で出てくる形にする
- 成果物は契約終了後も自社で使える扱いになっているかを読む
- 最低契約期間は支払総額を決める条件。短縮が無理なら中間の見直し日を入れる
- 終了時に引き渡すものを一覧で決める。判断の経緯の記録がいちばん惜しい
条項を読む時間は長くても数時間ですが、後から直す手間は数か月に及びます。自社の契約書のどこを直すか判断がつかない場合は、状況をお問い合わせからお送りください。
