Amazon広告の運用代行を探し始めると、最初にぶつかるのが金額の分かりにくさです。月5万円と書いてある会社と、広告費の20%と書いてある会社。この2つは、そもそも同じ物差しに乗っていません。

理由は3つです。支払額が決まる基準が会社ごとに違うこと。月額の外に初期費用や追加費用が別建てになっていること。そして自社の広告費がこれから動けば、同じ契約でも支払総額が数倍変わることです。

この記事は費用に絞ります。運用代行の費用は、月額ではなく「自社の広告費を当てはめた年額」で並べないと比較になりません。以下の金額はすべて仮の数字です。自社の見積もりに置き換えて読んでください。会社そのものの選び方は運用代行の比較の5つの点、面談での質問は代理店の選び方と見積もりで聞く質問にまとめています。

料金の型は3つ

支払額が何で決まるかで分けると3つです。

型支払額が決まる基準向く状況注意する点
月額固定契約で決めた定額。広告費が動いても変わらない支払額を先に確定させたい。広告費を増やす予定がある広告費が小さいうちは、広告費に対して重くなる
広告費連動広告費の何%か広告費が小さい段階から始めたい広告費を絞る判断が、代行側の収入を減らす
売上連動広告経由売上の何%か粗利率が高く、値引き販売が少ない粗利率が低いと、売れても手元が薄くなる

何に連動するかは、代行側がどの判断をしやすいかに影響します。広告費連動なら広告費を増やす方向に、売上連動なら売上の額を伸ばす方向に力が働く。月額固定にその偏りはない代わりに、作業量が動いても金額が動かないので、範囲の線引きが曖昧だと揉めやすくなります。

月額の外に出やすい費用

見積書の「月額」だけを見ると、初年度の総額を読み違えます。別建てになりやすいのは次の3つです。

費目よくある形事前に確認すること
初期費用契約時に1回だけ。アカウントの棚卸しと初期設計の対価何をして、何が文書で残るか。月額の何か月分か
最低契約期間3か月・6か月・12か月など途中解約の可否と違約金。申し出から終了までの期間
追加費用レポートの追加作成、キャンペーンの新規追加、面談の追加月額に含まれる回数の上限と、超えたときの単価

最低契約期間は費用の項目に見えませんが、支払総額を決める条件です。月額5万円でも最低6か月なら、契約した時点で30万円が確定します。合わないと分かっても止められないので、金額より先に確認してください。

広告費連動型では最低料金の有無も見ます。「広告費の20%、ただし最低3万円」なら、広告費が15万円を下回る月は実質的に固定費です。連動型の意味が薄れる水準を先に計算しておきます。

広告費の規模ごとに年額で並べる

型の違いは、自社の広告費を当てはめて年額を出すと見えます。計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。実際の水準を示すものではありません。

  • 月額固定型:月50,000円と仮定
  • 広告費連動型:広告費の20%と仮定
  • 売上連動型:広告経由売上の10%と仮定
  • ACOSは20%と仮定し、広告経由売上は広告費の5倍とする

この仮定で、月の広告費10万円・30万円・100万円のときの年間支払額です。

月の広告費(仮定)月額固定(年額)広告費連動20%(年額)売上連動10%(年額)
10万円600,000円240,000円600,000円
30万円600,000円720,000円1,800,000円
100万円600,000円2,400,000円6,000,000円

内訳です。月10万円なら連動型は月2万円で年24万円、売上連動型は広告経由売上50万円(10万円÷ACOS20%)の10%で年60万円。月30万円なら年72万円と年180万円、月100万円なら年240万円と年600万円になります。

広告費が10倍になると、型ごとの年額の差は10倍以上に開きます。 固定型は年60万円のままですが、連動型は年24万円から年240万円まで動く。いま払える金額ではなく、1年後に払っている金額で比べてください。

この仮定では、月10万円で固定型と売上連動型がたまたま同額になります。それでも広告費を増やせば売上連動型だけが増える。見るべきは金額より、広告費を動かしたときの伸び方です。

初期費用を足した初年度で見る

年額に初期費用を足すと初年度の総額が出ます。100,000円と仮定した場合です。

月の広告費(仮定)月額固定(初年度)広告費連動20%(初年度)売上連動10%(初年度)
10万円700,000円340,000円700,000円
30万円700,000円820,000円1,900,000円
100万円700,000円2,500,000円6,100,000円

初期費用は1年目にしか乗りません。初年度と2年目以降を分けて出すと、初期費用が安いだけの提案と月額が安いだけの提案を見分けられます。

費用に含まれるものを確認する

同じ月額でも、含まれる作業の範囲は会社ごとに違います。金額を比べる前に、何がその金額に入っているかを揃えてください。

作業含まれることが多い別料金になりやすい
検索用語レポートの確認と除外キーワードの更新○更新の頻度に上限がある場合
キャンペーン構造の設計・組み替え○商品追加に伴う新規キャンペーンの作成
月次レポートの作成と報告の面談○回数を超える面談、書式を変えた追加レポート
商品ページへの助言(文言・画像の指摘)会社による実際の文章作成・画像制作
画像・動画の制作―ほぼ別料金
在庫・価格の判断―範囲外とする会社が多い

線引きが難しいのは商品ページまわりです。「この画像が弱い」と指摘するところまでは含まれても、作り直すのは別料金という形が多い。指摘だけでは社内に作る人がいなければ止まるので、その先まで見積もりの段階で決めてください。

在庫と価格は範囲外とされるのが通常です。ただし在庫が切れれば広告は止まり、値上げすればACOSは動く。範囲外でも、残り日数と価格変更の予定を共有する場所は決めておきます。

見積もりで聞くこと

金額を並べる前に、次を全社に同じ形で聞いてください。

  • 月額の基準は、実際に使った広告費か、設定した予算か
  • 最低料金はあるか。広告費がいくらを下回るとそこに張り付くか
  • 初期費用はいくらで、その対価として何が文書で残るか
  • 最低契約期間は何か月か。途中解約の条件と違約金の定めはあるか
  • 月額に含まれる面談・レポートの回数と、超過分の単価
  • 商品数やキャンペーン数が増えたとき、月額は変わるか
  • 売上連動なら、「広告経由売上」は何日以内の購入までを数えるか
  • 解約後、キャンペーン設定と除外キーワードは自社に残るか

最後の項目も費用の話です。設定が残らなければ、次の会社で同じ初期費用をもう一度払います。

3社の見積もりを同じ表に並べる手順

回答がそろったら、次の順で1枚の表にまとめます。

  1. 自社の今の月の広告費と、半年後に見込む広告費を決める(見込みが立たなければ今の1.5倍と2倍の2通り)
  2. 各社の料金を、その広告費を当てはめて月額に直す。最低料金があれば、下回る月はその金額にする
  3. 初期費用を足して初年度の総額を出し、2年目は初期費用を除いて出す
  4. 含まれる作業の範囲が違う会社は、自社で別に手配する費用(画像制作など)を足してそろえる

計算の形を示すため、仮の3社と仮の広告費を置きます。前半6か月は月20万円、後半6か月は月40万円に増やすと仮定し、ACOSは20%(広告経由売上は広告費の5倍)とします。

会社(仮)料金の条件(仮)初年度の総額2年目(月40万円が続いた場合)
A社月額固定5万円・初期費用10万円700,000円600,000円
B社広告費の20%・最低3万円・初期費用なし720,000円960,000円
C社広告経由売上の10%・初期費用なし1,800,000円2,400,000円

内訳です。A社は5万円×12か月に初期費用10万円で70万円。B社は前半が月4万円(20万円×20%)で24万円、後半が月8万円で48万円、合わせて72万円。C社は前半が広告経由売上100万円の10%で月10万円、後半が月20万円で、合わせて180万円です。

初年度だけを見るとA社とB社はほぼ同じですが、広告費が月40万円のまま続く2年目は、B社がA社より36万円高くなります。初年度で同額に見えても、2年目まで出すと差が開くので、表には2年目の列も入れてください。

失敗例:月額だけを比べて連動型を選んだ

よくあるのは、広告費が月10万円の時点で見積もりを比べ、月2万円の広告費連動型を「固定の5万円より安い」と選ぶ例です。運用がうまくいって広告費が月50万円まで育つと、代行費用は月10万円になり、固定型の2倍を払うことになります。うまくいったことで費用が重くなるので、気づいたときには最低契約期間の途中で切り替えられない、ということも起きます。

連動型を選ぶこと自体は間違いではありません。広告費が小さい時期には合理的な選択です。ただ、広告費がいくらを超えたら固定型のほうが軽くなるかの分岐点を先に出し、その水準に近づいたら料金の見直しを相談する、と契約前に決めておいてください。上の仮定(固定5万円・連動20%)なら、分岐点は月の広告費25万円です。

費用を下げる/上げてよい場面

費用は契約時のまま固定しておくものではありません。広告費の規模が変われば、合う型も変わります。

広告費が小さいうちは、率のほうが軽くなることがあります。上の仮定では月10万円で連動型は年24万円、固定型の年60万円より軽い計算でした。逆に月100万円まで育つと連動型は年240万円。作業量が広告費に比例して10倍になるわけではないので、広告費が大きくなったら固定型への変更や、超過分の料率を下げる交渉をしてよい場面です。契約更新のタイミングで持ちかけてください。

成果報酬に見える契約にも注意が要ります。売上連動型は基準が売上なので、値引きしてでも売上を作れば支払額は増える。粗利が薄くなる方向と代行側の収入が増える方向が一致してしまいます。広告費連動型も同じで、広告費を絞る提案は代行側の収入を減らします。

この利益相反は質問で確かめられます。「広告費を下げる提案をした実例はあるか」を聞いて、具体例が返ってくるかを見てください。型ごとの向き不向きは代行のメリット・デメリット、広告以外を含む費用の考え方は運用代行全般の費用と選び方に整理しています。

自分でやる場合の費用も置いて比べる

代行費用が高いか安いかは、出さなかった場合と並べて初めて判断できます。自分でやれば費用ゼロ、ではありません。社内の誰かの時間を使います。

社内で回すと、検索用語レポートの確認と除外の更新、売れた語のマニュアルへの追加、予算の調整、月末の記録で月に10〜15時間ほどかかります。ここでは月12時間と仮定し、時給換算で年額を出します。

時給の置き方(仮定)月の費用年の費用
2,000円24,000円288,000円
3,000円36,000円432,000円
5,000円60,000円720,000円

時給は担当者の給与から出す方法と、同じ時間で稼げる金額から出す方法があります。経営者本人が運用するなら後者が実態に近くなります。

この年額と代行費用の年額を並べます。金額が近ければ、判断の材料は「その時間を他に使いたいか」に移ります。費用が同じなら、比べるべきは金額ではなく時間の使い道です。 判断軸は自分で運用するか代行に頼むかに書きました。設計と月1回の判断だけを外に出す折衷の形もあります。範囲と金額は当社の料金プランに公開しています。

費用対効果をどう測るか

代行費用を払う価値があったかは、ACOSでは測れません。ACOSは広告費と広告経由売上の比率で、代行費用が入っていないからです。

まず代行費用を含めた負担を見ます。同じ仮定で、広告費と代行費用の合計が広告経由売上に占める割合です。

月の広告費(仮定)月額固定広告費連動20%売上連動10%
10万円30.0%24.0%30.0%
30万円約23.3%24.0%30.0%
100万円21.0%24.0%30.0%

ACOSは20%でも、代行費用まで含めると負担は21%から30%に上がります。この分を代行によるACOSの改善で取り戻せるかが判断の基準です。広告費10万円で固定型なら、ACOSが15%あたりまで下がって元が取れます。

次の3つも月次で記録してください。

  • TACOS(広告費÷全体の売上)。下がっていれば、広告に頼らずに売れる状態に近づいています(TACOSとは)
  • 1個あたりの利益。ACOSが下がっても、値引きで売っていれば利益は減ります
  • 自然流入の売上。広告経由だけが伸びて自然流入が痩せると、広告を止めた瞬間に売上が消えます

自社の損益分岐ACOS(これ以上だと赤字になる線)は、利益シミュレーター(損益分岐ACOS)に売価・原価・手数料率を入れると出ます。先に出しておくと、提案された目標ACOSが自社の粗利に合うかをその場で判断できます。

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。広告の相談でも、損益分岐ACOSと在庫の状態の確認から始めます。作業範囲はAmazon広告の運用代行の内容と料金に公開しているので、比較の対象のひとつとして見てください。

よくある質問

最低契約期間が6か月と言われました。短くできますか。 短縮を断られること自体は珍しくありません。広告は設定を変えてから数字が動くまで2〜4週間かかるため、1〜2か月では判断材料がそろわないという事情があります。交渉するなら期間そのものより、3か月目に成果を見て継続を判断する中間の見直し日を契約書に入れてもらうほうが通りやすいです。

広告費が月10万円ほどでも代行を頼めますか。 頼めますが、率だけの契約だと代行側の受け取りが月2万円前後になり、割ける工数が限られます。この規模では最低報酬額が設定されていることが多く、結果として費用の負担率が高くなります。広告費が小さいうちは、設計だけを単発で依頼して日々の運用は自社で回す、という分け方も検討してください。

成果報酬だけの契約は割安ですか。 売れなければ払わないという意味では安全に見えますが、料率は固定型より高く設定されるのが普通です。また「成果」の定義が広告経由の売上なのか全体の売上なのかで支払額が大きく変わります。広告を使わなくても売れていた分まで報酬の対象になっていないか、契約前に定義を文章で確認してください。

見積もりに月額しか書かれていません。何を聞けば年額を出せますか。 初期費用の有無と金額、最低契約期間、最低料金、月額に含まれる面談とレポートの回数、商品が増えたときの扱いの5つを聞いてください。この5つがそろえば、自社の広告費を当てはめて初年度と2年目の総額を出せます。答えが文章でもらえない項目は、契約後に揉めやすい項目でもあります。

まとめ

  • 費用は月額では比べられない。自社の広告費を当てはめ年額に直す
  • 型は月額固定・広告費連動・売上連動の3つ。何に連動するかは、代行側がどの判断をしやすいかに影響する
  • 初期費用・最低契約期間・追加費用は月額の外に出やすい。初年度と2年目以降を分ける
  • 仮の条件では、広告費が小さいうちは率、大きくなるほど固定が軽い。同額に見える型でも、広告費を動かしたときの伸び方が違う
  • 含まれる作業の範囲を揃えてから金額を比べる。画像制作と在庫・価格は別扱いが多い
  • 広告費が育ったら、固定型への切り替えや料率の見直しを更新時に相談する
  • 自分でやる場合の時間も金額に置いて並べる。金額が近ければ、判断は時間の使い道に移る
  • 費用対効果はACOSではなく、代行費用を含めた負担率とTACOS、1個あたりの利益で見る

自社の広告費と粗利率が分かれば、この記事の表は自社の数字で作り直せます。判断がつかない場合は無料の運用診断で広告・商品ページ・在庫のどこが弱いかを整理してから見積もりを取ってください。個別の事情がある場合はお問い合わせからどうぞ。