Amazonの運用を外に頼もうとすると、代行会社だけでなく、個人で受けているフリーランスも候補に入ってきます。費用が抑えられそうで、やり取りも直接できる。一方で「その人が動けなくなったらどうなるのか」「どこまで任せてよいのか」という不安も残ります。

結論から言うと、Amazon 運用 フリーランスへの依頼は、頼む範囲がはっきりしていて、止まったときの備えを契約で決めておけるなら有力な選択肢です。逆に、範囲を決めずに日々の運用全体を1人に預けると、その人の都合で運用が止まったときに、何がどう設定されているのか誰も分からない状態になります。

この記事では、代行会社との違い、フリーランスに向く仕事と向かない仕事、費用の比べ方、契約で決めておくこと、引き継ぎの備えを順に整理します。外注先の種類(代行・コンサル・フリーランス・スポット)の全体の比べ方はAmazon運用の外注先の選び方にまとめているので、ここではフリーランスに絞って深掘りします。

フリーランスと代行会社の違い

まず、両者の違いを並べます。どちらが良いという話ではなく、何を相手に任せ、何を自社で持つかが変わります。

比べる点フリーランス代行会社
担当本人1人。最初から最後まで同じ人担当者+社内の体制。担当が替わることがある
費用の傾向会社の管理費が乗らない分、抑えやすい体制と管理の費用が乗る
得意な範囲本人の経験に左右される。広告だけ、画像だけなど特化型が多い広告・商品ページ・在庫など複数の領域を分担できることがある
止まったときの備え本人の病気・繁忙・廃業で止まる。代わりの人がいない担当が替わっても業務が続く体制がある
やり取り本人と直接。判断が速い窓口を通す。社内の確認が入ることがある
記録の残り方本人のやり方次第。文書に残らないことがある報告書の形式が決まっていることが多い

この表で見てほしいのは、費用より「止まったときの備え」と「記録の残り方」です。フリーランスの多くは誠実に仕事をしますが、1人である以上、病気や繁忙で手が止まる可能性はなくせません。そのときに困らないかどうかは、相手の人柄ではなく、契約と記録の仕組みで決まります。

フリーランスに向く仕事、向かない仕事

フリーランスに向くのは、範囲と成果物がはっきりしていて、終わりがある仕事です。

仕事向き不向き理由
商品画像の制作向く成果物(画像の枚数・仕様)が明確で、納品で完結する
商品ページの文章の作成・改善向く対象の商品と納品物を決めやすい
広告の初期設計(キャンペーン構造の設計)向く設計書という成果物を残せる
広告の月次の見直し・改善提案条件付きで向く権限の範囲と報告の形式を決めれば任せられる
日々の広告運用(入札・予算の毎日の調整)慎重に止まると影響がすぐ出る。代わりがいない
在庫・発注・価格の管理慎重に資金と在庫切れに直結し、判断を外に出しにくい
アカウント全体の運用慎重に範囲が広く、1人に依存する度合いが最も大きい

「慎重に」と書いた仕事を頼めないわけではありません。ただし、その場合は後で書く権限の範囲・報告・引き継ぎを、範囲の狭い仕事以上にきちんと決めておく必要があります。

よくある失敗は、最初に画像制作を頼んで満足し、そのまま「ついでに広告も」「ついでに在庫も」と範囲を広げていく形です。範囲が広がるたびに契約を見直さないと、何を任せていて何を任せていないのかが、お互いに曖昧になります。

もう1つの失敗は、成果物を決めずに「改善をお願いします」とだけ頼む形です。たとえば商品ページの改善を頼み、文章が少し変わっただけで1か月が終わる。依頼する側は画像の見直しまで含むつもりで、受ける側は文章だけのつもりだった、というずれです。何を何点、いつまでに納めるかを最初の依頼の文面に書いておけば、このずれは防げます。

費用の比べ方

フリーランスは代行会社より安く見えることが多いですが、比べるときは同じ範囲の作業で、年額で、自社の手間も含めて並べます。

仮の条件で計算してみます。金額はすべて計算の形を示すための仮の値で、実際の相場を示すものではありません。

  • 依頼したい範囲:広告の月次の見直しと改善提案、商品ページの小さな修正
  • フリーランス:月額60,000円と仮定
  • 代行会社:月額100,000円、初期費用100,000円と仮定
  • フリーランスに頼む場合、作業の指示や確認で自社の担当者が月5時間多くかかると仮定。担当者の時間を1時間3,000円で換算
項目フリーランス(年額)代行会社(年額)
月額720,000円1,200,000円
初期費用0円100,000円
自社の追加の手間180,000円(5時間×3,000円×12か月)0円
合計900,000円1,300,000円

この仮の条件では、自社の手間を足してもフリーランスのほうが年40万円軽くなります。ただし、ここに入っていない費用が1つあります。止まったときの損失です。

仮に、担当のフリーランスが2か月動けなくなり、その間の広告の見直しが止まって、ACOS(広告費÷広告経由の売上)が悪化したとします。月の広告費30万円のうち、無駄なクリックが2割増えたとすると、月6万円、2か月で12万円の損失です。さらに、別の人に引き継ぐときに設定の確認からやり直す費用がかかります。

この損失は毎年起きるものではありません。だからこそ、起きたときの損失を小さくする仕組みを契約で作っておけば、フリーランスの費用の軽さを活かせます。費用全体の考え方は運用代行の費用と選び方も参照してください。

依頼する前に確認すること

候補のフリーランスと話すときに確認する項目です。

  1. 過去の仕事の具体例。どのカテゴリーで、何を担当し、何が変わったか。成果の数字だけでなく、何をしたかを聞きます
  2. 得意な範囲と、やらない範囲。広告が得意でも在庫は見ない、という人は多いので、自社が頼みたい範囲と重なるかを見ます
  3. 同時に受けている案件の数。多すぎると、自社の案件に割ける時間が限られます
  4. 連絡の手段と返信の目安。何時間以内、何営業日以内に返事が来るか
  5. 休みや不在のときの扱い。長期の不在が分かっているときの連絡、代わりの対応の有無
  6. 作業の記録の残し方。何を変えたかをどこに、どの形式で残すか
  7. 他の出品者の情報の扱い。同じカテゴリーの競合も担当していないか、守秘をどう考えているか

7つ目は聞きにくい項目ですが、同じカテゴリーで競合する出品者を同時に担当していると、利益相反(一方の得が他方の損になる関係)になり得ます。事前に確認しておきます。

契約で決めておくこと

フリーランスとの契約は、代行会社より簡素な形で済ませがちです。しかし、1人に依存する分、文書で決めておく項目はむしろ多いと考えてください。

項目決めておく内容
作業範囲対象の商品・キャンペーン、やること・やらないことの一覧
権限セラーセントラルのユーザー権限で何を許可するか。価格・在庫・支払いの情報に触れさせるか
判断の線引き相談なしで変えてよい範囲(例:入札の上下は仮に2割まで)と、事前の承認が要る範囲
成果物月次の報告書、設計書、作業記録。形式と提出日
報酬と支払い月額か作業単位か、追加作業の単価、支払いの期日
守秘自社の売上・原価・広告の数字を外に出さないこと。契約終了後も続くこと
成果物の権利作った画像・文章・設計書の権利がどちらにあるか
不在時の扱い連絡の期限、長期不在の場合の作業の止め方と再開の手順
解約と引き継ぎ予告の期間、終了時に渡すもの、権限の削除の手順

特に大事なのは権限です。セラーセントラルのユーザー権限は、作業に必要な範囲だけに絞って付与します。ログイン情報そのものを共有する形は避け、相手専用のユーザーを作ってください。契約が終わったら、その日のうちに権限を削除します。

次に判断の線引きです。「入札は上下2割までは相談なしで変えてよい」「予算を増やすときは事前に承認」のように、数字で決めておくと揉めません。線引きがないと、知らないうちに広告費が増えていた、ということが起こります。

契約書で確認する項目の全体は運用代行の契約書で確認する10項目にまとめています。フリーランスとの契約でも同じ観点がそのまま使えます。

契約に加えて、止まったときに困らない備え

契約に加えて、日々の運用で次の3つを続けておくと、相手が止まったときに自社で引き取れます。

  • 作業記録を自社の場所に残してもらう。相手の手元ではなく、自社の共有フォルダやスプレッドシートに、日付・変えた項目・変えた理由を残す
  • 月に一度、30分の説明の時間をとる。報告書を読むだけでなく、なぜその判断をしたかを口頭で聞く。自社の担当者が状況を理解している状態を保つ
  • 設定の全体図を持っておく。キャンペーンの構造、狙っている検索語、除外している語。これがあれば、別の人に引き継ぐときに最初からやり直さずに済む

この3つは、フリーランスに限らず代行会社に頼むときにも役に立ちます。外注先を替えるときの進め方は代行の解約と引き継ぎに書いています。

フリーランスと代行会社、どちらを選ぶか

判断の目安を3つの状況に分けます。

  • 頼みたい範囲が狭く、成果物で区切れる(画像、ページ文章、広告の設計):フリーランスが合いやすい。費用を抑えつつ、専門性の高い人に頼める
  • 広告の月次の見直しなど、継続的だが範囲は決まっている:どちらでも可。フリーランスなら、作業記録・判断の線引き・不在時の扱いを契約で決めてから
  • 日々の運用全体を任せたい、社内に見る人がいない:体制のある代行会社のほうが、止まったときの備えの面で安心しやすい

自社で運用を見られる担当者がいるかどうかも大きな分かれ目です。担当者がいれば、フリーランスの報告を受けて判断し、不在時に引き取れます。担当者がいない場合は、外注先が止まると運用全体が止まります。小規模で頼む場合の考え方は個人・小規模でAmazonコンサルを受ける場合も参考になります。

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。フリーランスと当社のどちらが合うかは、頼みたい範囲と社内の体制で変わります。当社の作業範囲と料金はAmazon運用代行と料金に公開しているので、比較の材料として使ってください。

よくある質問

フリーランスにセラーセントラルのログイン情報を教えても大丈夫ですか。 ログイン情報そのものの共有は避けてください。セラーセントラルには、相手専用のユーザーを作って権限を絞って付与する仕組みがあります。作業に必要な範囲だけを許可し、契約が終わったらその日のうちに権限を削除します。

フリーランスへの報酬は、成果報酬にしたほうが安心ですか。 成果の定義次第です。売上や広告経由の売上に連動させると、広告費を増やして売上を伸ばす方向に判断が傾くことがあります。成果報酬にするなら、成果を何で測るか(売上か利益か、広告経由か全体か)を文章で決めてください。範囲がはっきりした仕事なら、作業単位か月額のほうが分かりやすいことが多いです。

途中で代行会社に切り替えることはできますか。 できます。その際に役立つのが、作業記録と設定の全体図です。これが自社の手元にあれば、新しい外注先が最初から調べ直す時間を減らせます。フリーランスとの契約の段階で、終了時に渡すものを決めておいてください。

フリーランスはどこで探せばよいですか。 探し方より、候補が見つかった後の確認が大事です。過去の仕事の具体例、得意な範囲、同時に受けている案件の数、不在時の扱いを面談で聞き、小さな範囲の仕事から始めて相性を見るのが安全な進め方です。

まとめ

  • フリーランスと代行会社の大きな違いは、費用より「止まったときの備え」と「記録の残り方」
  • フリーランスに向くのは、画像・ページ文章・広告設計など範囲と成果物がはっきりした仕事
  • 日々の運用全体を1人に預けるなら、権限・報告・引き継ぎを範囲の狭い仕事以上に決める
  • 費用は同じ範囲・年額・自社の手間込みで比べ、止まったときの損失も考えに入れる
  • 契約では作業範囲・権限・判断の線引き・成果物・守秘・不在時の扱い・引き継ぎを文書にする
  • 権限は相手専用のユーザーで絞って付与し、契約終了の日に削除する
  • 作業記録と設定の全体図を自社の手元に残し、月に一度説明を受ける

外に頼む範囲をどこまでにするか迷ったら、無料の運用診断で広告・商品ページ・在庫のどこが弱いかを整理してから決めてください。個別の事情がある場合はお問い合わせからどうぞ。