Amazon運用代行を探し始めると、まず問い合わせフォームに「売上を伸ばしたい」と書いて送りたくなります。ただ、それだけでは代行会社は見積もりの根拠を持てません。どの商品を、どこまで、どの水準を目指して見るのかが分からないからです。

その結果、見積もりは「一式」の幅を持たせた金額になり、面談では状況の聞き取りに時間が取られます。比較したい3社から、前提がばらばらの見積もりが返ってくることもあります。

この記事では、Amazon運用代行に依頼する前の準備として、見積もりを取る前にそろえておく数字と資料、社内で決めておくことをまとめます。準備にかかる時間はおおむね半日から1日です。ここを済ませておくと、見積もりの比較がしやすくなり、契約後の立ち上がりも早くなります。

準備で見積もりの何が変わるか

依頼側の準備の有無で、見積もりの中身は次のように変わります。

項目準備なしで依頼した場合準備して依頼した場合
見積もりの形「運用代行一式」で幅を持たせた金額対象商品と作業範囲を前提にした金額
初回面談現状の聞き取りで終わる課題と優先順位の相談まで進む
他社との比較前提が会社ごとに違い、並べられない同じ前提で並べられる
初期費用現状の調査の分が上乗せされやすい調査の範囲が狭まる
契約後の立ち上がり最初の1か月が資料集めになる初月から施策に入れる

特に影響が大きいのは比較のしやすさです。前提がそろっていない見積もりは、金額の差が作業範囲の差なのか、価格の差なのか判別できません。見積もりが安いときに何を確かめるかは運用代行の見積もりが安いときに確かめることにまとめていますが、その確認も前提がそろっていてこそ成り立ちます。

初期費用への影響も小さくありません。多くの代行会社は、契約の最初にアカウントの棚卸しを行い、その工数を初期費用に含めます。依頼側が数字を整理して渡せば、棚卸しの範囲が狭まり、その分の工数が減ります。初期費用の中身は運用代行の初期費用の内訳を参照してください。

そろえる数字:商品別の1枚表を作る

最初に作るのは、商品ごとの数字を1枚にまとめた表です。全商品でなくて構いません。売上の上位10商品程度と、代行に任せたい商品を入れてください。

項目出し方なぜ必要か
直近3か月の月別売上ビジネスレポートの詳細ページ売上・トラフィック規模と伸び方を見るため
直近3か月の月別広告費と広告経由売上広告のキャンペーンレポートACOSとTACOSを出すため
売価と原価自社の原価表粗利率と損益分岐ACOSを出すため
販売手数料とFBA配送費セラーセントラルの手数料の明細1個あたりの利益を出すため
在庫の残り日数在庫数÷1日あたりの出荷数広告を強めてよいかを判断するため
評価とレビュー数商品ページ広告で勝負できる状態かを見るため

販売手数料率やFBAの配送費、保管料はカテゴリー・サイズ・時期で変わります。一般的な料率ではなく、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で書いてください。ビジネスレポートの見方はビジネスレポートの読み方にまとめています。

粗利率と損益分岐ACOSは自社で出しておく

この表の中で、代行会社が自力で出せないのが原価です。原価が分からないと、広告にいくらまで使ってよいかの線が引けません。

仮に売価3,000円、原価900円、販売手数料とFBA配送費の合計が900円の商品なら、1個あたりの粗利は1,200円、粗利率は40%です。広告費が粗利を食い切る水準、つまり損益分岐ACOSも40%になります。この数字が見積もりの段階で共有されていれば、代行会社は目標ACOSを根拠のある値で提案できます。計算は利益シミュレーターに売価・原価・手数料を入れると出ます。

在庫の残り日数も添える

広告を強めても、在庫が2週間で切れるなら意味がありません。欠品すれば広告は止まり、検索順位も落ちます。在庫の残り日数と次の入荷予定を表に入れておくと、代行会社は「今は広告より発注が先」といった判断も含めて提案できます。発注の目安は発注量の計算ツールで出せます。

そろえる資料と権限

数字の次は、代行会社が作業に入るときに使う資料と権限です。見積もりの段階では全部を渡す必要はありませんが、どこにあるかを把握しておきます。

  1. セラーセントラルのアカウント情報:出品者名、出品プラン、販売しているマーケットプレイス
  2. ブランド登録の状況:登録済みか、登録しているブランド名の数。A+やスポンサーブランド広告が使えるかに関わる
  3. 商品画像と原稿の元データ:画像の元ファイル、商品説明の原稿。差し替えを依頼するときに必要
  4. 過去の施策の記録:いつ値下げしたか、いつ広告を強めたか、どの画像に替えたか。数字の動きの理由を読むため
  5. トラブルの履歴:出品停止、アカウントの警告、返品の多い商品。避けるべき地雷を共有するため

権限については、契約後に自社のアカウントに代行会社をユーザーとして招待する形が基本です。ログイン情報そのものを渡すのは避けてください。誰が何をしたかの記録が残らず、解約後の管理も難しくなります。広告の権限の範囲は広告代行に渡す権限の範囲にまとめています。

社内で決めておくこと

数字と資料がそろっても、社内の方針が決まっていないと、面談で答えられない質問が残ります。次の5つは、見積もりを依頼する前に社内で決めておいてください。

決めること決め方の例決まっていないと起きること
依頼の目的売上の拡大か、利益率の改善か、手間の削減か提案の方向が会社ごとにばらばらになる
代行費用の上限月の上限額と、年額での上限範囲の広い提案ばかりが届く
任せる範囲広告だけか、商品ページまでか、在庫の相談までか見積もりの前提がそろわない
社内の担当者窓口になる人と、判断する人代行会社からの確認が止まる
成果の見方どの数字を、何か月で見るか契約後に「成果が出ていない」で揉める

目的は1つに絞るのが理想です。「売上も利益も手間も」と並べると、代行会社は全部に手を出す範囲の広い提案をするしかなく、金額も上がります。どれか1つを優先し、残りは「悪化させない」程度の条件として伝えてください。目標の立て方は運用代行に頼むときの目標の置き方を、追いかける数字の設計はKPIの設計を参照してください。

代行費用の上限を試算で決める

上限額は、代行に任せることで社内から減る時間と、期待する粗利の増加から逆算すると決めやすくなります。

仮に、今は社内の担当者が月20時間をAmazonの運用に使っていて、時給換算が3,000円だとします。代行に任せて月15時間が減るなら、月45,000円分の時間が空きます。さらに、運用の改善で月の粗利が5万円増えると見込むなら、合わせて月95,000円が代行費用の上限の目安です。

項目(仮)月額年額
社内で減る時間の価値(15時間×3,000円)45,000円540,000円
見込む粗利の増加50,000円600,000円
代行費用の上限の目安95,000円1,140,000円

粗利の増加は見込みにすぎないので、上限を決めるときは時間の価値だけで回収できる水準から始め、成果が見えた段階で範囲を広げる、という順番が無理のない進め方です。この例なら、まず月45,000円前後の範囲から始めることになります。

相談シートの書き方

ここまでの内容を、問い合わせや面談の前に送る1枚の相談シートにまとめます。そのまま使える形にすると、次のようになります。

  • 会社の状況:Amazonでの販売歴、扱う商品のジャンル、商品数、ブランド登録の有無
  • 数字:上位商品の月別売上・広告費・粗利率・在庫日数(別添の1枚表)
  • 依頼の目的:最優先は1つ。例「広告費を今の水準に保ったまま、利益率を上げたい」
  • 任せたい範囲:広告の運用/商品ページの改善/在庫の相談のうち、どこまでか
  • 予算:代行費用の月の上限額
  • 社内の体制:窓口と判断者、社内で作れるもの(画像・原稿など)
  • いま困っていること:具体的に1〜3つ。例「広告費が増えたのに売上が伸びない」
  • 過去に試したこと:やってみて効かなかった施策

同じシートを見積もりを依頼する全社に送ってください。全社に同じ前提を渡すことで、返ってくる見積もりを同じ物差しで比べられます。比べるときの観点は運用代行を比較するときのポイントにまとめています。

準備が足りなかったときの失敗例

よくあるのは、目的を決めないまま3社に問い合わせ、A社は広告だけ、B社は商品ページの作り直し込み、C社は在庫管理まで含む提案を出してきた、というケースです。金額は月3万円から月15万円まで開き、どれが自社に合うのか判断できないまま、いちばん安いA社を選ぶ。契約してから、実は商品ページの画像が弱いことが課題だったと分かり、別途制作を手配することになります。

もうひとつは、原価を共有しなかったケースです。代行会社が一般的な目標ACOSを置いて広告を強めた結果、売上は伸びたものの、粗利率の低い商品だったために利益が減りました。原価は社外に出しにくい数字ですが、少なくとも粗利率か損益分岐ACOSは伝えてください。

依頼から契約までの流れと、各段階で渡すもの

準備したものを一度に全部渡す必要はありません。段階ごとに渡すものを分けると、契約前に出す情報を必要な分だけに抑えられます。

段階目安の期間自社が渡すもの代行会社から受け取るもの
1. 問い合わせ1日相談シート(会社の状況・目的・予算・範囲)面談の日程、追加で必要な情報
2. 初回面談1〜2週間上位商品の1枚表(粗利率は概算でよい)課題の見立て、対応できる範囲
3. 見積もり1〜2週間面談で聞かれた追加の数字作業項目ごとの見積もり、契約条件
4. 契約前の確認1週間秘密保持の取り決め契約書の案、月次レポートの見本
5. 契約・開始契約日〜アカウントへのユーザー招待、画像の元データ、過去の施策の記録初月の作業計画

この流れで進めると、問い合わせから開始までは1〜2か月ほどかかります。繁忙期の前に立ち上げたい場合は、そこから逆算して準備を始めてください。

段階3で届いた見積もりは、段階1で渡した相談シートと照らし合わせます。依頼した範囲が見積もりから抜けていないか、頼んでいない作業が足されていないかを確かめ、食い違いがあれば段階4に進む前に直してもらいます。契約書で確かめる項目は運用代行の契約書チェックリストにまとめています。

よくある質問

数字が全部そろっていなくても相談してよいですか。 構いません。そろっている数字だけを送り、足りない部分は「未集計」と書いてください。何が分からないのかが分かるだけでも、代行会社は聞くべきことを絞れます。ただ、粗利率と在庫の残り日数の2つは、判断への影響が大きいので、概算でも出しておくことをおすすめします。

原価を代行会社に伝えるのは不安です。 原価そのものではなく、粗利率か損益分岐ACOSだけを伝える方法があります。広告の判断に必要なのは「広告費にいくらまで使えるか」の線なので、それが分かれば十分です。秘密保持の取り決めを契約前に交わしておけば、より安心して共有できます。

見積もりは何社から取ればよいですか。 3社前後が比べやすい数です。1社だけだと金額が妥当か判断できず、5社を超えると面談だけで時間を使い切ります。同じ相談シートを3社に送り、回答の早さと質問の中身も比較の材料にしてください。

準備を代行会社に手伝ってもらうことはできますか。 できる会社もありますが、その工数は初期費用に含まれることが多いです。自社で出せる数字は自社で出し、出し方が分からない項目だけを相談すると、初期費用を抑えやすくなります。

まとめ

  • 依頼側の準備で、見積もりの精度・比較のしやすさ・初期費用・立ち上がりの早さが変わる
  • 上位商品の売上・広告費・粗利率・在庫日数を1枚の表にまとめる
  • 原価は自社でしか出せない。少なくとも粗利率か損益分岐ACOSは共有する
  • 権限はログイン情報ではなく、自社アカウントへのユーザー招待で渡す
  • 目的・費用の上限・任せる範囲・担当者・成果の見方を社内で先に決める
  • 費用の上限は、減る時間の価値と見込む粗利の増加から逆算する
  • 同じ相談シートを全社に送り、同じ前提で見積もりを比べる

何から整理すればよいか迷ったら、無料の運用診断で広告・商品ページ・在庫のどこが弱いかを確認してから相談シートを作ると、依頼の範囲が決めやすくなります。当社の作業範囲はAmazon運用代行の内容に載せています。相談シートの形のままお問い合わせいただいても構いません。