Amazon運用代行の見積もりを何社か取ると、1社だけ極端に安いことがあります。他社が月10万円前後のところに、月3万円。予算が限られているほど、その数字に惹かれるのは自然なことです。
ただ、運用代行の月額は「何をどこまでやるか」で決まります。安い見積もりの多くは、作業の一部が月額の外に出ているか、回数や対象に上限がかかっているか、契約条件で後から費用が乗る形になっています。どれも見積書の1行目には出てきません。
この記事では、Amazon運用代行の安い見積もりが届いたときに、何が抜けているのかを順番に確かめる手順をまとめます。結論を先に書くと、安さそのものは悪くありません。自社が必要とする作業が含まれているかを揃えたうえで、年額で比べることができれば、安い見積もりは選んでよい選択肢になります。金額はすべて説明用の仮の数字です。
Amazon運用代行が安い見積もりになる4つの理由
見積もりが安くなる理由は、だいたい次の4つに分かれます。どれに当たるかで、確かめる場所が変わります。
| 安くなる理由 | 見積書での見え方 | 確かめる場所 |
|---|---|---|
| 作業範囲が狭い | 「運用代行一式」とだけ書かれ、作業の内訳がない | 作業項目ごとの含む・含まないの一覧 |
| 回数・対象に上限がある | 「月1回」「5商品まで」「主要キャンペーンのみ」 | 上限を超えたときの単価 |
| 費用が月額の外にある | 月額のほかに「別途お見積もり」の行がある | 初期費用・追加費用・制作費の有無 |
| 契約条件で回収する | 月額は安いが最低契約期間が長い、解約に違約金 | 最低契約期間・途中解約・解約後の扱い |
1つ目と2つ目は「やってくれる量が少ない」、3つ目と4つ目は「払う総額が見た目より大きい」という違いです。前者は自社でその分を補えるなら問題になりません。後者は年額に直すと安さが消えることがあるので、計算して確かめます。
もうひとつ、理由として正当なものもあります。担当者1人で少数の商品だけを見る体制、レポートを定型にして報告の工数を減らしている体制などは、作業を絞る代わりに価格を下げています。安さの理由が説明できる見積もりは、それだけで信頼できる材料になります。逆に、理由を聞いて答えが曖昧なら、どこかが抜けていると考えて次の確認に進んでください。
作業範囲の抜けを一覧で確かめる
最初に見るのは作業範囲です。運用代行と一口に言っても、広告だけを見る会社、商品ページまで触る会社、在庫や価格の相談に乗る会社と幅があります。安い見積もりは、この範囲が狭いことが多いです。
次の表を見積もりを出した全社に送り、含む・含まない・別料金のどれかで埋めてもらってください。口頭ではなく文書で返してもらうのがポイントです。
| 作業 | 確かめること | 抜けていたときの影響 |
|---|---|---|
| 広告の検索用語レポート確認と除外 | 頻度(週1か月1か) | 無駄な検索語に広告費が流れ続ける |
| 入札と予算の調整 | 誰が・どの頻度で変えるか | 在庫や季節の変化に追いつかない |
| キャンペーンの新規作成 | 商品追加時に月額内か | 新商品のたびに別料金が乗る |
| 商品ページの文言修正 | 指摘だけか、書き換えまでか | 指摘を受けても社内に書く人がいない |
| 画像の制作・差し替え | 含むか、制作費は別か | 画像だけ外注を探すことになる |
| 月次レポートと面談 | 回数・形式・面談の有無 | 数字の意味を聞く場がない |
| 在庫・発注の助言 | 範囲内か範囲外か | 欠品で広告が止まっても誰も気づかない |
| セラーセントラルの問い合わせ対応 | 出品停止などのトラブル時の対応 | 止まったときに自社で一から対応する |
この表で「含まない」が多い会社は、月額が安くても、自社が補う作業が増えます。補う作業に社内の時間がかかるなら、それも費用です。
「一式」と書かれた見積もりの読み方
作業の内訳がなく「Amazon運用代行一式 月額30,000円」とだけ書かれている見積もりは、範囲が狭いか、範囲が決まっていないかのどちらかです。後者は契約後に「それは範囲外です」と言われる余地を残します。
一式の見積もりを受け取ったら、上の表を埋めてもらうよう依頼してください。埋めてもらえない場合は、比較の対象から外すほうが安全です。運用代行の仕事の中身そのものはAmazon運用代行とは何かにまとめています。
追加費用と契約条件を足して年額で並べ直す
作業範囲を揃えたら、次は金額を年額に直します。月額だけを並べると、月額の外に出ている費用と、契約条件で確定する費用が抜け落ちます。
計算の形を示すため、仮の2社を置きます。
- A社(高い見積もり):月額100,000円、初期費用なし、最低契約期間3か月、画像制作は月1枚まで月額内
- B社(安い見積もり):月額30,000円、初期費用150,000円、最低契約期間12か月、キャンペーン新規作成は1件20,000円、画像制作は1枚30,000円、レポート面談は月額外で1回15,000円
自社の想定として、年に新商品を4つ追加し(キャンペーン新規作成4件)、画像を年8枚差し替え、面談を月1回したいとします。
| 費目 | A社(仮) | B社(仮) |
|---|---|---|
| 月額×12か月 | 1,200,000円 | 360,000円 |
| 初期費用 | 0円 | 150,000円 |
| キャンペーン新規作成(4件) | 0円(月額内) | 80,000円 |
| 画像制作(8枚) | 0円(月額内) | 240,000円 |
| 面談(12回) | 0円(月額内) | 180,000円 |
| 初年度の合計 | 1,200,000円 | 1,010,000円 |
月額では3倍以上の差があったのに、初年度の合計では差が19万円まで縮みます。この仮定では、それでもB社のほうが安い計算です。ただ、画像を年12枚、面談を月2回に増やすと、B社には画像で12万円、面談で18万円が足されて合計131万円になり、順位が入れ替わります。
安い見積もりは、使い方しだいで高い見積もりを追い越します。自社がどの作業をどれだけ使うかを先に決めておかないと、比較が成り立ちません。
最低契約期間は「確定する金額」として見る
最低契約期間は、費用の項目に見えないので見落とされがちです。B社の月額3万円に最低12か月がつけば、契約した時点で36万円と初期費用15万円、合わせて51万円の支払いが確定します。3か月で合わないと分かっても、残り9か月分は払うことになります。
比べるときは「契約した時点で確定する金額」を出してください。
| 項目 | A社(仮) | B社(仮) |
|---|---|---|
| 最低契約期間 | 3か月 | 12か月 |
| 契約時点で確定する金額 | 300,000円 | 510,000円 |
月額の安いB社のほうが、確定する金額は大きくなります。合わなかったときに失う金額で比べると、判断が変わることがあります。契約書で確かめる項目は運用代行の契約書チェックリストに、期間の考え方は契約期間と途中解約の見方にまとめています。
安い見積もりで起きやすい失敗
ここからは、安い見積もりを選んだあとに起きやすい失敗を3つ挙げます。どれも契約前に質問すれば避けられるものです。
失敗1:レポートは届くが、判断が返ってこない
月額が安い会社に多いのが、定型のレポートは毎月届くものの、「だから次に何をするか」が書かれていない形です。ACOSやクリック数の表は並んでいても、どのキャンペーンを止めるか、どの検索語に予算を寄せるかの提案がない。結果として、数字を読んで判断するのは自社の仕事のまま残ります。
契約前に、実際の月次レポートの見本(数字を伏せたもの)を見せてもらってください。「今月やったこと」と「来月やること」が書かれているかが確認点です。
失敗2:対象が「主要商品のみ」で、残りが放置される
「月額3万円・5商品まで」のように対象が絞られている場合、残りの商品は広告もページも誰も見ていない状態になります。売上の大半が上位5商品なら問題は小さいですが、商品数が多く売上が分散している場合は、放置された商品の在庫が動かず、保管の費用がかさむことがあります。保管の費用はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。
対象を絞る契約なら、対象外の商品を誰がどう見るかを先に決めておきます。
失敗3:解約したら設定が残らなかった
安い見積もりの会社が、自社管理のアカウントで広告を運用している場合があります。解約すると、キャンペーン設定や除外キーワードの蓄積がアカウントごと引き上げられ、次の会社でゼロから作り直すことになります。作り直しの初期費用は、もう一度払う費用です。
広告アカウントとセラーセントラルの権限は、自社のアカウントに代行会社をユーザーとして招待する形にしておくのが基本です。権限の渡し方は広告代行に渡す権限の範囲を参照してください。
契約前に聞く質問リスト
ここまでの確認を、面談で聞ける形にまとめます。全社に同じ質問をして、回答を同じ表に並べてください。
- 見積もりの月額に含まれる作業を、項目ごとに文書でもらえますか
- 対象の商品数・キャンペーン数に上限はありますか。超えたときの単価は
- 初期費用はいくらで、その対価として何が文書で残りますか
- 画像制作・ページの書き換え・面談の追加は、それぞれいくらですか
- 最低契約期間は何か月で、途中解約の条件と違約金はありますか
- 広告は自社のアカウントで運用しますか。解約後、設定と除外キーワードは自社に残りますか
- 担当者は何社を兼務していますか。交代するときの引き継ぎはどうなりますか
- 価格を下げられている理由は何ですか
最後の質問は聞きにくいかもしれませんが、いちばん情報が取れる質問です。「担当1人が少数の商品を見る体制なので」「レポートを定型にしているので」と具体的な理由が返ってくれば、その分の作業を自社で補えるかを判断できます。
回答が出そろったら、作業範囲の表と年額の表を1枚にまとめて並べます。比較の観点は運用代行を比較するときのポイント、費用の型の違いは運用代行の費用と選び方に整理しています。
安い見積もりを選んでよいケース
安い見積もりは、条件が合えば選んでよい選択肢です。次のどれかに当てはまるなら、安さの分を自社で補える可能性が高いと考えられます。
| ケース | 理由 | 自社で補うこと |
|---|---|---|
| 商品数が少なく、売上が上位数商品に集中している | 「5商品まで」の上限が実質的に問題にならない | 対象外の商品の在庫と価格の確認 |
| 画像やページは社内で作れる | 制作費が別料金でも使わない | 指摘を受けたあとの書き換え |
| 社内に数字を読める担当者がいる | レポートが定型でも、判断は社内でできる | 月次の判断と優先順位づけ |
| 広告費がまだ小さく、まず設計だけ頼みたい | 日々の運用を自社で回せる | 検索用語の確認と除外の更新 |
逆に、社内に担当者がいない、画像もページも外に頼むつもり、商品数が多い、といった状況では、安い見積もりは自社で補えない部分が多くなります。その場合は、月額が高くても範囲の広い契約のほうが、総額でも手間でも軽くなることがあります。
自社で回すか外に出すかの判断材料は、社内の担当者の時間です。仮に担当者が月に10時間を補う作業に使い、時給換算を3,000円とすると、月3万円、年36万円です。この金額を安い見積もりの年額に足して、高い見積もりと並べてください。差が小さければ、時間を別の仕事に使えるほうを選ぶ、という判断になります。
当社は2019年からAmazonの支援をしていて、30ブランド・300商品ほどを見てきました。作業範囲と料金は当社の料金プランとAmazon運用代行の内容に公開しているので、比較の基準のひとつとして使ってください。
よくある質問
安い見積もりの会社に「範囲を広げたらいくらか」を聞いてもよいですか。 聞いて構いません。むしろ同じ範囲で見積もり直してもらうのが、いちばん比較しやすい方法です。範囲を揃えた見積もりで他社と同程度になるなら、最初の安さは範囲の狭さだったと分かります。それでも安いなら、体制や効率に理由があるはずなので、その理由を聞いてください。
初期費用なし・月額も安い見積もりは、どこで回収しているのですか。 最低契約期間を長くしている、追加作業の単価を高めにしている、対象の商品数を絞っている、のいずれかであることが多いです。どれも契約書か料金表に書かれているので、月額以外の行と契約条件を先に読んでください。書かれていない場合は、書面で回答をもらってから判断します。
見積もりが安い会社と高い会社で、成果に差は出ますか。 金額と成果は比例するとは限りません。差が出やすいのは金額よりも、担当者が自社の商品にかけられる時間と、判断の提案があるかどうかです。月次レポートの見本と、担当者の兼務数を聞くと、かけられる時間の目安が分かります。
依頼する前に、自社で用意しておくものはありますか。 商品ごとの売上・粗利率・広告費、在庫の残り日数、今困っていることを1枚にまとめておくと、見積もりの精度が上がり、範囲の食い違いも減ります。準備の中身は運用代行に依頼する前の準備にまとめています。
まとめ
- 安い見積もりは、作業範囲が狭い・回数に上限がある・費用が月額の外にある・契約条件で回収する、のどれかに当たることが多い
- まず作業範囲を項目ごとの一覧にして、全社に同じ形で埋めてもらう
- 追加費用と初期費用を足して年額に直す。自社が使う作業の量を先に決めないと比較にならない
- 最低契約期間は「契約した時点で確定する金額」として並べる
- レポートの見本、対象商品の上限、解約後に設定が残るかを契約前に確かめる
- 「なぜ安いのか」を聞き、理由が具体的なら自社で補えるかを判断する
- 社内で補う時間も金額に置いて、高い見積もりと並べる
まず自社の状況を整理したい場合は、無料の運用診断で広告・商品ページ・在庫のどこが弱いかを確認してから見積もりを取ると、必要な作業範囲がはっきりします。個別の見積もりの読み方で迷ったら、お問い合わせからご相談ください。
