Amazon広告の運用を代行に任せて2〜3か月。管理画面を開いたら、広告費が任せる前の1.5倍になっていた。売上も少し増えているけれど、増えた広告費に見合っているのかが分からない。代行からの月次報告は「順調です」。こうした状況で相談を受けることは少なくありません。

広告費が増えたこと自体は、良いことでも悪いことでもありません。新しい語を取りにいく投資として増やしている場合もあれば、除外や入札の管理が甘くて無駄なクリックが増えている場合もあります。問題は、どちらなのかを出品者側が判断できない状態です。

この記事では、Amazon広告の代行で広告費が増えたときに、増えた理由を切り分ける手順と、確かめる5つの数字を書きます。代行に何をどう聞けばよいか、次の契約で決めておくべき上限の置き方まで扱います。以下の金額や比率はすべて仮の数字です。自社の管理画面の実数に置き換えて読んでください。

広告費が増えるのは「良い増え方」と「悪い増え方」がある

最初に、増え方を2つに分けて考えます。

区分何が起きているか数字の表れ方
良い増え方新しい語・枠への配信を広げ、売上と利益の総額が伸びている広告費の増加より、広告経由売上と全体売上の伸びが大きい。TACOSが横ばいか下がる
様子見の増え方新しい語のテスト中で、まだ成果が出ていない増えた広告費の大半が新規の語。テストの期間と上限が決まっている
悪い増え方無駄なクリック、入札の上げすぎ、自社広告どうしの競り合い広告費だけ伸び、ACOSが悪化。自然検索の売上が減っている

ここで「様子見」を入れているのは、立ち上げ期や新しい語を試す時期には、一時的に効率が落ちるのが普通だからです。テストの期間と上限が決まっていて、それを代行と共有できていれば問題ありません。困るのは、期間も上限も決まっていないまま「様子見」が続いている状態です。

もうひとつ、広告費の増加を判断する単位を揃えておきます。代行の報告はキャンペーン単位、出品者が気にするのは商品単位や月の利益です。比べる単位がずれていると、同じ数字を見ているのに話がかみ合いません。この記事では「商品ごと・月ごと」に揃えて見ることを前提にします。

確かめる5つの数字

切り分けに使う数字は5つです。任せる前の3か月と、任せた後の直近3か月を並べます。1か月だけで比べると、セールや季節の影響を拾ってしまうからです。季節性の強い商品は、前年の同じ月とも比べてください。

数字何が分かるか良い増え方のとき悪い増え方のとき
1. 広告費増えた額そのもの増えている増えている
2. 広告経由売上広告費の増加が売上に変わったか広告費以上の伸び横ばいか小さな伸び
3. ACOS広告経由売上に対する広告費の割合横ばい、または計画どおりの悪化計画なく悪化
4. TACOS全体売上に対する広告費の割合横ばいか下がる上がる
5. 自然検索経由の売上広告が自然検索を押し上げたか、食ったか伸びている減っている

この中で一番大事なのは4番のTACOSと5番の自然検索です。ACOSは広告だけを切り取った指標なので、広告で売れた分が、もともと自然検索で売れていた分の置き換えに過ぎない場合でも良く見えます。全体売上に対する広告費の割合を見れば、その置き換えが分かります。TACOSの考え方はTACOSとACOSの違いで詳しく書いています。

仮の数字で見る2つのパターン

仮に、任せる前の月平均が次の状態だったとします。

  • 広告費 20万円、広告経由売上 100万円(ACOS 20%)
  • 全体売上 250万円(TACOS 8%)
  • 自然検索などの広告以外の売上 150万円

任せた後の月平均が、次の2つのどちらかになったとします。

項目任せる前パターンAパターンB
広告費20万円30万円30万円
広告経由売上100万円140万円120万円
ACOS20%約21%25%
全体売上250万円320万円255万円
広告以外の売上150万円180万円135万円
TACOS8%約9%約12%

どちらも広告費は10万円増えています。パターンAは、広告経由売上も広告以外の売上も伸び、全体売上が70万円増えました。TACOSは少し上がっていますが、売上総額の伸びが大きいので、粗利で見ると広告費の増加分を上回っている可能性が高い増え方です。

パターンBは、広告経由売上は20万円増えましたが、広告以外の売上が15万円減っています。全体では5万円しか伸びていません。これは、もともと自然検索で売れていた分を広告が取り直しているだけ、という典型です。広告費10万円の増加に対して全体売上5万円の増加では、粗利が残りません。

増えた広告費が利益に変わったかは、最後は粗利で確かめます。仮に粗利率(広告費を除く)が30%なら、パターンAは全体売上70万円の増加で粗利が21万円増え、広告費の増加10万円を引いても11万円のプラスです。パターンBは5万円の増加で粗利1.5万円、広告費を引くと8.5万円のマイナスになります。粗利率は商品・カテゴリー・時期の手数料で変わるので、自社の数字で計算してください。売価と原価から損益分岐のACOSを出したい場合は利益シミュレーターが使えます。

悪い増え方のときに疑う5つの原因

パターンBに近いと分かったら、どこで広告費が膨らんでいるかを特定します。代行の担当者に聞く前に、出品者側でも次の5つは確かめられます。

  1. 自社の指名検索に広告費が乗っている。 ブランド名や自社商品名で検索した人は、広告が無くても自社の商品を買う可能性が高い層です。ここへの広告費が大きく増えていれば、自然検索の売上を広告で取り直しています。防衛としての出稿は必要な場合もありますが、金額の上限を決めておきます
  2. 除外キーワードが更新されていない。 検索用語レポートで、クリックだけ多く注文の無い語が並んでいないかを見ます。オートや部分一致から無関係な語を拾い続けていると、広告費は増え続けます。除外の考え方は除外キーワードのやり方にまとめています
  3. 入札が上限を超えて上がっている。 粗利と転換率から出した入札上限を超えている語がないかを確認します。動的入札の「アップとダウン」や、掲載枠の上乗せで、実際の課金額が想定より高くなっていることもあります
  4. 同じ語を複数のキャンペーンで持っている。 自社の広告どうしで競り合うと、クリック単価だけが上がります。完全一致で持つ語を、他のキャンペーンで除外しているかを見ます
  5. 在庫や価格の問題を広告で埋めている。 カートを失っている、在庫が少ない、価格が競合より高いといった状態で広告を強めても、転換率が下がって費用だけ増えます。広告では直らない問題が広告費に出ていることがあります

5つのうちどれが効いているかで、代行に求める対応が変わります。1〜4は運用の問題、5は運用の外にある問題です。5が原因なら、代行の運用を責めても解決しません。

代行への確かめ方

数字を見て疑問が出たら、代行に確認します。聞き方次第で、返ってくる答えの質が変わります。「広告費が増えていますが大丈夫ですか」と聞くと「投資段階です」と返ってきて終わりがちです。具体的に聞きます。

聞くこと答えで確かめる点
増えた広告費のうち、新しく追加した語・枠に使った額はいくらか投資とテストの区別がついているか
テスト中の語はいつまで続け、どの数字で止めるか期間と判断基準が決まっているか
指名検索への広告費は前と比べてどう変わったか自然検索の取り直しを把握しているか
除外キーワードを最後に更新したのはいつか、何語足したか日々の管理がされているか
TACOSと自然検索の売上の推移をどう見ているか広告だけでなく全体で判断しているか

答えが具体的な数字で返ってくれば、運用は管理されています。数字が無く「様子を見ましょう」だけが続くなら、報告の型を変えてもらう必要があります。月次報告に何が載っているべきかは代行の月次報告の見方で整理しています。

確認は責めるためではなく、判断の材料を揃えるためです。代行側も、出品者がTACOSや自然検索まで見ていると分かれば、全体の利益を前提にした提案をしやすくなります。

広告費の上限を契約と運用で決めておく

広告費が増えたことで揉めるのは、多くの場合、上限と判断基準を最初に決めていないからです。次の3つを、契約か運用ルールとして文書で残しておきます。

月の広告費の上限。 金額で決めます。上限を超える提案は、事前に出品者の了承を取ってから実行する、という手順にしておきます。商品が複数あるなら、商品群ごとに分けて上限を置くと管理しやすくなります。

目標とする指標と、その範囲。 ACOSだけでなく、TACOSの範囲も決めます。例えば「TACOSは10%以内、テストの期間はACOS 35%まで許容」のように、通常時とテスト時を分けて書きます。数値は粗利率から逆算して自社で決めてください。

テストの期間と撤退基準。 新しい語や枠を試すときは、期間(例えば2〜4週間)と、止める基準(クリック数と注文数)を先に決めます。テストが終わったら結果を報告してもらい、続けるか止めるかを出品者が決めます。

料金の型によって、広告費を増やす方向の力のかかり方は変わります。広告費連動の料金なら、広告費が増えると代行の報酬も増えます。悪意がなくても、増やす判断に傾きやすい構造です。料金の型ごとの特徴は広告運用代行の費用の3つの型にまとめています。契約前に、上限と判断基準をどう決めるかを聞いておくと、後から揉めにくくなります。

続けるか見直すかの判断

切り分けて、確認して、それでも状況が改善しない場合の判断基準も持っておきます。

状況判断
良い増え方。TACOSが目標内で全体売上が伸びている続ける。上限を見直して投資を広げる余地を相談する
様子見の増え方。期間と撤退基準が決まっている期間が終わるまで待ち、結果で判断する
悪い増え方だが、原因を特定して対応が始まっている1〜2か月、対応後の数字を見る
悪い増え方で、確認しても具体的な答えが無い報告の型と上限を決め直す。改善しなければ見直しを検討する

見直しを検討する段階なら、乗り換えの判断材料は代行の乗り換えの判断基準に書いています。乗り換えでも内製化でも、アカウントの権限と過去の変更履歴を受け取れるかを先に確認してください。

よくある質問

広告費が増えた分、売上も増えています。それでも確認したほうがよいですか。 確認したほうがよいです。広告経由の売上が増えていても、自然検索の売上が同じだけ減っていれば、全体では伸びていません。全体売上と広告以外の売上を、任せる前の3か月と並べて見てください。両方伸びていれば、良い増え方の可能性が高いと判断できます。

代行に「今は投資期間です」と言われました。どれくらい待てばよいですか。 期間は商品と語によって変わるので一概に言えませんが、期間と撤退の基準を決めずに待つことはおすすめしません。「いつまで」「どの数字になったら止めるか」を代行に出してもらい、文書で残してください。基準が出てこない場合は、投資ではなく管理不足の可能性があります。

広告費の上限を決めると、売れる機会を逃しませんか。 上限は配信を止めるためではなく、上限を超える判断を出品者と一緒に行うためのものです。セールや繁忙期など、上限を超えて出したほうがよい場面は事前に分かることが多いので、その時期だけ上限を引き上げる運用にすれば機会は逃しにくくなります。

自分で管理画面を見る時間がありません。最低限どれを見ればよいですか。 月に1回、広告費・全体売上・TACOSの3つだけを3か月分並べて見てください。TACOSが上がり続けていて、全体売上が伸びていなければ、代行に確認するきっかけになります。

まとめ

  • 広告費が増えたこと自体は良くも悪くもない。良い増え方・様子見・悪い増え方に分けて判断する
  • 任せる前の3か月と直近3か月で、広告費・広告経由売上・ACOS・TACOS・自然検索の売上を並べる
  • 一番大事なのはTACOSと自然検索の売上。広告が自然検索を取り直していないかを見る
  • 悪い増え方なら、指名検索・除外キーワード・入札・重複・在庫と価格の5つを疑う
  • 代行には「新規に使った額」「テストの期間と撤退基準」を具体的に聞く
  • 月の上限、目標の範囲、テストの期間を文書で決めておく

自社の広告費がどの増え方に当たるか、数字を並べても判断がつかない場合は、Amazon広告の運用代行の考え方を参考にしていただくか、無料の運用診断で現状を整理してみてください。個別の状況はお問い合わせからご相談いただけます。