「Amazonで売るなら利益率は何%くらいが普通ですか」という質問をよく受けます。気持ちは分かりますが、Amazon 利益率 目安を他社の数字から借りてくると、たいてい判断を誤ります。商品の原価率も、広告にかけている割合も、会社の固定費も違うからです。

目安は、自社の数字から逆算すると置けます。必要なのは3つだけです。広告前の粗利率、固定費率、残したい利益率。この3つが決まれば、広告費に使ってよい上限が1本の式で出ます。

この記事では、利益率を3段に分けて見る方法、広告費の上限を出す計算、時期ごとの目標の置き方を順に書きます。金額と率はすべて計算の形を示すための仮の値です。手数料率・FBAの料金・保管料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で置き換えてください。

Amazon販売の利益率は3段に分けて見る

「利益率」と一言で言っても、何を引いた後の数字かで意味がまったく変わります。まず3段に分けます。

段売上から引くもの何が分かるか
① 広告前の粗利率原価・送料・関税・販売手数料・FBAの料金・保管料・返品の見込み商品そのものの稼ぐ力。価格と原価で決まる
② 広告後の利益率①に加えて広告費売れるたびに手元に残る割合
③ 固定費後の利益率②に加えて人件費・外注費・ツール代・出品の月額など事業として残る割合

目安を置く順番は③→②→①ではなく、①を実数で出してから、③の目標を決め、その差で②の余地(=広告費の上限)を出す、です。①は価格と原価でほぼ決まってしまう数字なので、先に動かせない土台として確定させます。

①の出し方は、費目を1個あたりで並べるだけです。並べ方はFBA手数料と粗利を1商品ずつ出す手順、費目ごとの削り方は1個あたりの原価構造を分解するにまとめています。

広告前の粗利率を実数で出す

例として、売価3,000円の商品で並べます。

費目金額(仮定)売価に対する割合
商品原価900円30.0%
国際送料・関税(1個あたり按分)120円4.0%
販売手数料450円15.0%
FBAの配送の手数料434円14.5%
保管料(1個あたりの想定)30円1.0%
返品・不良の見込み60円2.0%
合計1,994円66.5%
広告前の粗利1,006円33.5%

この商品の①広告前の粗利率は33.5%です。ここから広告費と固定費を払い、残りが利益になります。

ここで1個あたりの計算に入れ忘れやすい費目があります。返品の見込み、保管料、そして長く置いた在庫にかかる追加の保管料です。入れ忘れると①が高く出て、後の計算がすべて甘くなります。売れ残りやすい商品は、保管料を1個あたり月額ではなく「売れるまでに置く月数」で掛けて入れてください。保管料の抑え方は在庫保管料を抑える運用で書いています。

固定費率は販売個数で大きく動く

次に③で引く固定費です。固定費は販売個数に関係なく毎月かかるので、売上に対する割合(固定費率)は、売れる数によって大きく変わります。

仮に、月の固定費を100,000円(運用の人件費・外注費・ツール代・出品の月額の合計)とします。売価3,000円の商品で、月の販売個数ごとの固定費率は次のとおりです。

月の販売個数(仮定)月の売上固定費率(100,000円÷売上)
150個450,000円22.2%
300個900,000円11.1%
600個1,800,000円5.6%

同じ商品・同じ固定費でも、150個と600個では固定費率が4倍違います。「利益率の目安」を他社から借りられない一番の理由はここです。販売個数の規模が違えば、同じ粗利率でも残る利益はまったく違います。

広告費の上限を逆算する

3段がそろったら、広告費に使える上限は次の式で出ます。

広告費の上限(売上に対する%) = 広告前の粗利率 − 固定費率 − 目標の利益率

売上に対する広告費の割合は、TACOS(総売上に対する広告費の割合)と呼ばれる指標です。考え方はTACOSとは何かで詳しく書いています。

上の例で、月300個売れていて(固定費率11.1%)、利益率5%を残したいとすると、

  • 広告費の上限 = 33.5% − 11.1% − 5.0% = 17.4%

月の売上900,000円なら、広告費は月156,600円までに収めれば利益率5%を確保できる、という計算です。

広告の管理画面で見るACOS(広告経由の売上に対する広告費の割合)に直すには、売上のうち広告経由の割合で割ります。仮に売上の半分が広告経由なら、

  • ACOSの上限 = 17.4% ÷ 0.5 = 34.8%

となります。広告経由の割合が下がる(自然検索からの売上が増える)ほど、同じTACOSでも許せるACOSは上がります。ACOSの目標の置き方と下げ方はACOSの目標値の決め方にまとめています。

逆から見ると「必要な粗利率」の目安になる

同じ式を逆向きに使うと、商品を選ぶ段階での目安にもなります。

必要な広告前の粗利率 = 広告費の割合 + 固定費率 + 目標の利益率

仮に広告費に売上の15%、固定費に10%、利益に5%を置くなら、広告前の粗利率は30%が要る計算です。これを下回る商品は、広告を使って売るほど利益が薄くなります。価格を上げるか、原価を下げるか、広告に頼らない売り方を考えるかの判断が、仕入れる前にできます。価格の側からの組み立て方はAmazonでの価格の決め方で書いています。

時期ごとに目標の利益率を変える

目標の利益率は、1年中同じでなくて構いません。むしろ時期によって変えるほうが自然です。上の例の数字(広告前の粗利率33.5%、固定費率11.1%)で並べます。

時期目標の置き方広告費の上限(TACOS)
立ち上げ期(最初の2〜3か月)広告後の利益が0以上。固定費は回収しない前提で、赤字の許容額を先に決める33.5%
成長期固定費を回収する。利益は0でよい22.4%
安定期目標の利益率5%を残す17.4%

立ち上げ期に広告費を多く使うのは、販売実績を積んで自然検索の順位を上げるためです。ただし、上限なしに使うのとは違います。「広告後の利益が0になるまで」という線を先に引き、それを超える日が続いたら入札や対象の検索語を絞ります。立ち上げの90日の進め方は新商品の立ち上げ90日に段階ごとに書いています。

時期を移るときの判断は、日付ではなく数字で行います。たとえば「自然検索経由の売上が全体の半分を超えたら成長期に移る」「TACOSが3週続けて上限を下回ったら安定期の目標に切り替える」のように、移る条件を決めておきます。

目安の置き方でよくある失敗

広告前の粗利率をカテゴリーの一般論で置く。 実数ではなく「このカテゴリーならこのくらい」で置くと、返品や保管料の分だけ高く出ます。1個あたりで費目を並べるまでは、目安の計算を始めないでください。

固定費を入れずに「黒字」と判断する。 広告後の利益がプラスでも、固定費を引くと赤字のことがあります。特に販売個数が少ない時期は固定費率が高いので、②だけ見ていると気づけません。売れているのに手元に残らない場合の切り分けは売れているのに利益が出ない原因で手順にしています。

ACOSだけで広告を判断する。 ACOSは広告経由の売上しか見ていないので、自然検索の売上が増えていても下がりません。事業として残る利益を見るなら、TACOSと上の式で判断します。

目標を一度決めて見直さない。 販売個数が増えると固定費率が下がり、広告費に回せる余地が広がります。月に1回、固定費率を計算し直して上限を更新してください。

よくある質問

Amazon販売の利益率は何%あれば良いと言えますか。 他社と比べられる1つの数字はありません。目安は、自社の広告前の粗利率から固定費率と広告費の割合を引いて、目標の利益率が残るかどうかで判断します。仮に広告費15%・固定費10%・利益5%を置くなら、広告前の粗利率は30%が要る、という形で自社の目安が出ます。

利益率と利益額のどちらを優先すべきですか。 月の固定費を回収できているかどうかで変わります。固定費を回収できていない段階では、利益率を少し下げてでも販売個数を増やし、利益額を積むほうが固定費率が下がって全体が楽になります。固定費を回収した後は、利益率を守りながら伸ばすほうに重心を移します。

セールやクーポンの期間は、利益率の計算をどうすればよいですか。 割引した売価で広告前の粗利率を計算し直し、その期間だけの広告費の上限を出してください。割引で粗利率が下がった状態で通常時と同じ広告費を使うと、売上は伸びても利益が残りません。参加するかどうかの判断はセールに参加するかの判断で書いています。

まとめ

  • 利益率は「広告前の粗利率」「広告後の利益率」「固定費後の利益率」の3段に分けて見る
  • 広告前の粗利率は、返品・保管料まで入れて1個あたりの実数で出す
  • 固定費率は販売個数で大きく動く。他社の利益率を目安に借りられない理由はここ
  • 広告費の上限(TACOS)=広告前の粗利率−固定費率−目標の利益率
  • 逆に使えば、商品を選ぶ段階で必要な粗利率の目安が出る
  • 目標の利益率は立ち上げ期・成長期・安定期で変え、移る条件を数字で決める

まずは主力の1商品で、広告前の粗利率を実数で出してみてください。利益シミュレーターに費目を入れると、広告費の割合を変えたときの利益の動きまで確認できます。自社の数字で上限の置き方を相談したい場合は、お問い合わせからどうぞ。