「成果が出なければ費用はかかりません」。Amazon広告の代行を探していると、成果報酬型の案内をよく見かけます。売れなければ払わなくてよいなら、固定の月額より損が小さい。そう考えるのは自然です。
ただ、Amazon広告の代行を成果報酬で頼む場合、支払額を決めるのは「成果」をどう数えるかです。広告経由の売上で数えるのか、増えた分だけを数えるのか、利益で数えるのか。定義が違えば、同じ月の同じ数字でも支払額は数倍変わります。そして定義によっては、自社の利益が減る動きで代行側の報酬が増えることがあります。
この記事では、成果報酬型の仕組みを定義ごとに分け、仮の条件で固定型と並べて試算し、契約前に文面で決めておく項目までを整理します。成果報酬型が得かどうかは料率ではなく、「成果の定義が自社の利益と同じ向きを向いているか」で決まります。 金額はすべて説明用の仮の数字です。料金の型の全体像は運用代行の費用の3つの型にまとめています。
成果報酬型の代行の仕組み。「成果」の定義は3つ
成果報酬と呼ばれている契約を、報酬の計算の基準で分けると次の3つになります。
| 定義 | 報酬の計算 | 報酬が増える場面 | 注意する点 |
|---|---|---|---|
| 広告経由売上型 | 広告経由売上の何% | 広告経由の売上が増えたとき | 広告費を増やしても、値引きしても報酬が増える |
| 売上増加分型 | 基準期間から増えた売上の何% | 基準より売上が伸びたとき | 基準期間の置き方と、季節による自然増の扱いで結果が変わる |
| 利益増加分型 | 基準期間から増えた利益の何% | 広告費を引いた利益が伸びたとき | 原価や手数料の開示が要り、計算の合意に手間がかかる |
広告経由売上型は、名前は成果報酬でも中身は売上連動型です。 広告を使って売れた分すべてに料率がかかるので、広告が無くても売れていた分まで報酬の対象になりえます。
実際には、固定の月額に成果報酬を上乗せする形や、成果報酬に最低額が付いている形もあります。「成果が出なければ0円」と書かれていても、最低額や初期費用がある場合は、その分は成果に関係なく発生します。
数え方の細かい条件で、支払額が動く
定義が同じでも、次の条件で支払額は変わります。
- 広告経由と数える期間。 広告をクリックしてから何日以内の購入までを広告経由とするか。長く取るほど広告経由売上は大きく出ます
- 基準期間。 前年同月と比べるのか、契約前3か月の平均と比べるのか。繁忙期の前後で基準を取ると、何もしなくても増加分が出たり、逆に手を尽くしても減少に見えたりします
- 対象の範囲。 すべての商品か、指定した商品だけか。新商品の売上を増加分に含めるか
季節で売れ行きが大きく変わる商品なら、基準期間は前年同月にするのが基本です。前年の数字が無い場合は、全体の売上に占める広告費の比率(TACOS)のように、季節の影響を受けにくい指標を併用してください。
仮の条件で、固定型と並べて試算する
定義による違いを数字で見ます。次の仮の条件を置きます。実際の水準を示すものではありません。
- 月の広告費:300,000円、ACOS:20%(広告経由売上は1,500,000円)
- 粗利率:30%(販売手数料・FBA手数料・原価を引いたあと、広告費を引く前)
- 基準期間:広告費300,000円・ACOS25%で、広告経由売上1,200,000円だった
- 料率:月額固定型は50,000円、広告経由売上型は10%、売上増加分型は30%、利益増加分型は50%
広告の利益は「広告経由売上×粗利率−広告費」で出します。今月は1,500,000円×30%−300,000円=150,000円、基準期間は1,200,000円×30%−300,000円=60,000円です。
| 型(仮定) | 月の支払額 | 年額に直すと | 支払い後に残る広告の利益(月) |
|---|---|---|---|
| 月額固定50,000円 | 50,000円 | 600,000円 | 100,000円 |
| 広告経由売上の10% | 150,000円 | 1,800,000円 | 0円 |
| 売上増加分の30% | 90,000円 | 1,080,000円 | 60,000円 |
| 利益増加分の50% | 45,000円 | 540,000円 | 105,000円 |
内訳です。広告経由売上型は1,500,000円×10%。売上増加分型は増えた300,000円×30%。利益増加分型は増えた利益90,000円×50%です。
この条件では、広告経由売上型だと広告の利益がちょうど消えます。広告は利益を生んでいるのに、その分がすべて代行費用に回る計算です。料率を見るだけでは分からず、自社の粗利率を当てはめて初めて見える差です。販売手数料やFBA手数料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、粗利率はセラーセントラルの最新の案内と自社の実数で出してください。
広告費を増やしたとき、値引きしたときの動き
次に、代行側が広告費を450,000円に増やし、ACOSが25%に上がって広告経由売上が1,800,000円になった月を考えます。売上は増えましたが、広告の利益は1,800,000円×30%−450,000円=90,000円に減っています。
| 型(仮定) | 変化前の支払額 | 変化後の支払額 | 支払い後に残る広告の利益(変化前→変化後) |
|---|---|---|---|
| 月額固定50,000円 | 50,000円 | 50,000円 | 100,000円→40,000円 |
| 広告経由売上の10% | 150,000円 | 180,000円 | 0円→−90,000円 |
| 売上増加分の30% | 90,000円 | 180,000円 | 60,000円→−90,000円 |
| 利益増加分の50% | 45,000円 | 15,000円 | 105,000円→75,000円 |
売上で数える2つの型では、自社の利益が減った月に代行側の報酬が増えています。 利益増加分型だけが、自社の利益と報酬が同じ向きに動きます。値引きやクーポンで売上を作った場合も同じ構図で、粗利率が下がっても売上基準の報酬は増えます。
利益相反はどこで起きるか
利益相反とは、代行側が報酬を増やす行動と、自社の利益を増やす行動が食い違う状態のことです。売上を基準にした成果報酬では、次の場面で起きやすくなります。
| 代行側の行動 | 売上基準の報酬 | 自社の利益 |
|---|---|---|
| 広告費を増やす | 広告経由売上が増えるので増える | ACOSが悪化すれば減る |
| 値引き・クーポンを勧める | 売上が増えるので増える | 1個あたりの粗利が減る |
| 自社ブランド名の検索語に強く入札する | 自然検索で買う人が広告経由に付け替わり増える | 払わなくてよかった広告費が増える |
| 除外キーワードを減らす | 売上につながる語も拾えて増える | 無駄なクリックも増える |
| 繁忙期の自然な伸びを成果に数える | 何もしなくても増える | 代行の効果と関係なく支払いが増える |
3行目は見落としやすい点です。ブランド名で検索する人は、広告が無くても自社の商品にたどり着く可能性が高い。そこに広告を出すと、もともと自然検索で売れていた分が広告経由に数えられ、報酬の対象が増えます。広告経由売上だけでなく、自然検索の売上と全体のTACOSを並べて見ると気づけます。
これは代行会社が不誠実だという話ではありません。報酬の基準が決まれば、判断はその基準の方向に寄りやすくなるという、契約の構造の話です。月額固定型にも、作業量が増えても金額が変わらないため手間のかかる作業が後回しになりやすい、という別の偏りがあります。
利益相反を小さくする契約の工夫
売上基準の成果報酬を選ぶ場合でも、次の取り決めで偏りを抑えられます。
- 広告費の上限を決め、超える変更は事前に承認する
- 値引き・クーポンの実施は自社が判断し、代行側は提案までとする
- 自社ブランド名を含む検索語の売上は、成果の対象から外す
- 成果の判断に、ACOSだけでなくTACOSと1個あたりの利益を加える
- 報酬に上限を付け、広告費が一定を超えた月は料率を下げる
- 固定の月額を小さく持ち、成果報酬の比率を下げる
目標とするACOSは、自社の損益分岐から逆算して決めます。考え方は目標ACOSの決め方にまとめています。
成果報酬型が向くケース・向かないケース
以上を踏まえると、成果報酬型が合うかどうかは次のように分かれます。
| 見る点 | 向く | 向かない |
|---|---|---|
| 粗利率 | 高く、料率を払っても利益が残る | 低く、売上基準の料率で利益が消える |
| 値引き販売 | 少ない。定価で売れている | セールやクーポンに頼っている |
| ブランド名での検索 | 少ない新しい商品 | 多い既存ブランド。付け替えが起きやすい |
| 売れ行きの季節差 | 小さい | 大きい。基準期間で結果が変わる |
| 数字の検証 | 自社でレポートを見て確かめられる | 代行側の報告の数字をそのまま使うしかない |
| 広告費の今後 | 大きく変えない | 増やす予定がある。売上基準だと支払いも増える |
向く条件が多いほど成果報酬型の利点が生きます。向かない条件が2つ以上当てはまるなら、月額固定型や、固定+小さな成果報酬の形を先に検討してください。型ごとの長所と短所は代行のメリット・デメリットにも整理しています。
契約前に文面で確認する10項目
成果報酬型は、口頭の説明と契約書の定義がずれていると、支払いの段階で揉めます。次の10項目は、契約書か発注書に文面で残してください。
- 成果の定義。 広告経由売上か、売上の増加分か、利益の増加分か
- 広告経由と数える期間。 クリックから何日以内の購入までか
- 基準期間。 いつの数字と比べるか。季節商品の場合の扱い
- 対象の範囲。 対象の商品とキャンペーン。新商品を含めるか
- ブランド名の検索語の扱い。 成果に含めるか外すか
- 広告費の上限と変更の承認。 誰がいくらまで決められるか
- 値引き・クーポンの判断者。 実施の承認を誰がするか
- 報酬の最低額と上限。 成果が出なかった月に発生する費用と、上振れした月の上限
- 数字の出典。 どのレポートの、いつ時点の数字で確定させるか
- 解約と引き継ぎ。 最低契約期間、途中解約の条件、解約後にキャンペーン設定と除外キーワードの一覧が残るか
9番目は軽く見られがちですが、成果報酬では請求額そのものを決める項目です。広告の数字は集計に時間差があり、数日たってから変わることがあるので、月末から何日後の数字で確定させるかまで決めておきます。契約前の確認で起きた食い違いの例は運用代行でよくある失敗例に、見積もりで聞く質問は代理店の選び方に書いています。
当社の料金は、広告費にも売上にも連動しない月額固定です。この記事で見た売上基準の偏りは起きませんが、固定型には作業範囲の線引きが曖昧だと揉めやすいという別の注意点があるので、範囲は料金ページとAmazon広告の運用代行の内容に公開しています。比較の対象のひとつとして見てください。
よくある質問
成果が出なかった月は、本当に費用がかかりませんか。 契約によります。最低報酬額、初期費用、固定の月額部分が付いている場合は、成果に関係なくその分が発生します。「成果が出なければ0円」という案内でも、契約書の報酬の条項で最低額の有無と、成果が0と判定される条件を確かめてください。
成果報酬型のほうが、代行会社は熱心に動いてくれますか。 動く量より、動く方向が報酬の基準に寄ると考えてください。売上が基準なら売上を増やす方向、利益が基準なら利益を増やす方向です。熱心さを契約の型で買うより、報告に「やったこと・結果・次にやること」が書かれているかで確かめるほうが確かです。
途中で成果報酬型から固定型に切り替えられますか。 契約の更新時に相談する形が一般的です。切り替えの際は、それまでの報酬の計算に使った基準期間と数字の出典を記録として受け取っておくと、固定型での目標設定にそのまま使えます。途中解約の条件は契約前に確認しておいてください。
広告費を増やす提案をされたら、断るべきですか。 断る必要はありません。増やした場合の広告の利益を、上の表のように「広告経由売上×粗利率−広告費」で計算し、今より増えるかを確かめてから承認してください。売上基準の成果報酬なら、代行費用の増加分も差し引いて比べます。
まとめ
- 成果報酬型の支払額は、料率より「成果」の定義で決まる。広告経由売上型・売上増加分型・利益増加分型の3つ
- 広告経由売上型は実質の売上連動型。広告が無くても売れていた分まで報酬の対象になりうる
- 仮の条件では、粗利率によっては広告の利益がすべて代行費用に回る。自社の粗利率を当てはめて試算する
- 売上基準の型では、広告費の増加や値引きで自社の利益が減る月に報酬が増えることがある
- 広告費の上限、値引きの判断者、ブランド名の検索語の扱い、報酬の上限を取り決めて偏りを抑える
- 契約前に10項目を文面に残す。特に成果の定義、基準期間、数字の出典
自社の粗利率が分かれば、この記事の表は自社の数字で作り直せます。損益分岐ACOSは利益シミュレーターで出せます。契約の型に迷う場合は無料の運用診断で現状を整理してから、お問い合わせからご連絡ください。
