Amazon広告の運用を外注すると決めても、次に止まるのが「どこまで任せるか」です。見積もりには「広告運用一式」とだけ書かれていることがあり、除外キーワードを週に何回触るのか、商品ページの修正は含むのか、目標ACOSは誰が決めるのかが読み取れません。

範囲が曖昧なまま始めると、3か月後に「やってくれると思っていた」「それは範囲外です」という食い違いが起きます。費用の比較もできません。同じ月額でも、含まれる作業が違えば比べる意味がないからです。

この記事では、Amazon広告運用の外注で任せる範囲の決め方を、作業の洗い出しから順に説明します。線を引く基準は「その判断に社内の情報が要るかどうか」です。 外で完結する作業は任せ、原価・在庫・価格の情報が要る判断は自社に残す。この基準で分けると、外注先に渡す情報と、契約書に書く範囲がそのまま決まります。

Amazon広告運用の作業を洗い出す

最初に、広告運用に含まれる作業を頻度ごとに並べます。自社でいま誰がやっているか(あるいは誰もやっていないか)に印を付けながら読んでください。

作業頻度の目安必要な情報外注しやすさ
検索用語レポートの確認と除外キーワードの追加週1回広告のレポート外注しやすい
入札額の調整週1回広告のレポート、目標ACOS外注しやすい
売れた検索語をマニュアルキャンペーンへ移す週1回広告のレポート外注しやすい
予算の配分と上限の調整週1回〜月1回広告費の上限、在庫の残り日数情報を渡せば外注できる
月次の振り返りと次の打ち手の整理月1回広告と全体の売上外注しやすい
キャンペーン構造の設計・組み直し開始時と半期に1回商品の役割、競合の状況外注しやすい
新商品の広告開始都度発売日、在庫、価格情報を渡せば外注できる
目標ACOSと広告費の上限の決定四半期に1回粗利率、資金自社に残す
セール・クーポンとの連動都度値引き額、在庫自社が決め、設定は外注できる
価格の変更、在庫の発注都度原価、仕入れ、資金自社に残す
商品ページの修正都度ブランドの方針、商品の事実別の範囲として扱う

表を見ると、週次の作業の大半は広告のレポートだけで判断できます。一方で、目標や上限、価格や在庫の判断は、社内にしか無い情報を使います。

作業・設計・判断の3層に分ける

表の作業は、性質で3つの層にまとめられます。

  1. 作業の層。 決めた基準に沿って手を動かす作業。除外の追加、入札の調整、検索語の移動。週次で繰り返す
  2. 設計の層。 作業の基準そのものを作る仕事。キャンペーン構造、除外の基準、入札の上げ下げのルール。開始時と見直し時に行う
  3. 判断の層。 何を目指すかを決める仕事。目標ACOS、広告費の上限、どの商品に投資するか、撤退するか

外注に向くのは作業の層と設計の層です。判断の層は、外注先に案を出してもらうことはできても、決めるのは自社です。作業ごとの基準は除外キーワードの決め方入札額の決め方に書いているので、外注先の作業の中身を確かめるときの物差しに使ってください。

任せる作業と自社に残す作業の線の引き方

線を引くときの基準は3つです。

  • 広告の画面の中で完結する作業は任せる。 レポートを見て設定を変える作業は、外注先のほうが多くのアカウントを見ている分、判断の基準を持っていることが多い
  • 社内の情報が要る判断は自社に残す。 原価、仕入れの予定、資金繰り、値付けの方針は、外注先が推測で決めてはいけない
  • やめる・増やすの決定は自社に残す。 商品からの撤退や広告費の大幅な増額は、広告の成果だけでは決められない

自社に残す判断と、そのために外注先へ渡す情報を並べると次のようになります。

自社に残す判断自社に残す理由外注先に渡す情報
目標ACOSと広告費の上限粗利率と資金を知っているのは自社だけ商品ごとの損益分岐ACOS、月の広告費の上限
広告を強める・弱める時期在庫と入荷予定で決まる在庫の残り日数、次の入荷日
価格・クーポン・セール参加1個あたりの利益に直結する価格変更とセールの予定
商品の追加と撤退広告以外の要素で決まる新商品の発売日、販売終了の予定
商品ページの最終承認ブランドの表現と商品の事実に責任を持つ修正の方針、使ってよい表現

外注先に判断を委ねたつもりでも、情報を渡していなければ、推測で運用されているのと同じです。 目標ACOSは損益分岐から逆算する目標ACOSの決め方で自社が決め、数字で渡してください。

自社に残す作業の工数の目安

判断の層を残すと、自社側にも時間がかかります。仮の目安を置くと、報告を読んで質問する時間が月1〜2時間、在庫と価格の予定を共有する時間が月1時間、四半期ごとの目標の見直しが1回2時間ほどです。これを確保できない場合は、外注の範囲を広げる前に、社内の担当を決めるところから始めてください。

外注の範囲ごとの3つの形

層の分け方を使うと、外注の形は3つに整理できます。自社の工数は、広告を出す商品が数点から10点程度の場合の仮の目安です。

任せる層自社の工数(仮定・月)向く会社起きやすい問題
実作業ごと任せる作業+設計2〜4時間社内に広告の担当者がいない報告を読まず、何が変わったか分からなくなる
設計と指示を任せる設計8〜12時間手を動かせる人はいるが、基準が無い指示どおりに作業する時間が取れず止まる
単発の設計だけ任せる設計(1回)10〜15時間広告費が小さい。自分で回す意思がある設計を受け取っても週次の作業が続かない

どの形でも、判断の層は自社に残ります。形の違いは、作業の層と設計の層をどこまで外に出すかです。

費用は範囲に応じて変わり、実作業ごと任せる形が重く、単発の設計が軽くなります。金額の比べ方は運用代行の費用の3つの型に、成果報酬で頼む場合の注意は成果報酬型の代行の仕組みと注意点に、自分でやる場合の時間の値段との比べ方は自分で運用するか代行に頼むかにまとめました。当社の範囲と料金は料金ページに公開しています(無料のスポット診断、月次で助言する形、実作業まで担う形があります)。

範囲を広げる・狭める目安

最初に選んだ形は固定ではありません。次の状態になったら、範囲を見直す合図です。

  • 自社で作業が回らず、指示が2週続けて実行されていない → 実作業ごと任せる形へ広げる
  • 報告の内容を社内で説明できるようになり、週に数時間取れる → 設計と指示の形へ狭める
  • 商品が増えて、キャンペーン構造の見直しが必要になった → 単発の再設計を追加する

見直しは契約の更新時期に合わせると話が進みやすくなります。広告アカウント全体の棚卸しの手順は半期に一度の広告アカウントの棚卸しに書いています。

権限と情報の渡し方

範囲を決めたら、それに合わせて権限と情報を渡します。

権限は、範囲に必要な分だけ付与します。 セラーセントラルのユーザー権限の機能を使い、外注先の担当者を個別に招待してください。IDとパスワードをそのまま共有すると、支払いや出品の設定まで触れる状態になり、解約のときに引き揚げる範囲も分からなくなります。付与した権限は一覧にして、外注の終了時に取り消せるようにしておきます。

情報は、決まった場所で決まった頻度で渡します。 在庫や価格の予定を、担当者がチャットで思い出したときに伝える形だと、抜けが出ます。共有のシートを1枚作り、次の項目を更新する日を決めてください。

共有する情報更新の頻度更新する人
商品ごとの在庫の残り日数と次の入荷日週1回自社
価格変更・クーポン・セール参加の予定決まり次第自社
商品ごとの損益分岐ACOSと目標ACOS四半期に1回と、原価が変わったとき自社
今週やった作業と、その理由週1回外注先
月の結果と、次の月にやること月1回外注先

在庫の残り日数は、1日あたりの販売数と今の在庫数から出せます。発注の目安は発注量シミュレーターで計算できるので、共有シートの数字の出し方をそろえておくと、外注先との会話が早くなります。

範囲の食い違いを防ぐ取り決め

範囲の食い違いの多くは、契約書や発注書の書き方で防げます。「広告運用一式」ではなく、次の5つを文面にしてください。

  1. 作業の一覧と頻度。 上の表の作業のうち、どれを週何回・月何回行うか
  2. 範囲外の作業と、その扱い。 商品ページの修正や画像の制作など、範囲に含まない作業と、依頼する場合の費用
  3. 事前承認が要る変更。 広告費の上限を超える変更、新しいキャンペーンの追加、目標ACOSを超える入札など
  4. 報告の形式。 「やったこと・結果・次にやること」を、週次と月次でどの粒度で書くか
  5. 終了時に受け取るもの。 キャンペーンの設計の説明、除外キーワードの一覧、作業の記録

特に3番目が無いと、外注先は「任されている」と考えて広告費を動かし、自社は「聞いていない」と受け取ります。承認の窓口を1人に決め、返事の期限(たとえば2営業日)も書いておくと、承認待ちで運用が止まることも防げます。範囲の食い違いから起きた失敗の例は運用代行でよくある失敗例にまとめています。

外注を始めてから3か月の進め方

範囲は、始めてから実際の作業を見て調整するのが現実的です。最初の3か月を次のように進めると、4か月目に範囲を見直す材料がそろいます。

時期外注先がやること自社がやること
1か月目アカウントの棚卸し、キャンペーン構造の見直し、除外の初期設定損益分岐ACOS・在庫・価格の予定を共有する
2か月目週次の運用と報告報告を読み、分からない点を質問する
3か月目3か月の振り返りと、範囲の見直し案範囲を広げるか狭めるか、続けるかを決める

広告は設定を変えてから数字が動くまで2〜4週間かかるため、1か月目の数字だけで外注の良し悪しは判断できません。3か月目の振り返りで、ACOSに加えてTACOSと1個あたりの利益を見て判断してください。

振り返りの場では、数字の良し悪しより先に「決めた範囲どおりに作業が行われたか」を確かめます。週次の除外が月に何回行われたか、事前承認の変更が承認を経ていたか、報告に次にやることが書かれていたか。範囲どおりに回っていて数字が伸びないなら、原因は範囲の外(商品ページ・価格・在庫)にある可能性が高く、外注先を替えても解決しません。

よくある質問

広告運用だけを外注して、商品ページは自社で直してもよいですか。 問題ありません。ただし広告の成果は商品ページの購入率に左右されるので、外注先から「この画像の段階で離脱が多い」といった指摘を受け取る窓口は作ってください。指摘を受けても直す人が社内にいない場合は、商品ページの修正を別の範囲として外注するかを検討します。

目標ACOSを外注先に決めてもらってもよいですか。 案を出してもらうのはよいですが、決めるのは自社です。目標ACOSは粗利率と資金の状況で決まり、それを正確に知っているのは自社だけだからです。外注先には損益分岐ACOSの数字を渡し、その範囲で新商品を伸ばす時期と利益を取る時期をどう分けるかを話し合ってください。

広告と商品ページを、別々の外注先に頼むのはどうですか。 できますが、2社の間で情報が行き来しないと、広告側は購入率の低下を、商品ページ側は流入の変化を知らないまま動くことになります。別々に頼むなら、共有シートを1枚にして両社に見てもらい、月1回は数字を同じ場で確認してください。

外注の範囲は、契約の途中で変えられますか。 契約によりますが、更新のタイミングで範囲と費用を見直す形が一般的です。途中で変える可能性があるなら、範囲を変更する場合の手続きと、費用の変わり方を契約前に確認しておいてください。上の3か月の進め方で振り返りの時期を決めておくと、見直しの話を切り出しやすくなります。

まとめ

  • 外注の範囲は「広告運用一式」ではなく、作業の一覧と頻度で決める
  • 作業は作業・設計・判断の3層に分けられる。外注に向くのは作業と設計の層
  • 線を引く基準は、その判断に社内の情報が要るかどうか。目標ACOS、広告費の上限、価格、在庫は自社に残す
  • 外注の形は、実作業ごと・設計と指示・単発の設計の3つ。範囲に応じて自社の工数も変わる
  • 権限はユーザー権限で必要な分だけ付与し、情報は共有シートで決まった頻度で渡す
  • 契約書には作業と頻度、範囲外の扱い、事前承認の条件、報告の形式、終了時に受け取るものを書く
  • 3か月目に振り返り、範囲を広げるか狭めるかを決める

まずは上の作業の一覧に、自社でいま誰がやっているかの印を付けてみてください。空欄になった作業が外注の候補です。どこが弱いかを先に確かめたい場合は無料の運用診断を、範囲について話したい場合はお問い合わせからどうぞ。