一人でAmazonの販売を回していると、広告の画面を開く時間が週に1時間も取れない月があります。検索用語レポートを見られないまま、ACOSだけがじわじわ上がっていく。Amazon広告の代行を個人で頼めないかと考えるのは、たいていこの段階です。
一方で、ためらう理由もはっきりしています。広告費が月に数万円から十数万円の規模で相手にしてもらえるのか。頼んだとして、代行費用を払ったら手元に何も残らないのではないか。
この記事では、その2つに答えを出します。頼めるかどうかは事業の規模ではなく、「払える上限」と「任せる範囲」が決まっているかで分かれます。上限は自社の広告費と粗利から計算で出せます。以下の金額はすべて説明用の仮の数字なので、自社の数字に置き換えて読んでください。費用の型そのものは運用代行の費用の3つの型に整理しています。
個人・小規模でもAmazon広告の代行は頼めるか
個人事業主や一人で運営している会社でも、代行の依頼自体はできます。問題になりやすいのは名義ではなく、次の2つが噛み合うかどうかです。
- 代行側が、その作業量に対して設定している最低料金
- 自社が、広告の利益から払える金額の上限
広告費が小さいと、広告費連動型の料率で計算した金額が最低料金を下回ります。するとその最低料金が実質の月額になり、広告費に対する負担が重くなる。「断られる」のではなく「計算が合わない」ことが多いのです。
| 自社の状況 | 頼みやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| 広告費が小さく、商品が1〜2点 | 作業を絞れば頼みやすい | 作業量が少ないので、設計だけ・点検だけの依頼が合う |
| 商品ページが未整備のまま | 頼みにくい | 広告でクリックを集めても購入につながらず、成果の判断ができない |
| 在庫がたびたび切れる | 頼みにくい | 在庫切れで広告が止まり、調整がやり直しになる |
| 粗利率が分からない | 頼みにくい | 目標ACOSが決められず、代行側が何を目指すか定まらない |
| 広告費は小さいが、数字と在庫は把握している | 頼みやすい | 規模より、判断の材料がそろっていることが効く |
規模より効く3つの条件
表の中身をまとめると、個人・小規模で代行を頼むときに効くのは次の3つです。
- 商品ごとの粗利率が分かっている。手数料と原価を引いたあとの率です。これが無いと、どこまで広告費をかけてよいかの線が引けません
- 在庫が2か月程度は途切れない。広告の調整は結果が出るまで2〜4週間かかるので、その間に在庫が切れると判断ができません
- 商品ページが最低限そろっている。メイン画像・商品名・箇条書きが競合と並べて見劣りしないこと。広告は人を連れてくるところまでで、買わせる力は商品ページが持っています
3つがそろっていれば、広告費が小さくても話は具体的に進みます。そろっていない場合は、広告の代行より先にそちらを片付けたほうが、同じ費用で効きます。
払える代行費用の上限を、粗利から出す
代行費用は、広告で増えた利益から払うものです。上限を出すには、今の広告がいくら利益を残しているかと、改善したらいくら増えるかを並べます。
計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。
- 月の広告費:60,000円
- 今のACOS:30%(広告経由売上は200,000円)
- 粗利率:35%(販売手数料・FBA手数料・原価を引いたあと、広告費を引く前)
広告の利益は「広告経由売上×粗利率−広告費」で出します。今は200,000円×35%−60,000円=10,000円です。広告費はそのままで、ACOSだけが下がった場合を並べます。
| ACOS(仮定) | 広告経由売上 | 広告の利益 | 今より増える額=代行費用の上限 |
|---|---|---|---|
| 30%(今) | 200,000円 | 10,000円 | ― |
| 25% | 240,000円 | 24,000円 | 14,000円 |
| 20% | 300,000円 | 45,000円 | 35,000円 |
| 15% | 400,000円 | 80,000円 | 70,000円 |
代行費用がこの右端の列を超えると、頼む前より手元の利益が減ります。 ACOSが20%まで下がる前提なら月35,000円まで、25%までなら月14,000円までが、払っても損にならない上限です。
改善幅は頼む前には分かりません。上限は楽観的な数字ではなく、控えめな改善(この例なら25%)で出しておくのが安全です。販売手数料やFBA手数料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、粗利率はセラーセントラルの最新の案内と自社の実数で出してください。利益シミュレーターに売価・原価・手数料率を入れると、損益分岐ACOSも一緒に確認できます。
広告費の規模で上限はどう変わるか
同じ粗利率35%で、ACOSが30%から20%に下がる場合を、広告費だけ変えて並べます。
| 月の広告費(仮定) | 今の広告の利益 | ACOS20%での広告の利益 | 代行費用の上限 |
|---|---|---|---|
| 30,000円 | 5,000円 | 22,500円 | 17,500円 |
| 60,000円 | 10,000円 | 45,000円 | 35,000円 |
| 150,000円 | 25,000円 | 112,500円 | 87,500円 |
上限は広告費にほぼ比例します。 広告費が月3万円なら、ACOSが10ポイント下がっても上限は2万円に届きません。広告費が小さい段階で月額数万円の代行を入れると、計算上は手元が減る。個人・小規模で代行が「高く感じる」正体はここにあります。
自分の時間の値段も足す
上限にはもう1つ足すものがあります。自分で運用している時間です。検索用語の確認、除外キーワードの追加、入札の調整、月末の記録で、小規模でも月に6〜10時間ほどはかかります。
仮に月8時間、時給を2,000円と置けば月16,000円です。代行に出してその時間を仕入れや商品開発に回せるなら、上の上限にこの金額を足して考えてよい。逆に、空いた時間の使い道が決まっていないなら、足さずに判断してください。時間の比べ方は自分で運用するか代行に頼むかに詳しく書いています。
小さく頼む3つの形
上限が月1〜3万円の水準なら、実作業をすべて任せる形は合わないことが多い。任せる範囲を絞ると、同じ上限の中で頼める内容が変わります。
| 形 | 任せる範囲 | 自社に残る作業 | 費用の出方 | 向く状況 |
|---|---|---|---|---|
| 設計だけ単発で頼む | 今のキャンペーンの棚卸しと組み直し、除外キーワードの初期設定 | 週次の確認と調整 | 1回だけ。月額はかからない | 広告費が小さい。週1時間は自分で見られる |
| 月1回の点検と指示 | 月1回のレポート確認と、次の1か月にやることの指示 | 指示に沿った設定変更 | 月額。実作業を含まない分軽い | 手は動かせるが、判断の基準が無い |
| 実作業ごと任せる | 週次の除外・入札・予算の調整と月次報告 | 在庫・価格・商品ページの判断 | 月額または広告費連動 | 広告費が育ってきた。時間が取れない |
広告費が小さいうちは、上の2つから始めるのが計算に合います。 設計だけを外に出し、日々の運用は決めた型どおりに自分で回す。キャンペーンの分け方はキャンペーン構造の作り方、週次で触る除外の基準は除外キーワードの決め方にまとめてあるので、設計を受け取ったあとの運用の参考にしてください。任せる作業と自社に残す作業の線引きは広告運用を外注するときの範囲の決め方に詳しく書いています。
期間を区切って頼む
形とは別に、期間を区切る頼み方もあります。たとえば3か月だけ実作業ごと任せ、その間に週次の手順を文書にしてもらい、4か月目から自分で回す。費用は期間分だけで済み、手元に運用の型が残ります。
この頼み方をするなら、最初の打ち合わせで「3か月後に自社で回せる状態にしたい」と伝えてください。報告に手順と判断の理由を書いてもらう必要があるからです。最低契約期間が3か月より長い場合は、この形が取れるかを見積もりの段階で確かめます。
依頼の前にそろえる数字と情報
小規模の相談で話が進まない原因の多くは、数字が手元に無いことです。次をそろえてから問い合わせると、1回目の面談で見積もりと進め方まで話を進められます。
| そろえるもの | なぜ要るか | 無い場合の代わり |
|---|---|---|
| 直近3か月の広告費・広告経由売上・ACOS | 今の状態と改善の余地を見るため | 広告の管理画面の画面写しでもよい |
| 商品ごとの粗利率 | 目標ACOSと代行費用の上限を決めるため | 売価・原価・手数料の3つが分かれば計算できる |
| 全体の売上と、広告以外の売上 | 広告に頼りすぎていないかを見るため | ビジネスレポートの月次の数字 |
| 在庫の残り日数と次の入荷予定 | 広告を強める時期を決めるため | 今の在庫数と、1日あたりの販売数 |
| 払える月額の上限 | 任せる範囲を決めるため | 上の表で出した「上限」の数字 |
| 自分が週に使える時間 | 自社に残す作業を決めるため | 「週1時間」「月2時間」などの見込み |
数字がまだそろわない段階でも、何に困っているかがはっきりしていれば話はできます。準備の仕方は個人・小規模での相談の準備にまとめました。どこから手をつけるか自体が分からない場合は、無料の運用診断(8問)で広告・商品ページ・在庫のどこが弱いかを先に確かめられます。
見積もり・面談で聞くこと
個人・小規模の場合は、一般的な確認項目に加えて、最低料金と契約期間を先に聞いてください。ここが合わなければ、他の条件を比べても意味がないからです。
- 最低料金はあるか。広告費がいくらを下回るとそこに張り付くか
- 最低契約期間は何か月か。途中でやめる場合の条件はどうなっているか
- 設計だけ・点検だけの依頼を受けているか
- 実際に画面を触るのは誰か。担当者は途中で変わるか
- 報告の頻度と形式。「やったこと・結果・次にやること」が書かれるか
- アカウントの権限をどう付与するか。ログイン情報の共有を求められないか
- 解約したあと、キャンペーンの設定や除外キーワードの一覧は手元に残るか
聞いた答えは1枚の表に並べてください。見積もりの型が違う場合の並べ方は代理店の選び方と見積もりで聞く質問に書いています。
合わなかったときの次の手
面談の結果、最低料金が上限を超えていたら、無理に契約せず次のどれかを選びます。
- 設計だけを単発で頼み、運用は自分で回す
- 自分で回す型を先に作り、広告費が育ってから改めて相談する
- 広告より先に、商品ページや在庫の問題を片付ける
上の表の条件なら、広告費が月15万円の水準に育てば、上限も月8万円台まで上がる計算です。今は合わなくても、数か月後に同じ会社に相談し直すのは普通のことです。
個人・小規模の依頼で起きやすい失敗
最後に、規模が小さいときに特に起きやすい失敗を挙げます。どれも契約の前に防げるものです。
- 上限を決めずに契約する。 代行費用が広告の利益の増加分を上回り、売上は伸びたのに手元が減る
- 商品ページが弱いまま広告だけを任せる。 クリックは増えても購入率が上がらず、ACOSが下がらない
- 在庫切れを共有しない。 広告が止まり、代行側は理由が分からないまま入札を上げてしまう
- ログイン情報をそのまま渡す。 支払いや出品の設定まで触れる状態になり、解約時の引き揚げも面倒になる
- 報告を読まない。 月額を払っているのに何が変わったか分からず、3か月後に続けるかどうかの判断がつかない
権限と引き渡しで揉めた例は運用代行でよくある失敗例に詳しくまとめました。
当社は2019年からAmazonの支援をしていて、30ブランド・300商品ほどを見てきました。小規模の方の相談でも、まず粗利率と在庫の状態を確認し、上の計算で払える上限を出してから範囲を決めています。プランの範囲と金額は料金ページに公開しています。
よくある質問
広告費が月3万円ほどでも相談してよいですか。 相談して構いません。ただしこの規模だと、上の計算で出る代行費用の上限は月2万円に届かないことが多く、実作業をすべて任せる形は合いにくいです。設計だけの単発依頼や、月1回の点検と指示の形で始め、広告費が育ってから範囲を広げるほうが計算に合います。
個人事業主だと、契約や支払いで不利になりますか。 名義が個人かどうかより、契約書で範囲・期間・解約条件を決められるかが大事です。請求書払いになることが多いので、事業用の口座から支払えるようにしておくと経費の整理も楽になります。契約書を交わさずに始めようとする相手は、規模にかかわらず避けてください。
代行に頼んだら、自分は何もしなくてよいですか。 広告の設定変更は任せられても、在庫・価格・商品ページの判断は自社に残ります。月に1回は報告を読み、在庫の残り日数と価格変更の予定を伝える時間を取ってください。これが無いと、在庫切れの直前に広告費を増やすといった食い違いが起きます。
知り合いのフリーランスに頼むのはどうですか。 選択肢として問題はありません。会社に頼む場合と同じく、作業の範囲、報告の形式、権限の付与方法、やめたときに残るものを文面にしておいてください。知り合いほど口約束になりやすく、やめるときに設定の中身が分からなくなりがちだからです。
まとめ
- 個人・小規模でもAmazon広告の代行は頼める。分かれ目は名義ではなく、最低料金と自社の上限が噛み合うか
- 頼む前に、粗利率・在庫・商品ページの3つをそろえる
- 代行費用の上限は「改善後の広告の利益−今の広告の利益」。控えめな改善幅で出す
- 上限は広告費にほぼ比例する。広告費が小さいうちは、実作業ごと任せる形は計算に合いにくい
- 設計だけ・月1回の点検・期間を区切る、の形で範囲を絞る
- 面談では最低料金と最低契約期間を先に聞き、権限と解約後に残るものを確かめる
まずは自社の粗利率と直近3か月の広告の数字を出し、上の表を自社の数字で作り直してください。どこから手をつけるか迷う場合は無料の運用診断から、個別に話したい場合はお問い合わせからどうぞ。
