Amazonの売上が伸びてくると、どこかで手が回らなくなります。広告の調整、商品ページの更新、在庫の補充、問い合わせの対応。全部を社内でやるか、全部を外に出すか、という二択で考えがちですが、実際にはその間で線を引く会社がほとんどです。

Amazon運用 内製 外注の判断で失敗しやすいのは、「高いか安いか」だけで決めることです。外注費を削って内製にしたら担当者が辞めて何も分からなくなった。逆に丸ごと外注したら、自社に数字を読める人がいなくなって、外注先の提案が良いのか悪いのか判断できなくなった。どちらもよく聞く話です。

この記事では、Amazon運用の業務を12に分け、どこまでを自社で持つかを決める基準と、規模別の分け方の型、仮の条件での費用の比べ方をまとめます。外注先の選び方そのものはAmazon運用の外注先の選び方に、外注から自社に戻すときの手順はAmazon運用の内製化に書いているので、ここでは「線をどこに引くか」に絞ります。

Amazon運用の業務を12に分ける

線を引く前に、仕事を分解します。「運用」とひとまとめにしていると、何を任せて何を残すかが決められません。

区分業務頻度の目安必要な力
方針1. 売上・利益の目標設定四半期事業判断
方針2. 価格の決定・改定月〜随時事業判断・数字
方針3. 新商品の選定・仕入れ判断随時事業判断・調査
集客4. 広告の設計(キャンペーン構成)立ち上げ時・四半期専門知識
集客5. 広告の日々の調整(入札・除外)週専門知識・時間
集客6. キーワード調査立ち上げ時・四半期専門知識・ツール
商品ページ7. 商品名・箇条書き・説明文立ち上げ時・随時文章・知識
商品ページ8. 画像・A+の制作立ち上げ時・随時制作技術
在庫9. 発注・FBA納品週〜月数字・現場
在庫10. 在庫数・保管料の管理週数字
顧客11. 問い合わせ・レビュー対応毎日商品知識
数字12. 月次の振り返り(売上・広告・在庫)月数字・事業判断

この12項目を、1つずつ「内製」「外注」「共同(外注先が作業し、自社が判断)」のどれにするかを決めていきます。

判断の基準は3つ

各業務を仕分けるとき、次の3つの問いを順に当てはめます。

基準1:その判断は、事業の方向を決めるか

価格・新商品・目標の3つ(業務1〜3)は、事業そのものの判断です。ここは外注しても、最終の判断は自社に残します。外注先に提案を頼むのは構いませんが、決めるのは自社です。外注先が価格や仕入れまで決める状態になると、外注先が替わった瞬間に方針も失われます。

基準2:その仕事は、専門知識と作業時間のどちらが重いか

広告の日々の調整(業務5)は、専門知識に加えて毎週の作業時間がかかります。画像制作(業務8)は、専門の技術がないと質が出ません。こうした専門性が高く、社内で育てるのに時間がかかる仕事ほど、外注の効果が大きくなります。

逆に、問い合わせ対応(業務11)は商品知識が中心で、社内の人がいちばん詳しい仕事です。外注すると回答の質が落ちやすく、内製に向きます。

基準3:その仕事は、止まったときの被害が大きいか

発注・FBA納品(業務9)が止まると、欠品で売上と検索順位を同時に失います。止まったときの被害が大きい仕事は、担当者が1人だけの状態を避けます。内製にするなら2人で回せるように手順を残し、外注するなら自社側でも状況が見える仕組みにします。

3つの基準を当てはめると、多くの会社で次のような仕分けになります。

業務おすすめの持ち方理由
1〜3 方針(目標・価格・新商品)内製(判断は自社)事業の方向を決める
4 広告の設計外注または共同専門知識が重い
5 広告の日々の調整外注または共同専門知識と時間の両方が重い
6 キーワード調査外注または共同ツールと知識が要る
7 商品名・箇条書き・説明文共同知識は外、商品の事実は自社
8 画像・A+外注制作技術が要る
9〜10 在庫・発注内製止まると被害が大きい。現場に近い
11 問い合わせ・レビュー内製商品知識が中心
12 月次の振り返り共同数字は外注先が出し、判断は自社

これは出発点の例です。社内に広告の経験者がいるなら業務4〜6は内製で構いませんし、倉庫を持たない会社なら業務9を物流の外注先に任せることもあります。

規模別の分け方の型

同じ12項目でも、売上規模と社内の人数で合う分け方が変わります。

型A:担当者が兼務で1人(立ち上げ期・月商が小さい段階)

時間がいちばん足りない段階です。方針・在庫・問い合わせは自社で持ち、広告の設計と商品ページの初期制作だけを単発で外注するのが現実的です。月額の運用代行を入れる前に、まず土台を一度きちんと作ってもらい、日々の調整は自社で回します。

型B:専任が1人いる(売上が伸び始めた段階)

専任者は在庫・問い合わせ・月次の振り返りに時間を使い、広告の日々の調整を外注します。外注先から毎月の報告を受け、専任者が判断する形です。この段階では、専任者が数字を読めるように育てることを外注の目的に含めると、将来の選択肢が広がります。

型C:チームがある(複数商品・複数モール)

広告も商品ページも社内で回せる人がいる段階です。外注は、社内の手が足りない部分や、第三者の視点での点検に絞ります。四半期ごとの診断やコンサルティングの形で外の目を入れる会社が多くなります。

規模別の頼み方は中小企業でのAmazon運営代行の使い方でも扱っています。

内製と外注の年間費用を比べる

費用を比べるときは、外注費と「社内で持った場合の人件費」を同じ物差しにそろえます。計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。実際の水準を示すものではありません。

  • 広告の日々の調整と月次レポートにかかる時間を、月20時間と仮定
  • 社内の担当者の人件費(社会保険などを含む)を1時間あたり3,000円と仮定
  • 外注費を月額80,000円と仮定
  • 社内で持つ場合、最初の6か月は慣れるまで月30時間かかり、成果が出るまでの試行錯誤があると仮定
項目(仮定)内製外注
1年目の作業時間6か月×30時間+6か月×20時間=300時間自社の確認に月4時間×12=48時間
1年目の人件費300時間×3,000円=900,000円48時間×3,000円=144,000円
外注費0円80,000円×12=960,000円
1年目の合計900,000円1,104,000円
2年目の合計(慣れた後)240時間×3,000円=720,000円1,104,000円

この仮定では、金額だけなら内製のほうが軽く見えます。ただし、この表には入っていない費用があります。

  • 学ぶまでの損失:慣れない間の入札や除外の判断ミスで、広告費が余分にかかる分
  • 担当者が抜けたときの損失:退職や異動で引き継ぎが途切れた期間の売上
  • 担当者の時間の使い道:その300時間を、新商品の準備や仕入れ交渉に使えた場合の価値

逆に外注側にも、外注先の担当替えで質が落ちる、自社にノウハウが残らない、という見えにくい費用があります。金額の差が小さいときは、どちらの見えにくい費用が自社にとって重いかで決めてください。広告の代行費用の型は広告運用代行の費用、利益への影響は利益シミュレーターで自社の数字に置き換えられます。

外注しても自社に残す仕事

どこまで外注するにしても、次の4つは自社に残してください。これを手放すと、外注先を評価することも、替えることもできなくなります。

  1. アカウントの権限:セラーセントラルと広告のアカウントの所有者は自社のまま。外注先にはユーザー権限を発行し、終了時に取り消せるようにします
  2. 目標と判断:目標ACOSや利益の目標、価格の最終決定は自社が持ちます
  3. 数字を読む時間:月に一度、売上・広告費・在庫を自分の目で見る時間を取ります。外注先のレポートだけでなく、セラーセントラルの画面を直接開きます
  4. 記録:何をいつ変えたか、外注先に何を頼んだかを自社側にも残します。外注先が替わっても続きから始められるようにします

契約の段階で確認すべき点は運用代行の契約で確認することにまとめています。

線引きでよくある失敗

  • 「全部お任せ」で始める。範囲が曖昧なまま始めると、在庫や価格の判断まで外注先が行うか、逆に誰もやらない業務が出ます。12項目のどれを頼むかを書面にしてください
  • 共同の業務で、判断者を決めない。商品ページの修正案を外注先が出したのに、社内で誰も承認しないまま止まる、という状態がよく起きます。共同の業務は「誰が作り、誰がいつまでに決めるか」をセットで決めます
  • 外注費を削るために、方針の仕事まで外注先に寄せる。短期的には楽ですが、外注先が替わったときに方針も失われます
  • 内製にしたのに手順を残さない。担当者1人の頭の中にしかない状態は、外注よりも危うい状態です

線引きを見直すタイミング

一度決めた線引きは、状況が変われば見直します。目安は次のとおりです。

きっかけ見直す方向
社内に専任者が入った広告の日々の調整や月次の振り返りを、共同から内製へ寄せる
商品数・モール数が増えた在庫や商品ページの作業の一部を外注へ寄せる
外注先の報告を読んでも判断できない共同の業務を増やし、自社で数字を読む時間を確保する
担当者が退職・異動する止まると被害の大きい業務から手順を文書化し、必要なら一時的に外注する
広告の成果が半年以上横ばい第三者の点検を入れ、設計から見直す

見直しは半年に一度、12項目の表を開いて「今の持ち方」と「理想の持ち方」を並べるだけでも十分です。ずれている項目から1つずつ動かしてください。

よくある質問

最初から全部を外注してはいけませんか。 いけないわけではありません。社内に担当者がまったくいない段階では、全部を任せるほうが早く立ち上がることもあります。その場合でも、アカウントの所有権・目標の決定・月に一度の数字の確認の3つは自社に残してください。これが残っていれば、後から一部を内製に戻すことも、外注先を替えることもできます。

内製にしたいのですが、何から始めればよいですか。 止まったときの被害が大きく、商品知識が中心の業務から始めます。多くの場合は在庫・発注と問い合わせ対応です。広告は専門性が高いので、しばらくは外注か共同にしたまま、外注先の報告を読み込むことで社内の理解を育てるのが近道です。いきなり広告を内製に切り替えると、慣れるまでの間に広告費を余分に使いがちです。

外注先に「共同」で頼むと、費用は安くなりますか。 作業範囲が狭くなるぶん、月額が下がることはあります。ただし、自社側で判断や承認をする時間が必要になるので、社内の時間も含めて比べてください。共同の形は、費用を下げる目的より、自社にノウハウを残しながら外の知識を使う目的で選ぶと、期待とのずれが起きにくくなります。

12項目のうち、どれを外注するのが効果的ですか。 社内で育てるのに時間がかかり、成果に直結しやすいのは広告の設計と日々の調整、そして画像の制作です。ただし、商品ページや価格に問題がある状態で広告だけを外注しても、成果は伸びにくくなります。どこが弱いかが分からない場合は、先に全体を点検してから外注する範囲を決めてください。

まとめ

  • 内製か外注かの二択ではなく、業務を12に分けて「内製・外注・共同」を1つずつ決める
  • 基準は3つ。事業の方向を決める判断は自社、専門性と時間が重い仕事は外注、止まると被害の大きい仕事は担当1人にしない
  • 規模によって型が変わる。兼務1人なら単発外注、専任1人なら広告を外注、チームがあるなら点検だけ外注
  • 費用は外注費と社内の人件費を同じ物差しで比べ、学ぶまでの損失や引き継ぎの損失も考える
  • どこまで外注しても、アカウントの所有権・目標と判断・数字を読む時間・記録の4つは自社に残す
  • 半年に一度、12項目の今の持ち方と理想を並べて見直す

まずは12項目の表を自社用に写し、今それぞれを誰が持っているかを書き出してみてください。空欄や担当1人の項目が、最初に手を付ける場所です。どこを任せるべきか判断がつかない場合は、無料の運用診断で弱い部分を整理できます。広告だけを任せたい場合はAmazon広告運用代行、運用全体ならAmazon運用代行、自社で回す力を付けたい場合はAmazonコンサルティングをご覧ください。料金は料金ページにまとめています。