発注数を決めるとき、「先月はこれくらい売れたから」と直近1か月の数字をそのまま使っていないでしょうか。Amazonの販売予測でいちばん多い失敗は、過去データを加工せずに使うことです。在庫切れの期間、セールの日、広告を急に増やした週がそのまま混ざると、予測は実力より低くも高くもなります。

販売予測が外れると、在庫切れで検索順位を落とすか、売れ残りで保管料を払い続けるかのどちらかになります。どちらも利益を削ります。

この記事では、セラーセントラルのビジネスレポートから取れる過去データを使って、週販の基準値を出し、季節と施策を上乗せし、ずれを週次で直すところまでを順番に書きます。表計算ソフトが1つあれば回せる内容です。

Amazonの販売予測に使う過去データはどこから取るか

材料はセラーセントラルの「ビジネスレポート」にある、日別・ASIN別の注文商品数です。あわせて次の3つを同じ表に並べておきます。

  • 注文商品数(その日に売れた個数)
  • セッション数(ページが見られた回数)
  • その日の在庫の有無(在庫切れ・納品待ちで販売できなかった日に印を付ける)

期間は最低でも直近12週、季節の影響がある商品なら前年の同じ時期も取ります。月単位ではなく週単位で集計するのがおすすめです。月は日数も曜日の並びも違うため、比べにくいからです。

セッション数を並べる理由は、売れ方の変化が「見られる数」の変化なのか「買われる率」の変化なのかを後で切り分けるためです。販売予測そのものには使いませんが、予測が外れたときの原因探しで役に立ちます。

過去データから外す日と、補正のしかた

過去データをそのまま平均すると、次のような日が予測をゆがめます。

外す・補正する日理由扱い方
在庫切れ・販売停止の日売れなかったのは需要がないからではないその日を除き、販売できた日数で割る
大型セール・タイムセールの日平常時の数倍売れることがある平常の予測からは除き、別枠で持つ
広告予算を大きく変えた週露出が変わり売れ方が変わる変更後の週だけを使う
価格を大きく変えた週購入率が変わる変更後の週だけを使う
まとめ買い・法人の大口注文1回きりで再現しない1件で平常の数日分ある注文は除く

特に大事なのが在庫切れの補正です。たとえば1週間のうち2日在庫が切れていて、残り5日で40個売れたなら、その週の実力は40個ではありません。

在庫切れを補正した週販 = 販売できた日の販売数 ÷ 販売できた日数 × 7
= 40 ÷ 5 × 7 = 56個

ただし、在庫切れ明けは検索順位が落ちていて売れ方が鈍ることがあります。切れた直後の1〜2週間は補正後の数字でも低めに出るので、その週は参考程度にとどめてください。在庫切れが順位に与える影響は在庫切れの発注基準に書いています。

週販の基準値を出す手順

補正した週次データから、予測の土台になる「基準値」を出します。手順は4つです。

  1. 直近8〜12週の週販を並べる(上の表で外した週は空欄にする)
  2. 中央値を取る。平均より、1週だけ極端に多い・少ない週に引きずられにくい
  3. 直近4週と比べる。直近4週の平均が中央値より15%以上高い(低い)なら、売れ方が変わってきていると見て、直近4週寄りに置く
  4. その数字を「基準週販」として固定する。毎週この数字を見直すのではなく、見直すタイミングは後で決める

計算例を置きます。仮に、補正後の直近8週の週販が次のようだったとします。

週週販(補正後)
1週目48個
2週目52個
3週目55個
4週目50個
5週目(セール週のため除外)
6週目58個
7週目60個
8週目62個

7週分の中央値は55個、直近4週(4・6・7・8週目)の平均は57.5個です。差は5%弱なので、基準週販は55個前後に置けば十分です。もし直近4週が65個を超えていれば、売れ方が上向いていると見て60個台に寄せます。

季節とセール・施策の上乗せを足す

基準週販は「平常時の今の実力」です。先の週を予測するには、ここに季節と施策の影響を足します。

季節係数を掛ける

前年のデータがあるなら、月ごとの季節係数を出します。

季節係数 = その月の週販 ÷ 1年間の平均週販

前年の12月の週販が年平均の1.4倍なら、12月の季節係数は1.4です。今年の12月の予測は「基準週販 × 1.4」になります。前年のデータが無い場合は、同じカテゴリーの類似商品の売れ方や、検索数の月ごとの増減を代わりに使います。季節商品の在庫の積み方は季節商品の在庫計画で詳しく扱っています。

セール・広告の上乗せは別枠で持つ

大型セールや広告の増額は、平常の予測とは別の行で持ちます。混ぜると、セールが終わったあとも予測が高いままになり、在庫が余るからです。

  • 前年に同じセールに参加していれば、そのときの「セール期間の販売数 ÷ 平常週販」を倍率として使う
  • 初めて参加するなら、倍率を高く置きすぎない。仮に平常の2倍と置き、足りなければ追加で納品できる段取りを先に作る

最後に楽観・基準・悲観の3本で持つ

販売予測は1つの数字で決めると、外れたときに打つ手がありません。3本の幅で持っておくと、発注の判断がしやすくなります。

見込み置き方の例使いどころ
楽観基準の1.2倍追加発注の段取りを考えるとき
基準基準週販 × 季節係数通常の発注数を決めるとき
悲観基準の0.8倍在庫が余ったときの保管料を見積もるとき

倍率は仮の置き方です。過去の予測と実績のずれが大きい商品ほど、幅を広げてください。発注は基準で決め、楽観側に振れたときのために安全在庫を持つ、という考え方です。安全在庫の具体的な計算は安全在庫の計算にまとめています。

基準週販とリードタイムを入れると発注点と発注数が出る発注計算ツールも用意しています。予測を出したら、そのまま数字を入れて確かめてみてください。

新商品で過去データが無いときの予測

発売前や発売直後は、自社の過去データがありません。この場合は次の順で仮の予測を置きます。

  1. 競合の販売数を推定する。同じ検索語で上位に出ている商品の販売数の推定値を集める
  2. 自社の取り分を低めに置く。レビューも実績も無いので、上位商品の2〜3割程度から始める(仮の置き方)
  3. 発売後4週で自社データに置き換える。4週分たまったら、推定値ではなく実績で基準週販を出し直す

新商品は予測が外れやすいので、初回の発注数を絞り、追加発注で調整するほうが結果的に安くつくことが多いです。立ち上げ期の進め方は新商品の立ち上げ90日を参考にしてください。

予測と実績のずれを週次で直す

予測は作って終わりではありません。毎週1回、予測と実績を並べてずれ率を見ます。

ずれ率 = (実績 − 予測)÷ 予測 × 100

見直しの基準は次のように決めておくと迷いません。

  • ずれ率が±15%以内:何もしない。振れの範囲
  • 同じ方向に±15%を超える週が2週続いた:基準週販を直近4週で出し直す
  • 1週だけ±30%を超えた:原因(在庫切れ、競合のセール、自社の価格変更など)を確認し、一時的なものなら基準は変えない

ずれの原因を探すときに、最初に並べたセッション数が効きます。セッションが減っているなら検索順位か広告の問題、セッションは変わらず注文だけ減っているなら価格や競合の問題、と切り分けられます。

よくある質問

販売予測は月1回の見直しでは足りませんか。 在庫の回転が速い商品では足りないことが多いです。月1回だと、売れ方が変わってから気付くまでに最大で1か月かかり、その間に在庫切れか過剰在庫が進みます。予測そのものを毎週作り直す必要はありませんが、実績とのずれ率だけは週1回確認し、基準を超えたときだけ出し直す運用が負担も小さく済みます。

表計算ソフトで足りますか。専用の予測ツールが必要ですか。 商品数が数十程度までなら、表計算ソフトで十分回せます。大事なのはツールよりも、在庫切れの日やセールの日を外すといったデータの下ごしらえです。ここを飛ばすと、どんな予測ツールでも外れます。商品数が増えて週次の更新が負担になってきたら、ツールを検討する順番で問題ありません。

前年のデータが無い商品の季節係数はどう置けばいいですか。 同じカテゴリーで前年から売っている類似商品があれば、その商品の月ごとの売れ方を借ります。それも無い場合は、狙っている検索語の月ごとの検索数の増減を目安にします。どちらも自社の実績ではないので、季節の山に入る前に追加発注できる段取りを作っておき、実績を見て積み増す形にしてください。

まとめ

  • Amazonの販売予測は、ビジネスレポートの日別・ASIN別の注文商品数を週単位で集計して作る
  • 在庫切れの日、セールの日、広告や価格を大きく変えた週は外すか補正する
  • 基準週販は直近8〜12週の中央値を取り、直近4週と比べて調整する
  • 季節係数を掛け、セールや広告の上乗せは別枠で持つ
  • 予測は楽観・基準・悲観の3本で持ち、発注は基準で決める
  • ずれ率を週1回見て、同じ方向に15%超が2週続いたら出し直す

まずは主力商品1つで、直近12週の週販を在庫切れ補正つきで並べてみてください。発注点まで一気に確かめたい場合は発注計算ツール、在庫と発注の回し方をまとめて見直したい場合はAmazon運用代行の内容も参考になります。