在庫が増えてくると、置き場所の悩みが出てきます。全部をFBAに入れておくか、一部を自社や外部の倉庫に残すか。楽天や自社ECでも売っているなら、なおさら判断が難しくなります。
Amazon 在庫 分散の判断は、「保管料が安いほう」だけで決めると後から崩れます。倉庫を分けると、保管料は下がっても、倉庫間の移動費・二重の管理の手間・欠品のリスクが増えるからです。逆に全部を1か所に集めると管理は楽ですが、保管料の上限や長期保管の負担をまともに受けます。
この記事では、置き場の選択肢を3つに分け、費用を1個あたりに直して比べる方法と、分散が向く条件・向かない条件を整理します。数字はすべて仮の条件です。保管料や配送料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数に置き換えて読んでください。
在庫の置き場は3つ。それぞれの役割
まず、置き場の選択肢を並べます。
| 置き場 | 主な役割 | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| FBA(Amazonの倉庫) | Amazonで売る分の保管と出荷 | 配送が早く、カートを取りやすい。出荷作業が不要 | 保管料が時期で変わる。長期在庫に負担が出る。保管数に上限がかかることがある |
| 自社倉庫・事務所 | 予備在庫、他モールや自社ECの出荷 | 保管の追加費用が小さい。すぐ手に取れる | 出荷の人手がいる。場所に限りがある |
| 外部倉庫(物流代行) | 予備在庫、複数モールの出荷 | 量が増えても対応できる。出荷を任せられる | 月額・入出庫の費用が別にかかる。契約条件の確認が要る |
ここで言う「分散」は、同じ商品の在庫をこの3つのうち2か所以上に分けて持つことです。「集約」は、1か所(多くはFBA)にまとめることです。
判断の前提として、FBAの保管数や納品先の倉庫はAmazon側の条件で決まる部分があります。在庫の上限や納品の手順は変更されることがあるので、現在の条件はセラーセントラルで確認してください。FBAそのものの使い分けはFBAとFBMの使い分けにまとめています。
費用は1個あたりに直して比べる
置き場を比べるとき、月の保管料の合計だけを見ると判断を誤ります。1個を売り切るまでにかかる費用を、置き場ごとに1個あたりで出すと比較になります。
1個あたりで見る費用は次の4つです。
- 保管の費用:1個あたりの月の保管料 × 売れるまでの月数
- 移動の費用:自社・外部倉庫からFBAへ送り直す送料と作業費
- 出荷の費用:自社出荷なら梱包材・送料・人手、FBAなら配送代行手数料
- 欠品の損失:FBA側の在庫が切れた期間に失う利益
仮の条件で並べてみる
計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。実際の水準を示すものではありません。
- 商品は小型で、1個あたりの粗利は800円
- 月の販売数は300個、手元の在庫は1,800個(6か月分)
- FBAの保管料を1個あたり月15円、外部倉庫を1個あたり月6円と仮定
- 外部倉庫からFBAへの送り直しは1個あたり25円と仮定
全部をFBAに入れた場合と、FBAに2か月分・外部倉庫に4か月分を置いて毎月補充する場合を比べます。
| 項目(仮定・全1,800個の平均) | 全部FBA | FBA 2か月分+外部倉庫 4か月分 |
|---|---|---|
| 平均の保管期間 | FBAで約3か月 | FBAで約1か月。外部倉庫の1,200個は約2.5か月 |
| FBAの保管費用 | 約45円 | 約15円 |
| 外部倉庫の保管費用 | 0円 | 約10円(1,200個×2.5か月×6円÷1,800個) |
| 移動の費用 | 0円 | 約17円(1,200個×25円÷1,800個) |
| 合計(1個あたり) | 約45円 | 約42円 |
この仮定では、分散しても1個あたりの差は約3円、6か月で合計5,400円ほどです。保管料の差を、送り直しの費用がほぼ食べてしまうからです。ここに補充の作業時間を足すと、差はさらに縮みます。分散が得になるのは、保管料の差が移動の費用よりはっきり大きいときに限られます。
条件を変えると結果は逆になります。たとえば在庫が12か月分あり、FBAの保管料が高くなる時期をまたぐなら、FBAに置く期間を短くする効果が大きくなります。自社の数字は発注・在庫シミュレーターで何か月分あるかを出してから当てはめてください。
分散が向く条件、集約が向く条件
費用の比較に加えて、運用の条件でも向き不向きが分かれます。
分散が向くのは、次のどれかに当てはまるときです。
- 在庫が6か月分以上あり、FBAに全部入れると長期保管の負担が出る
- 楽天・自社ECなど他の販売先でも同じ商品を売っている
- 季節商品で、ピーク前に一度に仕入れる必要がある
- FBAの保管数の上限で、全量を入れられない
集約(FBA中心)が向くのは、次のようなときです。
- 在庫の回転が早く、2〜3か月で売り切れる
- 出荷や補充を担当できる人手が社内にない
- SKU数が多く、倉庫ごとの在庫を追う手間が大きい
- 過去に、補充の遅れでFBA側が欠品したことがある
最後の項目は軽く見ないでください。分散で節約した保管料より、欠品で失った販売と検索順位のほうが大きくなることはよくあります。欠品が検索順位に響く仕組みは在庫切れの対処で扱っています。
分散するときの運用の組み方
分散を選んだら、次の順で運用を固めます。
- FBAに置く量の基準を決める。「FBA在庫が何日分を切ったら補充するか」を数字で決めます。目安は、補充の発送から受領までの日数に、安全のための日数を足した分です
- 補充の単位と曜日を決める。毎週決まった曜日に、決まった単位で送ると、作業が属人化しにくくなります
- 倉庫ごとの在庫を1枚の表で見る。FBA・外部倉庫・自社の在庫を同じ表に並べ、合計の在庫月数と、FBA側の残り日数を毎週確認します
- 他の販売先の引当を決める。楽天や自社ECの注文を、どの倉庫から出すかを決めておきます。Amazonの在庫を他の販売先の出荷に使う場合は、マルチチャネルの条件と費用を確認します
補充の基準日数の考え方は安全在庫の計算と在庫切れを防ぐ発注基準に、他の販売先との在庫の分け方はマルチチャネルの使い方にまとめています。
よくある失敗
- FBA側を薄くしすぎる。保管料を気にして1か月分以下にすると、補充が1回遅れただけで欠品します
- 外部倉庫の最低料金を見落とす。量が少ないうちは、月額の最低料金で1個あたりの費用がFBAより高くなることがあります
- 倉庫ごとの在庫を別々の画面で見る。合計が見えないまま発注すると、過剰在庫と欠品が同時に起きます
- ラベルや梱包の仕様をそろえない。外部倉庫からFBAへ送るときに、ラベルの貼り替えや梱包のやり直しが発生し、移動の費用が膨らみます
集約に戻す判断の目安
分散は一度決めたら終わりではありません。次のどれかが続いたら、集約に戻すことを検討します。
| サイン | 見る数字 | 戻す目安(仮の例) |
|---|---|---|
| 回転が早くなった | 在庫月数 | 合計の在庫が3か月分を切る状態が続く |
| 補充が追いつかない | FBA側の欠品日数 | 月に数日以上の欠品が2か月続く |
| 手間が費用に見合わない | 補充作業の時間 | 節約できる保管料を、作業時間の人件費が上回る |
| 他の販売先が縮小した | 他モールの販売比率 | 他の販売先の比率が小さくなり、別倉庫の意味が薄れた |
目安の数字は仮の例です。自社の粗利と人件費で置き換えてください。判断は四半期に一度、保管料が変わる時期の前に見直すと、次の繁忙期に間に合います。保管料そのものを下げる方法は在庫保管料の削減に書いています。
よくある質問
全部をFBAに入れると、保管料以外に困ることはありますか。 在庫が売れ残ったときの負担が大きくなります。長期間売れない在庫には追加の費用がかかる場合があり、返送や処分にも手数料がかかります。売れる量の見込みに自信がない新商品は、最初から全量を入れず、2〜3か月分をFBAに置いて残りは手元に残すほうが、読み違えたときの傷が浅く済みます。
外部倉庫を選ぶとき、何を確認すればよいですか。 月額の最低料金、入庫と出庫の1個あたりの費用、FBAへの納品作業に対応しているか、の3つをまず確認してください。FBAへの納品は、ラベル貼りや梱包の条件が細かいため、対応していない倉庫だと自社で作業をやり直すことになります。見積もりは、自社の月の入出庫数を伝えて1個あたりに直してもらうと比べやすくなります。
分散と集約を、商品ごとに分けてもよいですか。 分けて構いません。むしろ全商品を同じ方針にするより現実的です。回転の早い主力はFBAに集約し、回転の遅い商品や季節商品だけ外部倉庫に予備を持つ、という組み方がよく使われます。その場合も、倉庫ごとの在庫を1枚の表で見ることは変わりません。
まとめ
- 分散か集約かは「保管料が安いほう」では決まらない。移動・出荷・欠品の費用まで含めて1個あたりで比べる
- 仮の条件では、保管料の差を送り直しの費用がほぼ打ち消した。分散が得になるのは差がはっきり大きいとき
- 在庫が6か月分以上、他の販売先がある、季節商品、保管上限がある、のどれかなら分散を検討する
- 回転が早い、人手がない、SKUが多い、欠品した経験があるなら、FBA中心の集約が向く
- 分散するなら、FBA側の補充基準と曜日を決め、全倉庫の在庫を1枚の表で見る
- 四半期ごとに在庫月数と欠品日数を見て、集約に戻すかを判断する
まずは主力商品について、今の在庫が何か月分あるかを出すところから始めてください。自社の置き方が合っているか判断がつかない場合は、無料の運用診断で在庫と広告の状態をまとめて確認できます。在庫管理を含めた運用の委託はAmazon運用代行で扱っています。
