FBAの請求明細を見ていて、見慣れない「在庫僅少」という項目に気づいた。在庫を持ちすぎれば保管料、絞りすぎればこの手数料。どちらに寄せても費用がかかるように見えて、発注の基準が分からなくなっている方は少なくありません。
FBA 在庫僅少手数料は、売れる速さに対して在庫が少ない状態が続いたSKUにかかる費用です。在庫を絞ったことへの罰金というより、「倉庫の回転を前提に配置した在庫が足りない」状態に対する費用と考えると分かりやすくなります。
この記事では、手数料がかかる条件の読み方、対象SKUの見つけ方、在庫日数を保つための発注点の決め方を順に書きます。手数料の対象・基準日数・金額・免除の条件は、マーケットプレイスや時期、サイズ区分で変わります。数字はすべて「仮に〜とすると」の計算例として読み、実際の基準はセラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。
在庫僅少手数料とは何か
在庫僅少手数料は、FBAに置いている在庫が、そのSKUの販売ペースに比べて少ない状態のときに、出荷1個ごとに上乗せされる費用です。Amazonの倉庫は全国に在庫を分けて置くことで配送を速くしています。在庫が少ないと分散配置ができず、遠い倉庫から出荷することになり、その分の費用を出品者に負担してもらう、という考え方です。
判断の物差しになるのは「在庫日数」です。在庫日数は、今ある在庫が今の売れ方で何日もつかを表します。
在庫日数 = 利用可能な在庫数 ÷ 1日あたりの販売数
仮に基準が28日だとすると、1日に10個売れるSKUなら、在庫が280個を下回る状態が続くと対象になりうる、という読み方になります。基準日数を短期と長期の2つの期間で見る仕組みになっていることもあるので、どちらの日数で判定されているかをセラーセントラルの説明で確かめてください。
| 項目 | 読み方 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 在庫日数 | 今の在庫が今の売れ方で何日もつか | 在庫パフォーマンス・在庫計画の画面 |
| 基準日数 | これを下回ると対象になる線 | セラーセントラルの手数料の案内 |
| 対象外の条件 | 新規SKU・販売数が少ないSKUなどが外れる場合がある | 同上(時期で変わる) |
| 請求のされ方 | 出荷1個ごとに上乗せされる | 取引明細・FBA手数料の内訳 |
保管料との関係も押さえておきます。保管料は在庫が多いほど増え、在庫僅少手数料は在庫が少ないほど発生します。つまり、ちょうどよい在庫日数の帯があって、その帯から下にはみ出すとこの手数料、上にはみ出すと保管料や長期在庫の費用がかかります。上側の管理は在庫保管料を抑える運用にまとめています。
対象になっているSKUを見つける手順
まず、どのSKUで手数料が出ているかを特定します。全体の金額を眺めても対策は決まりません。
- 取引明細またはFBA手数料のレポートを開き、直近1か月で「在庫僅少」に当たる行を抽出する
- SKUごとに件数と金額を合計し、金額の大きい順に並べる
- 上位のSKUについて、在庫パフォーマンスの画面で現在の在庫日数を確認する
- 同じSKUの過去3か月の在庫推移を見て、「ずっと少ない」のか「一時的に切れかけた」のかを分ける
4番の切り分けが大事です。原因が違うと対策が変わります。
| 状態 | よくある原因 | 対策の方向 |
|---|---|---|
| ずっと在庫日数が短い | 発注点が低すぎる。資金繰りで少量ずつ納品している | 発注点と1回の発注量を見直す |
| 一時的に切れかけた | 売れ行きの急増、納品の遅れ、受領待ちの長期化 | リードタイムの余裕を足す。納品を前倒しする |
| 納品済みなのに少ない扱い | 受領処理中・移管中で「利用可能」に入っていない | 受領までの日数を発注計算に入れる |
3つ目は見落としやすい点です。倉庫に向けて発送していても、受領されて販売可能になるまでは在庫日数に数えられないことがあります。自社の感覚では「足りているはず」でも、手数料の判定上は不足になっている状態です。
在庫日数を保つ発注点の決め方
対策の中心は、在庫日数が基準を下回る前に次の在庫が販売可能になるよう、発注のタイミングを決めることです。発注点(次の発注をかける在庫数)を数字で持っておきます。
発注点 = 1日の販売数 ×(リードタイム日数 + 受領までの日数 + 保ちたい在庫日数)
仮の条件で計算してみます。
| 項目 | 仮の値 |
|---|---|
| 1日の販売数 | 10個 |
| 仕入れから倉庫着までのリードタイム | 30日 |
| 倉庫着から販売可能までの日数 | 7日 |
| 保ちたい在庫日数(基準日数+余裕) | 35日 |
発注点は 10 ×(30 + 7 + 35)= 720個です。在庫が720個を切ったら次を発注する、という線になります。
ここで「保ちたい在庫日数」に基準日数そのものを置かないのがポイントです。仮に基準が28日なら、それに1週間ほどの余裕を足しておきます。販売数のぶれや納品の遅れで数日は簡単に削られるからです。余裕を何日にするかは、過去の販売数のばらつきから決めます。考え方は安全在庫の計算で詳しく書いています。
計算を毎回手でやると、SKUが増えたときに回らなくなります。販売数とリードタイムを入れて発注点と発注量を出す発注計算ツールも使えます。
1回の発注量も一緒に決める
発注点だけ決めても、1回に入れる量が少なければすぐ次の発注点に到達し、納品の回数が増えます。納品のたびに受領待ちが発生するので、少量多頻度は在庫日数を短く見せやすい運び方です。
1回の発注量は「次の発注までの日数 × 1日の販売数」で置きます。仮に月1回の発注なら30日分、つまり300個です。資金繰りで量を絞りたいときは、在庫僅少手数料の見込み額と、まとめて仕入れたときの資金の負担を並べて比べます。
手数料と保管料、どちらを取るかの比べ方
在庫を厚くすれば在庫僅少手数料は避けられますが、保管料が増えます。どちらが安いかはSKUごとに計算して決めます。
仮に、1個あたりの在庫僅少手数料が数十円、1個あたりの月の保管料が十数円のSKUがあるとします(金額はサイズ・時期で変わるため、自社の明細の実数に置き換えてください)。在庫を2週間分増やしたときに増える保管料と、それで避けられる手数料を月額で並べると、多くの場合は在庫を足したほうが安くなります。ただし大型で保管料の高い商品、季節の終わりが近い商品は逆になることがあります。
| 判断の材料 | 在庫を足す側に寄せる | 在庫を絞る側に寄せる |
|---|---|---|
| 1個あたりの保管料 | 小型・軽量で安い | 大型で高い |
| 販売の見通し | 安定して売れている | 季節の終わり、販売終了が近い |
| 容量制限 | 余裕がある | 上限に近い |
| 資金 | 仕入れ資金に余裕がある | 仕入れ資金が詰まっている |
容量制限に近いときは、在庫を足したくても入りません。上限の読み方はFBA容量制限の見方を参照してください。
よくある失敗
在庫切れを避けたい一心で、全SKUの在庫を一律に厚くする。 売れ行きの遅いSKUまで厚くすると、保管料と長期在庫の費用で手数料以上の出費になります。厚くするのは、手数料が実際に出ているSKUと、販売が安定しているSKUに絞ります。
基準日数ちょうどを目標にする。 目標が線の上にあると、少しのぶれで線を割ります。目標は基準より1〜2週間上に置きます。
受領までの日数を計算に入れない。 繁忙期は受領に時間がかかることがあります。セール前や年末は、受領までの日数を普段より長めに置いて発注を前倒しします。在庫切れそのものを防ぐ発注の考え方は在庫切れを防ぐ発注基準にまとめています。
よくある質問
新しく出品したばかりのSKUにもかかりますか。 新規SKUや販売数が少ないSKUは対象外になる扱いがあることがありますが、条件は時期で変わります。発売直後は在庫日数の計算がそもそも安定しないので、まずセラーセントラルの最新の案内で対象外の条件を確認し、販売が軌道に乗った時点から発注点の管理を始めてください。
自己配送に切り替えれば手数料はかかりませんか。 FBAの在庫にかかる手数料なので、自己配送で出荷した分にはかかりません。ただし配送日数や手間、カートの取りやすさが変わります。FBAと自己配送の使い分けは配送の条件全体で判断し、手数料だけで決めないほうが安全です。
一時的な在庫切れの月だけ手数料が出ました。放っておいてよいですか。 原因が一度きりの納品遅れなら、次の発注から受領までの日数に余裕を足すだけで十分です。同じことが2か月続いたら、発注点そのものが低いと判断して、1日の販売数とリードタイムを測り直してください。
まとめ
- FBA 在庫僅少手数料は、販売ペースに比べて在庫が少ない状態のSKUに出荷1個ごとにかかる
- 判断の物差しは在庫日数。基準日数と対象外の条件はセラーセントラルの最新の案内で確認する
- まず手数料が出ているSKUを金額順に並べ、「ずっと少ない」か「一時的」かを分ける
- 発注点は販売数×(リードタイム+受領日数+保ちたい在庫日数)で数字にする
- 保ちたい在庫日数は基準ちょうどではなく1〜2週間の余裕を足す
- 在庫を足すか絞るかは、保管料と手数料をSKUごとに月額で並べて決める
まずは今月の明細から、手数料の出ているSKUを3つ書き出すところから始めてください。発注の仕組みごと見直したい場合はAmazon運用代行の内容もご覧ください。
