Amazon 運用代行の見積もりを2〜3社から取ると、月額だけは並べられます。ところが契約して3か月ほどたつと、「その作業は別途お見積もりです」という返事が届き始める。月額は安かったはずなのに、年間で見ると想定より膨らんでいた、という相談は少なくありません。

原因の多くは、月額が高いか安いかではなく、月額に何が含まれているかを見積もりの段階で確かめていなかったことにあります。運用代行の仕事は、毎月同じ量が発生する作業と、ある月だけ突然発生する作業が混ざっています。後者が月額の外に置かれていると、繁忙期や新商品の投入時に請求が一気に増えます。

この記事では、別料金になりやすい作業を具体的に挙げ、見積もりの段階で範囲を書面にさせる質問、仮の条件での年額の試算、契約後の線引きの方法まで順に整理します。費用の型そのものは運用代行の費用の相場と料金の型、初期費用の内訳は初期費用は何に払うのかで詳しく扱っています。

別料金になりやすい作業10種

運用代行の月額は、多くの場合「毎月くり返す作業」を前提に組まれています。そのため、くり返さない作業・量が読めない作業・外部の手配が要る作業が別料金に回りやすくなります。

作業別料金になりやすい理由見積もりで確かめること
新規商品の登録(ASIN作成)商品数で作業量が比例して増える月に何点まで含むか。超えたときの1点あたりの単価
商品画像の制作・撮影撮影や制作は外部の手配が要る枚数の上限、修正回数、撮影費と制作費の分け方
A+(商品紹介コンテンツ)の制作画像制作と構成の両方が要る1商品あたりの単価と、既存A+の修正は含むか
動画の制作制作の手間と外注費が大きい作るかどうか自体を別契約にするか
広告キャンペーンの新規作成新商品やセールで数が増える運用中の調整と、新規作成を分けているか
大型セールの準備年に数回、短期間に作業が集中するセール前後の作業が月額に入るか
在庫ファイルによる一括更新商品数とエラー対応で手間が読めない一括更新の回数と、エラーの修正は誰がやるか
ケースの対応(出品停止・カタログ修正)発生が読めず、解決まで長引く対応時間の上限、長引いたときの扱い
定例会議・臨時のレポート回数が増えると工数が増える月の会議回数、臨時の集計の扱い
他モール・海外への展開別の運用として扱われる対象外か、別見積もりか

このうち、後から揉めやすいのは「ケースの対応」と「大型セールの準備」です。どちらも発生してから慌てて相談することになり、その時点では断りにくいからです。出品停止の対応が長引いて、月額と同じくらいの追加費用が出た、という話も聞きます。

一方、画像やA+の制作は、別料金であること自体は自然です。作る量が商品によって大きく違うので、月額に入れてしまうと、作らない月にも払い続けることになります。別料金かどうかより、単価と上限が先に決まっているかどうかを見てください。

広告費そのものは月額に入らない

念のため確認しておくと、Amazonに支払う広告費は、代行会社への月額とは別です。見積書に「広告運用込み」と書いてあっても、それは運用の作業費が含まれるという意味で、広告費そのものは別にかかります。広告費に連動して運用費が決まる型の場合、広告費を増やすと運用費も増えます。広告の費用の型はAmazon広告の運用代行の費用にまとめています。

Amazon側に払う費用も別

販売手数料、FBAの配送代行手数料、保管料、広告費、Vineなどのプログラムの費用は、代行会社ではなくAmazonに支払います。見積書に含まれることはまずありません。手数料率や保管料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。

月額に含まれる範囲を書面にさせる質問

範囲の食い違いは、口頭の説明だけで契約したときに起きます。見積もりの段階で、次の質問を投げて、答えを見積書か別紙に書いてもらいます。

  1. 「月額に含まれる作業を、回数か点数つきで一覧にしてもらえますか」 ―「運用全般」のような書き方を避け、作業ごとの上限を出してもらう
  2. 「一覧に無い作業を頼んだとき、どう見積もりますか」 ― 都度見積もりなのか、時間単価なのか、作業ごとの固定単価なのか
  3. 「上限を超えた月の扱いはどうなりますか」 ― 翌月に繰り越せるのか、超過分だけ請求なのか
  4. 「出品停止やカタログの問題が起きたら、どこまで月額で対応しますか」 ― 対応時間の上限と、長引いたときの扱い
  5. 「大型セールの前後は、追加の作業が出ますか」 ― 年に何回のセールを想定しているか
  6. 「外部に発注する作業(撮影・翻訳など)は、実費ですか、手数料が乗りますか」 ― 手配の手数料の有無
  7. 「見積もりに含まれない作業を、事前の確認なしに進めることはありますか」 ― 承認の手順

7番がいちばん大事です。 別料金の作業でも、事前に金額を示して承認を取る手順があれば、請求で驚くことはありません。手順が決まっていないと、作業が終わってから請求書で知ることになります。

答えが「その都度ご相談で」ばかりの場合は、範囲が決まっていない状態です。悪意があるとは限りませんが、運用が始まってから決めるのは発注側に不利です。契約書で確かめる項目は契約書で確認する10項目に一覧にしています。

別料金を足した年額で比べる

見積もりは月額ではなく、別料金を足した年額で比べます。計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。実際の水準を示すものではありません。

  • A社:月額100,000円。新規登録・画像・A+・セール準備はすべて別料金
  • B社:月額150,000円。新規登録は月3点まで、セール準備は年4回まで含む。画像・A+は別料金
  • 自社の予定:年間で新商品を12点登録、A+を6本制作、大型セールに年4回参加
  • 別料金の単価:新規登録1点15,000円、A+1本80,000円、セール準備1回50,000円と仮定(両社とも同じとする)

この条件で年額を出すと、次のようになります。

費目A社(年額)B社(年額)
月額1,200,000円1,800,000円
新規登録(12点)180,000円0円(月3点まで含む)
A+制作(6本)480,000円480,000円
セール準備(4回)200,000円0円(年4回まで含む)
合計2,060,000円2,280,000円

内訳です。A社は新規登録が15,000円×12点で180,000円、セール準備が50,000円×4回で200,000円。B社はこの2つが月額に含まれるので0円です。A+はどちらも別料金なので、80,000円×6本の480,000円が両社に乗ります。

月額だけなら差は年60万円ですが、別料金を足すと差は22万円まで縮みます。さらに条件を変えて、新商品を年24点に増やすと、A社は新規登録だけで360,000円になり、差は4万円まで縮みます。月額の差は、自社の予定の作業量を当てはめると大きく動きます。

逆に、新商品をほとんど出さず、セールにも参加しない予定なら、A社のほうが年額で大きく安くなります。どちらが得かは会社の良し悪しではなく、自社の1年の予定と、月額に含まれる範囲の重なり方で決まります。

自社の1年の予定を先に書き出す

この比較をするには、発注側が1年の予定を持っている必要があります。見積もりを取る前に、次の数字を仮でよいので書き出しておきます。

  • 年間に出す新商品の点数
  • 画像やA+を作り直したい商品の点数
  • 参加する予定の大型セールの回数
  • 広告費の月額の見込み(増やす予定があるか)
  • 定例会議を月に何回したいか

この5つがあれば、どの見積もりも同じ条件で年額に直せます。予定が立たない場合は、少なめと多めの2通りで計算し、どちらでも大きく損をしない契約を選ぶ、という考え方もできます。商品数で費用がどう変わるかは商品数で費用はどう変わるかで試算しています。

契約後に揉めないための線引き

見積もりの段階で範囲を決めても、運用が始まると境界があいまいな作業が出てきます。揉めないための線引きを、契約前に3つ決めておきます。

1. 「調整」と「新規作成」を分ける。 既存の広告キャンペーンの入札や除外キーワードの調整は月額、新しいキャンペーンの作成は別料金、というように、言葉の定義を合わせておきます。同じ「広告の作業」でも、どちらに当たるかで請求が変わるからです。

2. 「修正」の回数を決める。 画像やA+の修正が何回まで含まれるのかを決めます。回数を決めずに始めると、発注側は何度でも直してもらえると考え、受注側は2回目から別料金と考える、という食い違いが起きます。

3. 承認の手順を決める。 別料金の作業は、金額を示した見積もりを出し、発注側が承認してから着手する。この手順を契約書か運用ルールに書いておきます。チャットでの「お願いします」で着手してよいのかも決めておくと安心です。

この3つが決まっていると、月の途中で「これは月額ですか、別料金ですか」と確かめるやり取りが短くなります。代行会社にとっても、範囲がはっきりしているほうが仕事を進めやすくなります。

よくある失敗例

範囲を決めずに契約したときに起きやすい失敗を3つ挙げます。

  • 新商品の投入月に請求が倍になった。 新規登録・画像・A+・新規の広告がすべて別料金で、同じ月に重なった。事前に年間の予定を共有していれば、月額に含める交渉ができた
  • 出品停止の対応が月額外と言われた。 契約書に「アカウントの健全性の対応」が含まれるか書かれていなかった。発生してから交渉することになり、判断を急がされた
  • 報告書の形式を変えてもらうたびに費用がかかった。 定例の報告書の形式が決まっておらず、社内の要望で項目を足すたびに追加の作業として扱われた

どれも、見積もりの段階で「この場合はどうなりますか」と一言聞いておけば防げたものです。当社の料金の考え方は料金ページに載せています。

見積もりを並べるときのチェック表

最後に、複数社の見積もりを並べるときに使えるチェック表です。空欄が残った項目は、契約前に質問して埋めます。

確認する項目A社B社C社
月額に含まれる作業の一覧(回数・点数つき)
一覧に無い作業の見積もり方
上限を超えた月の扱い
ケース対応の範囲と上限
大型セール前後の作業
外部手配の手数料の有無
別料金の作業の承認手順
自社の予定を当てはめた年額

8行目の年額は、ここまでの7行が埋まって初めて出せます。7行が埋まらない会社は、年額が計算できない会社です。月額がいくら安くても、比べようがありません。

よくある質問

別料金の作業が無い「すべて込み」の見積もりのほうが安心ですか。 安心な面はありますが、その分月額が高めに設定されていることが多く、作業の少ない月にも同じ額を払います。すべて込みでも、何が含まれるかの一覧と上限は出してもらってください。「すべて」の中身が会社によって違うからです。

見積もりの段階で範囲を細かく聞くと、嫌がられませんか。 範囲を確かめる質問は、発注側として当然の確認です。むしろ、範囲を書面で出せる会社のほうが、運用が始まってからのやり取りも整理されている傾向があります。答えがあいまいなままなら、その点を比較の材料にしてください。

契約したあとで、別料金の作業を月額に含めてもらう交渉はできますか。 契約の更新のタイミングで相談するのが現実的です。半年分の実際の作業量と別料金の請求額を並べて、毎月発生している作業を月額に移せないか相談します。作業量の記録が無いと交渉の材料が無いので、契約直後から記録を残しておきます。

別料金の単価は、何と比べて高い安いを判断すればよいですか。 1社だけの単価で判断するのは難しいので、同じ作業について2〜3社の単価を並べます。そのうえで、自社でやる場合の時間(担当者の時給×作業時間)や、その作業だけを専門の制作会社に頼んだ場合の費用と比べます。

まとめ

  • 運用代行の月額は「毎月くり返す作業」が前提。くり返さない作業・量が読めない作業・外部手配が要る作業は別料金になりやすい
  • 揉めやすいのはケースの対応と大型セールの準備。発生してからでは交渉しにくい
  • 別料金かどうかより、単価と上限が先に決まっているかを見る
  • 見積もりの段階で、月額に含む作業を回数・点数つきで書面にしてもらう
  • 比較は月額ではなく、自社の1年の予定を当てはめた年額で行う
  • 「調整と新規作成の区別」「修正の回数」「承認の手順」を契約前に決める
  • 範囲の一覧が出せない会社は、年額が計算できない会社と考える

見積もりを並べたものの、どこが違うのか判断がつかない場合は、手元の見積書をそのままお持ちください。運用代行の内容をご覧いただいたうえで、相談窓口から、範囲の読み方と年額への直し方を一緒に確認します。