運用代行の見積もりを取ると、月額とは別に「初期費用」という行が入っていることがあります。月額の1〜2か月分ほどの金額が並ぶこともあれば、「初期費用0円」をうたう会社もある。ここで迷うのは、その金額が何をしてもらう対価なのかが見積書からは読み取れないことです。

初期費用は、契約の最初に1回だけ発生する作業の代金です。中身が分からないまま払うと、高いのか安いのかも判断できません。逆に中身が分かれば、「この作業は社内でもうやってあるので外してほしい」という交渉もできます。

この記事では、Amazon 運用代行 初期費用の内訳を5つの作業に分けて整理し、初期費用ありとなしの契約を同じ物差しで比べる方法、払う前に確認することをまとめます。金額はすべて仮の数字です。月額を含めた費用全体の考え方は運用代行の費用と選び方に書いています。

Amazon 運用代行の初期費用は何の対価か

運用代行の作業は、大きく「立ち上げ」と「日々の運用」に分かれます。月額は日々の運用の対価で、初期費用は立ち上げの対価です。立ち上げの作業は、契約の最初の1〜2か月に集中し、その後は発生しません。だから月額に混ぜず、別の行で請求する会社が多いのです。

立ち上げの作業として、初期費用に含まれやすいのは次の5つです。

作業中身文書として残るもの社内で済ませている場合
1. 現状の診断売上・広告・在庫・商品ページの棚卸し。どこが弱いかを特定する診断の報告書直近の数字と課題の一覧を渡せば、作業量は減る
2. 広告アカウントの再設計キャンペーン構造の組み替え、命名規則、除外キーワードの整理設計図とキャンペーン一覧構造が整っていれば不要に近い
3. 商品ページの修正商品名・箇条書き・説明文・属性欄の見直し修正前後の対比表修正の範囲を絞れる
4. 目標と指標の設定損益分岐ACOS、目標の売上と利益、月次で見る指標指標の一覧と目標値自社で出していれば確認だけで済む
5. 運用の段取り報告の形式、連絡の窓口、在庫や価格の情報共有の決め方運用の取り決め書減らしにくい部分

見積書に「初期費用」としか書いていなければ、この5つのどれが含まれるかを聞いてください。 会社によっては、1と5だけを初期費用にして、2と3は月額の中で少しずつ進める形もあります。その場合、初期費用は安くても、最初の数か月の月額に立ち上げ作業が混ざります。

5つの作業のうち、どれが重いか

作業量が大きいのは、2の広告アカウントの再設計と、3の商品ページの修正です。どちらも、商品数とこれまでの運用の状態で手間が大きく変わります。

広告アカウントの再設計は、キャンペーンが数十あり、構造に規則がない場合ほど時間がかかります。どこにいくら使っているかを洗い出すところから始まるからです。逆に、自社で構造を整えてきたアカウントなら、確認だけで終わることもあります。整理の考え方は広告のキャンペーン構造の作り方にまとめています。

商品ページの修正は、対象を何商品にするかで決まります。全商品を対象にするのか、売上の上位数商品だけなのか。見積もりの段階で商品数を決めておかないと、「修正は主力3商品まで」と後から言われることがあります。

初期費用の型は3つ

初期費用の取り方は、会社によって次の3つに分かれます。

型中身向く状況注意する点
定額月額の1〜2か月分ほどを一括で立ち上げの範囲が決まっている範囲が広がったときの追加料金の扱い
作業量で変動商品数・キャンペーン数で金額が変わる商品数が多い、運用歴が長い見積もりの前提(商品数など)が文書にあるか
0円初期費用なし。月額の中で立ち上げる支払いを平らにしたい最低契約期間が長い、または月額が高めに設定されている

初期費用0円は、立ち上げ作業がないという意味ではありません。 作業はどこかで発生しています。月額に上乗せされているか、最低契約期間で回収する設計になっているかのどちらかが多い。途中で解約すると違約金がかかる契約なら、それが実質的な初期費用です。

逆に、初期費用が高めでも、その分の月額が抑えられていて最低契約期間が短いなら、合わなかったときに早く抜けられます。初期費用の金額だけで判断せず、月額と最低契約期間とをセットで見てください。

初期費用ありとなしは2年の総額で比べる

型の違いは、期間をそろえて総額を出すと見えます。計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。実際の水準を示すものではありません。

  • A社:初期費用100,000円、月額50,000円、最低契約期間3か月
  • B社:初期費用0円、月額60,000円、最低契約期間12か月
  • C社:初期費用200,000円、月額45,000円、最低契約期間なし

この仮定で、契約から6か月・12か月・24か月の時点で払った総額です。

期間A社B社C社
6か月400,000円360,000円470,000円
12か月700,000円720,000円740,000円
24か月1,300,000円1,440,000円1,280,000円

内訳です。A社の6か月は初期費用10万円+月額5万円×6か月で40万円。B社は月額6万円×6か月で36万円。C社は初期費用20万円+月額4.5万円×6か月で47万円になります。

6か月で見ると初期費用0円のB社が軽く、24か月で見るとC社が軽くなります。 月額の差1〜1.5万円が、期間が延びるほど初期費用の差を埋めていくからです。この仮定では、A社とB社は10か月目に総額が並び(どちらも60万円)、それ以降はA社のほうが軽くなります。

途中でやめたときの総額も出す

もう一つ、合わなかったときの総額を出しておきます。3か月で「合わない」と判断した場合です。

3か月で解約した場合総額備考
A社250,000円最低契約期間を満たしているので追加なし
B社720,000円最低契約期間12か月分を払う契約と仮定
C社335,000円最低契約期間がないので追加なし

B社は、最低契約期間の残りを払う契約だと仮定すると、3か月でやめても12か月分の72万円になります。違約金の定め方は会社によって違い、残期間の一部だけという場合もあるので、契約書の条文で確認してください。初期費用0円の契約は、うまくいったときには軽く、合わなかったときに重くなりやすい形です。 契約書で見る点は運用代行の契約で確認することにまとめています。

払う前に確認すること

見積もりの段階で、全社に同じ形で次を聞いてください。答えを並べれば、金額の違いの理由が見えます。

  1. 初期費用に含まれる作業はどれか。 上の5つのうちどれが入り、どれが月額側か
  2. 作業の範囲を決める前提は何か。 対象の商品数、キャンペーン数、修正する商品ページの数
  3. 何が文書として残るか。 診断の報告書、広告の設計図、修正前後の対比表など
  4. 立ち上げはいつ終わるか。 何週目に何が終わるかの予定表があるか
  5. 途中で解約したとき、初期費用は戻るか。 多くは戻りませんが、立ち上げ期間中の解約の扱いは聞いておく
  6. 解約後に、作ったものは自社に残るか。 キャンペーンの設定、除外キーワードの一覧、修正した商品ページの原稿

6番目は見落とされがちですが、初期費用の価値を決める項目です。立ち上げで作った設計図や除外リストが手元に残れば、次の会社に移るときも、自社で運用するときも、同じ作業にもう一度お金を払わずに済みます。残らない契約だと、会社を変えるたびに初期費用を払い直すことになります。引き継ぎの段取りは代行の解約と引き継ぎに書きました。

立ち上げの予定表で見るところ

予定表をもらったら、次の3点を見ます。

見るところ良い状態注意したい状態
診断の時期最初の1〜2週間で終わり、報告の場がある診断の報告がなく、いきなり設定変更が始まる
自社の作業自社に頼むこと(情報の提供、承認)が書いてある自社の作業が書かれていない
終わりの定義「設計図の納品」「修正の完了」など終わりが具体的「立ち上げ期間」とだけあって、何をもって終わりか不明

自社に頼まれる作業が書いていない予定表は、遅れたときにどちらの原因かが分からなくなります。在庫の数、原価、今後の発注の予定など、代行側が判断に使う情報を、いつまでに誰が渡すかを決めておきます。

初期費用でよくある失敗

相談の場でよく聞く失敗は、次の3つです。

診断の報告がないまま月額の運用に入った。 初期費用を払ったのに、何が課題だったのかを説明されていない。この状態だと、3か月後に成果を評価するときの「始める前の状態」が分かりません。診断の報告書は、後で成果を測るための基準点でもあります。報告の場を予定表に入れてもらってください。

修正の範囲が想定より狭かった。 全商品の商品ページを直してもらえると思っていたら、対象は主力の2商品だけだった。見積もりに商品数が書いていなかったことが原因です。前提の数字は、見積書か契約書の文面に残してもらいます。

立ち上げが終わらないまま月額が始まった。 予定では1か月で終わるはずの再設計が、3か月たっても続いている。終わりの定義がないと、遅れていることにも気づけません。「設計図を納品した日」のように、終わりを1つの出来事で決めておくと、遅れを話し合えます。

初期費用を下げられる場面と、下げないほうがよい場面

初期費用は、社内で済ませてある作業を外せば下げられることがあります。

下げられる場面:

  • 損益分岐ACOSや目標の売上を自社で出してある。4の指標の設定は確認だけで済みます。利益シミュレーターで損益分岐ACOSを出しておくと話が早くなります
  • 広告のキャンペーン構造が規則どおりに整っている。2の再設計の作業量が減ります
  • 商品ページの修正は自社でやる、と決めている。3を範囲から外せます

下げないほうがよい場面:

  • 運用歴が長く、誰がどんな設定をしたかが分からない。この状態で診断を省くと、原因が分からないまま月額の運用が始まります
  • 前の代行会社からの引き継ぎ資料がない。再設計の作業は省けません

初期費用を値切った結果、立ち上げが浅くなり、最初の3か月の運用で同じ作業をやり直す。これがいちばん高くつく形です。下げる交渉は、作業を減らす根拠があるときだけにしてください。

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。立ち上げでは、まず現状の診断と損益分岐ACOSの確認から始めます。作業の範囲と料金は料金プランに、運用代行の中身はAmazon運用代行のサービス内容に公開しているので、比較の対象のひとつとして見てください。

よくある質問

初期費用は経費として一度に計上できますか。 支払いの性質や金額によって扱いが変わるので、顧問の税理士に確認してください。見積書と請求書に作業の中身が書いてあると、判断の材料になります。

初期費用が月額の3か月分を超える見積もりは高すぎますか。 金額だけでは判断できません。商品数が多い、広告のキャンペーンが数十ある、商品ページを全商品直すといった条件なら、作業量に見合うこともあります。5つの作業のどれが入っているか、対象の商品数は何点かを確認し、ほかの会社の見積もりと同じ前提にそろえてから比べてください。

初期費用0円の会社と、初期費用ありの会社で迷っています。 2年間の総額と、3か月で合わなかったときの総額を、両方とも出してみてください。長く続けるつもりで、月額の差が大きいなら初期費用ありの形が軽くなりやすく、合うかどうか分からない段階なら最低契約期間が短いほうが安心です。

立ち上げだけを依頼して、日々の運用は自社でやることはできますか。 単発の設計や診断を受けている会社なら可能です。その場合は、設計図や除外リストなどの成果物と、社内で回すための手順書が残るかを確認してください。自社で回す時間の見積もりは運用の内製化の進め方が参考になります。

まとめ

  • 初期費用は立ち上げの対価。月額は日々の運用の対価
  • 中身は現状の診断・広告の再設計・商品ページの修正・指標の設定・運用の段取りの5つ
  • 型は定額・作業量で変動・0円の3つ。0円でも立ち上げの作業はどこかで回収されている
  • 比べるときは、2年の総額と、3か月で解約したときの総額の両方を出す
  • 払う前に、含まれる作業・前提の商品数・残る文書・終わりの時期・解約後に残るものを聞く
  • 社内で済ませた作業があれば外して下げられる。根拠なく値切ると立ち上げが浅くなる

自社のどこに立ち上げの手間がかかりそうかは、見積もりを取る前に整理できます。無料の運用診断で広告・商品ページ・在庫の弱いところを確認してから比べるか、個別の事情があればお問い合わせからご相談ください。