Amazonの運用代行を3社から提案してもらった。並べてみたが、どこが違うのか分からない。結局「話しやすかった会社」に決めそうになっている。相談を受けていて、いちばん多いのがこの状態です。

原因は担当者の力量ではなく、比べる物差しがそろっていないことにあります。A社は月額と作業一覧を書き、B社は成果の見込みを書き、C社は事例を並べる。書いてある項目が違うものは、並べても優劣が出ません。

この記事では、10項目の評価表に点数をつけて合計する形をとります。以下に出てくる金額と配点はすべて仮の数字です。自社の条件に置き換えて読んでください。費用の型そのものの整理は運用代行の費用相場と確認したい7つのこと、広告に限った比較の観点は広告の運用代行を比較する5つの点に分けて書いています。

比較が進まないのは物差しがそろっていないから

提案書が比べられなくなる理由は、だいたい次の3つに収まります。

書式が違う。 ある会社は作業を箇条書きで20行書き、別の会社は「運用一式」の1行で済ませる。行数の多い提案が手厚いとは限りません。細かく書いてあるほうが、後から「それは範囲外です」と言われにくい、というだけです。

料金の基準が違う。 月額固定、広告費の何%、売上の何%。支払額が何で決まるかが違えば、月額の数字を横に並べても意味がありません。

範囲が違う。 広告だけの会社、商品ページまで見る会社、在庫と価格まで踏み込む会社。範囲が広いほうが高いのは当然なので、金額だけを見ると範囲の狭い会社が有利に見えます。

評価表にする目的は、点数で順位を決めることではありません。どの項目で差がついているかを目に見える形にすることです。合計が近い2社でも、差がついた項目が「引き継ぎ条件」なのか「報告の頻度」なのかで、選ぶ理由が変わります。

10項目の評価表をつくる

項目は次の10個にしています。提案書だけでは埋まらない項目があるはずなので、空欄は面談で聞いて埋めます。

#項目何を見るか
1任せる範囲作業が名詞で書かれているか。「運用一式」で終わっていないか
2料金と総額支払額が何で決まるか。初期費用・最低契約期間・追加費用が明記されているか
3担当者の体制実際に手を動かす人は誰か。営業担当と運用担当が別か。担当が抜けたときの代わり
4初動90日の計画最初の3か月に何をどの順でやるか。いつから数字が動く想定か
5報告の中身数字の羅列で終わらず、判断と次の打ち手が書かれるか。頻度と形式
6日々の運用方針除外キーワードと入札をどの基準で動かすか。触る頻度
7商品ページへの関与指摘までか、文章や画像の作成まで含むか
8在庫・価格との連携範囲外でも情報を共有する場があるか。在庫切れ時に広告をどうするか
9引き継ぎと解約解約後に何が自社に残るか。申し出から終了までの期間
10実績の確かめ方同じカテゴリー・同じ規模の経験があるか。数字ではなく状況を語れるか

10項目のうち、提案書の段階で埋まるのは1・2・4あたりまでです。3と9は聞かないと出てきません。聞かなければ出てこない項目ほど、契約後に揉める項目だと考えてください。実際の揉め方は運用代行でよくある失敗例に整理しました。契約書で確認する条文は契約書で確認する10項目が対応します。

項目を足すか減らすか

自社の事情で足してよい項目はあります。たとえば、複数ブランドを持っているなら「ブランド間の予算配分をどう決めるか」、海外向けにも出しているなら「他国のアカウントを扱えるか」。

減らすのは慎重にしてください。9(引き継ぎと解約)を外すと、辞めるときに設定を持ち出せない会社が上位に来ます。3(担当者の体制)を外すと、提案の上手な会社が有利になります。この2つは残すことをおすすめします。

項目ごとの点数のつけ方

各項目を0〜3点でつけます。基準を先に決めておかないと、印象で点が動きます。

点状態判定の目安
3文書に書かれている提案書・見積書・契約書のどれかに具体的な記述がある
2口頭で明確に答えた面談で具体的に答えたが、文書化はこれから
1答えはあるが曖昧「状況によります」「ご相談しながら」で終わった
0答えがない・範囲外聞いても出てこない。または明確に対象外と言われた

ここで大事なのは、「できます」という返事を3点にしないことです。3点は文書に書いてある状態だけ。口頭の「できます」は2点です。この差をつけないと、営業の上手な会社が全項目3点になります。

判定に迷ったときの具体例を挙げます。

  • 「報告は月1回、レポートをお送りします」→ 1点。中身が決まっていません
  • 「月1回、前月のACOS・TACOS・除外した語の一覧と、翌月に試すことを書いて送ります」→ 2点。口頭なら2点、提案書にあれば3点
  • 「解約は1か月前にご連絡ください」→ 2点。残るものの話が抜けています
  • 「解約1か月前の申し出。キャンペーン設定と除外リストはそのまま残り、引き継ぎ資料をお渡しします」→ 契約書にあれば3点

0点をつける項目があっても、それだけで落とす必要はありません。0点が「範囲外と明言された」ことによるなら、むしろ誠実な回答です。問題なのは1点、つまり曖昧なまま流された項目です。1点が3つ以上ある会社は、契約後に同じ調子で流される可能性が高くなります。

重みをかけて合計する

10項目を同じ重さで足すと、自社にとって大事な項目が埋もれます。重みは自社の事情で決めてください。ここでは次の配分を仮に置きます。

項目重み(仮)理由
1 任せる範囲×3ここがずれると他の全部がずれる
2 料金と総額×3支払いが続く条件
3 担当者の体制×2成果の大半は担当者の手数で決まる
4 初動90日の計画×2最初の3か月で判断できるかが決まる
5 報告の中身×2続けるか切るかの材料になる
6 日々の運用方針×2広告費の使われ方に直結する
7 商品ページへの関与×1社内に作る人がいれば軽くできる
8 在庫・価格との連携×1自社で握れるなら軽くできる
9 引き継ぎと解約×3辞められない契約は取り返しがつかない
10 実績の確かめ方×1参考情報。他社の数字は自社に移らない

満点は(3+3+2+2+2+2+1+1+3+1)×3点=60点です。3社に点をつけた例を出します。数字は説明のための仮のものです。

項目重みA社B社C社
1 任せる範囲×3323
2 料金と総額×3331
3 担当者の体制×2132
4 初動90日の計画×2231
5 報告の中身×2321
6 日々の運用方針×2231
7 ページへの関与×1123
8 在庫・価格の連携×1021
9 引き継ぎと解約×3312
10 実績の確かめ方×1223
合計475036

内訳を読みます。A社とB社は3点差で、合計だけ見ればほぼ並びです。差がついたのは3(担当者の体制)と9(引き継ぎと解約)。B社は担当者が明確な代わりに、解約後に何が残るかを答えられていません。

この2社の選び方は、合計点では決まりません。 1年で切り替える可能性があるなら9を重く見てA社、3年任せる前提なら3を重く見てB社になります。評価表は、この判断をどこでしているかを自分に見えるようにする道具です。

C社は36点で下位ですが、7(ページへの関与)だけは3点です。自社に画像や文章を作る人がいないなら、C社の得意分野は効いてきます。合計点で切り捨てる前に、最高点の項目が自社の弱点と重なっていないかを見てください。

差がつかないときの扱い

3社とも45点前後で並ぶことがあります。その場合、判断材料が足りていないと考えてください。点数を細かくするのではなく、埋まっていない項目を聞き直します。

特に埋まりにくいのが4(初動90日)です。「最初の1か月で現状把握、2か月目から改善」という答えは1点です。2点以上をつけられるのは、「1か月目に検索用語レポートを30日分見て除外を整理し、キャンペーンを商品群ごとに分け直す。2か月目から入札を週1で調整し、3か月目にACOSの推移で継続を判断する」のように、作業と判断のタイミングが名詞で出てくる答えだけです。

見積もりを同じ条件に直してから並べる

2(料金と総額)に点をつけるには、金額をそろえる作業が先に要ります。月額の数字をそのまま並べても比較になりません。

手順は3つです。

  1. 自社の広告費と売上の見込みを1つ決める(例:月の広告費30万円)
  2. 各社の料金の型にその数字を入れて、月額を出す
  3. 12倍して初期費用を足し、初年度の総額にする

仮に、A社が月額固定8万円・初期費用10万円、B社が広告費の20%・初期費用なし、C社が広告経由売上の10%・初期費用5万円だったとします。月の広告費を30万円、ACOSを20%(広告経由売上は広告費の5倍=150万円)と仮定した計算です。

会社料金の型(仮)月額年額初期費用初年度
A社月額固定8万円80,000円960,000円100,000円1,060,000円
B社広告費の20%60,000円720,000円0円720,000円
C社広告経由売上の10%150,000円1,800,000円50,000円1,850,000円

この条件ではB社が最も軽く見えます。ただし広告費を月100万円まで増やすと、B社は月20万円・年240万円に伸び、A社は年96万円のまま変わりません。いま払う額ではなく、1年後に払っている額で並べてください。

最低契約期間も金額の話として扱います。月額8万円で最低6か月なら、契約した時点で48万円が確定します。合わないと分かっても止められないので、2の点数には「解約の条件が書かれているか」も含めて判断してください。当社の範囲と金額は料金プランに公開しています。比較表の1社として入れてもらえれば十分です。

評価表で拾えないものは面談で確かめる

点数に出ないものが2つあります。ひとつは相性、もうひとつは「自社の数字を見る気があるか」です。

後者は質問で確かめられます。次の4つを全社に同じ形で聞いてください。

  • 当社の損益分岐ACOSを出すために、どの数字が必要ですか
  • 広告費を下げる提案をしたことはありますか。どんな状況でしたか
  • 在庫が切れそうなとき、広告はどうしますか
  • 最初の3か月で成果が出なかったら、何を見て原因を切り分けますか

1つ目に「売価・原価・手数料・送料」と即答できない会社は、利益ではなく広告の数字だけを見ています。自社の損益分岐ACOSは利益シミュレーターで先に出しておくと、提案された目標ACOSが自社の粗利に合うかをその場で判断できます。

2つ目は利益相反の確認です。広告費連動や売上連動の契約では、広告費を絞る提案が代行側の収入を減らします。実例が出てこない会社は、その方向の判断をしていません。

3つ目は連携の確認です。「範囲外です」で終わるか、「残り日数を共有してもらえれば入札を落とします」と返すかで、8の点数が分かれます。

4つ目は責任の取り方です。「もう少し様子を見ましょう」だけなら1点。「表示・クリック率・転換率の順に見て、転換率が原因ならページ側の問題として切り分けます」のように、切り分けの順番が出てくるなら2点以上です。売上が伸びないときの切り分け方は表示・クリック・購入の3段階で見るにまとめています。

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。相談を受けるときは、広告の話より先に損益分岐ACOSと在庫の状態を確認しています。作業範囲はAmazon運用代行の内容に書いています。

よくある質問

提案書をもらう前に、この評価表を先に渡してもいいですか。 渡して構いません。むしろ先に渡したほうが、返ってくる提案書がそろって比較しやすくなります。「この10項目に沿って書いてください」と伝えると、書けない項目を空欄で返す会社と、曖昧な言葉で埋めてくる会社に分かれます。この差自体が判断材料になります。ただし重みの配分は渡さないでください。重みを知られると、そこに合わせた提案が返ってきて、自社の弱点が見えにくくなります。

3社も集める時間がありません。2社でも比較になりますか。 2社でも評価表は機能しますが、点数そのものは当てになりません。2社しかないと「どちらがましか」の判断になり、両方とも水準が低い場合に気づけないからです。時間が取れないときは、2社に提案をもらい、3社目の代わりに自社で運用した場合の作業量と時間を書き出して並べてください。外に出す前提で評価表を作ると、社内でやるという選択肢が消えてしまいます。

点数が最も高い会社に決めれば問題ないですか。 合計点は目安で、決定の根拠にはしないでください。見るべきは、差がついた項目が自社にとって重い項目かどうかです。合計が3点差なら実質は並びなので、その場合は「どの項目で負けたか」を見て、自社が譲れない項目で勝っているほうを選びます。また、最高点の会社に0点の項目があるときは、その0点が自社で埋められるものかを先に確かめてください。埋められないなら、合計は下でも0点のない会社のほうが安全です。

まとめ

  • 提案書が比べられないのは書式・料金の基準・範囲がそろっていないから。評価表で物差しをそろえる
  • 項目は10個。範囲・料金・担当者・初動90日・報告・運用方針・ページ関与・在庫連携・引き継ぎ・実績
  • 点数は0〜3。文書にあれば3点、口頭の「できます」は2点。曖昧な1点が3つ以上ある会社は注意する
  • 重みは自社の事情で決める。範囲・料金・引き継ぎを重くする配分から始める
  • 合計点で順位をつけるのではなく、差がついた項目が自社にとって重いかを見る
  • 見積もりは自社の広告費を入れて年額に直し、初期費用と最低契約期間を足してから並べる
  • 点数に出ない部分は4つの質問で確かめる。損益分岐ACOSの出し方に即答できるかが分かれ目

評価表は作る前に、自社が何を外に出したいのかを決めておくと早く埋まります。そこが定まっていないときは、無料の運用診断で広告・商品ページ・在庫のどこが弱いかを整理してから提案を集めてください。個別の事情がある場合はお問い合わせからどうぞ。