入荷予定の船が遅れた、想定より売れた、納品した在庫の受領が進まない。発注基準を決めていても、在庫が切れそうになる場面は起きます。Amazonの在庫切れ対処で大事なのは、慌てて値下げや別出品に走らず、残り日数から打つ手を順番に決めることです。
在庫切れの損失は、売れなかった分の売上だけではありません。検索結果での露出が落ち、再入荷しても元の順位に戻るまで時間がかかります。応急手当の目的は「完全に切らさないこと」よりも、切れる期間を短くし、順位の後退を小さくすることです。
この記事では、切れそうだと気付いた時点から、切れてしまった後の立て直しまでを順に書きます。そもそも切らさないための発注の決め方は在庫切れの発注基準に分けて書いています。
Amazonで在庫切れしそうなとき、最初に出す2つの数字
打つ手を決める前に、次の2つを出します。
残り日数 = 販売可能な在庫数 ÷ 直近14日の1日あたり販売数
入荷までの日数 = 次の在庫が販売可能になる見込み日 − 今日
この2つの差が「在庫が無くなる日数(空白日数)」です。
空白日数 = 入荷までの日数 − 残り日数
仮に、在庫が120個、1日8個売れていて、次の在庫が販売可能になるのが20日後なら、残り日数は15日、空白日数は5日です。この5日をどう埋めるかを考えます。
注意したいのは「入荷までの日数」です。倉庫に届く日ではなく、販売可能になる日で数えてください。納品してから受領・棚入れが終わるまでに数日から、混み合う時期はそれ以上かかることがあります。自社の過去の納品で、到着から販売可能までに何日かかったかを記録しておくと、この見積もりが正確になります。実測のしかたはリードタイムの実測にまとめています。
空白日数で打つ手を決める
空白日数ごとに、打つ手の目安を表にしました。上から順に、影響が小さい手です。
| 空白日数 | 打つ手 | 狙い |
|---|---|---|
| 0日以下(間に合う) | 何もしない。入荷の進み具合だけ毎日確認 | 余計な調整で売れ方を崩さない |
| 1〜7日 | 広告を絞る、クーポン・セールを止める | 売れるペースを少し落として持たせる |
| 8〜14日 | 上に加えて、価格を少し上げる/自己発送を併用する | 空白を数日まで縮める |
| 15日以上 | 上に加えて、分納・輸送手段の切り替えを検討する | 入荷を前倒しする |
日数の区切りは目安です。回転の速い商品や、競合が多く順位が動きやすい商品では、1段早めに手を打ってください。
売れるペースを調整する3つの手
1. 広告を絞る
最初に触るのは広告です。在庫が少ないときに広告費を使って売れるペースを上げる理由はありません。
ただし、すべて止めるのではなく、次の順で絞ります。
- 自社商品名以外の広い語(部分一致・オート)から入札を下げる
- 商品ターゲティングや競合ページへの広告を止める
- 最後まで残すのは、成果の出ている完全一致の数語だけ
いきなり全停止すると、再入荷後に広告を戻したときの立ち上がりが遅くなることがあります。止め方と止めた後の影響は広告を止めると何が起きるかで詳しく扱っています。
2. クーポン・セールを止め、価格を少し上げる
クーポンやタイムセールは売れるペースを上げる施策なので、在庫が細いときは止めます。それでも足りなければ、価格を少し上げます。
上げ幅は、競合と比べて説明できる範囲にとどめてください。目安として数%から1割程度です。極端に上げると購入率が大きく落ちるだけでなく、価格の妥当性の点で出品に影響が出ることもあります。価格に関する扱いはセラーセントラルの最新の案内で確認してください。
3. 自己発送(FBM)を併用する
手元や自社倉庫に在庫があるなら、同じ商品ページで自己発送の出品を用意しておくと、FBA在庫が切れてもページを生かしたまま販売を続けられます。
- 配送日数が伸びるため、FBAのときより購入率は落ちやすい
- 送料・梱包の手間が増えるので、1個あたりの利益を事前に計算しておく
- 普段から設定しておけば、切れそうなときに切り替えるだけで済む
どの商品を自己発送に向けるかの判断はFBAと自己発送の使い分けを参考にしてください。
入荷を前倒しする手と、その費用
空白日数が長い場合は、売れるペースの調整だけでは埋まりません。入荷そのものを早める手を考えます。
- 分納する:生産済みの一部だけを先に出荷してもらう
- 輸送手段を切り替える:一部だけを船便から航空便に切り替える
- 納品を小分けにする:まとめて1回で納品せず、先に届いた分から納品する
ここで費用を比べます。仮に、1個あたりの粗利が800円、1日8個売れる商品で、航空便への切り替えで1個あたりの輸送費が300円上がるとします。
| 項目 | 金額(仮定) |
|---|---|
| 空白5日で失う粗利 | 800円 × 8個 × 5日 = 32,000円 |
| 50個を航空便に切り替える追加費用 | 300円 × 50個 = 15,000円 |
この例では、切り替えたほうが直接の損失は小さくなります。さらに順位の後退も避けられるので、実際の差はこれより大きくなります。逆に、粗利が薄く回転の遅い商品では、切り替えが割に合わないこともあります。輸送費や手数料はサイズ・時期で変わるので、自社の実数で計算してください。
納品の手順そのものはFBA納品手順の全体像にまとめています。
在庫切れのときにやってはいけないこと
慌てたときほど、次のような手に走りがちです。どれも後で取り返すのが難しくなります。
- 別の商品ページを作って出し直す:同じ商品の重複出品は規約上の問題になり得るうえ、元のページのレビューと実績が分散します
- 再入荷直後に大きく値下げして取り戻そうとする:順位は価格だけで戻るわけではなく、利益だけが削れます
- 広告を再開と同時に切れる前より強くかける:購入率が戻りきっていない段階で入札を上げると、ACOSが悪化しやすくなります
- 在庫切れ中に商品ページを大きく書き換える:戻ったときに、在庫切れの影響かページ変更の影響かが分からなくなります
切れてしまった後の立て直し
在庫が切れてしまったら、再入荷後の数週間で段階的に戻します。
- 販売可能になった日を記録する。立て直しの効果を測る起点にする
- 価格を切れる前の水準に戻す。上げていた場合は、再入荷と同時に戻す
- 広告は切れる前の7割程度から再開する。1〜2週間、購入率が戻るのを見てから元の水準へ上げる
- クーポンは順位の戻りが鈍い場合に使う。最初から使うと、戻ったのが実力かクーポンの効果か分からなくなる
- 2〜4週後に、セッション数と購入率が切れる前に戻ったかを確認する
戻りが遅い場合は、切れていた間に競合が広告を強めていたり、検索結果の並びが変わっていたりします。セッション数が戻らないなら露出の問題、セッションは戻ったのに注文が戻らないなら価格か競合の問題、と分けて考えてください。
次に切らさないための振り返り
落ち着いたら、なぜ切れたのかを1行で記録しておきます。原因はおおむね次のどれかです。
- 販売予測が実績より低かった(予測の作り方の問題)
- リードタイムが想定より長かった(輸送・受領の見積もりの問題)
- 安全在庫が足りなかった(振れ幅の見積もりの問題)
予測の作り方は販売予測の立て方、安全在庫は安全在庫の計算で見直せます。発注点と発注数は発注計算ツールに数字を入れると出せます。
よくある質問
在庫が切れると検索順位はどのくらい下がりますか。 下がり方は、切れていた期間、競合の多さ、切れる前の順位によって変わるので、一律には言えません。一般に、切れていた期間が長いほど戻るのに時間がかかる傾向があります。自社の過去の在庫切れで、再入荷後に何週間でセッション数が戻ったかを記録しておくと、次に同じことが起きたときの見積もりに使えます。
FBA在庫が切れそうなとき、自己発送に切り替えるだけで十分ですか。 手元に在庫があるならページを生かせるので有効ですが、それだけで十分とは限りません。配送日数が伸びて購入率が落ちやすく、送料と梱包の負担も増えます。広告を絞る、クーポンを止めるといった売れるペースの調整と組み合わせ、FBAの再入荷までの橋渡しとして使うのが現実的です。
値上げして売れるペースを落とすのは、規約上問題ありませんか。 競合と比べて説明できる範囲の値上げであれば、通常の価格調整の範囲です。一方で、平常時から大きくかけ離れた価格にすると、価格の妥当性の点で出品に影響が出ることがあります。扱いは変わることがあるので、セラーセントラルの最新の案内を確認したうえで、上げ幅は控えめにしてください。
まとめ
- Amazonの在庫切れ対処は、残り日数と入荷までの日数から空白日数を出すところから始める
- 入荷までの日数は、倉庫に届く日ではなく販売可能になる日で数える
- 空白日数が短ければ広告とクーポンの調整、長ければ価格・自己発送・分納まで順に使う
- 航空便などの前倒しは、空白日数で失う粗利と追加費用を比べて決める
- 別ページでの出し直しや再入荷直後の大幅値下げはしない
- 再入荷後は価格を戻し、広告は7割程度から段階的に戻す
在庫切れを繰り返している場合は、応急手当より発注の仕組みを直すほうが効きます。在庫と広告を一緒に見直したい場合は、無料の運用診断から現在地を確認してみてください。
