Amazon自動価格設定は、セラーセントラルで決めたルールに沿って、出品価格を自動で上げ下げする機能です。相乗りの出品者がいる商品で、カートボックスを取り返すたびに手で価格を直している人には便利な機能に見えます。
ただし、設定を誤ると便利どころではありません。相手も自動で価格を下げていると、お互いのルールが反応し合い、気づいたときには利益の出ない価格まで下がっていることがあります。止める線は「最低価格」だけです。
この記事では、自動価格設定のルールの選び方、最低価格の決め方、値下げ競争に巻き込まれないための設定、設定したあとに毎週見る数字を順に書きます。価格そのものの考え方はAmazonでの価格の決め方にまとめています。
Amazon自動価格設定でできること・できないこと
自動価格設定は、SKUごとに「どのルールに従うか」と「最低価格・最高価格」を決めておくと、その範囲の中で価格を動かしてくれる機能です。手作業で毎日価格を見直す手間は減りますが、何でも任せられるわけではありません。
| できること | できないこと |
|---|---|
| 競合の価格やカートボックスの状態に合わせて価格を動かす | 利益が出るかどうかを判断する(最低価格を決めるのは自分) |
| 最低価格・最高価格の範囲内に価格を収める | 原価や手数料が変わったときに、最低価格を自動で直す |
| 売れ行きに応じて価格を動かす(ルールの種類による) | 価格以外の理由(在庫切れ・出品の状態)でカートが取れない問題を直す |
| 多数のSKUに同じルールをまとめて当てる | 値下げ合戦を止める(止めるのは最低価格だけ) |
ルールの種類や名称、設定画面の並びは更新で変わることがあります。設定する前に、セラーセントラルの「価格」メニューにある自動価格設定の画面と、そこに出ている最新の説明を確認してください。
カートボックスが取れない原因は価格だけではありません。在庫の状態や配送方法、出品者の評価が原因のこともあります。価格を下げる前にカートボックスが取れない原因の切り分けで、価格以外の原因を先に外しておくと、無駄な値下げを避けられます。
ルールの選び方と向く商品
ルールは大きく分けると「競合の価格に合わせる」型と「自分の売れ行きに合わせる」型があります。どちらを選ぶかは、その商品に相乗りの出品者がいるかで決まります。
| ルールの型 | 動き方 | 向く商品 | 向かない商品 |
|---|---|---|---|
| カートボックス価格に合わせる | おすすめ出品(カート)の価格を基準に、同額や少し下に動く | 相乗りの出品者が多い型番商品 | 自社だけが売っているオリジナル商品 |
| 最低価格の出品に合わせる | 出品されている中で安い価格を基準に動く | 価格だけで選ばれやすい消耗品 | 配送の速さや評価で選ばれている商品 |
| 売れ行きに合わせる | 一定期間の販売数を見て、価格を上げ下げする | 自社だけが売っている商品で、需要の山谷がある物 | 発売直後で売れ行きの基準がない商品 |
自社だけが販売しているオリジナル商品なら、競合の価格に合わせるルールはほとんど意味がありません。比べる相手がいないためです。この場合は自動価格設定を使わず、値上げの手順のように、自分で決めた時期に計画的に価格を動かすほうが管理しやすくなります。
相乗り商品で「最低価格の出品に合わせる」を選ぶと、評価の低い出品者や送料の高い出品者の価格にまで引きずられることがあります。迷ったら、まずカートボックス価格に合わせるルールから始めてください。
最低価格の決め方(原価と手数料から逆算する)
自動価格設定でいちばん大事なのは最低価格です。ここを「なんとなくこのくらい」で決めると、利益の出ない価格で売れ続けます。最低価格は、1個売ったときに残したい利益から逆算して決めます。
計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。実際の手数料率やFBA料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で置き換えてください。ここでは消費税を考えない簡略計算にしています。
- 仕入れ原価(送料・関税込み):1,200円
- 販売手数料率:10%と仮定
- FBAの配送代行手数料:1個500円と仮定
- 1個あたりの広告費:300円と仮定
販売手数料は価格に比例し、それ以外は価格に関係なく1個ごとにかかります。そこで「価格×(1−手数料率)=原価+配送代行手数料+広告費+残したい利益」となる価格を出します。
| 1個あたり残したい利益 | 計算 | 最低価格(10円単位で切り上げ) |
|---|---|---|
| 0円(損益分岐) | 2,000円÷0.9=約2,222円 | 2,230円 |
| 200円 | 2,200円÷0.9=約2,444円 | 2,450円 |
| 400円 | 2,600円÷0.9=約2,889円 | 2,890円 |
損益分岐の2,230円を最低価格にすると、そこまで下がったときに利益はゼロです。広告費の変動や返品を考えると、損益分岐ちょうどに置くのは危険です。最低価格は損益分岐ではなく、「この価格なら売れなくてもいい」と思える下限に置きます。上の例なら、200円から400円の利益が残る2,450円〜2,890円あたりが候補です。
自社の数字で計算するときは、利益シミュレーターに売価・原価・手数料を入れると、価格ごとの利益が出ます。手数料の計算そのものはFBA手数料を含めた粗利の計算で手順を説明しています。
最高価格も決めておく
最高価格は軽く見られがちですが、こちらも決めておきます。相乗りの相手が在庫切れになったときに、価格が大きく跳ね上がると、価格エラーとして出品が止まることがあります。最高価格は、ふだんの売価から大きく離れない範囲(仮に通常価格の1.2倍まで、など)にとどめてください。止まってしまったときの対処は価格エラーで出品が止まったときにまとめています。
値下げ競争に巻き込まれない設定
自動価格設定で起きやすい失敗は、相手のルールと自分のルールが反応し合って、価格が下がり続けることです。相手が1円下げると自分も1円下げ、それを見た相手がまた下げる。夜のうちに数百円下がることもあります。
巻き込まれないための設定は次のとおりです。
- 最低価格を利益の残る位置に置く:上の計算のとおり、損益分岐より上に置く。これが唯一の歯止めです
- 「同額」から始める:競合より下に置くルールにすると、相手も同じ設定なら下げ合いが始まります。まずはカートボックス価格と同額に合わせるルールで様子を見ます
- すべてのSKUに一度に当てない:最初は相乗りの多い数SKUだけで試し、1〜2週間の価格の動きを見てから広げます
- 原価が上がったら最低価格を直す:仕入れ値や為替が動いても、最低価格は自動では変わりません。仕入れのたびに見直します
- セール期間は別に考える:大型セールの期間は価格の動きが激しくなります。セール用の価格を手で入れる商品は、自動価格設定から外すか、最低価格を一時的に見直します
値下げ競争に入ったと感じたら、無理に追わない判断もあります。カートボックスを取れない時間が少しあっても、利益の残る価格で売った分のほうが手元に残る場合が多いからです。価格を下げて取るより、配送の速さや出品者の評価で取れる状態を作るほうが、長く効きます。
失敗例:最低価格を「仮」のまま放置した
よくあるのは、設定するときに最低価格を「とりあえず」で入れて、そのまま忘れてしまう例です。仮に最低価格を損益分岐より下の2,000円で入れていたとすると、相手が下げ続けた夜に2,000円で数十個売れ、1個あたり約200円の赤字が積み上がります。売れているので、販売数だけを見ていると気づけません。
最低価格は、設定した日に計算の根拠と一緒に記録しておきます。根拠が残っていれば、原価が変わったときにどこを直せばよいかがすぐに分かります。
設定したあとに毎週見る数字
自動価格設定は、入れて終わりではありません。週に1回、次の3つを見てください。
- 実際に売れた価格:最低価格に張り付いて売れていないか。張り付いているなら、相手が下げ続けているサインです
- カートボックスの獲得率:価格を動かしても獲得率が上がらないなら、原因は価格以外にあります
- 1個あたりの利益:売れた価格から計算し直し、最低価格を決めたときの想定と比べます
最低価格に張り付く日が続く商品は、自動価格設定で追い続ける商品ではないかもしれません。その場合は、在庫を積み増すより、販売数を絞って利益を守るほうがよいこともあります。商品ごとの利益の目安は利益率の目安の置き方を参考にしてください。
価格の設定と在庫・広告の判断はつながっています。どこから手を付けるか決めきれない場合は、無料の運用診断で価格・広告・在庫のどこが弱いかを先に整理してください。
よくある質問
自動価格設定を使うと、カートボックスは取りやすくなりますか。 価格が原因でカートを取れていない場合は、取りやすくなることがあります。ただし、在庫の状態や配送方法、出品者の評価が原因の場合は、価格を下げても取れません。価格を動かす前に、価格以外の原因を先に確かめてください。
最低価格はどのくらいの頻度で見直せばいいですか。 仕入れのたび、手数料や配送代行手数料の改定があったとき、広告費の水準が変わったときに見直します。何も変わっていなくても、月に1回は計算の根拠と実際の数字を見比べると、ずれに早く気づけます。
自社だけが売っている商品にも自動価格設定は使えますか。 使えますが、競合の価格に合わせるルールは比べる相手がいないため、ほとんど動きません。売れ行きに合わせるルールを使うか、自動価格設定を使わずに、自分で決めた時期に計画的に価格を動かすほうが管理しやすくなります。
セール中も自動価格設定を動かしたままでいいですか。 セール期間は価格の動きが激しくなり、想定より早く最低価格まで下がることがあります。セール用の価格を手で入れる商品は、期間中だけ自動価格設定から外すか、最低価格を一時的に見直してください。
まとめ
- 自動価格設定は、決めた範囲の中で価格を動かす機能。利益を守る歯止めは最低価格だけ
- 相乗りの多い商品はカートボックス価格に合わせるルールから始め、オリジナル商品は無理に使わない
- 最低価格は損益分岐ではなく、残したい利益から逆算した「売れなくてもいい下限」に置く
- 「同額」から始め、少数のSKUで1〜2週間試してから広げる
- 原価や手数料が変わっても最低価格は自動で直らない。仕入れのたびに見直す
- 週1回、売れた価格・カートの獲得率・1個あたりの利益を見る
まずは自動価格設定を入れている商品の最低価格を開き、原価と手数料から計算し直した数字と合っているかを確かめてください。価格・広告・在庫をまとめて見直したい場合は、Amazon運用代行の内容に支援の範囲を載せています。
