Amazon運用代行の担当者が替わる、という連絡は、ある日突然届きます。退職、異動、担当の組み替え。理由はさまざまですが、依頼主から見ると「これまで話していた人がいなくなる」ことに変わりはありません。

担当者交代でいちばん困るのは、数字が落ちることそのものより、なぜ落ちたのかが分からなくなることです。前の担当者が頭の中に持っていた判断の理由や、口頭で伝えていた社内の予定が、引き継ぎで抜けると、新しい担当者は同じ検証をやり直すところから始めます。その間、広告費は使われ続けます。

この記事では、運用を受けている側の立場から、交代の連絡を受けてから2か月の間に依頼主が確かめることを、時期別の確認表にまとめます。代行会社を替えるかどうかの判断は運用代行の乗り換えの判断基準に、契約そのものを終える手順は運用代行の解約と引き継ぎに書いているので、ここでは「同じ会社のまま担当者だけが替わる」場面に絞ります。

Amazon運用代行の担当者交代で起きやすいこと

担当者が替わったあとに依頼主が感じる不満は、だいたい次の5つに分かれます。

起きやすいこと原因依頼主が先に打てる手
同じ説明を何度もさせられる商品の背景や過去の経緯が引き継がれていない商品の説明資料を自社で持ち、新担当に直接渡す
過去にやめた施策が復活する「試してやめた理由」が記録されていない判断の記録を代行側に出してもらう
在庫切れの直前に広告費が増える社内の予定(納品・値上げ・セール)が伝わっていない予定を共有する場所を1つに決め直す
報告の形が変わり、前月と比べられない報告の様式が担当者ごとに違う報告の指標と様式を会社として固定してもらう
返事が遅くなる新担当が複数のアカウントを抱えている返答までの目安と、急ぎの連絡先を確認する

どれも、新しい担当者の腕の問題というより、引き継ぎの中身と仕組みの問題です。逆に言えば、依頼主が確認する項目を決めておけば、かなりの部分は防げます。

担当者が替わること自体は、悪いことばかりではありません。前の担当者が見落としていた点に新しい目で気づくこともあります。大事なのは、交代を「運用の棚卸しの機会」として使えるかどうかです。

交代の連絡を受けたら最初に聞く5つのこと

連絡を受けた時点で、次の5つを代行会社に聞いてください。返答を文章でもらうのがおすすめです。

  1. 交代の日付と、前の担当者がいつまで関わるか。重なる期間があるか、引き継ぎの打ち合わせに依頼主も同席できるか
  2. 新しい担当者の経験と、同時に抱えるアカウント数の目安。広告だけか、商品ページや在庫まで見るのか
  3. 引き継ぎで何を渡すか。設定の書き出し、判断の記録、過去の報告、社内とのやり取りの要点
  4. 責任者は誰か。担当者の上で品質を見ている人がいるか。担当者と連絡がつかないときの窓口
  5. 報告の様式と定例会は変わるか。指標の定義、報告の頻度、定例会の曜日

前の担当者と新しい担当者が重なる期間を、1〜2週間でももらえるかが大きな分かれ目です。 重なりがあれば、引き継ぎの打ち合わせに依頼主が入り、抜けている点をその場で指摘できます。重なりがゼロの交代は、引き継ぎ漏れの危険が一気に上がります。

定例会の頻度や連絡の取り方をどこまで求めるかは運用代行の定例会と連絡の頻度に書きました。交代のタイミングで、これらを改めて取り決め直すのも一つの方法です。

引き継ぎ漏れを防ぐ確認表

交代の前後で、次の表を上から順に消し込んでください。「代行側が持っているもの」と「依頼主が持っているもの」を分けているのがポイントです。

時期確認すること持っているのは確かめ方
交代前広告の設定一式(構造・入札・予算・除外)代行側(依頼主のアカウント内にもある)依頼主側でも書き出して保存しておく
交代前判断の記録(変更日・変更内容・理由)代行側直近6か月分を文書でもらう
交代前試してやめた施策とその理由前の担当者の頭の中引き継ぎ打ち合わせで口頭で聞き、文書に起こしてもらう
交代前商品ごとの目標(ACOSや利益の基準)双方数字で書いた一覧を渡し直す
交代時社内の予定(納品・値上げ・セール・新商品)依頼主今後3か月分を新担当に直接伝える
交代時商品の背景(誰が・どんな場面で買うか、競合との違い)依頼主説明資料を新担当に直接渡す
交代時権限(セラーセントラル・広告)依頼主前担当の権限を外し、新担当に必要な分だけ付ける
交代後1か月報告の指標が前月と比べられるか代行側前月の報告と並べて見る
交代後1か月新担当が加えた変更の理由代行側報告に「何を、なぜ変えたか」があるか
交代後2か月目標に対する進み方双方交代前3か月の平均と比べる

抜けやすいのは「試してやめた施策」と「社内の予定」の2つです。 前者は記録に残っていないことが多く、後者はもともと依頼主から口頭で伝わっていたものです。この2つは、代行会社の引き継ぎに任せず、依頼主が自分で新担当に渡すつもりでいてください。

権限の付け替えは、前の担当者のユーザーを外し忘れることがよくあります。退職した人の権限が残っているのは、安全の面で好ましくありません。権限の範囲の決め方は広告代行への権限の渡し方にまとめています。

交代で数字が落ちたときの見方

交代のあとに数字が落ちると、「担当者が替わったせいだ」と考えたくなります。ただ、同じ時期に季節の変動や競合の動き、在庫の増減が重なっていることも多く、原因を決めつけると判断を誤ります。

見るべきは、交代のあとに設定が変わったかどうかです。

状況考えられる原因対応
設定はほぼ変わっていないのに数字が落ちた季節・競合・在庫など、担当者以外の要因前年同月や競合の価格を確かめる。担当者を責めない
新担当が構造を大きく組み替えた直後に落ちた組み替えによる配信の学習のやり直し2〜4週間は様子を見る。理由と戻す基準を聞いておく
前担当がやめた施策が復活している引き継ぎ漏れ判断の記録を見せ、やめた理由を共有する
除外キーワードが外れている、予算が偏っている設定の確認漏れ交代前に保存した設定と比べ、差分を指摘する

仮の数字で、待つことの損と、動くことの損を比べてみます。月の広告経由の売上が200万円、粗利率が30%の商品で、交代後の1か月に売上が1割落ちたとします。

  • 売上の減少:200万円 × 10% = 20万円
  • 粗利の減少:20万円 × 30% = 6万円

この6万円が、交代後の1か月で失った金額の目安です。ここで慌てて代行会社ごと替えると、新しい会社の初期設計に1〜2か月かかり、その間も同じ幅で落ちる可能性があります。仮に2か月続けば12万円、加えて新しい会社の初期費用がかかります。1か月の落ち込みだけで会社ごと替えるのは、損を大きくする方向に働きやすい、ということです。

逆に、2か月たっても戻らず、報告に変更の理由が書かれていない、交代前の設定との差分を指摘しても直らない、という状態なら、担当者の変更を代行会社に申し出るか、乗り換えを考える段階です。ここに置いた金額と粗利率は計算の形を示すための仮の数字なので、自社の実数で置き換えてください。報告のどこを見れば成果を判断できるかは広告代行のレポートの見方に書きました。

担当者の変更を依頼主から申し出るとき

交代は代行会社の都合だけで起きるものではありません。依頼主から「担当者を替えてほしい」と申し出ることもできます。言いにくいことですが、合わない担当者のまま半年続けるより、早めに伝えたほうが双方のためになります。

申し出る前に、次の3つを整理しておくと話がこじれません。

  1. 何が合わないのかを事実で書く。「返事が3営業日以上かかったことが直近1か月で4回あった」「報告に変更の理由が書かれていない月が2か月続いた」のように、日付と回数で示します
  2. 担当者を替えれば直ることか、会社の仕組みの問題かを分ける。報告の様式や返答の目安が会社として決まっていないなら、担当者を替えても同じことが起きます
  3. 替えた後に何を期待するかを決める。返答の目安、報告の様式、定例会の頻度を、新しい担当者に対する条件として伝えます

申し出は責任者あてに、文章で送ってください。担当者本人に直接言うより、会社として受け止めてもらえます。担当者を替えても改善しない場合に会社ごと替えるかの判断は、運用代行でよくある失敗例も参考になります。

契約時に入れておく取り決め

次に契約する、あるいは契約を更新するときに、担当者交代に備えた取り決めを入れておくと、交代のたびに慌てずに済みます。

取り決め書き方の例防げること
交代の事前連絡担当者を変更する場合は、原則として2週間前までに通知する突然の交代と、重なり期間ゼロの引き継ぎ
引き継ぎの範囲設定一式・判断の記録・過去の報告を後任に引き継ぎ、依頼主にも写しを渡す判断の理由の消失
報告の様式の固定報告の指標と様式は、担当者が替わっても変えない前月と比べられない報告
責任者の明記担当者とは別に、品質の責任者を置き、連絡先を示す担当者不在のときの空白
依頼主からの変更申し出依頼主は担当者の変更を申し出ることができる合わない担当者のまま続く状態

口頭の約束は、それを約束した担当者がいなくなると消えます。担当者交代に関する取り決めは、担当者本人ではなく会社との約束として、契約書か覚書に残してください。 契約書で確認する項目全体は運用代行の契約書で確認する10項目にまとめています。

当社では2019年から運用を受けていますが、担当が替わる場面で数字を崩さずに済んだのは、判断の記録が残っていて、依頼主の社内の予定が1か所にまとまっていたケースでした。担当者の腕より、記録と共有の仕組みのほうが効く、というのが実感です。当社の作業範囲と体制はAmazon運用代行の内容に公開しています。

よくある質問

担当者が替わるのを断ることはできますか。 退職や異動が理由なら、断っても止めることは難しいのが実情です。できるのは、交代の時期を調整してもらう、重なりの期間を設けてもらう、引き継ぎの打ち合わせに同席する、といった条件の交渉です。交代そのものより、引き継ぎの中身に力を使うほうが結果につながります。

新しい担当者の力量は、どこで見分ければよいですか。 最初の1か月の報告で、何を、なぜ変えたかが書かれているかを見てください。変更の理由が数字とともに説明されていれば、判断の筋道を持っている担当者です。逆に、変更点が書かれていない、指標が前月と比べられない場合は、早めに様式をそろえるよう依頼します。

交代を機に、契約の範囲を見直してもよいですか。 よい機会です。担当者が替わると、どの作業に時間が使われているかを改めて確認しやすくなります。広告だけに絞る、商品ページの改善を加える、といった見直しを、交代の打ち合わせで切り出すと話が進みやすくなります。費用と範囲の考え方は運用代行の費用と選び方を参考にしてください。

担当者が頻繁に替わる会社は避けるべきですか。 年に何度も替わるようなら、引き継ぎの仕組みが整っているかを確かめてください。替わるたびに同じ説明を求められる、報告の形が変わる、という状態なら、仕組みの問題です。契約前に、担当者の平均の在籍期間や交代時の手順を聞いておくと判断しやすくなります。

前の担当者に、交代後も質問できますか。 社内の異動であれば、代行会社を通して質問できることが多いです。退職の場合は難しくなるので、聞きたいことは交代前の打ち合わせで出し切ってください。とくに「この語をなぜ除外したか」「この商品の入札をなぜ抑えているか」のように、設定を見ただけでは理由が分からない点を、事前に一覧にして持っていくと漏れが減ります。

まとめ

  • Amazon運用代行の担当者交代で困るのは、数字の落ち込みより「なぜ落ちたかが分からなくなる」こと
  • 連絡を受けたら、交代日・重なりの期間・引き継ぐもの・責任者・報告の様式の5つを文章で聞く
  • 抜けやすい「試してやめた施策」と「社内の予定」は、依頼主から新担当に直接渡す
  • 交代前に広告の設定を自社でも書き出し、交代後に差分を比べられるようにしておく
  • 数字が落ちたら、まず設定が変わったかを見る。1か月の落ち込みだけで会社ごと替えない
  • 担当者の変更を申し出るときは、合わない点を日付と回数で示し、責任者あてに文章で送る
  • 交代に関する取り決めは、担当者ではなく会社との約束として契約書に残す

担当者が替わって数字の見方が分からなくなった、引き継ぎで何を求めればよいか迷っている、という場合は、いまの状態を無料の運用診断で整理できます。体制の見直しを含めて相談したいときはお問い合わせからどうぞ。