Amazonの売上が伸びてきて、運用を誰かに任せたくなったとき、まず浮かぶのが「人を採るか、代行に頼むか」です。Amazon運用担当者採用の求人を出すか、代行会社に見積もりを取るか。どちらも月の金額だけを並べると、代行のほうが高く見えることが多いはずです。

ただ、その比べ方では採用側の費用が半分ほど抜けています。給与のほかに会社が負担する保険料、採用にかかる費用、仕事を覚えるまでの期間、上司が見る時間。逆に代行側にも、社内の窓口が使う時間や、範囲外の追加費用があります。

この記事では、両方を同じ範囲の「年額」にそろえて並べる方法を書きます。金額はすべて仮の数字です。自社の給与水準と見積もりに置き換えて読んでください。業務ごとにどこまで社内で持つかは内製と外注の線引きに、代行の料金の型は運用代行の費用と料金の型にまとめています。

Amazon運用担当者の採用と代行で、比べる費用の範囲

最初に、何を足すかをそろえます。片方だけ費用を広く取ると、結論が逆になります。

区分採用した場合に足す費用代行に頼んだ場合に足す費用
直接の支払い給与・賞与月額の代行費用
会社負担社会保険などの会社負担分、交通費(なし)
立ち上げ求人広告・紹介手数料などの採用費初期費用
育成仕事を覚えるまでの期間の給与自社の商品や方針を伝える打ち合わせの時間
道具分析ツールの利用料、パソコンなど範囲外の作業の追加費用
管理上司や経営者が指示・確認する時間社内の窓口が報告を受け、判断する時間

見落としやすいのは「管理」の行です。担当者を1人採れば、誰かがその人の仕事を見ます。代行に頼んでも、定例の打ち合わせに出て、提案に可否を出す人が社内に要ります。どちらも時間を金額に直して入れます。

もう1つ、採用には退職のリスクがあります。2年目に辞めれば、採用費と育成期間がもう一度かかります。これは年額の表には入れにくいので、後の判断基準で扱います。

採用した場合の年額を出す(仮定)

計算の形を示すため、次の仮の条件を置きます。実際の水準を示すものではありません。

  • 正社員:年収400万円と仮定
  • 会社負担の社会保険など:年収の15%と仮定
  • 採用費:60万円と仮定(初年度のみ)
  • 分析ツールなど:月1万円と仮定
  • 上司が見る時間:月5時間、その人の時給を5,000円と仮定
  • パート:時給1,500円・月80時間と仮定。採用費は20万円と仮定し、会社負担は勤務時間で扱いが変わるので、ここでは入れない
項目正社員(初年度)正社員(2年目)パート(初年度)
給与400万円400万円144万円
会社負担60万円60万円(勤務時間で変わる)
採用費60万円0円20万円
ツール12万円12万円12万円
上司の時間30万円30万円30万円
合計562万円502万円206万円

ここに入っていないのが育成期間です。経験のある人を採れても、自社の商品・利益の構造・過去の広告の経緯を覚えるまでに数か月はかかります。仮に最初の3か月は成果が半分とすると、正社員の場合、給与と会社負担の460万円の4分の1の半分、約57万円分は「払ったが成果になっていない」部分です。

パートは金額が軽く見えますが、月80時間で広告・商品ページ・在庫・価格のすべてを見るのは難しく、判断を伴う仕事は社内の誰かに残ります。パートで回るのは、手順が決まっている作業を任せる場合です。

代行に頼んだ場合の年額を出す(仮定)

代行も同じように足します。

  • 月額固定:月15万円と仮定
  • 初期費用:20万円と仮定(初年度のみ)
  • 社内の窓口:月4時間、時給3,000円と仮定
  • 範囲外の追加費用:年10万円と仮定
項目代行(初年度)代行(2年目)
月額180万円180万円
初期費用20万円0円
社内の窓口の時間約14万円約14万円
追加費用10万円10万円
合計約224万円約204万円

広告費に連動する型なら、広告費を当てはめて月額を出します。仮に広告費月50万円の20%なら月10万円、年120万円です。広告費が伸びれば代行費用も伸びるので、来年の広告費の見込みで2年目も出しておきます。型ごとの伸び方は広告運用代行の費用の3つの型で試算しています。

3つを並べると何が分かるか

ここまでの仮の数字を並べます。

形初年度2年目社内に残る判断の量
正社員を1人採用562万円502万円少ない(本人が判断する)
パートを1人採用206万円186万円多い(判断は社内の別の人)
代行に依頼約224万円約204万円中くらい(方針と可否は社内)

この仮定では、正社員1人の費用で、代行なら2年以上頼める計算です。一方、パートと代行の差は小さく、比べるべきは金額ではなく「判断を誰がするか」になります。

ただ、これは担当者1人分の仕事量を前提にした比較です。商品が増えて2人分の仕事になれば、採用は2人目の費用がそのまま乗り、代行は商品数に応じた加算で済むことが多い。逆に、運用以外の仕事(仕入れの調整、他のモールの対応、問い合わせ対応)も任せたいなら、代行ではまかなえない部分が出ます。運用だけを切り出すか、EC全体を任せたいかで、比べる相手が変わります。

金額以外で差が出る点

年額が近いとき、決め手になるのは次の項目です。

観点採用代行
立ち上がりの速さ採用活動と育成で数か月かかる契約から1か月ほどで動き出すことが多い
見ている事例の幅本人の経験の範囲複数の商品・カテゴリーで見た事例を持ち込める
ノウハウが社内に残るか本人がいる限り残る。辞めると抜ける記録を受け取らないと残らない
担当が変わるリスク退職・異動代行側の担当交代
他の仕事との兼務できる契約の範囲だけ
指示の手間日々の細かい指示が要る月1回の方針決めが中心

ノウハウの残り方は、代行のほうが不利に見えますが、契約で補えます。毎月の作業記録・設定の変更履歴・検索語の判断理由を文書で受け取る約束にしておけば、終了後も社内に残ります。逆に採用は、担当者が1人だと、その人が辞めた日に何も分からなくなる、ということが起きます。どちらでも「記録を残す決まり」が要るのは同じです。

どちらを選ぶかの判断基準

迷ったら、次の順に確認してください。

  1. 社内に判断できる人がいるか。広告の目標ACOS、値下げの可否、在庫の発注量を決められる人がいないなら、採るなら経験者の正社員、頼むなら判断の提案まで含む代行です。パートは判断する人がいる会社向けです
  2. 月の作業時間はどれくらいか。広告・商品ページ・在庫・価格・レポートで、今どれだけ時間を使っているかを1か月記録します。月40時間に満たないなら、正社員1人分の仕事はまだありません
  3. 売上に対して何%まで払えるか。仮に月の売上が300万円で、運用にかけられる費用を売上の5%とすると月15万円です。正社員の月あたり費用(上の仮定で約47万円)を払える売上規模かを先に確かめます。利益率の考え方は利益率の目安と広告費の上限にあります
  4. 2〜3年後に自社で回したいか。いずれ内製化するなら、代行期間中に記録を受け取り、採用した人が引き継げる形にしておきます。順番は代行から自社に戻す手順に書きました

月の作業時間を1か月記録する

2つ目の確認には、業務ごとの時間を1か月分つけるのがいちばん確かです。次の表の左2列を埋め、右の列は記録が終わってから書きます。時間の例は記録の付け方を示すための仮の数字です。

業務中身月の時間(記録の例)判断が要るか
広告検索語の確認、除外の更新、入札と予算の調整12時間要る(目標ACOSの決定)
商品ページ画像・文章の差し替え、属性の修正、Q&Aへの回答6時間一部(訴求の方向)
在庫販売数の確認、発注数の計算、納品の手配8時間要る(発注量)
価格・販促競合の確認、クーポン・セールの申し込み4時間要る(値下げの可否)
レポート月次の数字の集計と社内への報告4時間少ない
問い合わせテクニカルサポートとのやり取り3時間少ない

この例なら合計37時間で、正社員1人分の仕事にはなりません。判断が要る業務(広告・在庫・価格)を社内の誰が持つかを決め、残りの作業を誰に渡すかを考えます。判断の人が社内にいれば作業はパートか代行、いなければ判断まで含めて頼む形です。

記録を付けると、「誰も見ていない業務」も見つかります。在庫の発注が担当者の勘で回っていた、Q&Aが数か月放置されていた、といったことです。採用か代行かを決める前に、まず抜けている業務を把握しておくと、求人の要件にも代行の見積もりの範囲にもそのまま使えます。

よくある失敗は、売上がまだ小さい段階で正社員を採り、その人が広告から在庫まですべてを1人で抱えて、判断の相談相手がいないまま1年が過ぎる形です。採用自体が悪いのではなく、判断の基準を誰も渡していないのが原因です。もう1つは、代行に頼んだものの社内の窓口が決まらず、提案に返事が出ないまま数か月止まる形です。こちらも費用の問題ではなく、社内の時間を見積もっていなかったことが原因です。

組み合わせる形もある

採用か代行かの二択にしなくてもかまいません。

  • 代行で設計し、採用した人が日々を回す:最初の半年は代行が広告の構成と判断基準を作り、その間に採った人が横で覚える
  • 作業は社内、判断だけ外に出す:日々の入力は社内のパートが行い、月1回の方針決めと数字の読み方をコンサルティングで受ける
  • 商品で分ける:主力の数商品は代行、それ以外は社内

個人に頼む形もあります。費用は抑えやすい一方、病気や退職で止まるリスクは採用と似ています。違いはフリーランスに頼むときの注意点を見てください。

よくある質問

経験者を採れば、教育期間はかからないのではないですか。 Amazonの運用経験があっても、自社の商品の粗利、過去に試してうまくいかなかった施策、在庫の制約は知りません。操作を覚える時間は短くなりますが、判断を任せられるまでには数か月を見ておくのが現実的です。経験者ほど給与も上がるので、年額の表はその給与で作り直してください。

代行に頼むと、社内に何も残らないのでは。 何も決めずに頼むとそうなります。契約の時点で、月次の報告書、設定変更の記録、除外した検索語とその理由を文書で受け取る約束をしておけば残ります。終了時の引き継ぎの範囲も、最初に決めておくと揉めません。

売上がどれくらいになったら採用を考えればいいですか。 一律の基準はありません。目安として、運用にかけられる費用(売上×自社で決めた割合)が、正社員1人の年額を12で割った金額を上回るかを見ます。上の仮定なら月約47万円です。下回るうちは、代行か、パートと外部の判断の組み合わせのほうが負担が軽くなります。

採用した担当者が辞めたときの損失はどう見積もればいいですか。 年額の表とは別に、「もう一度かかる費用」として採用費と育成期間の給与を足します。上の仮定なら、採用費60万円と育成期間の約57万円で、120万円近くが再びかかる計算です。加えて、引き継ぎがないまま止まった期間の売上の落ち込みもあります。この損失を小さくするには、担当者が1人でも、作業の手順と判断の理由を記録に残す決まりを最初から作っておくことです。

代行と採用を同時に進めてもいいですか。 できます。代行に設計と最初の運用を頼み、その間に採用活動を進めて、採った人に引き継ぐ形です。この場合は、代行との契約に「社内担当者への引き継ぎ」を作業範囲として入れておいてください。

まとめ

  • 採用と代行は月の金額ではなく、同じ範囲の年額で比べる
  • 採用には給与のほか、会社負担・採用費・ツール・上司の時間・育成期間が乗る
  • 代行にも初期費用・社内の窓口の時間・範囲外の追加費用が乗る
  • 仮の条件では、正社員1人の費用で代行に2年以上頼める。パートと代行は金額が近く、判断を誰がするかで選ぶ
  • 決め手は社内に判断できる人がいるか、月の作業時間、売上に対して払える割合、2〜3年後の内製化の予定
  • どちらを選んでも、作業と判断の記録を残す決まりを先に作る

当社は2019年からAmazonの運用を支援し、30ブランド・300商品ほどを見てきました。代行を選ぶ場合の作業範囲はAmazon運用代行の内容、金額は料金プランに公開しています。依頼の前に何をそろえるかは運用代行に依頼する前の準備を参考にしてください。自社の弱いところがまだ分からない場合は、無料の運用診断で広告・商品ページ・在庫のどこから手を付けるかを整理できます。