「Amazon広告の予算の目安は、売上の何%くらいですか」という質問をよく受けます。気持ちは分かりますが、全商品に一律の%を当てはめると、粗利率の高い商品では広告を出し足りず、粗利率の低い商品では売れるほど赤字になりやすくなります。

Amazon広告の予算の目安は、売上ではなく粗利率から逆算して上限を出し、その上限の中で商品の時期に合わせて置くのが筋の通った決め方です。この記事では、上限の計算、立ち上げ期・成長期・成熟期ごとの置き方、日予算への直し方、見直しの合図を順に説明します。数字はすべて仮の条件で計算しています。

売上の何%で決めると起きること

仮に、すべての商品で「広告費は売上の15%まで」と決めたとします。広告費を引く前の粗利率が商品ごとに違うと、残る利益はこう変わります。

商品広告費を引く前の粗利率(仮定)広告費(売上の15%)広告費を引いた後の粗利率
A40%15%25%
B25%15%10%
C12%15%−3%

同じ15%でも、商品Aには利益が十分に残り、商品Cは売れるほど赤字が増えます。反対に商品Aは、もっと広告を出して順位を取りにいける余地があるのに、15%で止めていることになります。%を商品ごとに変えるための基準が粗利率です。

ここでいう粗利率は、売価から原価、販売手数料、FBAの配送代行手数料などを引いた残りの割合です。販売手数料率やFBAの料金はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してから計算してください。1商品ずつ粗利を出す手順はFBA手数料と粗利の計算にまとめています。

粗利率から広告費の上限を出す

上限は次の4段階で出します。

  1. 1個あたりの粗利を出す。 仮に売価3,000円、原価900円、販売手数料とFBAの配送代行手数料の合計を900円とすると、粗利は1,200円、粗利率は40%です
  2. 広告費を引いた後に残したい利益率を決める。 保管料や返品、固定費を賄える水準を置きます。ここでは25%と仮定します
  3. 広告費の上限の割合を出す。 粗利率40%−残したい利益率25%=15%。これが全体の売上に対する広告費の上限(TACOSの上限)です
  4. 想定売上に掛ける。 仮に月の想定売上が200万円なら、200万円×15%=月30万円が予算の上限です
項目計算仮の数字
粗利率(売価−原価−手数料)÷売価40%
残したい利益率自社で決める25%
広告費の上限(全体の売上に対して)粗利率−残したい利益率15%
月の予算の上限想定売上×上限の割合30万円
損益分岐ACOS粗利率と同じ40%

予算の上限と、損益分岐ACOSは別の物差し

表の最後の行の損益分岐ACOSは、広告経由の売上に対して「ここを超えると広告で売れた分が赤字になる」線です。予算の上限は全体の売上に対する割合なので、同じ商品でも数字が違います。

広告経由の売上が全体の半分なら、ACOSが30%でも、全体の売上に対する広告費(TACOS)は15%です。キーワードや入札の判断はACOSと損益分岐ACOSで、月の総額の判断はTACOSと予算の上限で、と使い分けてください。2つの指標の違いはTACOSとはに、損益分岐ACOSから目標を決める手順はACOSの目標値の決め方に書いています。売価・原価・手数料率を入れて損益分岐ACOSを出すなら利益シミュレーターが使えます。

時期ごとの予算の置き方

上限は「これ以上使わない線」で、毎月そこまで使う額ではありません。どこに置くかは商品の時期で変わります。上の例(上限15%、想定売上200万円、上限額30万円)で置くと次のようになります。

時期置き方の目安(仮定)月の予算(仮定)主に見る数字見直しの合図
立ち上げ期(発売から3か月前後)上限いっぱい。必要なら期限と総額を決めて上限を超える30万円+投資枠広告経由の注文数、主要な語での表示順位投資枠の期限が来た
成長期上限の7〜8割21万〜24万円TACOSの推移TACOSが2か月続けて下がらない
成熟期上限の3分の1〜2分の110万〜15万円広告費を引いた後の利益額、広告以外の売上競合の増加でTACOSが上がる

割合はあくまで置き方の一例です。成熟期は、広告を見ずに買う人の売上が育っているぶん、広告費を上限より下げても売上を保てる状態を目指します。

立ち上げ期の投資枠は、期限と総額で決める

発売直後は販売実績もレビューもないため、上限の範囲だけでは表示が取れないことがあります。そのときは上限を超える分を「投資枠」として、先に期限と総額を決めます。

仮に立ち上げ期の3か月、月40万円まで使うと決めたとします。上限30万円との差は月10万円なので、投資枠の総額は10万円×3か月=30万円です。成熟期に、仮に売上が同じまま月15万円で回せれば、上限との差は月15万円なので、2か月分で投資枠と同じ額になる計算です。

期限の来た投資枠は、成果が出ていなくても延長しないのが原則です。 延長したくなったら、広告以外(商品ページ、価格、レビュー)に原因がないかを先に確かめてください。発売から90日の進め方は新商品の立ち上げ90日でやることにまとめています。

月の予算を日予算に直す

Amazon広告は、キャンペーンごとに日予算を設定します。月30万円なら、30日で割って1日1万円が総額の目安です。これを役割ごとのキャンペーンに振り分ける手順は広告予算の配分に書きました。

日予算を設定した後は、週に1回、月の途中の消化率を確かめます。

確認する日月の経過率広告費の累計(仮定)月予算に対する消化率判断
10日33%9万円30%予定どおり
20日67%24万円80%前倒しで使っている。主力以外の日予算を絞る
25日83%26万円87%残り5日で4万円。1日8,000円に落とす

消化率が経過率を大きく上回っていたら、そのままでは月末に上限を超えます。反対に大きく下回っているなら、予算ではなく入札か語の選び方で配信が止まっている可能性があります。この場合に日予算を増やしても消化は増えないので、入札額の決め方に沿って先に入札を見直してください。

予算を見直す合図

予算は四半期に1回見直すのを基本にし、次のどれかが起きたら時期を待たずに計算し直します。

  • 原価や手数料が変わった。 粗利率が変われば上限そのものが変わります。仕入れ値の値上がりや、サイズ区分の変更に気づいたら、上限を出し直します
  • 価格を変えた。 値下げやクーポンで粗利率が下がった月は、同じ予算でも利益が薄くなります
  • TACOSが上限を2か月続けて超えた。 広告の効率か、広告以外の売上のどちらかが落ちています
  • 在庫の残り日数が、次の入荷までの日数より短くなった。 そのまま広告を回すと欠品します。主力の語だけ残して段階的に絞ります(在庫切れを防ぐ発注の基準

よくある失敗

  • 前年の広告費をそのまま今年の予算にする。 原価や価格が変わっていれば、上限は去年と違います
  • 月末に余った予算を使い切ろうとする。 予算は上限であって目標ではありません。余ったなら、効率の良い配信だけで足りたということです
  • アカウント全体の%で決める。 粗利率の高い売れ筋が全体の数字を良く見せ、粗利率の低い商品の赤字が隠れます。上限は商品ごとに出してから合計します

よくある質問

まだ売上のない新商品は、予算の目安をどう置きますか。 想定売上の代わりに、立ち上げ期に使える総額から決めます。粗利率から上限の割合を出したうえで、「3か月で合計いくらまで」という投資枠を先に置き、月ごとに割り振ってください。3か月後に広告以外の売上がどれだけ出てきたかを見て、成長期の置き方に移るか、ページや価格を見直すかを判断します。

商品が複数ある場合、予算は商品ごとに出すべきですか。 上限は商品ごとに出し、合計してアカウントの月予算にします。粗利率が商品ごとに違うので、まとめて1つの%で置くと、赤字の商品が売れ筋の陰に隠れます。商品が多い場合は、売上の上位の商品だけ個別に出し、残りは粗利率の近いものをまとめて計算する形でも構いません。

予算を増やせば、売上もそれに比例して伸びますか。 比例するとは限りません。広告費を増やすと、まず効率の良い語で表示が増え、その先はクリック単価の高い枠や関連性の低い語にも配信が広がります。増やした月はACOSとTACOSを前の月と並べ、売上の伸びが広告費の伸びに追いついているかを確かめてから、次の増額を決めてください。

まとめ

  • Amazon広告の予算の目安を、全商品一律の「売上の何%」で決めない。粗利率の低い商品ほど赤字になりやすい
  • 上限の割合は「粗利率−残したい利益率」。想定売上に掛けると月の予算の上限が出る
  • キーワードの判断はACOSと損益分岐ACOS、月の総額の判断はTACOSと予算の上限で行う
  • 立ち上げ期は上限いっぱいと投資枠(期限と総額を先に決める)、成長期は上限の7〜8割、成熟期は3分の1〜2分の1が置き方の一例
  • 月の予算は日予算に直し、週1回、消化率と月の経過率を並べて確かめる
  • 原価・価格・在庫が変わったら、四半期を待たずに上限を出し直す

まずは主力商品1つについて、粗利率と残したい利益率から上限の割合を出してみてください。広告だけでなく商品ページや在庫も含めてどこが弱いかを確かめたい場合は無料の運用診断を、運用を任せる形を検討している場合はAmazon広告の運用代行をご覧ください。