Amazon KPIを決めようとすると、セラーセントラルにも広告の管理画面にも数字が多すぎて、どれを追えばよいかで止まります。ACOS、セッション、転換率、カート獲得率、在庫パフォーマンス指標。全部を毎月眺めても、結局「先月より売上が落ちた」以上のことが分からない、という相談はよくあります。

原因は、指標を「画面にあるから」で選んでいることです。KPIは、売上と利益を分解した部品から選びます。部品に分けておけば、数字が落ちたときに直す場所がそのまま決まります。

この記事では、月次で見る指標を10個に絞る手順と、記録表の型、数字が動いたときの対応表をまとめます。週ごとの細かい見方はビジネスレポートの見方、広告だけの評価は広告の効果測定に分けて書いています。

Amazon KPIは「売上と利益の分解」から選ぶ

最初に、最終的に追いたい数字(KGI)を2つに決めます。月の売上と、月の利益です。売上だけを置くと、値引きと広告で売上を作って利益が消える運用を止められません。

次に、この2つを分解します。

  • 売上 = セッション数 × 転換率 × 客単価
  • 利益 = 売上 −(原価 + 販売手数料 + FBA配送料 + 保管料 + 広告費)

売上は掛け算なので、どれか1つが落ちれば売上が落ちます。利益は引き算なので、どの費目が膨らんだかを見れば原因が分かります。この分解に出てくる部品が、KPIの候補です。

さらにセッション数は「広告経由」と「自然検索経由」に分けて考えます。広告を止めた瞬間に消える売上なのか、広告がなくても残る売上なのかで、打つ手がまったく違うからです。

月次で見る10の指標

候補を全部追うと続きません。月次の会議で見るのは次の10個に絞ります。

区分指標何が分かるか落ちたときに直す場所
結果売上全体の規模下の指標で分解する
結果利益(1か月の合計)残ったお金下の費用の指標で分解する
集客セッション数ページに来た人数検索順位、広告の配信量
集客自然検索の売上の比率広告なしで売れる力商品名・キーワード・レビュー
購入転換率(ユニットセッション率)来た人が買う割合画像・価格・レビュー・在庫
購入カート獲得率自社が売り手として表示される割合価格・出荷条件・アカウント状態
広告TACOS(広告費÷全体の売上)売上全体に対する広告の重さ入札・除外・予算配分
費用1個あたりの利益値引きや手数料の影響価格・原価・サイズ区分
在庫在庫日数(在庫÷1日の販売数)切れるか、余るか発注数と発注日
顧客返品率と星評価不満の量ページの説明・商品・梱包

ACOSを入れていないのは、TACOSのほうが「広告に頼りすぎていないか」を直接示すからです。ACOSは広告の運用担当が週次で見る指標として残し、月次の会議ではTACOSと自然検索の比率を並べます。違いはTACOSとはで説明しています。

指標を増やしたくなったときの基準

「この数字も見たい」という声が出たら、その数字が落ちたときに誰が何を直すかを書けるかで判断します。書けない指標は、眺めるだけで行動につながりません。月次の10個から外して、必要なときだけ見る参考値に回します。

目標値の決め方

KPIは目標値がないと、良いのか悪いのかが判断できません。ただし業界の平均値を目標にするのは避けます。商品の価格帯・カテゴリー・競合の数で、適正な水準は大きく変わるからです。

目標値は次の2つから出します。

  1. 自社の過去3か月の平均。セッション数・転換率・返品率は、まず過去の自社を超えることを目標にする
  2. 損益分岐からの逆算。TACOSと1個あたりの利益は、赤字にならない線を先に出し、その内側に目標を置く

損益分岐の考え方を、仮の数字で示します。仮に売価3,000円、原価900円、販売手数料とFBA配送料の合計が900円とすると、広告費をかける前の1個あたりの利益は1,200円です。広告費がこの1,200円を超えると赤字なので、売上に対する広告費の上限は40%になります。ここから利益を残したいなら、TACOSの目標は15%前後、といった決め方をします。

手数料率・FBA配送料・保管料はカテゴリー・サイズ・時期で変わるので、セラーセントラルの最新の案内と自社の実数で確認してください。売価・原価・手数料を入れると損益分岐が出る利益シミュレーターも使えます。

月次の記録表の作り方

記録は、スプレッドシート1枚で十分です。作り方は次のとおりです。

  1. 行に10の指標、列に月を並べる。最新の月を右端に足していく
  2. 各指標の右に「目標」と「前月差」の列を置く
  3. 目標を下回ったセルだけ色を付ける。色が付いたものだけを会議で話す
  4. 表の下に「今月やったこと」を3行書く。値上げ、画像の差し替え、入札の変更など
  5. 翌月、色が付いた指標と「やったこと」を並べて、効いたかを確かめる

4番目の「やったこと」の記録が抜けると、数字が動いた理由を後から追えません。売上が伸びた月に何をしたかが分からなければ、同じことを繰り返せないからです。

集計の単位は、商品が少ないうちは全体で構いません。商品数が増えたら、売上上位の数商品だけを個別の行に分けます。全体の平均に埋もれて、1商品の不調を見逃すのを防ぐためです。

数字が動いたときに見る順番

KPIは、落ちた指標から原因の候補を絞るために使います。売上が落ちたときは、次の順番で確認します。

見る順番確認することよくある原因
1在庫日数が0に近づいていないか在庫切れで表示と順位が落ちた
2カート獲得率が落ちていないか価格の逆転、出荷条件の変化
3セッション数が落ちたか検索順位の低下、広告予算の上限
4転換率が落ちたか低評価の増加、競合の値下げ、画像
5客単価が落ちたかクーポンの使いすぎ、まとめ買いの減少

在庫から見るのは、在庫切れが他のすべての指標を巻き込んで落とすからです。在庫が切れた月は、転換率や順位の低下が「結果」として出ているだけのことがあります。在庫の基準の決め方は在庫切れを防ぐ発注基準にまとめています。

よくある失敗

  • 売上だけを目標にする。値引きと広告で達成でき、利益が減っても気づけない
  • 指標が多すぎる。30個並べると、どれが原因かを話す時間がなくなる
  • 週次と月次を混ぜる。広告の入札は週次で、価格や商品の改善は月次で判断する。同じ表に混ぜると、短期の上下に振り回される
  • 目標を変えすぎる。毎月目標を動かすと、改善したのか基準が緩んだのかが分からなくなる。見直しは四半期に1回にする

よくある質問

商品が1つだけでもKPIは必要ですか。 必要です。商品が1つなら、売上の変化の原因は集客・購入・在庫のどれかに限られるので、むしろ10個の指標で原因まで追いやすくなります。記録表を作る手間は月に30分ほどです。最初はセッション数・転換率・TACOS・在庫日数の4つだけでも始められます。

KPIの目標はどのくらいの頻度で見直しますか。 四半期に1回を基準にしてください。毎月見直すと、未達のたびに目標を下げる流れになりがちです。ただし、値上げや新商品の追加、大型セールのように前提が変わった月は、その時点で見直します。

運用代行に任せている場合、KPIは誰が決めますか。 決めるのは自社です。代行側から提案を受けるのは構いませんが、利益の線は自社の原価と資金繰りで決まるからです。代行側に任せきりにすると、広告の指標だけが報告される形になりがちです。報告の項目に自然検索の比率と1個あたりの利益を入れてもらうと、判断の材料がそろいます。

まとめ

  • KPIは画面にある数字から選ばず、売上と利益を分解した部品から選ぶ
  • 売上はセッション数×転換率×客単価、利益は売上から費用を引いた形で分ける
  • 月次で見るのは10個まで。落ちたときに誰が何を直すかを書けない指標は外す
  • 目標値は業界平均ではなく、自社の過去3か月と損益分岐から出す
  • 記録表には「今月やったこと」を3行残し、翌月に効いたかを確かめる
  • 売上が落ちたら、在庫→カート→セッション→転換率→客単価の順で見る

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