Amazonと楽天の両方に出店していると、運用代行を探す段階でまず出てくる迷いがあります。両方を一社にまとめて頼むか、モールごとに得意な会社へ分けて頼むか。窓口が一つのほうが楽に見えますが、片方のモールが弱い会社に両方を任せると、弱いほうの売上が伸びないまま1年が過ぎることもあります。

この記事は、Amazon 楽天 運用代行を「まとめるか、分けるか」の判断に絞ります。決め手は会社の規模や知名度ではなく、自社の売上がどちらのモールに偏っているかと、社内にモールをまたいで判断する人がいるかです。以下の金額はすべて仮の数字なので、自社の見積もりに置き換えて読んでください。

両モールの運用がそもそもどう違うかは楽天とAmazonの違いに、代行以外の外注の形(コンサル・フリーランス・スポット)は外注先の選び方にまとめています。

Amazonと楽天で運用代行の中身が違う理由

一社にまとめるか考える前に、両モールで代行に頼む作業がどれだけ違うかを押さえておきます。同じ「運用代行」でも、手を動かす場所が違います。

作業Amazon楽天
集客の中心検索結果と広告。商品ページ単位で競う検索に加え、店舗のページ・メルマガ・大型セールの企画
商品ページ決まった枠(商品名・箇条書き・画像・A+)を埋める店舗ごとに自由に作り込む。作業量が多い
広告検索連動・商品ターゲティング・ディスプレイを日次で調整検索連動型広告が中心。セール時期の配分が大きい
顧客との接点原則として購入者と直接やり取りしないメルマガやフォローでリピートを作れる
月の山場セール期間はあるが、日々の調整の積み重ね大型セールの前後に作業が集中する

Amazonは「決まった枠の中で、広告と商品ページを細かく調整する」仕事、楽天は「店舗を作り込み、セールと再購入を企画する」仕事です。求められる技能の比重が違うため、どちらかに強みが偏っている代行会社は珍しくありません。

一社にまとめるか分けるかの判断は、この偏りを自社の売上の偏りと合わせられるかどうかにかかっています。

一社にまとめる場合と、モール別に分ける場合

2つの頼み方を並べます。どちらが正しいということはなく、自社の状況でどちらの弱点が小さいかで選びます。

観点一社にまとめるモール別に分ける
窓口と報告1か所。月次報告も1回で済む2か所。報告を自社で突き合わせる
在庫・価格の調整両モールの在庫配分や価格差を同じ担当が見られる両社の間で自社が調整役になる
専門性片方のモールが弱い会社だと、弱いほうが伸びないそれぞれのモールに強い会社を選べる
費用セット割引が出ることがある初期費用・最低料金が2社分かかる
解約・乗り換え片方だけ不満でも、まとめて動かすことになりやすい不満のあるモールだけ切り替えられる
社内の手間少ない月に数時間の突き合わせが増える

一社にまとめる利点は「調整を相手に任せられる」こと、分ける利点は「モールごとに最善の相手を選べる」ことです。一社にまとめても、相手の社内でAmazon担当と楽天担当が別のチームなら、実態は分けて頼んでいるのと変わりません。面談で担当の体制を聞く理由はここにあります。

どちらが向くかの4つの基準

次の4つで判断します。2つ以上当てはまるほうを選ぶのが目安です。

  1. 売上の偏り:片方のモールが売上の7割以上なら、そのモールに強い会社を優先する。もう片方は同じ会社に頼むか、自社で回すかを後から決める
  2. 在庫の持ち方:両モールで同じ在庫を共有している(自社倉庫から両方に出す、FBA在庫を他モールにも出す)なら、在庫の判断が絡むので一社にまとめる利点が大きい
  3. 社内の調整役:両社の報告を見比べて、在庫と価格を決められる人が社内にいるなら、分けても回る。いなければ一社にまとめるほうが事故が少ない
  4. 予算の規模:両モールの代行費用を合わせた額が、粗利に対して重すぎるなら、片方だけ頼んでもう片方は自社で回す形も候補にする

3番目の調整役が一番見落とされます。モール別に分けたのに社内に調整役がいないと、「Amazonでは在庫を絞れと言われ、楽天ではセールに向けて在庫を積めと言われる」ような食い違いを、誰も裁かないまま放置することになります。

調整役に要る時間は、在庫と価格を月に一度見直すだけなら月に数時間です。ただし、両モールのセールが重なる月は増えます。社内の誰がその時間を持つのかを、代行を探し始める前に決めておいてください。決められないなら、それ自体が一社にまとめる理由になります。

FBAの在庫を楽天の注文にも出す運用は、マルチチャネルサービスの使いどころに判断基準を書いています。在庫を共有するなら、その時点で一社にまとめる理由が一つ増えます。

仮の条件で年額を並べる

頼み方による費用の差を、年額で見ます。計算の形を示すための仮の条件です。実際の水準を示すものではありません。

  • 一社にまとめる場合:両モール込みで月100,000円、初期費用150,000円と仮定
  • モール別に分ける場合:Amazonの代行が月60,000円・初期費用100,000円、楽天の代行が月60,000円・初期費用100,000円と仮定
  • 社内で両社の報告を突き合わせ、在庫と価格を調整する時間を、分ける場合だけ月6時間・時給3,000円で計上すると仮定
項目一社にまとめるモール別に分ける
月額×12か月1,200,000円1,440,000円
初期費用150,000円200,000円
社内の調整時間(月6時間×12か月×3,000円)0円216,000円
初年度の合計1,350,000円1,856,000円
2年目以降(初期費用なし)1,200,000円1,656,000円

この仮定では、一社にまとめるほうが初年度で約50万円軽くなります。ただし、これは両方のモールで同じだけ成果が出る前提の比較です。

成果の差を入れると結論は変わります。仮に楽天の売上が年1,500万円で、楽天に強い会社に分けて頼んだときに売上が1割多く伸び、その粗利率が30%だとします。増える粗利は1,500万円×10%×30%=45万円。この分を足すと、両者の差はほとんどなくなります。費用の差は数十万円単位、成果の差は売上規模しだいで同じくらい動くので、費用だけで決めないでください。

片方だけ頼むという選択肢

両方を外に出す必要もありません。売上の小さいほうのモールは、自社で最低限の運用を続け、売上の大きいほうだけを代行に頼む形も現実的です。

仮に上の条件でAmazonだけを頼むなら、初年度は月60,000円×12+初期費用100,000円=820,000円。浮いた分で楽天は商品ページの改善だけをスポットで頼む、という組み合わせもできます。単発の相談の使い方はAmazon運用のスポット相談の使い方に書いています。

一社にまとめるときに確かめること

一社にまとめると決めたら、面談で次を聞いてください。両モール対応をうたう会社でも、実際にはどちらかが主力ということがよくあります。

  • Amazonと楽天、それぞれの担当者は誰か。同じ人か、別のチームか
  • それぞれのモールで、いま担当している店舗・ブランドの数はどのくらいか
  • 月次報告は両モールを1枚にまとめるか、別々に出すか
  • 両モールの在庫配分や価格差について、誰がどう提案するか
  • 片方のモールだけを解約したい場合、料金と手続きはどうなるか
  • 大型セールの前後など、片方のモールに作業が集中する月の体制はどうなるか

5番目は契約前に文書で確認します。セット料金で契約すると、片方だけ外すときに単価が上がって残すほうの月額が高くなる、という形があります。契約書で確認する項目は運用代行の契約書で確認する10項目に一覧にしています。

両モールの実力を確かめる一番の方法は、同じ質問を両モールについて聞くことです。「直近で一番成果が出た施策は何か」をAmazonと楽天それぞれについて聞き、片方だけ具体的な話が返ってくるなら、そちらが主力です。

モール別に分けるときに確かめること

分けると決めた場合は、2社の間の線引きを自社で先に決めておきます。決めずに始めると、どちらの責任でもない作業が宙に浮きます。

決めておくこと例
在庫の配分月初に自社が両モールへの配分を決め、両社に共有する
価格差両モールの販売価格の差をどこまで認めるか、自社が上限を決める
商品ページの素材画像や説明文の元データは自社が持ち、両社に同じものを渡す
セール時期両モールのセールが重なる月は、在庫を優先するモールを先に決める
報告の形式売上・広告費・在庫を同じ項目で出してもらい、自社で横に並べる

報告の形式をそろえておくと、どちらのモールが利益を出しているかを毎月同じ物差しで比べられます。月次報告で見る数字は代行の月次レポートの見方を参考にしてください。

分けて頼む場合、2社の代行を束ねる仕事は自社に残ります。この仕事を外に出したいなら、それは一社にまとめる理由になります。

判断に迷ったときの進め方

どちらか決めきれない場合は、次の順で進めると判断材料がそろいます。

  1. 両モールの直近12か月の売上・粗利・広告費を、モール別に1枚に並べる
  2. 売上の大きいほうのモールについて、代行会社を2〜3社比較する
  3. 比較した会社のうち両モール対応の会社には、もう片方のモールの実績も同じ質問で聞く
  4. 両モールとも強いと判断できる会社があれば一社にまとめ、なければ大きいほうだけ頼む
  5. 小さいほうのモールは3か月ほど自社で回し、手が回らなければ追加で頼む

1番目の表を作るだけで、片方のモールが実は利益を出していないと分かることもあります。その場合は代行の前に、そのモールを続けるかどうかの判断が先です。売上規模別の頼み方は中小企業の運営代行の使い方にも書いています。

当社は2019年からAmazonの支援をしていて、これまでに30ブランド・300商品ほどを見てきました。楽天と併売している事業者の相談も多く、Amazon側の運用を担当しながら、楽天側との在庫や価格の線引きを一緒に決めることから始めています。Amazon側の作業範囲と料金はAmazon運用代行の内容と料金プランに公開しています。

よくある質問

楽天の売上がまだ小さいのですが、最初から両方頼むべきですか。 最初から両方を頼む必要はありません。売上の小さいモールは、代行費用が粗利に対して重くなりやすいからです。売上の大きいほうを先に頼み、その会社の仕事ぶりを3か月ほど見てから、もう片方を追加するか決めても遅くありません。

一社にまとめたら、両モールで同じ商品ページを使い回されないか心配です。 心配は妥当です。両モールは商品ページの作り方が違うため、同じ文章と画像をそのまま流用すると、どちらかで効果が落ちます。面談で、素材をどうモールごとに作り分けるかを具体的に聞いてください。元データを共通にして、モールごとに構成を変える形が無理のないやり方です。

モール別に分けた2社の意見が食い違ったら、どうすればいいですか。 食い違いは在庫と価格で起きやすく、決めるのは自社です。判断の基準として、両モールの1個あたりの利益を並べ、利益の大きいほうを優先するのが一つの方法です。毎月の在庫配分と価格差の上限を自社が先に決めて両社に伝えておくと、食い違いそのものが減ります。

途中で一社にまとめ直すことはできますか。 できます。その場合は、外すほうの会社から広告の設定や商品ページの元データを受け取ってから切り替えてください。受け取るものと手順は運用代行の解約と引き継ぎに書いています。

まとめ

  • Amazonは決まった枠の中での広告と商品ページの調整、楽天は店舗の作り込みとセール・再購入の企画が中心。同じ代行でも求められる技能が違う
  • 一社にまとめる利点は調整を任せられること、分ける利点はモールごとに強い相手を選べること
  • 判断は「売上の偏り」「在庫を共有しているか」「社内に調整役がいるか」「予算の規模」の4つで見る
  • 仮の条件では一社にまとめるほうが年額は軽いが、成果の差で逆転しうる。費用だけで決めない
  • 一社にまとめるなら担当の体制と片方だけの解約条件を、分けるなら在庫・価格・素材・報告の線引きを先に決める
  • 迷ったら、売上の大きいモールだけを先に頼み、小さいほうは自社で回して様子を見る

まずは両モールの売上・粗利・広告費をモール別に1枚に並べてみてください。Amazon側のどこが弱いかを先に知りたい場合は無料の運用診断で整理できます。併売の線引きを含めて相談したい場合はお問い合わせからどうぞ。